「歯周病予防」を牽引する新たな発見 抗炎症成分の吸収を分岐鎖...

「歯周病予防」を牽引する新たな発見  抗炎症成分の吸収を分岐鎖脂肪酸が促進 ~分岐鎖脂肪酸エステルも同様の挙動を示すことを確認~

 ライオン株式会社(代表取締役社長・濱 逸夫)オーラルケア研究所は、歯周病予防歯磨剤などに配合されている、抗炎症成分の“歯周組織への吸収性の向上”に関する研究を進めています。この度、分岐鎖脂肪酸「イソステアリン酸」が抗炎症成分の吸収促進作用を示すことを見出し、また分岐鎖脂肪酸エステル「イソステアリン酸フィトステリル」においても同様の挙動を示すことを確認しました。
 この研究成果に関連する内容は『第56回歯科基礎医学会学術大会・総会(2014年9月26日ポスター発表)』で発表しております。

図1
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1.研究の背景

 口腔ケアの意識の向上や歯科医院での定期健診受診者の増加等により、高齢者の残存歯数が増えています。また歯周病と全身健康との関連性も明らかになってきていることなどから、歯周病対策の重要性がより高まっています。
 当社は、歯周病の症状である歯ぐきの腫れや出血を止める作用をもつ、抗プラスミン剤の「トラネキサム酸」を見出し、1982年に日本で初めてトラネキサム酸を抗炎症成分として配合した歯磨剤を上市しました。さらに、歯周組織を破壊する歯周病原因菌の巣(バイオフィルム)への浸透殺菌剤として「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」を見出し、2004年に歯磨剤やデンタルリンスに配合するなど、歯周病予防の最先端技術をいち早くセルフケア製品に応用した開発研究を行ってまいりました。

 歯周病予防を訴求した歯磨剤には、歯周組織の腫れや出血を防ぐために抗炎症成分が配合されており、その成分の効果を十分に発揮させるためには歯周組織へ吸収させることが重要です。一般的に抗炎症成分の多くは親水性を示すため、疎水性の角化層をもつ歯周組織との親和性が低く、吸収されにくいのが課題です。そこで、親和性を高める成分として脂肪酸及び脂肪酸エステルに着目し、以下の検討を行いました。


2.研究結果

■分岐鎖脂肪酸「イソステアリン酸」に、抗炎症成分の吸収促進作用があることを発見
 抗炎症成分トラネキサム酸を配合したモデル製剤に、各種脂肪酸及び脂肪酸エステルを一定量配合した歯磨剤を調製し、口腔粘膜モデルを用いて抗炎症成分の膜透過量を測定しました。
 その結果、特にイソステアリン酸を配合した歯磨剤において、トラネキサム酸の透過量が有意に増加したことから、イソステアリン酸にはトラネキサム酸の吸収促進作用があることを見出しました。また有意ではなかったものの、イソステアリン酸フィトステリルにおいても同様に膜透過性を促進する傾向が認められました(図1)。

(図1)
http://www.atpress.ne.jp/releases/52992/img_52992_1.jpg


■「イソステアリン酸」は、角化層のリン脂質を流動化させる効果が高いことを確認
 イソステアリン酸の作用機構を検証するため、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)リポソームを口腔粘膜の角化層リン脂質二重膜モデルとして、示差走差熱量測定(DSC)を用いて、脂肪酸及び脂肪酸エステル添加によるDPPCの相転移温度を測定しました。その結果、イソステアリン酸添加試料は、DPPC単独と比較して相転移ピークが低温側にシフトするとともにピークがなだらかに低く変化することがわかりました(図2)。
 この結果から、イソステアリン酸はDPPCのリン脂質二重膜を流動化する効果が高いことが示唆されました。
 リン脂質二重膜が流動化することは、二重膜構造にすき間が生じ、外から成分が吸収されやすい環境になることを示します。このことからイソステアリン酸は、角化層のリン脂質を流動化させる効果が高く、そのため水溶性の抗炎症成分トラネキサム酸の吸収促進作用をもつことが推察されました。

(図2)
http://www.atpress.ne.jp/releases/52992/img_52992_2.jpg


以上、脂肪酸及び脂肪酸エステルと、抗炎症成分トラネキサム酸に関する研究の結果、以下の3点を見出しました。

(1)分岐鎖脂肪酸「イソステアリン酸」が、抗炎症成分トラネキサム酸の歯周組織への吸収促進効果を有することを確認

(2)「イソステアリン酸」は、角化層のリン脂質に作用し、リン脂質二重膜を流動化することで、水溶性のトラネキサム酸の透過性を向上させることを示唆

(3)分岐鎖脂肪酸エステル「イソステアリン酸フィトステリル」は、トラネキサム酸に対して「イソステアリン酸」と同様に歯周組織への吸収を促進する可能性を有する


 当社は本研究の知見を応用し、他の抗炎症成分の吸収促進の可能性、またイソステアリル基を有するエステルの効果発現の有無やメカニズム解明など、“抗炎症成分の歯周組織への吸収性向上”を実現する製品開発を進めてまいります。


【第56回歯科基礎医学会学術大会・総会】発表概要
◎開催日:2014年9月25日 ― 27日
◎会場 :福岡国際会議場(福岡県福岡市博多区石城町2-1)
◎演題 :分岐鎖脂肪酸及び分岐鎖脂肪酸エステルによる抗炎症成分の
     口腔粘膜吸収性向上
◎発表者:成松 三四郎 1)、川延 勇介 1)、荒井 将人 1)、高橋 康彦 1)
1)ライオン株式会社 オーラルケア研究所

カテゴリ:
調査・報告
タグ:
健康・ヘルスケア

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