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内水氾濫被害の低減に向け、小規模水路のAI水位予測モデルの実用性を検証

~5分間隔予測により急激な水位変化への迅速な対応が可能に~

 NTTコムウェア株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:黒岩 真人、以下 NTTコムウェア)とNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小島 克重、以下 NTT Com)は、茨城県取手市双葉地区において農業用水路などの小規模水路を対象とした水位予測の実証実験(以下 本実証)を行いました。本実証は、集中豪雨などによる小規模水路の内水氾濫対策の一環として、AI活用による水位予測モデルの実用性検証を目的に実施したものです。


1.背景と課題

 昨今、排水路などの排水能力を超える局地的な大雨が発生し浸水被害等が引き起こされる「内水氾濫」による浸水被害が日本各地で発生しています。過去10年間に発生した浸水のうち内水氾濫による浸水棟数は68%にのぼり※1、喫緊の対策が求められています。

 茨城県取手市双葉地域でも、2023年6月に豪雨による大規模な内水氾濫により地域全体に甚大な被害が発生しました。被害の主な原因は、2日間にわたる集中豪雨の中、排水機を最大限稼働させていたにもかかわらず、農業用排水路や周囲の水田から市内に排水が流入したことでした。

 小規模水路は周囲の環境や人工物の影響を受けやすく、川幅が狭いため集中豪雨時に急激な水位上昇が起こるなど、一級・二級河川とは異なる特徴があります。そこで両社は茨城県と協力し、内水氾濫の恐れに対して、より迅速に対応できるようにするため、小規模水路の特徴に対応した水位予測モデルの構築に向け本実証を実施することとなりました。


2.本実証について

 小規模水路の水位は排水機による排水などの人為的要因、水田の湛水状況などの環境要因により通常は予測が難しいとされています。本実証では、過去取得した水位データ(2024年5月〜2024年11月)を元に、AIを活用することでそれらの状況を予測時の条件に加えた水位予測モデルを構築し、実用性検証を行いました。

 小規模水路では局地的な大雨により水位が急激に上昇するため、防災担当者が避難計画策定などに対応するためには短いスパンでの水位予測が重要となります。そのため本実証では、自治体の防災担当者へのヒアリングをもとに気象庁が発信する予報降雨情報および、排水機稼働情報、水田の湛水状況に関する情報をもとに対象水路において5分間隔で3時間先までの水位を予測しました。

 また、いざという時の避難指示発令のためにリードタイムを確保する観点から6時間先までを予測可能なAIモデルとしました。予測結果は、浸水対策や周辺住民の避難、交通規制など事前行動の判断材料となり、被害軽減に役立てることができます。


【水位予測後の自治体のアクション例】

・集中豪雨による水位の急激な上昇が予測される場合、事前に排水機を稼働させて放水する。排水機では対策が追い付かないことが予測される場合、国土交通省へ排水ポンプ車配置の応援要請などを行う。

・水路から水があふれる「越水」が予測され、現地状況、気象情報などから内水氾濫発生が想定される場合は、周辺住民の安全のためにリードタイムを確保した避難指示を発令するとともに避難所の開設や避難誘導などサポートを行う。


【自治体におけるユースケース例】



3.実証実験における両社の役割

NTTコムウェア:水位予測システムの開発

小規模水路にも対応可能な水位予測AIモデルの開発および精度・有効性の検証

NTT Com:本実証の運営主体

映像エッジAIプラットフォームEDGEMATRIX(R)※2およびカメラ、Edge AI Boxを通じた水位の観測およびデータ提供


4.本実証の結果

本実証を通じ、予測水位は実水位の変動傾向を概ね捉えられ、モデルが有効であることを確認しました。


■排水機非稼働時

 実測雨量を用い、A時点(8月30日0時)に3時間後のB時点(8月30日3時)の水位を予測しました。環境要因や人為的要因をパラメーター化して予測した水位に対して実水位結果はほぼ同様の曲線を描いています。(図1)


<図1 排水機非稼働時の水位予測>


■排水機稼働時

 実測雨量を用い、C時点(6月21日13時)に3時間後のD時点(6月21日16時)の推移を予測しました。予測した水位上昇スピードや上昇幅に対して実水位結果もほぼ同様の曲線を描いており、排水機の稼働という人為的要因を考慮した予測ができていることを確認しました。(図2)


<図2 排水機稼働時の水位予測>


5.今後の展望

 両社は今回の実証結果も踏まえ、水位予測を行うソリューションの提供について検討を開始します。今後も両社は水害対策の現場に寄り添い、より信頼性の高いソリューションを全国展開することで、地域防災力の強化に貢献していきます。



※1:国土交通省「近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について」「国土技術政策総合研究所 研究資料」

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001320996.pdf

※2:EDGEMATRIXは、AIによる映像解析の基盤(映像エッジAIプラットフォーム)です。大容量の映像データをEdge AI Box(エッジコンピュータ)内で処理することができます。そのためより速く映像を解析・配信することが可能です。詳細はこちらをご覧ください。https://www.ntt.com/business/services/edgematrix.html

EDGEMATRIXは、EDGEMATRIX株式会社の登録商標です。

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