自転車事故を減らすために必要な主婦の意識改革! 6月1日の道交法改正を前後で何が変わるの? 自転車の安全利用促進委員会メンバーが道交法について解説
2015.05.28 16:30
自転車の交通ルール違反や、自転車が起こした事故をめぐる問題が話題化する中、自転車での悪質な運転者への対策強化として、改正道路交通法(道交法)が2015年6月1日から施行されます。
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ルールやマナーについては道交法改正や安全教室のように、国や自治体が対策を講じています。しかし、国が定めるメンテナンスや自転車自体の安全性の基準はなく、購入時にBAAマークなどの民間団体が認証するマークの有無を意識することや、日々の定期メンテナンスを心がけるなど、自分自身の責任によって自転車と向き合うことが必要となっています。
そこで、自転車の安全利用促進委員会では、6月1日の施行を前に、改めて今回の道交法改正のポイントと、自転車との向き合い方について、当委員会のメンバーでもある、株式会社三井住友トラスト基礎研究所 研究理事・工学博士 古倉 宗治氏、自転車ジャーナリストの遠藤 まさ子氏に聞きました。
【道交法改正の背景】
当委員会が、2014年11月に行った調査で、実に84.1%の主婦が「世間の自転車運転マナーがかわったと感じない」と答えるなど、自転車の交通ルール違反や、自転車が起こした事故をめぐる問題が最近増加してきています。
平成25年には、当時小学5年生だった少年が乗った自転車と歩行者が衝突し、少年の母親に約9,500万円という高額な賠償を命じる判決が出されています。
運転するために特に免許がいらず、健康にも良く、身近な移動手段として親しまれている自転車ですが、自転車は「車両」です。人を傷つける危険性も高いということを忘れずに、日々の心がけが必要です。
【世間の自転車運転マナーが良くなったと思いますか?】
(n=516)2014年11月
http://www.atpress.ne.jp/releases/62410/img_62410_1.png
【古倉 宗治氏が道交法改正を解説】
今回の改正は、自動車等の違反については簡易な反則金制度が従前から存在し、多数の違反の取締りに対処できたのに対して、自転車については、裁判手続きを経た刑罰の制度しかなく、極めて悪質又は事故を起こした場合等に適用が限られていたため、違反のほとんどは法的措置に至ることがなかったことによる。自転車のルール遵守の必要性がより高まっている昨今の状況にかんがみ、これに対する合理的な対応策として、繰返しの違反に対して罰則を課すのではなく、公安委員会の命令で安全講習会の受講を義務づける制度が設けられ、自転車の法令違反をなくす教育的な措置が講じられた。
最近の自転車事故は、全交通事故に占める割合が高水準で推移し、また、加害者となる悲惨な事案も生じている。自転車事故件数の67%に自転車側の法令違反があり、また、その4分の1は自転車側のほうに大きな責任があり、自転車側のルールの厳守は急務である。自転車事故は、交差点で67%が生じ、自転車事故が一番多い裏道交差点の自転車の法令違反の割合は8割を超える。
今後このような対策により、従前の刑罰のみの法的措置に加え、講習会の受講の義務付けにより、一層の取り締まりの徹底とこれを前提としたルールの指導が行われることが期待される。自転車事故の原因の多くが自転車側の法令違反に起因していることにかんがみると、この指導取締りと講習会による教育の徹底が、自転車事故の減少に大きな効果があるものと考えられる。これを機会に、自転車側にも、自転車ルールの学習と遵守の励行が今まで以上に求められているものである。
▼古倉 宗治(こくら・むねはる) 株式会社三井住友トラスト基礎研究所 研究理事・工学博士
自転車の総合的体系的な利用促進策、放置問題の新たな発想による解決策や自転車の交通政策などを手がけるほか、街づくりに関する法制的な規制、都市環境における環境共生のあり方、景観、土壌汚染など都市計画・都市環境分野で国、地方公共団体、民間等からの調査研究に従事。
【改正道路交通法 ※2015年6月1日施行 法令改正】
■違反を繰り返す自転車運転者に「安全講習」を義務づけ
【2013年6月に公布された改正道路交通法の一部が施行】
2015年6月1日より、交通の危険を生じさせる違反を繰り返す自転車の運転者には、安全運転を行わせるため講習の受講が義務づけられます。違反対象は14項目。ルールやマナーに紐づいた「信号無視」「一時不停止」「遮断踏切立ち入り」「酒酔い運転」などの項目のほか「ブレーキ不良自転車運転」など、メンテナンス不足も対象となります。これらの違反を3年以内に2回以上繰り返す自転車利用者に講習の受講を義務づけ、未受講者は罰金刑が適用されます。
1 信号無視
2 通行禁止違反
3 歩行者用道路徐行違反
4 通行区分違反
5 路側帯通行時の歩行者通行妨害
6 遮断踏切立入り
7 交差点安全進行義務違反等
8 交差点優先車妨害等
9 環状交差点の安全進行義務違反
10 指定場所一時不停止等
11 歩道通行時の通行方法違反
12 ブレーキ不良自転車運転
13 酒酔い運転
14 安全運転義務違反
【自転車ジャーナリスト 遠藤 まさ子氏が道交法改正を解説】
老若男女問わず、幅広い人に愛用されている乗り物が「自転車」。5km未満の移動のうち、約20%に自転車が利用されているとも言われています(平成17年全国都市交通特性調査:国土交通省より)。全交通事故に占める自転車関連事故の割合もわずかながら増えており、2007年からは20%を超える水準となっています。
自転車が関わる交通事故の中で、最も多発している事故発生場所は「裏道交差点」。これは歩道や信号が設置されていない交差点のことで、全体の1/4以上を占めています。とくに子ども(小学生)に発生する割合が高く、子どもの自転車関連事故の43.7%が裏道交差点で起きているそう。一方、主婦の場合は「脇道交差点」で事故が発生する率が高い(23.3%)ようです。
これらの事故の大きな要因と考えられるのが、一時停止の不履行と右側通行。交差点に入る前には車両は一時停止しなくてはいけませんが、軽車両である自転車も例外ではありません。さらに自転車は基本的に車道の左側を走行すると定められていますが、交通量の少ない道路ではついつい忘れてしまったり、最短ルートを通ろうと二段階右折をしない方も多いのかもしれません。その結果、交差側を走ってくる自動車のドライバーからは死角に入って気付くのが遅れてしまう、交差右側から走行してくる自転車、歩行者に気付くのが遅れてぶつかるというような「出会い頭事故」が増えてしまうのです。実際、主婦の対自動車事故の半分以上が出会い頭に起きており、さらに裏道交差点で起きた事故の76.9%、脇道交差点で起きた事故の71.2%が出会い頭事故というデータが出ています。
6月1日からは、悪質な違反を繰り返す自転車運転者に安全講習を義務付けるなどの改正道路交通法が一部施行されます。この違反の中には一時不停止や通行区分違反なども含まれます。すでに今春は自転車に対する警察の取り締まりが厳しくなっている地域もあるようで、踏切横断前に一時停止しなかった、歩道内を自転車で走行したなどの理由で指導を受けたという話も聞きます。今後はその場の指導にとどまらず、違反回数を記録される可能性も高まると予想されます。自転車も乗り物であるという意識を再確認し、自転車の正しい走り方や法律をきちんと知ることが、自転車を安全に利用する第一歩と言えるでしょう。
▼遠藤 まさ子(えんどう・まさこ) 自転車ジャーナリスト
自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ転向。自転車・育児用品を中心に取材を行い、各誌に寄稿している。自転車の中でも子ども乗せ自転車、幼児車、電動アシスト自転車を得意とし、各種メディアでコメンテーターとして登場する機会も多い。