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弘前大学と雪印メグミルクの共同研究講座「ミルク栄養学研究講座」 健康ビッグデータ解析より、骨代謝や骨強度は、日常的な牛乳・乳製品摂取と関係することが示されました

国立大学法人弘前大学(学長:福田眞作、以下「弘前大学」)と、雪印メグミルク株式会社(代表取締役社長:佐藤雅俊、本社:東京都新宿区、以下「雪印メグミルク」)の共同研究講座『ミルク栄養学研究講座(英語表記:Department of Precision Nutrition for  Dairy Foods)』で、今回、青森県弘前市岩木地区住民の牛乳・乳製品摂取量と骨代謝マーカーおよび音響的骨評価値に関して研究した結果、日常的な牛乳・乳製品摂取は、骨の健康状態を示す骨代謝マーカーや骨強度値と関連し、骨の健康に必要な栄養補給に寄与することが示唆されました。

本研究成果は、骨研究に関する国際学術雑誌である「Bone  Reports」に掲載されました。

 

本研究は、岩木健康増進プロジェクトの健康ビッグデータを有する、弘前大学COI-NEXT拠点の参画機関として実施しました。

今後も、健康ビッグデータ解析により牛乳・乳製品摂取と健康状態の関係を明らかにし、雪印メグミルクが強みとする骨や乳酸菌などの深耕に加え、ミルクの新たな健康価値を研究してまいります。

 

■発表概要

論文題名:日本人成人における牛乳・乳製品摂取量、骨代謝マーカーおよび音響的骨評

価値の関係:岩木健康増進プロジェクト健診データの横断解析

(英語原題:Dairy  consumption, bone turnover biomarkers, and osteo sono assessment index in  Japanese adults: a cross-sectional analysis of data from the Iwaki Health  Promotion Project)

掲載誌:Bone Reports. 2024, 21, 101770;

https://doi.org/10.1016/j.bonr.2024.101770  (2024年4月29日付)

 

■論文掲載内容のポイント

・日本人成人の健康ビッグデータを用い、牛乳・乳製品摂取と骨の健康について分析を行いました。

・牛乳・乳製品摂取と骨代謝マーカーおよび骨強度値の間に相関が認められたことで、日常的な牛乳・乳製品摂取は、骨の健康にとって必要な栄養補給に寄与することが示唆されました。

 

【論文の要約】

〇背景および目的

牛乳・乳製品は、多くの栄養素をバランス良く含む食品であり、タンパク質やカルシウム、ビタミンDのような必須栄養素に加え、乳酸菌やビフィズス菌のように発酵食品に含まれる有用な栄養素を含む。骨折は死亡リスクにつながる疾病のひとつであり、骨粗鬆症は骨折リスクを高   める。牛乳・乳製品の摂取は、骨の健康に有用であるが、詳細な骨の健康状態と牛乳・乳製品摂取量の関連は明らかではない。

現代の日本食は、和食に代表される伝統的な日本食と、西洋食が混合した食習慣であり、ヨーグルトの摂取は比較的多いものの、牛乳およびチーズの摂取量は世界的に低い。本研究では、青森県弘前市岩木地区の地域住民における牛乳・乳製品摂取量と、骨代謝マーカーおよび音響的骨評価値(OSI)の関係について検討した。

 

〇方法

■対象者:2015年岩木健康増進プロジェクト健診において、牛乳・乳製品摂取量、骨代謝マーカーおよびOSIの検査結果を有する健診参加者1,063名

■測定について

1.骨代謝マーカー:牛乳・乳製品摂取量は食事歴法により算出し、6種類の血中骨代謝マーカー濃度を外部臨床検査機関にて測定した。

2.音響的骨評価値(OSI):超音波骨評価装置にて、骨強度を測定した。

■解析について

得られた各データにおける牛乳・乳製品摂取量が、年齢および性別にて調整した結果にどのような影響を与えているか解析した(重回帰分析)。

 

〇結果

対象者1,063名における健康ビッグデータを解析した結果、以下のような結果が示されました。

■低脂肪の牛乳・乳製品の摂取量が多いほど

・骨を壊す指標である骨吸収マーカーが低くなる関連性

・骨強度値が高くなる関連性

■通常および高脂肪の牛乳・乳製品の摂取量が多いほど、骨を作る指標である骨形成マーカーが高くなる関連性

■牛乳・乳製品の摂取量が多いほど、骨代謝を調節する副甲状腺ホルモンのバランスが保たれる可能性

 

これらの結果より、日常的な牛乳・乳製品摂取は、骨代謝の調節に関係することが示唆された。

牛乳・乳製品摂取が日本人の骨の健康に及ぼす影響に関しては、今後も更なる検討が必要である。  


図:低脂肪の牛乳・乳製品の日常的な摂取有無と音響的骨評価値(論文より改変して引用、作図) * P <  0.05, Mann-Whitney U-test  


≪図の説明≫

【音響的骨評価値(Osteo sono index:OSI)】

踵骨(しょうこつ:かかとの骨)部分を透過する超音波速度と透過指標によって算出された骨強度を評価する指標である。

若年成人女性の骨強度の平均値(YAM値)と標準偏差(SD)から求めるTスコアと、同年代の骨強度の平均値とSDから求めるZスコアがある。

【左図(箱ひげ図)】

摂取有無によるOSI  Zスコアの分布の違いを図示し、摂取ありグループの骨強度値がより高かったことを示している。 



【関連リリース】

・ミルク栄養学研究講座の開設

(2023年4月14日:https://www.meg-snow.com/news/2023/18433/

 

【雪印メグミルク ミルク栄養学研究講座につきまして】

本講座では、弘前大学が実施してきた「岩木健康増進プロジェクト」の超多項目健康ビッグデータ解析による健康因子としての腸内菌叢の役割を解明するため、牛乳・乳製品摂取をはじめとする食事パターンと腸内菌叢の関連において集団および個人の健康状態への影響を調べることを目的としています。

 

(※1)弘前大学COI-NEXT拠点

弘前大学では、2022年10月に文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択されました。弘前大学COI-NEXT拠点では、健康を基軸に、若者が地域で働きたいと思える成長産業として魅力的なヘルスケア産業を創出することによって、地域の人々を健康にしながら経済発展し、全世代の人々が生きがいをもって働き続けることができ、心身共にQOLの高い状態での健康寿命を延伸する、well-beingな地域社会モデルの実現をめざしています。これまでの弘前大学COI拠点の成果を発展的に承継し、持続的に成果を創出する自立した産学官共創拠点の形成を目指すプロジェクトです。

 

(※2)岩木健康増進プロジェクトと弘前大学COI拠点

弘前大学が青森県弘前市岩木地区で2005年から継続実施している大規模合同健康調査で、約3,000項目という世界に例のない膨大な健診項目を設けることで、巨大な健康ビッグデータを記録しています。弘前大学では、2013年に文部科学省・JSTによる「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に採択され、岩木健康増進プロジェクト健診の超多項目健康ビッグデータの解析により、認知症・生活習慣病などの早期発見を可能にし、予防方法の創出と検証を行い、その成果を社会実装する研究活動を弘前大学COI拠点で展開しました。(2013~2022年)  

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