プレスリリースを出す上で広報担当者が期待している効果の一つとして、メディアからの取材依頼があげられます。
大きな組織だと広報部署が存在し、ある程度取材対応時のフローや体制が整っていることが多いですが、スタートアップで従業員が少ない企業や経営者の方針などを理由に、多くの中小企業は広報部が存在しないことや他の業務と兼任で担当することも少なくありません。
しかし、せっかくの取材チャンスを無駄にしないためにも来るべき日に備えどのような対応が必要なのか把握しておきたいところです。
そこで本記事では、取材依頼が来た際のスムーズな対応として広報担当者がやるべきことを解説していきます。
目次
取材依頼を承諾する前に…
取材の詳細確認
メディアから取材依頼の連絡を受けたら、喜びたい気持ちは一旦抑えてまずは詳細を確認しましょう。
確認せず場当たり的に臨んでしまうと、当日になって担当者のスケジュールが合わなかった、取材を受けたら意図しない取り上げられ方をされてしまったなどのトラブルが発生してしまう可能性があります。
また、確認を怠ったことでメディア側との意思疎通がスムーズに行えなかった結果、マイナスな印象を持たれてしまい二度と取材依頼が来なくなったという事態は絶対に避けたいため、事前確認は慎重に行いたいものです。
逆に確認が出来ていると準備や段取りもしっかり行えるため、「あの会社は対応がスムーズだからまた依頼しよう!」と思ってもらえるかもしれませんし、プラスの印象を与えることは確かです。
『取材依頼書』が欲しいと言えば送ってくれるメディアは多いですが、そうではない場合も想定して最低限以下の情報が確認できると良いでしょう。
- 掲載媒体/コーナー(または掲載ページ)
- 担当者情報(会社名・氏名・電話番号・メールアドレスなど)
- 掲載日(または放送日)
- 取材テーマ
- 取材内容
- 取材希望日
- 撮影の有無
- 質問内容(可能であればメールでもらう)
社内検討・結果連絡
詳細確認が出来たらすぐに検討を進めましょう。検討する上で大事なポイントは、「その取材が自社にとってプラスになるか」です。媒体がメジャーであるほど影響力も大きくプラスの効果が期待できますが逆も然りです。リスクについてもしっかり念頭に置いて検討する必要があります。
取材依頼を承諾する場合は、まず当日対応する担当者の選定が必要です。取材の趣旨やテーマによって誰に頼むべきなのか変わってきますが、「取材内容に一番的確に答えられる適任者は誰か」を基準に選定し、決定と同時に担当者のスケジュールも抑えておくと安心です。
検討が済んだら、可能な限り早めにメディアへ連絡しましょう。メディアは常に旬なタイミングで消費者に有益な情報を届けたいと考えているため、取材スケジュールがタイトな場合が想定されます。よって、やむを得ずお断りする場合も含めて早めに連絡することが望ましいです。
取材依頼が来たらやるべきこと<事前準備編>
担当者との擦り合わせ
よほど取材慣れしている人ではない限りその場で質問されて思ったような回答をするのは難しいため、事前にメディアへ確認していた情報、もしくは『取材依頼書』の内容を基に担当者と擦り合わせを行いましょう。
事前に質問事項をもらえている場合は回答を準備し、当日まで分からない場合は想定問答を準備し、本番を想定したシミュレーションをしておくと、担当者も情報の整理ができるので対応しやすくなります。擦り合わせの時点で不明点・不安点を洗い出して解消しておくと、お互いに当日慌てなくて済むので安心です。
他にも、以下のような擦り合わせができると良いでしょう。
- NG事項の共有(あればでOK)
- 当日の服装
- 取材対象の商材・サービスに関する基本情報
- 会社の基本情報(創立年、理念、経営状況など)
- 最新の数値データ(従業員数、売上高、事業目標、売上目標など)
社内共有
撮影が発生する場合は事前に社内へ共有します。デスクの整理整頓や機密書類は目の届かない場所へ閉まってもらうようあわせてお願いしておくと良いでしょう。
取材依頼が来たらやるべきこと<当日対応編>
取材のサポート
広報担当者自らが取材に対応しない場合でも、当日は現場に必ず同席してください。取材が円滑に進むような雰囲気づくりを始め、取材対応者が言葉を詰まらせた場合や誤解を与えそうな表現をした際にフォローするのも、広報担当者として大事な役目です。
では、円滑に取材が進むためにやるべきことを具体的に紹介します。
担当者と最終チェック
身だしなみや準備した回答について、最終チェックをしておきましょう。
撮影場所・移動導線のチェック
撮影が入る場合、取材内容はもちろんのこと取材時のカメラの写りこみまで意識してセッティングできるとベストです。また、テレビ取材の場合は撮影機材の搬入など大掛かりな作業が発生する場合があるため、スムーズな導線確保ができているとメディアからも好印象です。
配布資料の準備
会社のパンフレットや商品・サービスの説明資料はすぐに渡せるようあらかじめ印刷しておきます。取材頻度が増えてきたら、メディアへのお渡し用としてプレスキットを作成しておくのもおすすめです。
取材中のやりとりの記録
どんな質問をされたのか、どう答えたのか、取材内容は録音やメモを取るなどして可能な限り記録しておきます。
掲載日(放送日)の確認
取材された内容がいつ頃掲載(放送)予定なのか確認しておきましょう。後述の<取材終了後編>で触れますが、予定日が近づいている場合、ステークホルダーや社員に向けて事前告知をするなどのマーケティング活動に役立ちます。
【番外編】取材終了後に絶対やってはいけないこと
自社がどのように取り上げられるのか、広報担当者としては当然気になるところです。しかし、間違ってもメディアの方に「事前にチェックさせてください」などと言ってはいけません。敬遠されてしまう可能性が高いです。
何故なら、メディアには「編集権」(放送メディアの場合は編成権)というものが存在し、メディアが得た情報を掲載するか否か、どう扱うかはメディア側に決める権利があるからです。
メディアによって事前確認を依頼されるケースもありますが、あくまで事実確認を目的としたものであるため、確認箇所は企業名や数字データなど事実誤認に繋がる恐れのある部分のみに留めます。本来メディアと良好な関係性を構築するべきである広報が、メディアに嫌がられる行為をしてしまっては本末転倒です。もし事前確認を依頼されても、文章表現や内容そのものに対する修正依頼は避けるのがベターです。
取材依頼が来たらやるべきこと<取材終了後編>
取材対応は取材が終了して終わりではありません。
掲載(放送)前後にも、広報担当者にはやるべきことがまだまだあります。
取材内容の事後フォロー
取材中に答えられなかった質問がある場合や追加の素材提供をメディアから依頼された場合は、取材後迅速に対応しましょう。 また、万が一取材時の発言で訂正したい内容があった場合もあわせてフォローが必要です。
社内外へ告知
掲載日(放送日)が確定したら積極的に告知しましょう。
現代では口コミやレビュー、SNSでのシェアなど第三者による客観的な意見や情報が非常に重要視される時代です。メディアを介して発信される情報は第三者からの情報として客観性・信頼性が高いため、社外へ告知することでステークホルダーや一般消費者からの企業に対する信頼性向上が期待できます。
また、社内に告知するメリットとして、メディアに掲載されることで従業員が「うちの会社凄いな」と改めて思ってくれたり、”メディアに取り上げられた企業”で働いているというモチベーションに繋がる可能性があります。
モニタリング
企業側のミスで誤った情報を伝えてしまっていた場合、謝罪した上で正しい情報を伝えるべきですが、社会に与える影響度合いや誤りの程度によってはメディアの判断で訂正されないこともあるため、前提として覚えておきましょう。
メディア側のミスで誤った情報が発信されてしまった場合は、<当日対応編>でお伝えした取材時の記録がしっかり残っていると、「あの時、弊社はこう申し上げました」という様に自信をもって訂正をお願いできます。ただし、メディア側の過失であったとしても、訂正してもらえた際はお礼は忘れずに行いましょう。
クリッピング
広報活動はやりっぱなしにするのではなく、成果を確認しながら改善を繰り返してこそ効果を発揮します。
メディア掲載(放送)後、世間はどういった反応をしているのか、反響にどのような変化があったのかを知ることは、今後の広報活動ひいては企業活動をする上でとても有益な情報です。
クリッピングの方法については、有料のサービスを導入し精度の高いクリッピングを実施する企業が多いですが、「予算の都合」や「精度は重視しない」場合は、無料サービスを利用して最低限の情報を収集確認することも可能です。
無料でクリッピングを実施する方法は、以下の記事をご参考ください。
SNSや自社サイトで紹介
掲載(放送)後は、SNSや自社サイトを活用して取材結果を広く紹介し、より多くの人にアピールしましょう。メディアに取り上げられたことをプレスリリースで発信するのもよく見受けられる方法の一つです。
ただし、SNSでのシェアや自社サイトなどへのアップにあたり、メディアやウェブサイトからの引用やリンクを貼る場合は注意が必要です。あくまで著作権はメディア側にありますので、二次利用する場合はしっかりメディアに申請をした上で利用するようにしてください。
さいごに
今回は、企業がメディアから取材依頼を受けた際に広報担当者としてやるべきことを解説しました。
多くの広報担当者は取材時の対応ばかりに目を向けてしまうかもしれませんが、実は取材前後や掲載(放送)後の対応や振る舞いがとても大切です。企業にとって取材依頼を受けることは、掲載後までのプロセスを通じてメディアとの関係を築ける良い機会ですので、まずは広報担当者としてメディアに向けて継続的に情報を発信し続けることを意識してみてください。