プレスリリースと言うと「新商品発売」「新店舗の出店」など会社や事業にとって“一番大きなこと”に対して出すものというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
プレスリリースは「速報性(ニュース性)」が必要とされるため「発売」や「出店」のような場面でしか出せないと思われる方もいらっしゃいますが、実は「商品発売」以外のタイミングでもプレスリリースを出すことは可能です。
「発売から時間が経過してしまったけれど、もう一度PRをしたい」など、継続的に自社商品のPRをするための切り口について、今回は食品を取り扱う企業様向けに、実際に企業が配信しているプレスリリースの事例とともに切り口のアイディアをご紹介します。
目次
なぜ継続的な情報発信が必要なのか?
そもそも、なぜ広報活動を行う際に「継続的な情報発信が必要」と言われるのでしょうか?
メディアが1日に受け取るプレスリリースの件数は500件、1,000件と言われるほど日々大量の情報を受け取っています。そのため、すべての情報に目を通すのは難しく「特に気になるもの」「視聴者・読者にとって有益だと考えられるもの」を優先してチェックする傾向があります。
さらに事件や事故、災害などが起こった場合には緊急性が高い情報を中心に取り上げるため、1回のプレスリリース配信だけでは、なかなか目に留まらず、紙面や放送時間の都合上、取り上げるのが難しいことがあります。
また信頼のある情報提供(露出)を積み重ねていくことで、メディアおよび消費者に対して商品・サービス・企業の認知度をあげることができるとされているため、継続的にプレスリリースで情報を発信することは広報活動において非常に重要であるとされています。
それでは具体的な切り口についてご紹介していきます。
販路拡大
商品発売後、取り扱い店舗が増えたり、需要拡大に伴い複数の販路で販売を行うことが決まったりすることがあります。
「一部店舗限定で販売していたものを他店舗で販売する」という話題はもちろん、WEB通販を通じて商品を販売開始するという話題もこの切り口で出すことができます。「自社サイトでの販売に加えECモールでの取り扱いが開始した」というパターンもあるかもしれないですね。
また、クラウドファンディングを利用して商品を販売する企業では、クラウドファンディングで先行販売をしたのち、一般流通でも販売をするというパターンも多いと思います。
その際に「販路拡大」の切り口としてプレスリリースを出すことができます。
事例
必見!ネットで話題の黒ごまジェラート
『胡麻ジェラ -極- 濃香黒ごま三層仕立て』実店舗でも販売開始!
これを記念しネットショップでは先着100セット送料無料!
ネット販売が好調だったことを受け、実店舗でも販売を開始する旨を告知するリリースです。
販路の拡大を知らせると共に改めて商品の特長などもプレスリリース内に記載しています。
リニューアル
商品のリニューアルはもちろんのこと、販売店舗のリニューアルやサイトのリニューアルでもOK!
リニューアルに関する情報を出す際のポイントは「どこがどう変わったのか」を明記すること。
特に従来品よりも良くなった点については積極的に情報を発信するようにしましょう。
事例
主婦のアイデアを商品化!老舗米屋が開発した「もちピザシート」
賞味期限が「45日」から「72日」に延びてリニューアル販売!
~お家でお手軽、簡単、便利!~
従来品から賞味期限を延ばしリニューアル販売を開始する旨のリリース。開発の背景や受賞歴などの情報も組み込みながら商品PRをしています。
販売実績・受賞報告
「巣ごもり需要で○○の売上が●%増」といったニュースを目にしたことはないでしょうか?
「発売から○か月でXXX個販売」「△△の売上が前年比の●%超え」といった、販売実績を知らせるプレスリリースは、特に経済・経営情報を扱うメディアに向けて情報提供をするのに最適な切り口です。
実績を知らせるプレスリリースを出す際は、商品自体に関する説明文章はもちろんのこと、「なぜそれだけ売れているのか」といった背景までしっかり記載することが大切。
単なる商品紹介のプレスリリースにならないよう、社会的背景や業界の動きなども絡めながら社会性の高い情報の提供を心がけましょう。
また、業界で実施されているコンテストやモンドセレクション®の受賞など「自社商品が評価された」という情報を発信することで商品の認知度向上に繋げる広報活動ができます。
事例1
7年保存できる「防災備蓄用飲食品セット」が
発売から3年半で累計販売数が17万箱突破を達成!
こちらのリリースは発売から3年半の累計販売数について知らせたもの。達成にあわせて商品が開発された背景を記載することで、改めて商品について理解してもらえるような記載内容になっています。
事例2
カレーパングランプリ(R) 6年連続金賞受賞で
歴代最多受賞記録を更新!
愛知県名古屋市ベーカリーピカソの 『牛肉ゴロゴロカレーパン』
今年度の受賞とともに歴代最多受賞記録である6年連続金賞受賞を知らせるプレスリリース。受賞に際し、担当者のコメントを記載していますが、こういった文章はメディアがそのまま記事にする際に引用しやすくなりますので、積極的に取り入れたいテクニックです。
キャンペーン
送料無料、○%OFF、母の日の贈り物用ラッピング等、顧客向けに行うキャンペーン情報も企業活動の1つとしてプレスリリースを出すことができます。
ただし「キャンペーンを実施します」という内容だけではメディア側も記事にしづらいため、「なぜ行うのか」といった実施背景や「おすすめのアイテム」「売れ筋商品」など、商品情報もいくつか記載するようにしましょう。
また、物価高が続く今は「お得に○○できる」「安くなる」というのも刺さりやすいキーワードです。
※ただし“お得”というキーワードは広告的とも捉えられる可能性が高い言葉ですので、「どういう点がお得になるのか」という部分を具体的に記すようにしましょう。
事例
SUMOMOベーカリー横浜青葉店、
120円パン1個無料券を配布
オープン4か月感謝キャンペーンを実施!
「120円パン1個無料」という部分がとてもお得に感じるリリース。
しかし、ただ単に無料券を配布するキャンペーンの内容だけでなく、オープン4か月記念のキャンペーンに伴ったオーナーからのコメントを載せるなど、経営面でのアプローチもできるような文章構成になっています。
アンケート調査・検証試験
キャンペーン実施予定も商品リニューアルもしばらくない…。という方におすすめなのは自社商品と関連するアンケートを実施し、その調査結果をプレスリリースとして配信する方法です。
アンケートの調査結果は「世の中の声」「消費者の声」として扱われるため、業界向け媒体から広く一般向けの情報を扱うメディアまで、幅広く取り上げられやすい内容でもあります。
ただし、アンケート調査を実施する際は必ず「自社の商品や活動」に紐づく内容である必要があるため要注意。ただアンケートを実施するだけでは商品のPRには繋がりません。逆に自社の商品等に関わりがないアンケート結果を出しても「なぜこの企業が?」という印象を与えてしまいがちです。
「こういった結果が出た」→「この課題を解決できるのがXXという商品」といったように、結論づけられるように工夫をしましょう。
また商品や事業に関する検証試験や実証実験などの話題も十分プレスリリースのネタになります。
事例1
ミツカン【全国しゃぶしゃぶ調査】 人気具材は豚肉と白菜。
具材をしゃぶしゃぶする回数は平均3.89回
北海道は“ラムしゃぶ”、近畿は“ぶりしゃぶ”など
地域の特色も明らかに
「味ぽん」で有名なMizkanでは、しゃぶしゃぶに関するWEB調査を実施。アンケート結果を発表するとともに自社商品の紹介文も設けてPRに繋げています。
またアンケート結果を発表するためのグラフィックも凝っていて「目で見て楽しめる」プレスリリースになっています。
事例2
カバヤ食品史上初「チョコレート味覚検証」結果発表
チョコと和食材の相乗効果が明らかに
~チョコ×醤油・味噌・納豆は、王道のコーヒー並みの美味しさ~
自社事業を活かした研究・検証試験を行い、それを公表したプレスリリース。こちらのリリースも結果を発表するだけに留まらず、自社のチョコレート製品にまつわるヒストリーや特長、ロングセラー商品に関する紹介など自社商品のPRを絡めています。
広告掲載
街頭広告の掲出やCMの放送開始などもニュースの切り口に。
特に著名人とのタイアップや広告への起用の話題はエンタメ・芸能系のメディアも注目しやすいネタですので、いつもと違う媒体に取り上げてもらえる機会になるかもしれません。
芸能人を起用したCMに関するリリースを出す際は「なぜその人を採用したのか」という部分まで記載すると、より充実した構成のプレスリリースになりますよ!!
事例
新UHA味覚糖『塩あずきもち』新CM
美容男子Mattさんが、あずきまみれに!
合成なし!リアルにハマって演技に挑戦!
新CM発表に関するリリースです。CMストーリーはもちろんのこと、撮影の裏側まで公開することで業界向け媒体だけでなくエンタメ・芸能関係のメディアが扱いやすい構成となっています。
社会貢献・SDGs
昨今、注目が集まる「SDGs」。フードロス対策や梱包の簡易化、脱プラスチックなど、すでに取り組まれている企業様も多いのではないでしょうか?
また上記のような環境対策以外にも企業として取り組んでいるボランティアや寄付などの社会貢献活動、経営や人事の観点から社内向けに行っている制度まで、実はプレスリリースとして配信できるネタはたくさんあります。
販促活動に直接繋がらないネタについては、あまりプレスリリースを出さないというお話を伺うこともありましたが、最近では消費者が「商品そのもの」だけではなく、「その商品を製造・販売している企業がどういった企業なのか」という部分にも注目しており、「社会的に価値の高いものを提供しているのか」という部分も選択する際のポイントにもなっているそうです。
これまで「これではPRに繋がらないかも…」と思っていたものも、実は企業の取り組みとして発信できるネタだった!ということもありますので、ぜひ今取り組んでいることをリストアップして探してみてくださいね。
事例
人気焼肉店牛角監修!「牛角キムチ」の食べきりサイズを
賞味期限を延ばしフードロスにも配慮してリニューアル発売!
「食べ切りサイズ」「従来品よりも長い賞味期限」の商品を開発・発売する旨のリリース。
フードロス対策に焦点を合わせている商品のためタイトルにもキーワードとして「フードロス」という言葉を使用し、アピールしています。
各種記念日・年中行事
企業や業界団体がPRや販促効果を目的に「○○の日」と定めたものから国際的に決められた記念日まで、様々な記念日がありますが、その定められた記念日に絡めた切り口もプレスリリースとしては効果的です。
「雑学ネタ帳」( https://zatsuneta.com/ )というサイトでは、そういった様々な記念日について紹介しており、また日本記念日協会( https://www.kinenbi.gr.jp/ )でも認定された記念日を調べることができます。
例えば食品関係であれば、全国いちご消費拡大協議会が制定したとされる1月15日の「いちごの日」や、全国和菓子協会が制定した6月16日の「和菓子の日」など、食品にまつわる「○○の日」は多数存在しています。
こういった話題はメディアが「特集」として取り上げる機会も多く、また当日Twitterではトレンド入りをすることで盛り上がることもしばしば。
また贈り物を意識したPRをする際には全日本ギフト用品協会が制定した7月7日の「ギフトの日」、キャリアデザイン・インターナショナル株式会社が“普段はなかなか伝えられない気持ち”を伝えるために制定した8月10日の「ハートの日」なども活用できそうです。
その他、バレンタイン・母の日・クリスマスといった定番のイベント(行事)もおすすめ!
ただし「記念日」を切り口にする際は、必ず主題に「新規性」を含めることをお忘れなく!
「記念日」の切り口はあくまできっかけに過ぎないため、商品発売・キャンペーンなど、プレスリリースの主題となる部分には必ず企業の動きとして既存の情報ではなく「新しい情報」を出す必要があります。
また、当日に出してもすぐに記事なるとは限らないため、必ず該当日よりも前に余裕を持って情報発信をするようにしましょう!!
各媒体の最適な配信タイミングは以下の記事をご覧ください。
読者プレゼント
雑誌などの「プレゼントコーナー」へ掲載を目指す場合は「読者プレゼント」として媒体に商品を提供する旨のプレスリリースを配信することをおすすめします。「プレゼントパブリシティ(プレパブ)」と呼ばれるのがこの方法です。
提供する物品分の費用や発送費用などのコストを企業側が負担することになりますが、メディアのプレゼントコーナーに露出することで読者への認知度拡大を狙うことができます。
※プレゼントパブリシティのリリースはクローズドに行うのが一般的です。
※生ものや液体など、商品の形態によってはプレパブとして提供できない場合があります。
さいごに
プレスリリースでの情報発信のカギは「継続的に情報を発信すること」。
1回の配信だけで記事化に繋げたり、メディアとのリレーションを築くのは至難の業です。
販促計画を立てる際はそれに伴った広報活動やプレスリリース配信についても考えることで、定期的な情報発信ができる体制を作っていきましょう。
また販促のための情報発信だけではなく、企業としての取り組みにもスポットライトを当てることでプレスリリースを書く際の切り口の幅は広がります。
今まで発信してこなかったネタについても今一度見直してプレスリリースとして出してみてはいかがでしょうか?