テーマ③メディアの目に留まりやすいネタ

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庄子:セミナーにご参加中の皆様で「そもそも、SDGsに関する情報をメディアは欲しがっているのか」という点、知りたいと思っている方は多いと思います。
広報担当の方も「SDGsに関して情報発信してください」と会社側から指示を受けているものの、発信するのはいいけれどメディアが欲しいと思っていなければ、それが徒労に終わるんじゃないかという気持ちが当然あると思うんです。

ニューズウィークさんのように、SDGsに関して本腰を入れて特集を組むメディアもこれから増えてくるだろうと思いますが、記者・編集者の方から見てSDGsに関連するどういうものであれば「取材したい」「記事を書いてみたい」と思うのか教えていただけますか?

森田氏:一言でお伝えするのはなかなか難しいですが(苦笑)、基本的にはやはり「面白いネタかどうか」ということになると思います。
プレスリリースも、我々メディアが発信するWeb記事も、あるいはSNSの投稿も同じですが、目に留まりやすいという点から考えると、一番重要なのは「タイトル」だと常々感じます。情報量がものすごく多い中で、極端に言えばほんの数秒ぐらいの間で関心を掴まなくてはならないので、広報担当の方にあえてお伝えするとしたら「いかに工夫して目に留まるタイトルをつけられるかどうか」が大切ということですね。

例えば、著名人の名前が前半に出てくるとか、具体的に「世界初」「日本初」「〇〇初」「〇〇でNo.1」ですとか。数字はあまりにも細かく書くと目に入ってこないんですが、ある程度丸めた、でもインパクトのある数字が取り組みの中にあるようであれば、タイトルに持ってくることも重要かなと思います。
ただ、メディアによってどこが目に留まるかは異なっていたりするので、そこは少し難しいところかもしれません。

庄子:なるほど。タイトルが非常に重要というのは、私たちも「プレスリリースの書き方セミナー」でよくお伝えしていました。
SDGsに関連していて、社会性のあるプレスリリースであれば、例えば「脱炭素」や「リサイクル」「リユース」と言ったキーワードがタイトルの前半にしっかり載っている方が、(メディアが)SDGsに関連するネタを探してるときには目に留まりやすい、ということでしょうか。

森田氏:その通りだと思います。

庄子:逆に盛りすぎているタイトルの場合はどうでしょうか?例えば、SDGsに関連するキーワードを一つのタイトルに沢山散りばめすぎているような場合です。
きっとこれは「メディアの目に留まりたい」という一生懸命な思いが強くて、結果盛りすぎてしまっているんですね。こういったタイトルを時々見かけるんですが、そのあたりはやはり少し見にくい、ということはありますか?

森田氏:ありますね。SDGsの取り組みを発表している企業の大多数は、1つの目標だけに取り組んでいることは少なくて、3つ4つ取り組まれていることが多いです。それなのに一つのプレスリリースの中にそれ(複数の取り組み)を全て盛り込んだ結果、読みにくくなってしまうということですよね。
プレスリリースを受け取る側からすると、まず本文を読むまでに至らない可能性もあります。これはSDGsに限らないですが、タイトルは2、3個くらいの要素に絞っていただく方がしっかり伝わるのではないかなと思います。

庄子:ありがとうございます。ではここからは、弊社(アットプレス)で配信後、記事掲載に繋がったSDGsに関連するプレスリリースをご紹介しまして、森田さんにメディアの立ち位置からコメントをいただきたいなと思います。

事例①:ヒューマンライツ・フェスタ東京2022広報事務局

ryuchellさんやはるな愛さんがご自身のそれぞれの生き方を発信  大学生のダイバーシティ・プレゼンコンテストや ユニバーサルスポーツ体験も開催! 『ヒューマンライツ・フェスタ東京2022』

庄子:こちらは、人権に関するダイバーシティやサステナビリティに関連するイベント開催のプレスリリースになるんですけども、今旬の方を使われているので記事掲載された理由も分かりやすいかなと思います。森田さんはご覧になってどう思われますか?

森田氏:分かりやすいと仰いましたが、確かにその通りですね。ryuchellさんの写真とイベントのロゴが目立っていますが、先ほど申し上げたように本当に一番ポイントとなるのはタイトルだと思います。プレスリリースがFAXで届く場合もメールで届く場合も一番最初に見るのはタイトルなので、そういう意味でこのプレスリリースのタイトルは、ryuchellさんやはるな愛さんなど、誰もが知ってる著名人の名前を先に持ってきているのがすごく上手いなと思いますね。

恐らく、"ヒューマンライツ・フェスタ東京2022開催" のような文言が先に書かれていると、要するに "人権祭り" ということなので少し堅い印象を抱いてしまうじゃないですか。だからこそ著名人の名前を先に出して掴みを持ってくる、というのがすごく上手で、それが多くの記事掲載に繋がったのかなと思います。

事例②:マテックプロダクツ

リサイクル商品の開発・販売をするマテックプロダクツが、 レアアースをリサイクルした世界に類を見ないグラス 「Re.Neo(リ・ネオ)」を限定販売!

庄子:こちらは、自動車のバッテリーから取り出されるレアアースをリサイクルして作ったグラスを販売するという北海道の中小企業のプレスリリースなんですけれども、どうご覧になりますか?

森田氏:こちらのプレスリリースは、レアアースをリサイクルしたグラスということで個人的にもすごく興味を惹かれるんですが、タイトルに「世界に類を見ないレアアースをリサイクルしたグラス」と書いてあるのがすごくいいなと思います。

記事掲載に至るには、実際にプレスリリースが目に留まるかどうかという事と、もう一つ、目に留まったリリースを読んで実際にメディアが記事にするかを決める、というポイントがありますが後者の部分を左右するのは信頼性だと思うんですね。
タイトルに書いてあることがしっかり本文で補強されているか、このプレスリリースで言うと、レアアースの研究機関との共同開発ということが書いてあるので、「世界に類を見ないグラス」というのもすごく説得力があって信頼性がありますし、ネタ自体も面白いので、記事掲載の数が多かったというのは本当にはよく分かりますね。

こちらのプレスリリースは、中小企業でも取り組みが良ければ記事になるという好例だと思います。

庄子:ありがとうございます。例えばこれが仮に、グラスを新発売しますというプレスリリースと、今回のようなレアアースをリユースしてグラスを作りましたという二つのプレスリリースが森田さんの手元に届いた場合、やはり後者のプレスリリースの方が社会性や文脈などを見て、記事を書こうというモチベーションが湧いてくるのでしょうか?

森田氏:はい、そう思います。グラスを発売するという情報に一つ意味が足されることで、全然違ったものになってより価値の高い情報になりますし、例えば物系の雑誌やメディア以外でも、レアアースを使ったという要素が足されることで、我々ニューズウィークのようなメディアでも取り上げやすい、取り上げたいと考えると思います。

庄子:やはり情報に社会性などの要素が加わることによって広くカバーできると言いますか、取り上げたいと思うメディアの裾野が広がっていくということですね。

森田氏:広がりますね。

庄子:なるほど。結果的に、記事掲載数の増加に繋がる可能性があるということですね。

事例③:栗田工業株式会社/株式会社日立製作所

栗田工業と日立が、「環境負荷ゼロ」の循環型社会を見据えた ソリューションの社会実装とエコシステムの構築に向けて 本格的な協創を開始

庄子:こちらは、栗田工業さんと日立製作所さんという比較的大手のプレスリリースになりますが、いわゆるサプライチェーンの中でなるべく環境に負荷を与えない「環境負荷ゼロの実現」に向けた協創を開始、という内容です。

恐らくSDGsに関連するものには、自社で完結するものもあれば、パートナー企業と一緒に取り組むパターンも結構あると思うんですね。その時に、せっかく取り組むのであれば1社単体ではなくパートナー企業と連名でリリースを出すといった切り口もあるかなと思うんですが、このプレスリリースに関して森田さんはどういう印象を抱かれましたか?

森田氏:こちらのリリース、失礼ながら一見地味な発表ではあるんですが、環境負荷ゼロの循環型社会という内容でSDGs関連だというのが一目で分かります。また、栗田工業と日立製作所という誰もが知っている大手企業の名前が一番最初に目に飛び込んでくるという点で、タイトルも工夫されてるなと思います。

このリリースの記事掲載数が多かったというところについても、私は結構興味深いと感じました。
というのも、協創開始、手を組みました、合意しましたという発表だけでは、正直もう少し具体的に物事が始まらないと記事にならないことも結構あるんですね。ただ、実際には記事になっている、掲載された媒体数も多いということは、それだけSDGsに対して社会の関心が高まっている証拠と言えるかもしれません。

庄子:なるほど。ちなみに、今後協創開始などのプレスリリースを出したい場合、もっと加えられると良いことや、メディアが目に留めやすく記事掲載に繋がりやすいポイントを更に上げるとしたら何かありますか?

森田氏:そうですね、ちょっと1時間ぐらいいただいてもいいですか(笑)
ただ敢えてポイントを上げるとしたら、実際にリリースを出す段階でどこまで発表できるか分からないですが、計画段階でも良いので具体性を示せて、かつタイトルでもそれを伝えられると良いと思います。

庄子:ありがとうございます。具体的な活動が目に見えてくると、より記事にしやすいという傾向はあるものの、方針に加えて具体的な計画も示していくことで記事掲載の可能性が広がる、ということですね。

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