BSI(英国規格協会)、 消費者のためにウイスキーの伝統をとらえた 新たなガイドラインを発表
スコットランド、ウェールズ、イングランド、およびアイルランドの ウイスキー業界が協調し、国際貿易を促進する一貫した製造方法に合意
2023.10.03 13:00
英国規格協会(The British Standards Institution、以下「BSI」)は、英国で最も価値の高い輸出品の1つであるウイスキーに対して、信頼できるサプライチェーンの構築と製造のハウツーに関するベストプラクティスを定めた新しいガイドラインを策定しました。これにより、世界中の消費者がウイスキーの品質により大きな信頼を寄せることができるようになります。この新たな英国規格(BS)は、最低限の規制要件の設定よりも製品の品質に焦点を当てたもので、国内および世界市場向けのウイスキーを製造する蒸留所を支援します。
本プレスリリースは2023年9月12日(英国時間)に英国で配信されたプレスリリースの抄訳版です。
BSI(英国規格協会)、消費者のためにウイスキーの伝統をとらえた新たなガイドラインを発表
英国にとってウイスキーは重要な輸出品であり、2022年単年で見るとアルコール輸出総額が推定65億ポンド(※1)に対し、米国へのウイスキー販売額は推定10億ポンドを超えています(※2)。この規格は、国家規格機関としての役割を担うBSIが、スコットランド、ウェールズ、イングランド、およびアイルランドのウイスキー業界から招集した専門家と協力して策定したもので、ウイスキーに関する世界初(※)の規格となりました。※:当社調べ
ウイスキー産業が世界中で成長し(※3)、新たな蒸溜所が次々と生まれています。この規格は、英国とアイルランドのウイスキー業界の専門家が持つ製造に関する深い知識に基づいており、それぞれのウイスキー製造者が原料や製造工程に由来する特有の色、香り、味わいを作り出すための方法を規定しています。
この規格 (BS 8636) は、世界で取引されるウイスキーの主要カテゴリーに対して、その製造工程を規定したものです。これは、国内外で販売するために高品質な製品の製造を目指す蒸溜所を対象としており、既存ブランドであれ新規参入者であれ、製造工程とサプライチェーンにおける品質と信頼性を実証するのに役立ちます。また、英国内だけでなく、消費者の期待に応える高品質な蒸留酒の製造を目指す世界各国のメーカーにも適用されます。
■BSIの規格担当ディレクターであるスコット・スティードマン(Scott Steedman)は次のように述べています。
「このウイスキーの新規格は、消費者と業界の利益のために、ウイスキー蒸留の古くからの伝統を効果的に詰め込んでいます。私たちは、蒸留所がその技術と高品質のウイスキーを特徴づけるユニークな個性に大きな誇りを持っていることをよく理解しており、英国とアイルランドのウイスキー専門家と協力して、この世界的に名高い製品をどのように評価すべきかについて合意し、基準を制定できたことを喜ばしく思っています。この規格が品質のベンチマークとなって、それを適用する蒸留所の価値を高め、世界中の消費者の信頼を高めることを願っています。この新規格は世界的に適用され、高品質なウイスキーの製造と取引を世界中で促進するのに役立つことでしょう」
■英国経済産業大臣のケビン・ホリンレイク(Kevin Hollinrake)氏は次のように述べています。
「ウイスキーは、既に我が国最大の輸出品の1つですが、この規格は海外での販売をさらに伸ばすことに貢献するでしょう。我が国は世界でも最高品質のウイスキーを製造していることで知られており、この革新的な新規格によって、業界の先駆者として、またリーダーとしての役割を継続することができます」
この分野で初となる英国規格のガイダンスには、その製造工程において信頼性と一貫性を確立するために用いるべき分析手法、感覚的特性の期待値、分析対象物質の典型的な範囲、その他の技術的事項が詳述されています。
この規格では例えば、ウイスキーの望ましい色を含む詳細が規定されており、薄い黄色/黄金色から濃い琥珀色/マホガニー色までのカラメル色であることが定められています。また、ウイスキーは木の樽(カスク)で3年以上熟成させなければならない、甘味料や添加物を使用することはできないとしています。さらに、アルコール度数の最低値を40%とし、すべての蒸留はアルコール度数94.8%未満で行い、「蒸留液が原料由来の香りと味を持つ」ようにすべきだとしています。
熟成ウイスキーに添加できる化合物は水とプレーンキャラメルの2種類のみと規定されています。また、「ウイスキーノージング」のプロセスについても記述されていますが、それに使用するグラスの形状までは規定しておらず、その代わりに「香りが溜まりやすいチューリップ型のグラスが最も人気が高い」とアドバイスしています。
他にも、パッケージングに関する重要な内容についても詳述されています。たとえば、ウイスキーは動物性食品から作られるものではありませんが、ウイスキーを入れる前の樽で貯蔵されていた他のアルコール飲料の製造に動物性食品が使用されていた場合は、製品のラベル表示において考慮すべきといったアドバイスなどです。
新規格は、BSI内部の専任技術委員会(※4)によって管理され、市場のフィードバックに基づいて必要に応じて改訂および更新します。BSIは、同規格を国際標準であるISO規格のベースドキュメントとして使用する可能性を含め、将来計画について同委員会と協議していきます。
■規格の詳細・購入について
BS 8636 ウイスキー - 分析パラメータの使用と分析方法- 仕様書の購入はこちら
この英国規格はウイスキーを対象としており、whiskyとwhiskeyのどちらの表記も認めています。
※2: https://www.statista.com/statistics/305054/uk-whisky-exports-leading-5-destination-countries/
※3: 世界のウイスキー市場規模、シェア、成長分析レポート、2022-2030年( https://www.polarismarketresearch.com )
※4: この自主規格は、ウイスキー業界の専門家の合意により、英国の新規および既存の蒸留所と規制当局が適用するために策定されました。
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、1901年の設立以来、世界初の国家規格協会として、また、ISOの設立メンバーとして活動する規格策定のプロフェッショナルです。現在、193カ国で84,000組織以上のお客様の活動に貢献しています。BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよびトレーニングコースの提供をメインとし、規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。