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【岡山理科大学】宇宙養殖実験の現状を報告 「2030年、ISSでの飼育実験をめざす」

生物生産教育研究センター/第6回OUSフロンティアセミナー

調査・報告
2025年3月3日 15:20
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「宇宙環境利用」をテーマに開催された「第6回OUSフロンティアセミナー」
「宇宙環境利用」をテーマに開催された「第6回OUSフロンティアセミナー」
 岡山理科大学・生物生産教育研究センターが取り組んでいる、好適環境水を使った宇宙での養殖実験の現状について、生命科学部の山本俊政准教授らが2月28日、岡山キャンパスで開かれた「第6回OUSフロンティアセミナー」で報告しました。山本准教授は「2030年には国際宇宙ステーション(ISS)での飼育実験をめざしたい」との見通しを示しました。

 この取り組みは、米国主導の月面探査計画(アルテミス計画)など地球外への人類の進出が現実味を帯びてくる中で、他の天体で居住する場合、食糧生産が課題になるとの問題意識が背景にあります。穀物や野菜だけでなく動物性たんぱく質を摂るには、少量の餌で大きく育つ魚類生産(牛肉の場合、1㌔の肉を生産するのに15㌔の餌が必要ですが、ウナギの場合1.5㌔、サーモンは1.2㌔で済むとされています)の方が効率が良く、その養殖には長期間水を換えない好適環境水による完全閉鎖循環型養殖技術が最適である、との考えがあります。

 第1ステップの主な実験内容は以下の通りです。
① 過重力環境で魚卵が孵化するか
② 微小重力環境で魚卵が孵化するか
③ 微小重力下で餌が食べられるか
④ 微小重力下で骨異常、成長不良が起きないか
⑤ 骨密度への影響

 センターの発表によると、まず3カ月間、無換水でトラフグとヨシエビの飼育に成功。成長率も良好で、排泄物や餌の食べ残しから発生した硝酸塩の影響は問題ないレベルでした。
 また、超電導マグネットによる磁気浮上で再現した微小重力下で、マダイの受精卵の孵化に成功し、仔魚の状態を確認。さらに遠心力を利用して重力を制御する高速3Dクリノスタットを使った微小重力実験で、クルマエビが餌を食べている様子も確認しました。
 こうした結果を受けて、山本准教授は「餌を食べたというのは大きな前進。今後は3カ月ではなく、1年単位の無換水、さらに作業の無人化ができれば」と話しています。

 この研究には、山本准教授と理大フロンティア理工学研究所の牧祥准教授、生物生産教育研究センターの津村誠一招聘教授、理大大学院理工学研究科(修士課程)の横田千尋さんが携わり、この日は山本准教授と横田さんが発表しました。

 今回の同セミナーのテーマは「宇宙環境利用に関する技術課題と将来展望」で、このほかの講師と演題は以下の通りです。
◉元JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙医学生物学研究室主幹開発員の田中一成・静岡市保健福祉長寿局理事兼保健所長
 『きぼうが開く宇宙医学の扉-ISSから月面へ、さらにその先へー』
◉「ストローブ株式会社」(岡山県高梁市)・今井裕一代表取締役社長
 『積層型静電アクチュエータの宇宙環境利用に関する技術課題と将来展望-宇宙産業参入への夢と課題、次世代への提言!-』
◉岡山理科大学理学部物理学科・山内大介講師
 『月面から探る宇宙のはじまり』
◉岡山理科大学フロンティア理工学研究所・牧祥准教授
 『模擬月砂粒子FJS-1を用いた基礎研究の紹介』
養殖における好適環境水の優位性を強調する山本准教授
養殖における好適環境水の優位性を強調する山本准教授
宇宙養殖実験の現状を報告する横田さん
宇宙養殖実験の現状を報告する横田さん
会場ではメモを取りながら熱心に耳を傾ける姿が目立ちました
会場ではメモを取りながら熱心に耳を傾ける姿が目立ちました