日本初、次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供開始 ~医師の診断を支援するプログラム医療機器や 製薬などの研究開発等を支援~
PSP株式会社(本社所在地:東京都港区、代表取締役社長:依田 佳久、以下 PSP)は、一般社団法人ライフデータイニシアティブ(以下、LDI)および株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)と、次世代医療基盤法(注1)に基づき、匿名加工医療情報としてエックス線画像などの医用画像データの提供を2024年10月から開始します。なお、本件に関するお問い合わせの受付については2024年6月から開始いたします。これまで、次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供は国内で実施されておらず、日本初の取り組みになります。
近年、世界的にAIを用いて医師の診断を支援するプログラム医療機器(注2)の研究・開発が進められているものの、日本では研究・開発に必要な医用画像データの不足およびデータ取得における手続きの煩雑さが課題になっていました。さらに、医用画像の活用にあたっては、秘匿性を考慮した高い匿名加工処理技術が求められてきました。これらに対し、PSPが医用画像データを取得し、LDIとNTTデータが該当データを匿名加工し、プログラム医療機器等を研究・開発する事業者などへ提供することで、簡便に医用画像データを活用できる環境を実現します。
本取り組みを通じて、プログラム医療機器などの研究開発等を支援し、より早期で精緻な診断や、医師の労働時間軽減による働き方改革など、日本の医療業界に貢献していきます。
【背景・経緯】
医用画像データとは、医療現場で実施される画像検査(エックス線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、内視鏡検査、病理検査など)から得られる画像データであり、疾病の発見から診断、治療効果の判定等に用いられています。
これまでの画像検査は専門の医師が直接、対象の医用画像データを確認し診断していました。しかしながら、近年はAIなどを活用して医用画像データを解析し、異常箇所を自動検出して医師に通知するなど、医師の診断を支援するプログラム医療機器の研究開発・普及が世界的に進んでいます。より高精度な診断を支援し、多忙な医師の働き方改革にも貢献するものとして期待されています。
しかし、日本ではMRI検査やレントゲン検査など画像検査を行う医療機器の普及率は世界的にトップクラスである一方、プログラム医療機器の開発数、承認数は欧米に比べて非常に少ない状況です。その要因の一つとして、研究・開発に必要となる学習用・検証用の医用画像データの取得ハードルが高いことがあげられます。画像検査を支援するプログラム医療機器の研究・開発には、AIの分析精度を高めるために相当数の医用画像データを用いる必要があります(図1)。医用画像データは個人情報保護法における要配慮個人情報(注3)にあたるため、医療機関の協力・承認の元、原則として本人の同意を得たうえでデータ取得しなければならず、各研究・開発の目的ごとに複数の医療機関と調整し、患者の同意を得る必要があります。その手続きの煩雑さが課題となっていたことから、より簡便に医用画像データを取得できる手段が求められていました。さらに、要配慮個人情報であるため、秘匿性を考慮した高い匿名加工処理技術も求められてきました。
【医用画像データ提供の概要】
LDI、NTTデータは、次世代医療基盤法に基づき、医用画像データを2024年10月から提供開始します。なお、本件に関するお問い合わせの受付については6月から開始いたします。本件は、2024年3月に医用画像データの取扱いに関する申請を次世代医療基盤法の主務府省(注4)に届出を提出し受理されています。
両社は、これまで医療機関におけるリアルワールドデータ(注5)として、電子カルテ、保険請求データ、DPC調査データの提供(千年カルテ二次利用サービス(注6))を行っており、今回新たに医用画像データが加わります。これにより、簡便に医用画像データを活用できる環境を実現します。これまで次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供は実現されておらず、日本初の取り組みになります。
医用画像データの提供は、次世代医療基盤法に基づく認定事業者(注7)であるLDI、NTTデータと、クラウド型医療用画像管理システム(注8)大手であるPSPが連携して実施します。医療機関あるいは学会が持つ医用画像データをPSPが収集し、これをLDI、NTTデータに連携します。LDI、NTTデータは、次世代医療基盤法に基づき、画像に写り込んだ個人情報のマスキング、CTやMRI検査の立体再構成による顔貌再現への対応など、適切に匿名加工し、医療分野の研究開発を目的に利用したい事業者・アカデミア等に提供します。(図2)
患者さんに対し個別に同意を取得する必要がなく、医療機関等から患者さんに対する適切なオプトアウト(注9)を実施することで、データ利活用者は、LDIから医用画像データを得ることができます。そのため、データ利活用者側で医療機関や学会との個別の調整・契約などは不要になります。LDIは、次世代医療基盤法の認定事業者であるため、医療機関や患者さんは安心してデータを提供することができます。(図3)
【ユースケース】
今回のサービス開始によって、以下のようなプログラム医療機器開発などの促進に寄与します。
1. がん検知支援プログラム開発への活用
医療現場における課題として、がんは種類によって発見が難しく、進行が進んでから発見されると完治が難しい現状があります。これに対し、がんの可能性がある病変を検知し、これを指し示すプログラム医療機器が開発されれば、医師が早期にこれを精査するきっかけになります。このようなプログラムの開発に必要なデータとして、今回提供する医用画像データが活用できる可能性があります。
2. 疾患の重症度判定支援プログラム開発への活用
医療現場における課題として、患者主観によって重症度の評価を行っていることがあり、客観的な重症度評価ができない場合があります。そのような際、重症度に応じた柔軟な治療選択・変更が難しくなっています。これに対し、疾患の重症度に関連する数値を示すプログラム医療機器が開発されれば、該当の数値に基づき初回治療を選択できることや、特定の治療後の変化に着目し、柔軟に患者さんに合った治療法の探索が可能になります。このようなプログラムの開発に必要なデータとして、今回提供する医用画像データが活用できる可能性があります。
【今後について】
今後は、既存の電子カルテ、保険請求データなどの匿名加工医療情報と医用画像データを組み合わせて提供することで、より正確なリアルワールドエビデンスの創出や、より高精度な診断支援プログラム医療機器等の研究・開発が進むことが期待されます。本取り組みを通じて、診断支援プログラム医療機器等や製薬などの研究開発を支援し、より早期で精緻な診断や、医師の労働時間軽減による働き方改革など、日本の医療業界に貢献していきます。
【注釈】
(注1) 正式名称「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律」。国民・患者の皆様の個人情報を個人が特定できないように加工し、新薬や治療法の研究開発に役立てるための法律。
(注2) 医師による診断を支援する医療機器プログラム。医療機器に該当する場合、規制対象として承認・認証が必要となる。
(注3) 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報。
(注4) 内閣府、厚生労働省、経済産業省、文部科学省。
(注5) 医療機関における実診療由来で記録された医療データ。
(注6) 千年カルテは、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(次世代医療基盤法)に基づき、医療機関等から取得した医療情報を統計処理または匿名加工をしてデータ利活用者に提供し、健康・医療に関する先端的研究開発や新産業創出に役立てる取り組みです。
(注7) LDI:認定匿名加工医療情報作成事業者、NTTデータ:認定医療情報等取扱受託事業者。
(注8) 病院における画像検査の結果(画像データ)を保管、閲覧するためのシステム。
(注9) 医療機関等において、基本最初の受診時に書面により通知を行い、通知を受けた本人又はその遺族が停止を求めないこと。
【一般社団法人ライフデータイニシアティブについて】
(一社)ライフデータイニシアティブは、次世代医療基盤法の認定作成事業者として国から認定を受け、健康・医療全般の医療情報を収集したうえで利活用者、参加施設へのサービス展開により医療情報の利活用事業を推進し、医療・医薬品の安全かつ有効な活用、研究開発に資する世界最高水準の技術を用いた医療の提供の実現を目指します。
【株式会社NTTデータについて】
NTTデータは、豊かで調和のとれた社会づくりを目指し、世界50カ国以上でITサービスを提供しています。デジタル技術を活用したビジネス変革や社会課題の解決に向けて、お客さまとともに未来を見つめ、コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供します。
【PSP株式会社について】
PSPは、医療情報を安全に保管・活用・共有できるクラウド型を始めとするPACS(医用画像管理システム)、RIS(放射線科情報システム)、PHR(パーソナルヘルスレコード)などの提供を行うヘルスケアITソリューション企業です。当社のパーパスである『医療情報をみんなの手に。そして未来へ』を元に、医療情報インフラを構築し利便性の高い医療サービスを提供することで、患者や医療従事者、家族、地域社会の“想い”を共有し、持続的な医療環境づくりに貢献することを目指しています。
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