~木造住宅の傾斜およびマンホールの浮き上がり対策を~ 地震による地盤の液状化対策の有効性を検証
芝浦工業大学(東京都江東区/学長 村上雅人)の地盤工学を専門とする岡本敏郎教授(土木工学科)は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の影響で生じた地盤の液状化現象による住宅の傾きやマンホールの浮き上がりについて、現在提案されている対策案の検証を行い、その有効性と課題を明らかにしました。東京湾岸の台場地区から千葉県にかけて液状化が発生した地域の面積は約40km2に達すると推計がされており、広範囲で甚大な被害が出ました。そこで現在、さまざまな液状化対策案が検討され、その有効性を実証する研究が盛んに行われています。岡本教授が検証した結果、現在導入が検討されている対策案の中でも、地盤の状態などによってはその効果が低くなる場合があるという結論を得ました。この結果は、今後のさらなる効果的な対策案の確立に資する有効なデータとなります。
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現在提案されている対策案
(1)木造住宅の液状化対策を検証
●2つの液状化対策を検証
地震が発生した際の液状化地盤における木造住宅の沈下・傾斜を防ぐため、甚大な被害に見舞われた千葉県浦安市などでは、「直下壁式」と「周辺締切式」という2つの液状化対策案が検討されています。岡本教授はこれらの有効性を検証するため、住宅の模型と振動台で実際の地震による液状化の現象を再現し、地中に打つ壁式杭の深さと地盤の密度を変えて住宅の傾斜をそれぞれ計測しました。
[画像URL(現在提案されている対策案)]
http://www.atpress.ne.jp/releases/49353/img_49353_1.jpg
●結果
建物と杭が一体になっている「直下壁式」は、壁式杭を深く打つことで建物の傾きを軽減させることができる有効な手段だということが確認できました。
一方「周辺締切式」は、建物の周りの地盤を囲う形で壁式杭を打つため、囲った内部の地盤で液状化が発生し、深く壁式杭を打っても沈下・傾斜が起きてしまい、全体的にその効果は低く、根本的な解決にならないという結果となりました。
今回課題が明らかとなった「周辺締切式」は、既存住宅での対応策として検討されています。今回の実験結果により、この問題を解決するさらなる効果的な対策案の確立が急がれます。
(2)マンホール重量化による浮上抑制
●模型を用いたマンホールの振動実験
東北地方太平洋沖地震の際、東京湾岸の埋め立て地域に液状化が発生し、国土交通省によると6,699基のマンホールが浮き上がるなどの被害が出ました。マンホール被害は、下水道の機能障害だけでなく道路の復旧に時間を要することにもなるため、マンホールの浮上対策を行う必要があります。そこで現在のマンホール(標準タイプ)自体に重さを増した重量化工法(重量化工法タイプ)が提案されていますが、その効果の検証のため岡本教授が模型を用いてマンホールに振動を与える実験を行いました。
[画像URL(マンホール 標準タイプと重量化工法タイプ)]
http://www.atpress.ne.jp/releases/49353/img_49353_2.jpg
●結果
標準タイプに比べて重量化工法タイプの浮上抑制効果は確認できました。しかしながら、緩い地盤では、浮き上がりはないものの、その場でマンホールが回転してしまい、マンホールに接続された管が壊れてしまうことが予測され、この重量化工法も地盤によってその有効性が変わるという結果が導かれました。
以上2つの実験結果により、現在導入が検討されている液状化への対策にも課題があることが分かりました。震災から3年が経ちましたが、いまだ液状化対策への対応は不十分であり急務です。岡本教授は、これらの課題を解決する手法の開発を含め、今後も液状化問題に取り組んでいきます。
芝浦工業大学 URL: http://www.shibaura-it.ac.jp/
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