記者発表会とは|プレスリリースだけではない、メディアへのPR手法を紹介

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企業の顔として重要な役割を担う広報担当者なら、知っておきたいPR手法があります。
プレスリリースと同等に欠かせない情報発信のひとつである「記者発表会」についてご存じでしょうか。

今回は、「記者発表会とは何か」という基本部分の解説から、開催を検討されている広報担当者に向けて、記者発表会を開くまでの流れを紹介します。

プレスリリースとは別のPR手法「記者発表会」とは

「記者発表会」は、プレス発表会やメディア発表会と呼ばれることもあります。
企業や団体が新製品・サービスを発表するために、多数の記者や報道関係者を招待して行うイベントです。

多くのメディアに対して一斉に情報を届けられることに加え、記者と対面でコミュニケーションがとれる絶好の機会です。
プレスリリースとは異なり、記者に直接商品やサービスを見せ、体験してもらうことができるため、文章だけでは伝えきれない情報を深く理解してもらえる効果的なPR手法です。

記者発表会を開催するメリット

一度に多くの記者へ情報発信ができる

記者発表会は多数の記者や報道関係者を一堂に招待するため、一度の説明で広く情報発信することができます。
また、実際に商品やサービスを見てもらいながら説明できるため理解度も深まります。商品サンプルを直接渡すことができるのもメリットです。

メディアと直接コミュニケーションが取れる

記者と対面で接すると、メディア側の意見や興味・関心を直接聞くことができます。
これにより得たメディアとの繋がりや情報は、今後の企業の広報活動や、発表内容のクオリティ向上につながります。
他にも企画次第ではありますが、スチールやムービーが入れば、大きな記事やニュースとして取り上げられるなど、企業の認知拡大に大きく貢献できるでしょう。

但し、記者発表会が同業他社の発表と時間帯が重なったり、社会や市場に高い関心を持ってもらえる情報ではないと記者に来てもらえない可能性があります。
こういった点も考慮しながら、記者発表会の準備を進めることが大切です。

「記者発表会」と「記者会見」の違い

記者発表会

記者(メディア)に向けて、商品・サービスなどをニュースとして取り上げてもらうために発表する場合に開催する「能動的」な会。

記者会見

記者や世間からの要望に応じて開催する「受動的」な会。
記者クラブに申し入れて開催する場合と、自社内もしくは別途会場を設営して行う場合があります。

記者発表会の4つの種類

ここからは、記者発表会の種類として代表的な4つをご紹介します。
基本的に「多くの記者を一堂に集め、情報発信する」という点では同義ですが、企業ニーズや予算感に合わせて発表方法を検討しましょう。

プレビュー型の発表会

新製品の発売前に、記者を招待して実際に製品を試してもらうイベントです。製品の特徴や機能などを説明し、実際に使ってもらうことで、記事にする際の参考にしてもらいます。

専門的な商品・サービスを取り扱う場合など、より詳細な説明が必要な場合は、参加者へ資料を配布し情報を補完するケースもあります。

交流会型の発表会

主催者と記者が交流する場を設け、アフターパーティーなどを開催する方法があります。
製品やプロジェクトに限らず、業界の動向やトレンドについての情報交換を通して、記者との関係を深めることができます。
また、記者から直接フィードバックをもらうことにより、広報活動として求められていることを知れたり、製品やサービスの改善点など新しいニーズに気づくこともあります。

プレスツアー

地域や観光施設などを巡り、記事になるような情報を集めることを目的としたツアーです。
例えば、新しいリゾートホテルのオープン前にホテル内の紹介を行い、周辺施設も巡ることで、バラエティに富んだ記事ネタの提供が可能です。

その他にも、工場や開発施設を見学してもらい、製品の製造過程や開発の背景などを説明することもあります。出来上がるまでの過程に興味を持ってもらうことで、記事にする際のアングルを広げることを目的としています。

PRイベント

マーケティング要素を加えたPR活動として、PRイベントという方法があります。
比較的大規模で行われることが多く、会場設営や登壇してもらう著名人、司会者の手配など準備に時間がかかることが多いです。

イベントの企画や演出、会場の雰囲気や装飾などを工夫することで、来場する記者に強い印象を与えることが可能になります。

記者発表会を開催するまでの流れ

記者発表会の開催日が決定したら、逆算して早めに準備を開始します。

会場の手配が済んでいる場合なら、4週間前後で準備は可能ですが、制作物などが必要な場合は8~10週間前には企画書を元に社内承認が下りているのが理想といえます。

内容目安
①記者発表会の企画書作成8~10週間前
②発表会の日程確定
(会場の下見・予約、登壇者のスケジュール確認など)
7~8週間前
③制作物の発注
(メディアキット、配布サンプル、動画素材、パネルなど)
7週間前
④招待状の作成、招待開始2~3週間前
⑤発表資料の最終確認2週間前
⑥メディア参加可否の個別確認1週間前
⑦制作物の納品1週間前
⑧記者発表会実施当日
⑨アフターフォロー

記者発表会の企画立案

記者発表会の実施が決まったら、発表内容の整理目標設定、発表会を通じてメディアに何を取り上げて欲しいか(取材ポイント)などの企画立案を行います。

  • 開催日(いつ)
  • 開催場所(どこで)
  • 登壇者(誰が)
  • 招待メディア(誰に)
  • 記者発表会の種類、予算(どのように)
  • 発表内容(何を)

このように整理した項目を企画書でまとめます。

また、企画書の立案時には効果検証の方法についても記載しておきましょう。

  • 招待メディア数の目標値
  • 何の媒体での露出を図りたいか
  • 掲載記事数の目標値
  • 掲載記事の広告価値換算額の目標値

上記のような数値目標を設定し、記者発表会にかかる費用に対してどれくらいの効果が見込めるかを事前に確認しておきましょう。

記者発表会の会場選びと会場準備

記者発表会の会場選びは注意が必要です。

一般的にはホテルの宴会場や貸会議室・イベントスペースなどを利用しますが、記者の立場で来場しやすい場所かどうかを考慮して会場選定を行いましょう。

配慮例
  • 交通アクセスが良い場所か
  • 駐車場はあるか
  • 出入口までの導線の確保が可能か
  • 十分な受付スペースの有無
  • ムービーエリア(会場後方)・スチールエリア(会場前方)を含めても参加予定人数分のキャパシティはあるか
  • 発表会終了後の囲み取材場所の有無
  • 受付・クローク係や誘導員、会場設営、音響・照明などのサポート範囲

会場の下見の際には、上記の他にも備品のレンタルが可能かなど、細かな部分まで確認しておきましょう。
サポートやレンタルができないものは、外部での設備のレンタルやイベント会社の手配が必要です。

記者・メディアの招待方法

記者発表会で最も重要なポイントは、メディアを招待し参加人数を確保することです。
記者発表会の2~3週間前から、以下の方法でメディアへアプローチを開始します。

招待用プレスリリースをメディア向けに配信

通常のプレスリリースとは別に、記者発表会の開催に関する情報を簡潔にまとめて配信します。

タイトルには、「○○○に関する記者発表会開催に関するお知らせ」と記載して、以下の情報は最低限盛り込むようにしましょう。

リリースタイトル○○○に関する記者発表会開催に関するお知らせ
リード文記者発表会開催の背景
開催日時20○○年○○月○○日 ○○時~○○時
会場(地図)○○○○○○○○ (東京都渋谷区○○○○)
アクセス:東京メトロ銀座線○○○駅より徒歩10分
出席者(ゲスト)○○ ○○
発表内容商品・サービスの概要
本リリースの配信先記者クラブ、リリース配信サービス利用によるメディア配信
申込方法FAX番号、メールアドレス等
申込用紙下図を参考に添付
問合せ先広報担当者の連絡先

招待用プレスリリースを記者クラブへ投げ込み

前項で紹介したプレスリリースと同様のものを、対象となる「記者クラブ」へ持ち込み(投げ込み)ます。

記者クラブは業界ごと、官公庁所属、経済団体所属など様々ありますが、招待したい記者が所属する記者クラブへプレスリリースを投げ込みましょう。
多くの記者クラブは幹事社(幹事役を担う加盟報道機関)が存在しており、投げ込みのルールもそれぞれです。

「プレスリリース配信2日前までに投げ込みが必須」などのルールを規定している場合もあるため、余裕を持って対象記者クラブの幹事社に確認を取りましょう。

招待用プレスリリースを個別に送付

過去に取材を受けたことのある記者など、既に連絡先を把握している記者・メディアについては、個別に連絡を取って招待用プレスリリースを送りましょう。

インフルエンサーの招待

昨今の記者発表会には、メディア関係者だけではなく、SNSで強い発信力を持つ「インフルエンサー」を招待するケースも多く見受けられるようになりました。

自社の商材にマッチしていて発信力のあるインフルエンサーを選定するのが望ましいです。自社で招待する術がない場合は、インフルエンサーと繋がりのあるPR事業者などに希望のインフルエンサー像を伝えて招待する方法があります。

各メディア・記者個人・インフルエンサーを招待した後は、参加申込み者をリスト管理しておくと便利です。

開催日の1週間前のタイミングで招待人数が目標に至っていない場合は、アプローチするメディアの幅を広げたり、既に参加申し込みを貰っている記者にもリマインドの連絡をしておくことで、当日の参加者数が確実なものとなります。

記者発表会での配布物・制作物

記者発表会当日の配布物や制作物については、企業・開催規模ごとに異なりますが、代表的な3点をご紹介します。

メディアキット

必要な情報をクリアファイルや会社のキットカバーに入れて配布します。

  • 会社概要
  • 当日のプレゼンテーション資料
  • 公式な発表内容が記載されたプレスリリース(一般向けの情報解禁時に配信するもの)
  • 動画・写真などの素材データ

製品サンプル

サンプルの配布は、帰りにお土産として手渡しする場合と、メディアキットと一緒に配布する場合があります。
また、各メディアが媒体のイメージに合わせた画像・動画を撮影できるよう、物撮りのスペースを用意することも運営側の配慮と言えます。

パネル

ブース内のディスプレイと一緒に装飾として使用し製品の魅力を伝えたりブース全体の演出として使用します。
また、「バックパネル」と呼ばれる登壇者の後ろに立てかけるパネルは撮影時に映り込むことが多いため、企業ロゴやメッセージを印刷すると認知拡大に一役買うことができるでしょう。

記者発表会後のフォローアップ

記者発表会は開催したら終わりではなく、その後のフォローアップが非常に重要です。
記者と深い関係を築くことができれば、今後の広報活動でより一層効果を発揮できる(連続的にメディアに取り上げられる)ことになるかも知れません。

記者発表会の開催直後

記者発表会の開催後は、広報担当者宛てに記者から追加の問い合わせがくるケースがあります。
フォローアップを丁寧に行うことで各記者からの印象も良くなるため、開催後の問い合わせにも丁寧な対応を心がけましょう。

記者発表会の翌日以降

記事やニュースとして取り上げられた場合は、担当記者へ連絡をして記者発表会への出席とあわせてお礼を伝えるようにしましょう。
記事に反響があった際は、その情報を共有することで記者の方も大変喜ぶことでしょう。

NGリストについて

NGリストとは、記者会見において「記者発表会への参加自体をお断りしたり、質問で挙手をした際に要注意の記者(媒体)リスト」のことを指します。

近頃世間を騒がせている記者発表会での「NGリスト」問題ですが、そもそも必要なものなのか?が議論の対象になっています。

本来記者発表会とは、本記事の前半でも述べているように、多数の記者や報道関係者を招待して、新製品・サービス発表、もしくは謝罪など、目的をもって開かれるものです。

しかし、実際のところ、記者の中には

  • 会見の趣旨とずれた質問ばかりする
  • 自分の考えを一方的に主張する

といった方も一部存在するため、円滑な進行を妨げることがないようにNGリストを作らざるを得ない事情もあり珍しいことではありません。

ただし、もしNGリストの存在が公になった場合は企業の信頼を損なう可能性もありますので、NGリストを用意する際は注意が必要です。


記者発表会の効果測定方法

記者発表会開催後の報告書には、費用対効果や効果測定についての記載が必要な場合があります。

一般的には、新聞・テレビ・雑誌・ラジオ・Webそれぞれの記事掲載数・放送数が目標になることが多いですが、経済的価値としての指標では「広告換算」という手法があります。

広告換算とは、新聞・雑誌・WEBニュースサイトなどのメディア上で「記事」として掲載された際の露出成果や認知効果を、同じ枠を広告として購入した場合の広告費に換算することです。広報・PR業務ではスタンダードな評価方法となります。

記事やニュース掲載数だけではなく広告換算額を用いることで、PRイベントや記者発表会ごとの効果がより具体的に計測できるため、企画の良し悪しを定量的に比較する際に役立ちます。

さいごに

今回は、記者発表会の種類や開催の流れについて解説しました。

記者発表会は、プレスリリースと違い、直接的なコミュニケーションを通じて情報を伝えることができます。
会場の手配やメディアの招待など準備に手間や費用がかかるため、企画・実施には時間やリソースが必要ですが、メディアへの効果的なPR手法のひとつとして、ぜひ覚えておきましょう。

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