世界初※1、京セラのファインコージライトミラーが 国際宇宙ステーションと地上間の小型光通信実験装置に採用
宇宙におけるデータ通信の高速・大容量化を可能にする光通信に貢献
2024.06.05 14:15
京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下:京セラ)は、コージライト製ミラーとして当社のファインコージライトミラーが世界で初めて※1国際宇宙ステーション(以下:ISS)と可搬型光地上局(以下:地上局)間の光通信を行うための小型光通信実験装置に採用されましたのでお知らせします。
※1 ISSに設置された小型光通信実験装置でのコージライト製のミラーの採用として(2024年 京セラ調べ)
■京セラのファインコージライトミラーの詳細についてはこちら(動画):
京セラのファインコージライトミラー
<リリースの概要>
・ISSからの光通信によるデータを特定の地上局へ送信する際に、光を最適な角度に調整する部品として、世界で初めて京セラのファインコージライトミラーが採用された。
・宇宙-地上間での光通信は、大容量化したデータの高速通信を実現する技術として期待されている。その通信を実現する部品も真空環境など、過酷な環境下でも耐えうる高精度な製品が求められる。
【京セラのファインコージライトミラーの特長】
1.過酷な環境下でも温度変化による変形を最小限に抑える低熱膨張性
2.高機械強度、高剛性
3.優れた長期寸法安定性
4.耐放射線性
このたび、当社のファインコージライトミラーが採用されたのは、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(代表取締役社長:北野 宏明、以下:ソニーCSL)によって開発された光通信アンテナ(Quantum-Small Optical Link、以下:QSOL)となります。QSOLは、総務省からの委託を受け、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下:NICT)および、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長:加藤 泰浩)、次世代宇宙システム技術研究組合(理事長:山口 耕司)、スカパーJSAT株式会社(代表取締役執行役員社長:米倉 英一)とソニーCSLが共同で行った軌道上技術実証のために開発された、低軌道高秘匿光通信装置「SeCRETS(SeCuRe lasEr communicaTionS terminal for LEO)」の光通信アンテナ部分となります。
■採用の背景
現在、宇宙空間にある地球観測衛星と地上局との双方向のデータ通信には、電波や可視光を使った無線通信が使用されており、取得した画像データを用いて気象予報、災害対策やインフラの監視などを行っています。
地球観測衛星に搭載されるセンサの高性能化により、取得できる観測データの増加や、また、取得した大量の観測データを迅速に地上局に送信することが求められ、データ通信の高速化・大容量化は宇宙インフラにおいて課題となっていました。それを解決する手段として、電波通信と比較し、100倍以上の速度で大容量のデータ送受信を実現できるレーザー光による光通信の実用化が期待されています。
衛星からの光通信によるデータを特定の地上局に送信するには、光を最適な角度に調整する必要があり、その調整の一部には光学ミラーが使用されます。現在、主に金属やガラスの光学ミラーが使用されていますが、光の調整にはナノレベルでの精度が必要となるため、長期にわたり安定した寸法精度を有すること、また、宇宙という過酷な環境下でも温度変化による変形を最小限に抑える低熱膨張性を生かした光学ミラーが求められています。
そこで今回、京セラのファインコージライトミラーがもつ低熱膨張性と長期寸法安定性などのすぐれた特長が認められQSOLへの採用に至りました。
今回の実験の成功により、今後、衛星光通信におけるデータ通信の高速・大容量化を目指した宇宙インフラ構築に、当社製品が貢献できると考えます。
京セラは今後もファインセラミック技術を生かし、天文・宇宙分野での研究、観測に貢献する信頼性の高い部品の開発を進めてまいります。
■京セラのファインコージライトミラーの特長
当社のファインコージライトミラーは創業から培ったファインセラミックスの材料・焼成技術により、下記4点の優れた特長を有し、宇宙環境下でも安定した光通信を実現します。
(1)低熱膨張性
温度変化による膨張や寸法変化が極めて小さく、ナノレベルの精度が求められる光学ミラーなどへの適用が可能です。
(2)高機械強度、高剛性
低熱膨張のガラスと比較すると1.5倍~2倍の機械強度があり、剛性が高く、軽量化への対応が可能になります。
(3)長期寸法安定性
低熱膨張のガラスと比較して、コージライトは優れた寸法安定性の特性を有しており、長期間にわたり寸法変化を気にすることなく使用いただけます。
(4)耐放射線性
放射線を照射した試験にて、コージライトの線膨張係数(CTE)が変化しないことが確認できており、宇宙向けのアプリケーションとして最適な材料と期待されています。
■SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentations 2024 出展について
当社のファインコージライトミラーは、2024年6月18日(火)~20日(木)にパシフィコ横浜(横浜市)で開催されるSPIE Astronomical Telescopes + Instrumentations 2024 で展示されます。(ブースNo.314)
https://spie.org/conferences-and-exhibitions/astronomical-telescopes-and-instrumentation#_=_
■京セラのファインコージライトミラーの詳細についてはこちら
https://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/industries/products/011.html
■実験について
SeCRETS は2023年8月2日にISSへ向けて打ち上げられ、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォーム(中型曝露実験アダプター(i-SEEP))に設置されました。その後、低軌道上のISSから地上の可搬型光地上局への10GHzクロックの光通信により秘密鍵共有を実施し、さらにその鍵を用いたワンタイムパッド暗号によりISSと地上局とでの情報理論的に安全な通信の実証に成功しました※2。
※2 ISSと地上間での秘密鍵共有と高秘匿通信に成功 “衛星量子暗号通信の実用化に期待”
https://www.sonycsl.co.jp/press/prs20240418/
今回の実証の構成図※3
※3 画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構、スカパーJSAT株式会社
京セラのファインコージライトミラーが搭載された
QSOLを含む低軌道高秘匿光通信装置(SeCRETS)※4
※4 画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構、ソニーコンピュータサイエンス研究所、次世代宇宙システム技術研究組合
■実験の詳細についてはこちら
https://www.sonycsl.co.jp/press/prs20240423
※SeCRETSは、総務省「ICT重点技術の研究開発プロジェクト(JPMI00316)」のうち「衛星通信における量子暗号技術の研究開発(JPJ007462)」の一環として開発されました。
(参考)総務省報道発表2018年6月14日付け
平成30年度 情報通信技術の研究開発に係る提案の公募の結果
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000247.html
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