広報業務に携わっていると、必ずと言っていいほど使われる「媒体」や「メディア」という言葉。
「あのメディアに取り上げてもらいたい」「この媒体を使って施策を打とう」こんな会話は日常茶飯事ですよね。
広報・マーケティング用語を正しく理解することは担当者にとって必須と言えますが、この2つの用語の使い分けが出来ていない方は意外と多いです。
この記事では「媒体」という言葉の意味をはじめ、似て非なる言葉「メディア」との違いを具体例を用いて解説します。
目次
「媒体」という言葉の意味
媒体とは「情報を伝達するための手段」のことを指します。
皆さんが想像しやすいのは「新聞」や「雑誌」「テレビ」等だと思いますが、もちろんこれらも媒体のひとつです。
そして、これらを細分化した「○○新聞社」や「○○放送局」「番組名」「雑誌名」もそれぞれが媒体と言えます。
企業が関係者に連絡を取るための「メール」や「手紙」、その他にも「電車の中吊り広告」や「屋外看板」USB/SSDなどの「情報を記憶する装置」も媒体です。
要するに「媒体」という言葉自体は規模や分野で定義されません。
「メディア」との違い
簡潔に説明すると、メディア=媒体の一部と言えますが、媒体=必ずしもメディアとは言えません。
メディアとは媒体の中でも「大衆に向けて発信が可能なツール」のことを指します。
前述した中では「新聞」や「雑誌」「テレビ」「電車の中吊り広告」などのことです。
最近のメディアと言えば、検索キーワードによって情報が表示される「ウェブメディア」や誰でも参加できコミュニケーションが取れる「ソーシャルメディア」などが勢いを増しています。
今後もデジタル化が進むにつれて、新しいメディアが誕生する可能性は大いにあるでしょう。
広報業務を円滑に進めるために「媒体」と「メディア」それぞれの意味をしっかり理解したうえで、場面や会話をする相手によって使い分けが出来ると尚良いでしょう。
広報業務に関係のある媒体
新商品やサービスの発表、企業情報の開示など、一般消費者やステークホルダーへ情報を届けるためには媒体を介することが一般的です。
ここからは、広報担当者に関わりの深い3種類の媒体の特徴を紹介します。
4大マス媒体
マス媒体とは、主に「大衆(=マス)に向けて発信を行うメディア」のことを言います。
その中でも「新聞」「テレビ」「ラジオ」「雑誌」のことを4大マス媒体(マスメディア)と呼び、
各メディアは不特定多数の購読者・視聴者に向けて多種多様な情報を伝達しているため、社会的影響力が大きいのが特徴です。
広報を担当する方の中には、これら4大マス媒体に取り上げられることを目標にプレスリリースを配信するなどの活動を行っている方も少なくないと思います。
そんな4大マス媒体をさらに詳細に分類し、傾向と効果をご紹介します。
新聞
「新聞」は取材をもとに記事を作成しているため、社会的信頼性が最も高い媒体と言えます。
例えば、企業が取り扱うサービスの不具合や不祥事が起きた際に、迅速な信頼回復を行う方法としてまず初めに考えられるのが新聞です。
最近の傾向は新聞社がWebメディア(ネットニュースサイト)を運営していることがあることです。
この場合「新聞」というメディアは「紙」と「Web」2種類を媒体としていることになります。
参考:日本の新聞社一覧
参考:日本の新聞社(Webサイト)一覧
テレビ
「テレビ」は映像や音によって情報を伝えられることが強みで、幅広い視聴者にリーチしているため、一般消費者が最も身近に感じる媒体です。
CMを打ったり番組でタイアップを行うなど、企業側が広告媒体として使うこともあります。
視聴者が多い分、テレビという媒体を介することで認知度向上が大いに期待できます。
ラジオ
「ラジオ」は無線通信を用いており速報性が高いため、災害時に一番活躍する媒体です。
音情報だけのメディアなので、運動や料理など別の作業をしながら番組を楽しむ視聴者が多いのが特徴です。
また、聴覚記憶は質が高いと言われており、他の媒体を介するよりも記憶に残りやすく過去に視覚で捉えた情報を想いおこさせる効果があると言われています。
雑誌
「雑誌」は月刊や週刊などの周期で定期的に刊行される媒体です。
各媒体(雑誌の種類)ごとにターゲットが明確で、購読者の一定の特徴を把握しておくことで広報戦略を立てやすいと言えます。
4大マス媒体の詳細な特徴については、下記記事もご参考にしてください。
インターネット媒体
第5のマスメディアとも言われつつあるインターネット媒体ですが、その成長速度は年々加速しています。
情報を発信するまでのスピードが速く、コストをかけずに始めることが出来る手軽さもメリットのひとつです。
4大媒体とは違い、ターゲット層を分類して情報を伝達するだけでなく、発信側と受信側がコミュニケーションを取れる媒体であるのが特徴です。
またスキルを身につけることで、個人でも媒体を介した施策の効果を測定できるので、広報戦略を考える際に非常に役立つ媒体です。
多種多様な媒体があり、日々当たり前のように使っているものではありますが、改めて代表的な媒体3つを紹介します。
ウェブサイト
「ウェブサイト」はインターネット上に公開されているウェブページを、同じドメイン内に集めて情報を伝達する媒体です。
ひとまとめにすると大きいですが「コーポレートサイト」や「ブログ」今まさに読んでいる「オウンドメディア」もウェブサイトを詳細に分類した媒体のひとつです。
ストック型の媒体なので、過去記事や役立つ情報が蓄積されます。
その結果、安定したアクセスやファンの増加が期待できます。
検索エンジン
「検索エンジン」は検索窓と呼ばれる入力ボックスにユーザーが知りたい情報を入力することで、関連性の高いウェブサイトを見つけることを助ける媒体です。
ユーザーが欲しい情報を、短時間で簡単に提供できます。
広報担当者がウェブサイトを運用する場合は、検索された時に上位表示されるか(有益な情報を提供できているか)が重要になります。
SNS
「SNS」はリアルタイムで起こっていることを、即時に伝達することが得意な媒体です。
元々はコミュニケーションツールとして利用されていましたが、近年はその拡散力を利用し広告媒体として使われることもあります。
「X(Twitter)」や「Instagram」「TikTok」など、フロー型の媒体なので時間と共に投稿が姿を消してしまいます。
その反面、瞬間的な拡散力が最も長けていて、最近では広報活動の一環として自社アカウントを作成する企業が増えています。
セールスプロモーション媒体
セールスプロモーション媒体とは、マスとは違い「ターゲットに対してピンポイントに情報を発信する媒体」のことです。
CMやウェブ広告などの「ブランディング」を目的とした広告媒体は含みません。
ターゲットが「有益だと感じる情報」を直接的に提示し、認知・信頼性向上の他にも購買意欲を搔き立てることを目的に活用します。
POP
「POP」とは店頭に置く宣伝物全般のことを指します。
看板やショーカード(特徴や機能を案内するもの)、割引案内などのことです。
現場の担当者が作成する場合もありますが、イベント等では広報担当者が作成を依頼されることもあります。
ターゲットの心理に働きかける訴求方法を考えつくよう、日頃から自社の理解と第三者視点を持つように心掛けましょう。
DM(ダイレクトメール)
「DM」とは企業が直接ターゲットに送付する、手紙やメールのことを指します。
確実にターゲットへ届けられることや、直接営業をかける前のワンクッションとして活用できるのが利点です。
また、メール送付の場合は後の開封率など効果測定を行うことで、内容をブラッシュアップしその後の効果を上げることができます。
ちなみにメールはインターネットを介して送受信するため、見方を変えれば「インターネット媒体」とも言えます。
自分の所属する企業に合わせた媒体の選び方
広報業務では自社の情報を取り上げて欲しい「メディア」の選定や、その時々で使い分けるべき「媒体」があります。
前述したような、大分類・中分類・小分類それぞれの媒体の特徴を理解することで企業の施策に最適な媒体の選定が可能になります。
広報施策の目的・目標を明確にする
例えば、幅広いターゲットに自社の情報を知ってもらいたい、認知拡大やブランディングのための媒体であれば「4大マス媒体」が適正と言えるでしょう。
目標に対するターゲット属性や行動パターンが把握できている場合は、情報の伝達先が詳細に指定できるインターネット媒体が使いやすいです。
注意しておきたいのは、使う媒体を先に決めてしまわないことです。
媒体毎の特徴を把握していることが前提ですが、目的・目標に対して、どの媒体を当てはめると最大の効果が発揮できるかを考えることが重要です。
費用に対し適正な効果が見込めるか
認知拡大のために4大マス媒体を使いたいとなったとき、すぐに「広告(CM)を打てばいい」という答えを出してしまうのは時期尚早かもしれません。
なぜなら、広告を出すためにはそれなりの「費用」や「時間」がかかるからです。
組織の予算や自分の業務量を考慮し、本当に問題が無いか・他の方法が無いかをしっかり確認しましょう。
また、4大マス媒体やインターネット媒体を狙う場合は「プレスリリースを配信する」のも有効です。
比較的安価ながら、記者や編集者に記事にしてもらうことで、費用対効果が広告以上になるということもあります。
配信サービスによっては優先的に記者・編集者に紹介してもらえるプランもありますので、是非検討してみてください。
さいごに
「メディア」「媒体」それぞれの種類や数は日を追うごとに増加しています。
一度把握して終わりではなく新しい媒体が生まれていないかどうか、日々チェックしていきましょう。
そして新しい媒体を活用することは、これからの広報活動をより円滑化し、時代を乗りこなすための手段となるでしょう。
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