刊行3週間で3万部突破 書籍『性風俗のいびつな現場』 最底辺貧困女子への新しいアプローチ 画期的な「風俗論」と話題に
株式会社筑摩書房(所在地:東京都台東区、代表取締役社長:山野 浩一)が2016年1月に刊行した坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)が、刊行3週間で3万部を突破しました。
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風テラスの様子1
『性風俗のいびつな現場』書影
https://www.atpress.ne.jp/releases/92576/img_92576_3.jpg
『性風俗のいびつな現場』書籍情報
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068682/
『性風俗のいびつな現場』は、過激化する性風俗産業の現場に社会福祉の立場から迫った一冊です。「彼女はなぜ 母乳風俗店で働くのか?」という衝撃的な言葉が帯に並び、一見すると過激な性風俗ルポのようですが、この反響の理由は別にあります。それは、同書が「福祉の立場から展開した、異色の“風俗論”」だということです。現代日本が抱える闇に、風俗の世界から一石を投じた内容が、読者に波紋を投げかけています。
■「風俗」×「福祉」×「司法」が交差する異色の取り組み「風テラス」
デリヘル店の待機部屋で、弁護士・社会福祉士が一緒になり、働く女性に対して生活相談を行う「風テラス」という活動があります。2015年末から毎月1回行われているこの取り組みを、同書ではいちはやく掲載しています。著者の坂爪氏は、2012年から、セックスワーク・サミットと称した「性風俗で働くということ」を考えるためのイベントを実施してきました。その過程で地雷専門風俗店「デットボール」グループの代表篠原氏と出会い、性風俗の最底辺の実態を聞いていくうちに「社会福祉の観点から性風俗で働く女性を見つめなおす必要がある」との思いに至ります。この意見に賛同する弁護士や社会福祉士も加わり、「風俗店・司法・福祉がスクラムを組んで女性の貧困問題と向き合う」ために「風テラス」は活動しています。
※地雷専門風俗店「デットボール」
他店では非採用の女性でも、身分証があれば採用される風俗店
■「最底辺貧困女子」への独自のまなざし - 問題提起と解決策とは?
2004年から繁華街浄化の機運が高まり、店舗型風俗が壊滅し、デリヘルが性風俗産業の中心になっていきました。その過程で、30分3,900円といった激安店・40代~50代の女性を専門とする店など、性風俗はより過激な世界へとシフトしてきています。そういった店では、これまで年齢、容姿、環境の問題等で性風俗では働けていなかった女性が多く採用されていったため、生活状況が厳しい人たちも集まるようになりました。このような女性の中には、身体や精神に障害を負っている人、貧困などの問題を抱えている人など、本来「社会福祉によって生活を立て直すべき人」も多く存在している事実があります。
2015年末から計4回行われている「風テラス」は、他のデリヘルで働く女性からも「活動を応援したい」と寄付金が集まるようになりました。しかし、これまで相談に訪れた女性は、風俗店に在籍する方のうちのごく一部です。この問題を解決するためには、“性風俗業界の特殊な問題”として片づけるのではなく、社会全体が「性風俗のいびつな現場」を“現代日本が抱える問題”であると認識し、性風俗の存在を容認したうえで「夜のソーシャルワーカー」を育成し支える必要がある、と主張しています。「夜のソーシャルワーカー」が貧困にあえぐ女性を「福祉」や「司法」「医療」といった命綱につなぐことが可能になれば、性風俗の世界が「女性の貧困」問題と戦うための最前線の情報集積・発信基地になり得る、と同書で結んでいます。
■今後の活動について
「風テラス」は現在まで計4回行われており、熟女専門店の生活相談も加わったことで、50代の女性からの相談もある状況となっています。また、「風テラス」の存在を知り、相談ができるならと実施している店舗へ面接に訪れた女性もいるようです。いま実施されている2つのグループだけで在籍女性は400名ほど。最底辺貧困女子へのサポートをこれからも数年がかりで取り組んでいく、と坂爪氏は語っています。「風テラス」は次回2016年3月23日(水)、次々回4月16日(土)に催される予定です。
■読者のコメントより
・「性労働の実態を別世界の物語として遠くに見るのではなく、同じ社会の問題として身近に引き付けて考える点で、他の風俗ルポとは性質が異なる」リブロ 野上 由人氏(AERA2月15日号掲載)
・「福祉と風俗をつなぐ画期的で意欲的な本。ほとんどなされなくなってしまった社会学領域での性の商品化論の空白を一気に埋めてしまうような勢いさえあります。ジェンダー、セクシュアリティに関心のある方は必読」社会学者 田中 俊之氏(Twitterより抜粋)
■本書の目次
第一章 地方都市における、ある障害者のデリヘル起業体験記
第二章 妊婦・母乳専門店は「魔法の職場」
第三章 「風俗の墓場」激安店が成り立つカラクリ
第四章 「地雷専門店」という仮面
第五章 熟女の・熟女による・熟女のためのお店とは?
第六章 ドキュメント 待機部屋での生活相談
終章 つながる風俗
■著者紹介
坂爪 真吾(さかつめ しんご)
1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『男子の貞操』(ちくま新書)『はじめての不倫学』(光文社新書)『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館)がある。
『性風俗のいびつな現場』ちくま新書
刊行日 :2016年1月6日(水)
ページ数:256ページ
定価 :820(税別)
ISBN :9784480068682
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