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室龍太・今江大地らが、ままならない人間たちを生々しく描き出す キ上の空論 獣三作 一作め『けもののおとこ』が開幕

2013 年に中島庸介が旗揚げした演劇ユニット「キ上の空論」。2024 年の第 1 弾公演として、獣三作 一作め 『けもののおとこ』を新宿・紀伊國屋ホールにて上演する。主演を室龍太、共演に今江大地、健人、阿部快征、 井尻晏菜、林田真尋、黑木美佑、岩井七世、丸山敦史、久ヶ沢徹と実力派が集結した。 初日を前に、ゲネプロと作・演出の中島庸介(キ上の空論)、室龍太、今江大地、井尻晏菜、久ヶ沢徹による囲み 取材が行われた。
主人公の堀矢未衣を演じる室は、「僕が演じる未衣は、最初は自覚がなかったけど色々な人と出会い、鏑木くんと出会って同性愛者であることに気付きます。(鏑木役は)変えてほしかったです。複雑な環境ではありましたね」と鏑木を演じる今江を良く知る室だからこその心境を語っていた。そんな室と対照的に今江は「僕はそのままというか、中島さんからナチュラルで自然な芝居でいいと言われました。誰かを好きになる気持ちは変わらないので、同性愛者ということは意識せずに演じています。ストーリーテラーのところはわかりやすく、滑舌良くしゃべろうと。るたくん(室)との関係性は元々あるし、信頼しているので楽です。気を遣わなくていい」と感想を述べた。
関係性を深めるために何かしたかと聞かれると、室は「関係性を深めるためではないけど、ご飯に行きました。1皿2000円のパスタを頼んだら量が少なくて、5000円くらい払ったのに全然腹が満たされなかった」と明かし、今江も「バイバイって言った瞬間近くのパン屋でパンを食べた」と笑う。「奢ってあげた気がしなくて。美味しかったんですけどね」と室がぼやいて取材陣の笑いを誘っていた。
井尻は「私が演じるノアちゃんはよく言えば天真爛漫。悪く言えば自分に正直すぎる空気の読めない子です。中島さんからは、演じるというより自分がノアならどうするかを考えてほしいと言われました。ナチュラルに、飾らずに演じられたらと思っています。見えない恐怖、誰もが持っている獣の部分などが描かれているので、心理描写も見どころかなと思っています」と、キャラクターの印象と合わせて本作の見どころをアピール。
久ヶ沢は「堀矢未衣の父親で、未衣の人格形成にすごく影響を与える人物を演じます。僕も父親ですが、描かれている父親像が真逆なので、違和感を楽しみながら演じました。室くんとは初めましてなので、言いくるめて影響を与える役なんてどうしようと思っていたんですが、若い人たちがしっかりしていて楽な現場です。(役に対して)「言うかこんなこと!? これに影響を受けるなんてかわいそう」と思いながらやっていました」と笑いを交えて語る。
中島は「無自覚に人を傷付けることってあると思うんですが、そういうものを“獣”として表現してみたいと思い、この作品を作りました。空気を読めない人が多い舞台になっていて、室くん演じる未衣はお父さんの影響を受けて獣を育てていくみたいな。稽古場は和気あいあいとしていたし、室くんが締めるところは締めてくれました」と称賛した。

役作りについて、中島が「皆さんになるべく演じないようにと注文していて、自分がこの立場ならと考えてフラットにやってみてくださいと言っています。勝手に芝居はできちゃうので、塩梅は難しいんですけど。声で演じようとしちゃうし、室くんも舞台慣れしているからお客さんの方を見てセリフを言っちゃう」と話し、室は「今までは客席を意識してと言われることが多かったけど、今回は全く意識しないでと言われて、難しいなと思いました」と苦労を語る。
室の印象を聞かれると「フレンドリーなのでフラットにしゃべれるし、楽ですね」と中島が明かし、室も「はっきり言われるから、刺さる時ありますよ。自分でうまくいっていないと思った時にちゃんと言ってくれるからありがたい」と応える。
今江の「言い方悪いかもしれないけど、どうでもいい会話がすごく多かったですよね」という言葉には室が即座に「本当に良くないな!」とツッコミ、今江が「この関係性がすごく良くて。3人でやる時間が長くて……」と説明するも、室は「あの時間「どうでもええわ~」と思ってた? こいつやばいですね!」とツッコミを重ねる。
会見では和気あいあいとした稽古場だったこと、稽古場では室と中島によるコントが繰り広げられていたことなどが話題に上がったが、作中で未衣が女性を振るシーンに関して中島が「冷たくしてほしかったけど(室の)根が優しいので、冷たくすると嘘になっちゃう。それはバレてしまうので、演出をどうするか悩みましたね。本当にいい子で」と話し、室は「もっと言ってください!」とリクエストするが「以上です」とまとめられるなど、会見でもコントのようなやり取りが繰り広げられる。
最後に室が「素敵なキャストの皆さん・スタッフさんと一丸となって良い作品をお届けしたいと思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください!」と締め括った。

獣三作 一作めとなる今回は、父親から“女に選ばれる男”になるよう教育されて育った男が様々な人と出会い、自分の本当の気持ちや生き方を見つけていく物語。足を引きずりながら「みいたん」の過去を振り返るストーリーテラーの今江に、彼は何者なのか、2人の関係性は? と謎が多い状態で進行していく。
室は、“父親を喜ばせたい”という少年の純粋な思いが、純粋ゆえに歪んでいく過程を自然に見せる。久ヶ沢が演じる父の狂気的な言葉に染まっていく様子、生真面目な世良(健人)、不登校の江見(阿部快征)といった友人たちとの会話から時折見えるズレが痛々しい。
父親の教えのもと、数々の女性と関係を持つ未衣。井尻晏菜、林田真尋、黒木美佑、岩井七世は、未衣の前に現れる個性豊かな女性たちを魅力的に演じた。性格も考え方も様々な彼女たちを通して、未衣の魅力や短所が鮮やかに見えてくるのが面白い。幼い頃に植え付けられた価値観が大人になっても未衣の人生に影を落としており、ハルミ(丸山敦史)たちが複雑な思いを持って接しているのも頷ける。
未衣が多くの女性と関係を持ちながら誰にも心を寄せていない様子がじっくりと描かれているぶん、今江演じる鏑木と未衣の和やかな会話、自然な笑顔が微笑ましい。今江は不安定な部分もある鏑木をリアリティを持って見せており、それによって未衣の変化や成長も印象的に描き出されている。
キャスト陣の非常にナチュラルな芝居に、心に生じる違和感や歪みを表現するような照明・音、シーンの印象を強める影絵などの演出が重なり、どんどん引き込まれていく。重苦しい気持ちになるシーンもある一方、人間の強さや美しさも感じられ、見終えた時にどこか爽やかな感覚になる作品だった。
本作は3月23日(土)~31日(日)まで、紀伊國屋ホールにて上演される。

<あらすじ>
堀矢未衣(ほりやみい)は少年時代、父親に“女に選ばれる男”になるよう教育されました。
仕事や恋愛、趣味、人生観や美学など、様々な角度から“男”をレクチャーしていく父親でしたが、未衣は、母親に浮気されてシングルファザーになった父親を、心のどこかで見下していました。
母親の事をバグ、エラー、欠陥商品と呼ぶ父親は、執着しているようにも見えました。
父親の想いが功を奏したのか、未衣が中学生になると、周りの女子は、 洗練された大人っぽい未衣の姿に惹かれます。
しかし未衣自身はそれらに興味がありません。
ある時、未衣は友達の世良総司(せらそうじ)から『隣のクラスの女子に告白された』と相談を受けます。
気になった未衣は世良に内緒でその女子に近づき、その女子と付き合ってしまいます。
これが未衣の初めての彼女でした。
父親の言葉が浮かびます。
『一番いい女を選ぶ。他は捨てる。』
未衣は父親が望む通り、手あたり次第の女子と関係を結んでは捨てていきます。
やがて未衣は、気持ちのコントロールが効かなくなってしまいます。
未衣は自分の気持ちに蓋をしたまま生きていきます。


【公演概要】
キ上の空論 獣三作 一作め『けもののおとこ』

【作・演出】中島庸介(キ上の空論)

【出演】
室龍太
今江大地

健人
阿部快征
井尻晏菜
林田真尋
黒木美佑
岩井七世

丸山敦史

久ヶ沢徹

【劇場】紀伊國屋ホール
【日程】2024年3月23日(土)~31日(日) ※全10回公演
3月23日(土)18:00
3月24日(日)13:00/18:00
3月25日(月)19:00
3月26日(火)休演日
3月27日(水)19:00
3月28日(木)19:00
3月29日(金)19:00
3月30日(土)13:00 /18:00
3月31日(日)13:00
※開場は開演の45分前となります。 ※未就学児入場不可。
【チケット取扱い(プレイガイド先行・一般販売共通)】
■チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/kijyooo-kemono/
■イープラス:https://eplus.jp/kijyooo/
■カンフェティ:http://confetti-web.com/kemononootoko

【公式HP】 https://kijyo-kemono.com
【公式X】@kijyooo
【お問い合わせ】info@set1979.com

宣伝:キョードーメディアス
企画・主催  キ上の空論/SET/ABC&SET
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