IEEEが提言を発表 AIがスポーツをリードする

IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。


2021年の国際的なスポーツの祭典では、アスリートたちが20もの世界記録を打ち立てました。この成果に大いに貢献したのは陸上競技ですが、テクノロジーもまたその一翼を担いました。特にランニング競技における最新テクノロジーを駆使したシューズの功績は大きなものでした。水泳では、新型の水着が一部の選手にわずかながらも有利に働いたとみられています。

テクノロジーはまた、一流選手のトレーニング方法にも深く浸透しています。コーチやトレーナーは、何十年にもわたって低コストのセンサー、マシンビジョン、ビッグデータ分析などのツールを活用して、アスリートの栄養状態を改善し、怪我から守り、チーム戦略を分析してきました。

IEEEのフェローであるカレン・パネッタ(Karen Panetta)氏によると、今では人工知能がスポーツ全体を取りまとめているということです。

「ビデオ画像処理機能がアスリートのパフォーマンス分析の役割を担ってきたのはかなり前からです」とパネッタ氏は述べています。

「新たな動向としては、多数の低コストセンサーが選手の運動に関するデータを収集し、AIが連携して処理するようになったことです。収集されたデータにより、AIは運動の全過程における身体の各部位の位置、力、動きの軌跡を把握し、それを最適なパフォーマンスと比較することができます。このフィードバックは、アスリートが具体的に懸念する事柄、特に不適切なフォームや動作によって生じるストレスや過負荷が原因で引き起こされる怪我を防ぐのに役立ちます。」

ここでは、最新動向の一部を紹介します。



■サッカーでのカオス的展開

現代のスポーツ、特にサッカーでは、戦術こそが勝敗を左右する決定的な役割を果たします。研究者たちは、パスやシュートなど、特定のプレイがフィールド上のどこで起こったかを記録した統計データセットを拠り所にしました。膨大なデータを分析した結果、予測不可能なパスのようなランダムな動きがチームを優位に導くことが示されました。この研究から、ランダム性と予測不可能性を識別する新しいツールが開発されました。数値分析により、特にランダム性が高いほど試合の序盤で得点のチャンスが生まれ、相手を混乱させるメリットがあることが明らかになりました。勝利したチームは、試合の後半になると戦術を守備的なプレイに切り替える傾向がありました。



■シュートを打つ

バスケットボールにおけるシュートは複雑な技術です。AIはシュートをもっと簡単にマスターできるようにします。選手のスキルや動きのパターンを分析することで、AIは新しいトレーニング方法を導入し、パフォーマンスを向上させます。

IEEE Xploreの最近の記事では、バスケットボールのシュートに関する広範な研究が要約されており、これには選手の姿勢とボールの軌道を分析するマシンビジョン技術と人工知能が含まれています。また、他のプログラムでは、選手が見事なフリースローフォームを身に着けることに特化して、どこでミスをしたか、そしてどのように修正すればよいかをアドバイスしてくれます。



■飛び込む

スポーツテクノロジーにおいて、特にAIを組み合わせた分野では、アスリートの姿勢や動きを分析することがホットな話題になっています。飛び込みや体操などのスポーツは複雑な動きが伴うことから、被写体ブレなどの問題によりビデオ分析が困難になります。さらに手作業による分析は時間がかかり、ミスが起こりやすくなります。AIを導入することで、コーチやトレーナーは正確なフィードバックをリアルタイムで提供できるようになることが考えられます。



■パフォーマンスと安全性の新たな最前線

パネッタ氏によれば、AIの台頭はまた、2つの新たな展開につながる可能性があるとのことです。1つはトップレベル以外の選手に対して技術の採用が進むこと。もう1つはスポーツがより安全なものになるということです。

「1990年代に初めてこれらの技術を使用したのがプロスポーツチームだったのは、高額なコンピューティング資源、複雑なセンサー構成、およびシステム出力を分析できる熟練したオペレーターに支払うだけの資金があったからです」と述べています。

「今日、クラウドコンピューティングと低コストのセンサー技術が利用可能になったことで、すべての消費者がこれらの技術のメリットを活かして、健康を維持したり怪我を防ぐための新しい道が切り拓かれたのです。」



■IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。

IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。


詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

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