武田科学振興財団、2023年度「武田医学賞」受賞者を決定 ~2023年11月13日(月) オークラ東京にて贈呈式を開催~
公益財団法人 武田科学振興財団(理事長:飯澤 祐史、所在地:大阪市中央区)は、2023年度「武田医学賞」を下記の2氏に贈呈することを決定しました。
贈呈式を2023年11月13日(月)午後6時よりオークラ東京 プレステージタワーにおいて開催し、受賞者には賞状、賞牌、楯ならびに1件につき副賞2,000万円を贈呈します。
「武田医学賞」は、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた研究者に贈呈されるものです。1954年に武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして設けられ、1963年の当財団設立とともに財団事業として継承し、本年度で67回目を迎えます。「武田医学賞」の受賞者数は、本年度を含めて139名となります。
■上田 龍三 博士(うえだ りゅうぞう)
名古屋大学 特任教授(78歳)
受賞テーマ:成人T細胞白血病・リンパ腫に対する抗体医薬開発のトランスレーショナル・リサーチ
■後藤 由季子 博士(ごとう ゆきこ)
東京大学 教授(59歳)
受賞テーマ:細胞運命を制御するシグナル伝達の解明
■上田 龍三 博士
<学歴・職歴>
1969年3月 名古屋大学医学部卒業
1969年4月-1972年5月 名古屋大学医学部合同内科入局
1972年6月-1976年8月 名古屋大学医学部第一内科入局
1976年9月-1980年8月 ニューヨーク・スローン・ケタリングがん研究所(客員研究員・研究員)
1980年9月-1995年8月 愛知県がんセンター研究所 化学療法部(主任研究員・室長・部長)
1981年10月 医学博士(名古屋大学)
1995年9月-2001年3月 名古屋市立大学医学部第二内科 教授
2002年4月-2007年3月 名古屋市立大学大学院医学研究科・臨床分子内科学 教授
(部局化による名称変更)
2003年4月-2007年3月 名古屋市立大学病院 病院長(兼務)
2007年4月-2010年3月 名古屋市立大学大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学 教授
(内科再編成)
2008年4月-2012年3月 名古屋市病院局 局長
2008年4月-2012年3月 名古屋市立大学 理事
2008年4月-2016年3月 名古屋市立大学 顧問
2010年4月-2012年3月 名古屋市立大学大学院医学研究科 特任教授
2010年4月-現在 名古屋市立大学 名誉教授
2012年4月-2014年3月 国立がん研究センター 理事長特任補佐
2012年4月-2020年3月 名古屋市病院局 顧問
2012年4月-2022年3月 愛知医科大学医学部 腫瘍免疫寄附講座 教授
2013年1月-2016年1月 愛知医科大学 評議員
2016年4月-2020年3月 名古屋市立大学 特任教授
2016年6月-2022年1月 名古屋市立大学 客員教授
2018年11月-現在 名古屋大学 特任教授
2022年4月-現在 名古屋大学大学院医学系研究科 特任教授
2022年4月-現在 愛知医科大学 名誉教授
<受賞歴>
1995年 1月 読売東海 医学賞
2009年 3月 加藤記念 特別枠研究助成
2009年10月 日本癌学会 吉田富三賞
2009年11月 佐川特別研究助成賞
2012年 2月 高松宮妃癌研究基金学術賞
2012年 9月 日本癌学会 JCA-CHAAO賞
2015年 3月 日本薬学会 創薬科学賞
2016年 4月 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
2017年 5月 紫綬褒章(春)
<研究業績>
受賞テーマ:成人T細胞白血病・リンパ腫に対する抗体医薬開発のトランスレーショナル・リサーチ
研究業績 :1977年に高月清博士らにより発見された成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、HTLV-1ウイルスの感染により発症する予後不良な血液のがんである。上田 龍三博士は、ATL患者の90%以上にケモカイン受容体CCR4が発現していることを発見し、CCR4がATL特異的マーカー分子であることを見いだした。その後、同分子を標的とする治療薬の開発に着手し、抗体のFc領域のフコースを除去することで抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を飛躍的に向上させた抗CCR4抗体が、ATL細胞に対する高い薬効を示すことを確認した。さらに自ら臨床開発の統括責任医師として第I相及び第II相治験を主導し、同抗体の臨床的有用性を証明した。研究者として標的分子を発見し、しかもその治療薬を治験責任医師として薬事承認まで導いたのは、日本の長いがん研究史上、上田博士のみと言える。日本初の抗がん抗体医薬品モガムリズマブは、治療困難であったATL患者の第一治療選択薬となり患者やその家族に福音をもたらしたのみならず、創薬開発過程における抗体作製、前臨床研究、治験、薬事承認、コンパニオン診断薬開発に至る産学共同研究のロールモデルとなった。上田博士はがんトランスレーショナル・リサーチ(TR)の発展に多大な貢献をした。
■後藤 由季子 博士
<学歴・職歴>
1987年 3月 東京大学理学部生物化学科卒業
1989年 3月 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了(酒井彦一研究室)
1991年 4月 日本学術振興会特別研究員(東京大学理学部生物化学教室)
1992年 3月 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程修了(酒井彦一研究室)
1992年 3月 理学博士(東京大学)
1993年 7月 京都大学ウイルス研究所 助手(西田栄介研究室)
1996年10月 Fred Hutchinson Cancer Research Center研究員(Jonathan Cooper研究室)
1997年 5月 Harvard Medical School/Children's Hospital研究員(Michael Greenberg研究室)
1998年 4月 東京大学分子細胞生物学研究所 助教授
2002年 9月 岡崎国立共同研究機構生理学研究所客員助教授併任 (2003年3月31日まで)
2003年 4月 国立遺伝学研究所客員助教授併任 (2006年3月31日まで)
2005年 4月 東京大学分子細胞生物学研究所 教授
2013年10月 東京大学大学院薬学系研究科 教授(現在に至る)
2017年10月 東京大学国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構 主任研究員併任(現在に至る)
<受賞歴>
2003年 日本分子生物学会三菱化学奨励賞
2004年 日本癌学会奨励賞
2010年 日本学術振興会賞
2010年 日本学士院学術奨励賞
2010年 塚原仲晃賞
2013年 安田記念医学賞
2014年 井上学術賞
2014年 長瀬研究振興賞
2014年 木原記念財団学術賞
2020年 紫綬褒章(秋)
<研究業績>
受賞テーマ:細胞運命を制御するシグナル伝達の解明
研究業績 :細胞の増殖は増殖因子によって厳密に制御されており、その制御が破綻し暴走するとがん化する。後藤 由季子博士は、細胞の増殖因子が受容体に結合したのちに核内へと「増殖シグナル」を伝達する分子としてMAPキナーゼとその活性化因子の同定に貢献した。またストレスで活性化されるMAPキナーゼ類似因子(JNK)および原がん遺伝子産物AKTについて、細胞死・生存および細胞移動・浸潤を司るシグナル伝達におけるそれぞれの制御機構と機能を明らかにした。これらの研究は細胞内シグナル伝達のプロトタイプとして細胞運命制御機構の理解に貢献しただけでなく、その異常がいかにしてがん化に繋がるかを理解する上でも重要な貢献と言える。後藤博士はさらに、脳発生という組織形成のコンテクストにおける細胞の振る舞いを研究し、神経幹細胞が発生時間と場に依存して巧妙に運命制御されるメカニズムをいくつも解明した。また定説に反して、胎生期における成体神経幹細胞の起源細胞が脳発生に携わる神経幹細胞とは別系譜であることを示し、胎生期と成体期の組織幹細胞の異なる機能制御戦略を明らかにした。これらの研究は幹細胞を用いた再生医療や健康寿命を目指す上で重要な基盤的知見を提供したと言える。
■FAQ
Q.候補対象者について
A.日本国内で主な業績を有し、医学の基礎および臨床の分野で顕著な業績を挙げ、医学界に優れた貢献をされた研究者を対象としています。国籍は問いません。
Q.武田医学賞の選考方法について
A.財団の理事、評議員、名誉顧問、武田医学賞受賞者ほか財団が定めた推薦者からの推薦をもとに、選考委員会で審議・決定します。選考委員長は自治医科大学 永井 良三 学長にお願いしています。その他の選考委員については公表しておりません。
Q.武田科学振興財団について
A.当財団は、科学技術の研究を助成振興し、我が国の科学技術および文化の向上発展に寄与することを目的とし、武田薬品工業株式会社からの寄附を基金として1963年に設立されました。武田医学賞(褒賞事業)のほか、研究助成、奨学助成(外国人留学助成、医学部博士課程奨学助成、海外研究留学助成)、国際シンポジウムの開催、杏雨書屋(きょうう しょおく、本草医書等の所蔵・管理等)の運営、出版物の刊行を行っています。
公益財団法人 武田科学振興財団 公式サイト: https://www.takeda-sci.or.jp/
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