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芝浦工大、「津波避難支援システム」を開発 -津波の到達位置と、避難場所をアプリ上で可視化-

2016.01.13 11:30

芝浦工業大学(所在地:東京都江東区、学長:村上 雅人)情報工学科の米村 俊一教授は、津波が発生した際にユーザの位置や移動可能な範囲を考慮し、津波の範囲と安全な避難場所を提示してくれる津波避難支援システムを開発しました。


災害時にはユーザの歩行可能エリアと危険区域がリアルタイムに変化し、MAP上に映し出される仕組み

内閣府の調査より、2011年の東日本大震災における死者数は、津波による溺死が92.4%を占め[※]、犠牲者の死因の大部分が津波であることが明らかとなっています。しかし津波の規模は地震の発生状況によって大きく異なるため、「津波がいつ・どの程度の高さで自分のいる場所に到達するのか」「どの程度の緊急性をもって避難すべきか」「どこに避難すれば安全なのか」などこれらをとっさに判断することは困難です。
そこで今回開発したシステムでは、必要な情報を地図上でシンプルに分かりやすく表示することで、緊急時でも正しい判断ができるアプリケーションを目指して設計を行いました。現在のところ、江東区周辺で想定データをもとに行った実験で機能を確認している段階のプロトタイプであるため、実際の津波発生時に正確な情報をリアルタイムで届けるためには、津波の規模や位置、到達時間、避難場所の特徴など気象庁や消防庁、自治体が発信する緊急情報やデータと連動する必要があります。今後はそれら関係機関と連携して協力を仰ぎながら必要なデータを収集し、あわせて共同開発企業を見つけるなどし、アプリケーションの完成に向けて開発を進めていきます。

[※] 内閣府 防災情報のページ 平成23年版防災白書 図1-1-4
東日本大震災における死因(岩手県・宮城県・福島県)
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h23/bousai2011/html/zu/zu004.htm


■津波避難システムの画面イメージ
https://www.atpress.ne.jp/releases/86767/img_86767_1.jpeg

災害時にはユーザの歩行可能エリアと危険区域がリアルタイムに変化し、MAP上に映し出される仕組みです。


■システム画面の説明
(1) 現在位置の表示
モバイル端末に内蔵されているGPS装置によって位置情報を取得し、地図の中央部に現在位置が表示されるよう地図描画を行い、その中に黒地に黄色い丸のマークを描いて示します。

(2) 移動可能エリアの表示
現在位置に津波が到達するまでに移動可能な範囲を、黒の実線で表示します。この円は時間経過と共に半径が縮小し、縮小速度は健常者の平均移動速度(秒速1.39m)に設定されています。変更も可能で、お年寄りから子どもまでユーザに合わせた使い方ができます。

(3) 優先的避難場所の表示
現在位置を中心とし、その周辺避難場所の候補を表示。避難場所候補をタップすると「建物の名前」「建物の高さ」「建物内の避難場所」が一目でわかります。ユーザは、マーカーの色によって避難場所の安全度合いを認識することができます。
(緑色:第1優先、青色:第2優先、赤色:第3優先、黄色:第4以降の優先場所)

(4) 浸水危険区域の表示
津波情報に応じて沿岸部の低地など浸水の可能性が高い区域を赤の塗りつぶしによって表示します。


■システムの利用イメージ
画面において、現在位置から最も近い避難場所は(B)です。しかし避難場所(B)は浸水危険区域に入っているため、適切な避難場所であるとは言えません。一方、移動可能範囲円の内側にあり、かつ浸水危険区域に入っていない避難場所の中で最も近い候補は避難場所(A)となります。
したがって、避難場所(A)が最も安全な避難場所と判定し、マーカーの色を緑色(第1優先避難場所)で表示します。このように、大きな地震が発生した直後、ユーザがスマートフォンやタブレットを用いて、津波避難システムを起動するだけで、適切な避難場所を素早く認知できるよう設計されました。


■今後の展開
現在、Android OS上で動作するプロトタイプシステムとして江東区周辺を想定した評価実験に成功しています。
今後は、気象庁の地震速報、津波情報、消防庁・自治体などが持つデータとリアルタイムに連動することが必要不可欠となるため、米村教授は、自治体や企業など協力先を見つけながら、避難場所、建物の高さ、緊急地震・津波速報などを反映することで、アプリケーションの実用化、実装を目指していきます。

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