免疫力向上の新たな一手に、日本の伝統「にごり酢」 この冬知っておくべき「酢酸菌」の5つの健康作用を紹介
2023.11.30 13:00
酢酸菌ライフは、お酢づくりの命であり、近年研究でも注目されている「酢酸菌(さくさんきん)」の健康価値や日常生活での取り入れ方を広く発信していくことを目的に設立いたしました。この度、2023年11月29日(水)に「最新!江戸時代頃のお酢には知られざる秘密があった!にごり酢『酢酸菌』の免疫生活セミナー」を開催いたしました。
(左)免疫機能を向上する新たな選択肢として酢酸菌の最新研究結果を紹介する、石原新菜 先生 (右)酢酸菌入りの「にごり酢」
近年、ヨーグルトや納豆、キムチ、お酢などに代表される発酵食品に注目が集まっています。腸には身体全体で7割もの免疫細胞が集まっており、発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌といった、いわゆる「身体に良い菌」が腸内環境の改善に役立つと期待されているためです。
本セミナーでは注目の発酵食品のひとつ、にごり酢に含まれる「酢酸菌」がこれまでの発酵食品とは全く異なるアプローチで「免疫の司令塔にはたらきかける」ことをはじめとした最新研究結果を5つ発表しました。さらに、酢酸菌のパワーを引き出す食事方法、日本国内のにごり酢の広がりについてもご紹介しました。
<セミナーのポイント>
● 「酢酸菌」とは、一般的なお酢にはないにごり酢特有の健康成分
● 「酢酸菌」は他の菌には押せない、2つの免疫スイッチを押すことができる、唯一の発酵菌であり、免疫バランスをととのえるうえで重要な役割を持っている
● 最新研究で、酢酸菌は「免疫の司令塔(pDC=プラズマサイトイド樹状細胞)にはたらきかける」ことが明らかになったほか、インフルエンザの増殖力抑制効果も
● 酢酸菌を効率よくとるなら、にごり酢がおすすめ。取り扱いのある醸造所は、全国10地域に拡大
● 新習慣!毎日大さじ1杯のにごり酢生活で、この冬の免疫を底上げしよう
【講演1】
伝統製法「にごり酢」で再注目 発酵菌のスパイ?「酢酸菌」の特徴とは
前橋健二 先生(東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科 教授)
前橋健二 先生
古くから世界中の食文化を支えてきたお酢は、様々な健康効果から、単なる調味料としてではなく、健康食材のひとつとして再注目されています。中でも直近、アルコールをお酢に発酵させる「酢酸菌」が注目されており、その健康効果の1つである「免疫」に関する研究も活発になってきています。なぜなら、酢酸菌は、乳酸菌や納豆菌などの他の多くの発酵菌とは違う構造体を表層に持つ「グラム陰性菌」に分類されており、グラム陰性菌特有の成分である「LPS」は免疫細胞を活性化することがわかっているからです。LPSを保有していることにより、まるでスパイのようにウイルス等の外敵の情報を覚え、戦いに備える、他の菌にはできないアプローチで免疫を活性するはたらきが酢酸菌の特徴です。
また、一般的なお酢は、製造過程でろ過の工程を経て出荷されるため、酢酸菌はほとんど含まれていません。最近では、あえて酢酸菌を残し、江戸時代中期以降のお酢を再現した「にごり酢」づくりに挑戦している蔵元が全国10地域に拡がりを見せています。各地の原料や製法により「にごり酢」の味わいが様々なことも魅力の1つです。
酢酸菌は微生物学から見ても唯一無二の菌
【講演2】
免疫力UPの新常識 ~酢酸菌の最新研究結果発表~
石原新菜 先生(イシハラクリニック 副院長)
石原新菜 先生
今年はインフルエンザの流行拡大が例年に比べ、早くなっています。国立感染症研究所の「サーベイランス」(発生動向調査)によると、定点あたりの報告数は、11月初めに20を超え、これから本格的な冬を迎えるにあたり免疫を維持することが必要不可欠と言えるでしょう。そもそも「免疫」とは、ウイルスなどの異物を見つけ、記憶し、攻撃する防衛本能ですが、昨今の現代社会は、免疫を正しく維持することが難しい時代と言われています。
腸には、身体全体で7割もの免疫細胞が集まっているといわれており、発酵食品などに含まれる多様な菌を腸などの消化器官に取り込むことを意識した食事方法、“食べる菌体験”は免疫バランスを整える一助となるでしょう。腸内には、感染症などの病原体の侵入を感知し、免疫を作動させる働きを持つ免疫スイッチ「TLR(トル様受容体)」があります。中でも、これからのシーズンで重要なのは、「TLR2」と「TLR4」の2つです。乳酸菌や納豆菌は「TLR2」の免疫スイッチを押せるのに対して、酢酸菌は「TLR2」だけでなく「TLR4」も押すことができます。つまり、他の発酵菌には押せない、2つの免疫スイッチを押せる唯一の菌が、酢酸菌なのです。
酢酸菌は他の発酵菌には押せない、2つの免疫スイッチを押せる
<酢酸菌の5つの最新研究結果>
(1) 免疫の司令塔であるpDCの活性化
プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化
(2) インフルエンザウイルスの増殖を半数程度に抑制
インフルエンザウイルスの増殖を抑制
(3) ウイルス感染症の代表症状を抑制する効果
ウイルス感染症の代表症状を抑制
(4) 花粉症症状の緩和
花粉症症状の緩和
(5) 酢酸菌と乳酸菌を併用することで倍以上のマクロファージ活性化
酢酸菌と乳酸菌の相乗効果
【ゲスト講演】
発酵マイスター直伝~酢酸菌で整う免疫UPレシピ~
榎本美沙さん(料理家・発酵マイスター)
榎本美沙さん
最後に、発酵マイスターで料理研究家の榎本美沙さんに考案いただいた、3種類の「にごり酢で免疫UPレシピ」を紹介しました。レシピ3種の試食や伝統的なお酢づくりを再現した甕も用意され、にごり酢の良い香りが会場内に広がっていました。
にごり酢で免疫UPレシピ
一般的なお酢とにごり酢の比較
■登壇者 プロフィール
<前橋健二 先生>
東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科 教授
1998年東京農業大学大学院農学研究科博士後期課程満期退学。博士(農芸化学)。
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科准教授を経て2016年から現職。調味食品科学研究室に所属し、発酵と味覚の研究に従事している。
主な所属学会:日本食品科学工学会、日本農芸化学会、日本醸造学会、日本味と匂学会、日本食育学会、日本食品保蔵科学会
<石原新菜 先生>
イシハラクリニック 副院長
2006年帝京大学医学部卒業。同大学病院で2年間の研修医を経て、現在は父・石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。主な著書「おいしくて体に効くお酢レシピ(扶桑社)」他多数。
主な所属学会:日本内科学会、日本東洋医学会
<榎本美沙さん>
料理家・発酵マイスター
発酵食品、旬の野菜を使ったシンプルなレシピが好評で、テレビ、雑誌や書籍へのレシピ提供、イベント出演などを行う。YouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」、Instagram(@misa_enomoto)も人気。
著書に『今すぐ始められる、毎日続けられる。ゆる発酵(オレンジページ)』
また、最新刊に『榎本美沙の発酵つくりおき(家の光協会)』を出版予定。その他著書多数。
■「酢酸菌ライフ」とは
酢酸菌の健康価値や日常生活での取り入れ方を発信
世界最古の調味料ともいわれるお酢は、食はもちろんのこと、生薬としても人々の健康を支え続けてきました。酢酸菌ライフは、専門家の知見や最新研究などを交えながら、酢酸菌の健康価値や日常生活での取り入れ方を広く発信していきます。
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