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提言「流域全体における水収支の把握と領域の垣根を越えた協働で進める流域治水」を公表

~流域内の水量バランスを全住民が知り,考え,行動するために~

公益社団法人土木学会(会長 佐々木 葉)は、2024年7月26日に、提言「流域全体における水収支の把握と領域の垣根を越えた協働で進める流域治水~流域内の水量バランスを全住民が知り,考え,行動するために~」を公表しました。

本提言は、土木学会が2020年1月、2021年4月に公表した流域治水に関わる提言・声明と、流域治水施策の現状とを照らし合わせ、今後の課題を浮き彫りにすることを目的に立ち上げた「土木学会豪雨災害対策総合検討委員会フォローアップ WG」(委員長 塚原 健一・九州大学)が、様々な被災状況と治水対策を視察しつつ、二年間議論を重ねてきた成果を公表したものです。

提言のポイント

以下の二点が今後の流域治水施策の推進に重要であるとの認識に至りました。

【1】本川、支川、用排水路、下水道、氾濫水および地下水の相互作用を考慮した一体解析により、流域全体における水収支を見える化することが,住民にリスクと治水効果をわかりやすく示すとともに,今後の施策を検討する上で有効である

流域全体で、降雨量、土中への浸透量、貯留量、河道への流出量、河道貯留量、河道流下量および氾濫量を捉え、各水量が時系列でどのように変化するのかを示した「流域水収支図」(図1)の活用を提案しています。

また、流下能力のボトルネックを明示し、治水施策完了時までの各整備段階において、どの程度の規模、発生頻度の降雨で、どの領域から、どの程度浸水するのかがわかる「多段階リスク明示型浸水想定図」(図2)をこの「流域水収支図」とリンクさせることについても提案しております。
図 1 流域水収支図の例(令和2年7月豪雨時の人吉流域の流域水収支図)福岡ら(2023)「豪雨時における人吉市内の内水氾濫機構の分析と被害軽減に向けた検討」より
図 2 国土交通省作成の多段階浸水想定図(左)とその重ね合わせで作られる水害リスクマップ(右)

【2】治水だけでなく、利水、自然環境、親水、文化、および経済活動も踏まえた流域の目標像を考えるには、国・都道府県・市区町村、多分野の研究者、民間企業、地域住民による連携が必要である

まずは全住民が各流域の自然特性をその成り立ちと共に理解し、その地域で歴史的に築かれてきた社会的・経済的特性との関係を様々な情報から総合的に把握、共有することから始めることが必要で、その上で具体的な連携の例として、大学の研究者や国の研究機関が河川管理者と協働して流域治水に関わるケーススタディーを行って成果を発信すること、多段階リスク明示型浸水想定図や流域水収支図を活用した水害保険を設計すること、幅広い層に訴えられる多層的な情報発信方法を検討すること、自治体が観測体制を強化するための支援策を検討すること、10~20年後を見据えた土地利用計画と治水事業と調和させること、流域水収支図を用いて森林や田んぼダムの浸透、貯留能力の改善を検討することなどをあげています。

提言の全文はこちら

土木学会公式noteにも全文を掲載しています。

関連する土木学会の提言

台風第19号災害を踏まえた今後の防災・減災に関する提言~河川、水防、地域・都市が一体となった流域治水への転換~ (2020.1.23)

豪雨激甚化と水害の実情を踏まえた流域治水の具体的推進に向けた土木学会声明(2021.4.9)

関連サイト

流域治水の推進(国土交通省水管理・国土保全局)

防災用語ウェブサイト 水害・土砂災害(国土交通省水管理・国土保全局)

公益社団法人 土木学会 概要

法人名:公益社団法人土木学会
代表者:佐々木 葉(第112代会長)
所在地:東京都新宿区四谷1丁目無番地
設 立:1914年11月(公益社団法人化:2011年4月)

1914年設立。産官学の土木技術者により構成。個人会員数約40,000人。「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」(土木学会定款)ことを目指し、土木工学に関する調査研究のほか、技術者教育・土木広報・国際交流などの活動を展開している
URL:https://www.jsce.or.jp/
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