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武田科学振興財団、「2015年度 武田医学賞」受賞者を発表  ~ 11月12日(木)東京・ホテルオークラにて贈呈式を開催 ~

 公益財団法人 武田科学振興財団(理事長:横山 巖、所在地:大阪市中央区)では、このほど「2015年度武田医学賞」を下記の2氏に贈呈することを決定しました。
 受賞者には、賞状、賞牌・盾のほか一件につき1,500万円の副賞が贈呈されます。なお、贈呈式は11月12日(木)午後6時より、ホテルオークラ(東京)において行います。


稲葉 カヨ 博士

 「武田医学賞」は、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた学者・研究者に贈呈されるもので、1954年、武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして設けられ、1963年、当財団の設立と同時に継承され今日に至っています。
2015年で59回目を迎える「武田医学賞」の受賞者総数は、本年度を含めて122名となります。


<稲葉 カヨ 博士(いなば かよ)>
京都大学 理事 副学長(65歳)
受賞テーマ:「免疫応答の始動と制御における樹状細胞機能の解析」

<渡邊 嘉典 博士(わたなべ よしのり)
東京大学 教授(54歳)
受賞テーマ:「染色体分配の制御機構の研究」


■稲葉 カヨ 博士の研究業績
受賞テーマ:免疫応答の始動と制御における樹状細胞機能の解析

 細胞培養系の確立後、抗体産生応答の誘導においてはヘルパーとしてのT細胞と抗体を産生するB細胞以外に、抗原提示細胞として脾臓に存在する付着性細胞が必要であることが示されていた。Steinmanらは、脾付着性細胞にはマクロファージに加えて新たな細胞として樹状細胞が存在することを見出しており、その樹状細胞が異系T細胞に対する強力な刺激活性を有することを明らかにしていた。しかし、その数が少なく、しかも抗体産生応答の検討をしていなかったことから、多くの研究者は、抗原提示細胞は体内に広く分布するマクロファージだと信じていた。
 稲葉 カヨ 博士は、マクロファージではなく樹状細胞のみが抗原提示細胞として抗原特異的ナイーブT細胞を活性化し、その後に続くB細胞の抗体産生応答の誘導やキラーT細胞の活性化など、獲得免疫応答を誘導する機能をもつことを明らかにした。また、その機構として、樹状細胞の末梢組織から所属リンパ節への移動、抗原の捕捉と消化分解能、MHCクラスI、II分子や補助刺激分子の合成能などが、細胞の成熟・活性化により制御されていることを解明した。さらに樹状細胞は異なるサイトカイン産生(IL-12、IL-6など)を通じて誘導する免疫応答の強度と質(Th1、Th2など)にも大きく関わることも示した。一方、定常状態における末梢組織に分布する樹状細胞は未熟であり、そのため末梢免疫寛容の誘導と維持に作用することも明らかにした。樹状細胞による免疫応答の誘導については改訂された高等学校教科書「生物基礎」にも取り上げられており、基本的な生物事象としての収容性が確立されたものと考えられる。


■渡邊 嘉典 博士の研究業績
受賞テーマ:染色体分配の制御機構の研究

 染色体は生命の遺伝物質であるゲノムDNAを包含する構造体であり、生命体の複製にともない正確に伝承されることが必須である。渡邊嘉典博士は、細胞分裂における染色体分配の方向を決定する分子機構の解明に一貫して取り組み、目覚ましい成果を挙げてきた。複製したゲノムを反対方向へ分配する(均等分裂)か同じ方向へ運ぶ(還元分裂)かを決める機構について、染色体接着因子コヒーシン分子群が、決定的な働きをしていることを見出した。さらに、還元分裂のときに動原体を同じ向きに方向づけさせる新規動原体タンパク質Meikinを発見し、「コヒーシン接着による動原体方向性制御モデル」を提唱し証明した。また、コヒーシンを守る因子として、すべての生物に保存されたシュゴシン(Shugoshin)を発見した。また、シュゴシンが、生殖細胞の染色体分配の必須因子として機能するのみならず、体細胞の染色体分配にも重要な役割を果たしていることを解明した。特に、がん由来の染色体不安定性を示す細胞株の多くで、シュゴシンに異変があることを見いだし、その異変を引き起こす分子機構も明らかにした。これにより、制がん剤の開発に新たな方向性を与えた。


【公益財団法人 武田科学振興財団の概要】
武田科学振興財団は、「科学技術の研究を助成振興し、国内外の科学技術及び文化の向上発展に寄与する」ことを目的とし、武田薬品工業株式会社からの寄附を基金として1963年に設立されました。詳細については、財団ホームページをご覧ください。

1.名称  : 公益財団法人 武田科学振興財団
2.所在地 : 大阪市中央区道修町2丁目3番6号
3.理事長 : 横山 巖
4.設立許可: 1963年9月30日
5.移行登記: 2010年12月1日
6.基本財産: 971億2,017万円<2015年3月末現在>
7.事業規模: 2014年度実績23億1,780万円
8.URL   : http://www.takeda-sci.or.jp

[主な事業]
1.科学技術に関する研究機関および研究者に対する研究助成
2.研究者および学生に対する奨学助成
3.科学技術に関する注目すべき研究業績に対する褒賞
4.科学技術に関する時流に合ったテーマによる国際シンポジウムの開催
5.科学技術の振興に関する出版物の発刊
6.東洋医書その他図書資料の保管、整理、収集、および公開

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