世界最高水準400ギガビット伝送のフィールドトライアルに成功 ~既設100G光伝送網で現行の4倍の高速通信を低コストで実現可能~
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫、以下 NTT)とNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:有馬 彰、以下 NTT Com)は、通信品質の劣化要因となりうる高い偏波モード分散(※1)を有する敷設分散シフトファイバ(※2)ケーブルで構成された既設100G光伝送網に、1チャネルあたり400Gの光信号の増設・減設を実施し、100G光信号に影響を与えることなく、400G光信号の安定した長距離伝送が可能であることを確認しました。本実験においては、世界最先端の波形歪み補償技術を活用した400G高度デジタルコヒーレント光伝送技術(※3)を適用し、当社従来技術と比べて大幅な高性能化もあわせて確認しました。
本実証実験に基づき、既設の100G光伝送網を活用しつつ、400G光信号を増設することにより、光回線容量を現行の4倍に増大することができ、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた4K/8Kの高解像映像配信の普及やIoTの爆発的拡大に伴う大容量トラヒックの流通に資する世界最高レベルの基幹網の経済的な構築が実現可能になります。
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図1
1.背景
近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に伴う基幹光通信網におけるトラヒックの急激な増大に対応するため、NTTでは世界に先駆けて、デジタルコヒーレント光伝送技術(※3)を用いた1チャネル当たり100Gの光伝送システムを実用化いたしました。グローバル市場においても現在、100G光伝送システムの普及が急速に進んでいる状況であります。
しかし、4K/8K等の高解像映像の流通拡大やM2Mの本格普及に伴い、今後ネットワークを流通するデータは更に超高速・大容量・多種多様になることが想定されているため、次世代の基幹光ネットワークはそれらのデータを柔軟かつ低コストに伝送することが求められます。そこで、NTTとNTT Comでは、既設の100G光伝送システムの経済的かつタイムリーな容量拡張の実用化に向けた、世界最高水準の技術の開発を進めてまいりました。
2.詳細な実験の内容(図1)
本実験に当たり、NTTは、光の位相と振幅の両方に情報を重畳してさらに多値化を図る16QAM(※4)変調信号とサブキャリア多重(※5)を適用した400G光送受信系を構築しました。これにより、既設100G光伝送網における光回線容量を4倍に拡張することが可能となります。NTT Comは400G光伝送技術の実運用を考慮し、高い偏波モード分散および偏波変動を有するファイバ伝送路環境を同社の商用敷設分散シフトファイバケーブルを用いて構築しました。
実験では、400G光信号および100G光信号を最大12波多重し、混在波長多重伝送の後、100G光信号および400G光信号の伝送品質を測定しました。また、400G光信号の増設・減設時における100G光信号の伝送品質の測定もあわせて実施しました。
3.本実験の成果
以下の結果から、運用中の100G光伝送システムに対して、400G光伝送技術の追加適用が可能であることを確認しました。
(1) 既存の光伝送システムで100Gと400G波長の同時伝送に成功
既設の100G光伝送システムと同等の波長間隔において、既設100G光信号の400G光信号による伝送品質の影響ならびに、400G光信号の100G光信号による伝送品質の影響はそれぞれないことを実験的に確認しました。特に影響が懸念される400G波長増設・減設時においても他の光信号への影響がないことを確認しました。
(2) 世界最先端の高度デジタルコヒーレント光伝送技術による長距離伝送の実証に成功
400G光信号の光ファイバ伝送に伴う波形歪みを補償するため、回路実装可能なデジタル逆伝搬信号処理技術(※6)を適用することで、非線形光学効果(※7)による波形劣化の影響を低減すると共に、高性能な誤り訂正技術を併用することで、当社従来技術と比較して約2倍の高性能化を確認しました。これは、高い偏波モード分散を有する本フィールドトライアル実験環境下において、750km以上の伝送が可能なことを示します。
なお、本実験の一部は総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」を受託し進めている毎秒400ギガビット級の高度デジタルコヒーレント光伝送技術ならびに情報通信研究機構の委託研究「光トランスペアレント伝送技術の研究開発(λリーチ)」の技術(※8)を利用しています。
4.今後の展開
今後、400Gおよび400G超の光伝送技術をさらに拡張発展するとともに、400GbE(※9)等の超高速イーサネット信号の収容や大容量光伝送網の高度化技術の確立と実用化開発に向け研究開発を推進するとともに、その成果を活かした大容量光伝送システムと高性能な光ファイバ伝送路を含めた経済的かつ大容量なネットワークの実現を推進してまいります。併せて、国内外の機関とも連携して、成果のグローバル展開を目指していきます。
※1 偏波(電界の振動方向)によって光ファイバ中の伝搬遅延時間が異なる現象。
※2 単一モードファイバの零分散波長を1.5マイクロメートル帯にシフトさせた光ファイバ(ITU-T G.653準拠光ファイバ)
※3 受信側に配置した光源と受信した光信号を干渉させるコヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた次世代光伝送方式。偏波多重や位相変調などの変調方式により周波数利用効率を向上させるとともに、大幅な受信感度向上を実現する。詳細は次を参照。
http://www.ntt.co.jp/news2014/1409/140904a.html
※4 QAMはQuadrature Amplitude Modulation(直交振幅変調)の略で、2つの直交した(位相関係が90°になっている)信号光の振幅、および、位相の両方に情報を載せる変調方式。16QAMは16値の直交振幅変調方式で、一度に4ビット分の情報を送ることができる。
※5 1つの超高速チャネルを形成するために複数の波長の光信号(サブキャリア)に分割して多重伝送する方式。16QAM変復調による200Gbpsの光信号を2つのサブキャリアを多重して400G光信号を生成した。
※6 受信した光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理で仮想的に光ファイバを逆向きに伝搬させて光ファイバによる線形および非線形歪みを同時に補償する技術。
※7 光の強度によって光ファイバの屈折率が変化する現象。波長多重伝送時には、光信号の波形は、他の光信号による非線形効果により変調を受け、劣化を引き起こす可能性がある。
※8 米永他,“光トランスペアレント伝送技術の研究開発(λリーチ),” IEICE, OCS2011-110, 2011
※9 IEEE 802.3bsにて100G超イーサネットの有力候補として、現在標準化に向け議論がなされている400G級の超高速イーサネット規格。
図1 伝送実験の構成(概要)
http://www.atpress.ne.jp/releases/58778/img_58778_1.png
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