インターネットやデジタルテクノロジーが浸透し進化のスピードが勢いを増す中、ステークホルダーや消費者へ情報を発信する方法も多様化しています。今まで多くの企業が行ってきた広報活動に加えて、デジタル時代に合わせた「新しい広報活動」を展開していかなければなりません。
この記事では現代社会における「広報」という言葉の意味をはじめ、よく比較される「広告」との違いや広報担当者の仕事内容・求められるスキルについてを解説します。
目次
デジタル時代の広報とは
広報という言葉は、アメリカ発祥の「PR(=Public Relations)」という概念のなかでも「組織から情報を発信する」ことを指します。
パブリックリレーションズとは「一般の人々(Public)」と「関係性(Relations)」を構築することで、組織が「一般の人々(Public)」との関係性を良好に維持するためにコミュニケーションを図ることを「広報・PR活動」などと呼びます。
昨今、広報・PR活動は社会のデジタル化とともに大きな転換期に突入していますが、SNSやネットニュースの普及により、情報発信を行う側の組織とステークホルダー(利害関係者)・一般消費者の接点が増加していることなどが理由として挙げられます。
増加した結果、広報・PR活動の一環としてWeb媒体を利用した認知拡大施策が活発化しているのが現代の特徴です。
「広報」と「広告」の違い
広報と広告は実際には大きな違いがありますが、名前が似ているので混在してることがあったり誤った解釈がなされていることは少なくありません。
情報発信までにかかる費用や発揮できる効果など、それぞれにメリット・デメリットがあります。
組織の掲げる目的を達成するために、それぞれの性質を正しく理解し目的にあった手法を選ぶことが大切です。
今一度「広報」と「広告」の違いについて振り返ってみましょう。
広報の目的・役割
「情報を発信すること」を目的としており、プレスリリースや記者会見、SNSなどを通してメディア(新聞・雑誌・テレビなど)に取り上げてもらうなど、従業員や株主、一般消費者に活動内容を理解してもらい、より良い関係を築くために活動します。
プレスリリースなどの発信内容をメディアが記事として取り上げる場合、第三者目線で客観的な情報として発信されるため消費者の感覚と近く影響力が大きいのが特徴です。
メディアに取り上げられるためには記者や編集者との良好な関係作り(メディアリレーションズ)や、いかに目に留まるプレスリリースを作成できるかなど広報担当者のスキルが問われる部分があります。
広告の目的・役割
メディア(新聞・雑誌・テレビなど)に対しお金を払って掲載される枠を確保し、アピールする手法のことをいいます。費用がかかりますが確実に掲載され、媒体のPV数や発行部数がある程度予想できるのでどれくらいの人にリーチできるか予測が立てられます。
広報と広告は求められる性質が異なるのでどちらか一方だけでいいということはなく、情報を受け取る側の反応を見ながら活動の幅を広げていくことをおすすめします。
広報担当者の役割と具体的な仕事内容
上記で広報の前提部分について紹介しましたが、実際に広報活動とは何から行えば良いのでしょうか。
広報の仕事は組織の方針によって異なり、場合によっては「社外広報」と「社内広報」など組織で分割されることもあります。
以下では、「社外広報」と「社内広報」の役割と具体的な仕事内容についてご紹介します。
社内広報
社内広報とは、従業員に対して情報発信を行い業務の円滑化を図るべくコミュニケーションを推進する業務のことをいいます。
従業員のモチベーション向上、所属する組織に対する理解と関心を深めることを目的としています。
仕事内容① 社内報の作成
代表的な業務ともいえる社内報の作成は、企業のビジョンや経営方針を浸透させたりメディアに掲載された情報を周知する目的のもので、主に紙とWebの2通りで行われます。
ポスターや冊子など紙媒体の社内報は作成に手間がかかるものの、一覧性に優れており社内の目につく位置に配置することで閲覧率が高くしっかり目を通してもらえるケースが多くあります。
メールやポータルサイトなどWeb媒体を活用した社内報は、紙に比べると手間やコストの削減が可能になるため少人数体制でも運用しやすいというメリットがあります。
また、アプリを活用して閲覧数や読了率などデータの集計を取ったり、双方向のコミュニケーションが取れるような仕組みを作ることで業務の改善・効率化を図ることが可能になります。
長期的に把握して欲しい内容なのか、リアルタイムで届けたい情報なのかなど目的によってどう使い分けるかを考えることも重要です。
仕事内容② 社内イベントの企画・開催
従業員やその家族も参加の対象になることがある社内イベントは、社員間の交流や仕事に対するモチベーションアップを目的に開催されます。
様々なイベントを企画することで、活気がある組織だと社内外に向けてアピールすることもできます。
従業員同士が仲良くなることで働きやすい環境が生まれ、結果として生産性が向上し業績にも貢献できるといえるでしょう。
従業員の団結力を高めるためにも、定期的な社内イベントの開催をおすすめします。
社外広報
社外広報とは、株主や消費者などの社外にいるステークホルダーに向けて情報発信を行う業務のことをいいます。
企業や団体の活動内容を広く伝えて良好な関係を築くことが主な仕事です。
仕事内容① プレスリリースの作成
新商品・サービスの発表はもちろん人事・組織変更や決算などの企業動向まで、組織は自らに関する新しい情報を「プレスリリース」を通してメディアへ発信します。
メディアを介して発信された情報は多くの人の目に留まりますが、ステークホルダーに届けるためには読者層・視聴者層がマッチしたメディアに取り上げてもらう必要があります。
メディアは社会的意義のあるプレスリリースをニュースのネタとして取り上げるため、同じ内容でも様々な切り口でメディアにアプローチすることが重要です。
仕事内容② メディアからの取材対応
プレスリリースやその他メディアで情報をキャッチした記者から取材依頼が来ることがあります。
取材内容が組織にとって有益かどうか、公開して問題が無い情報かなどを考慮したうえで取材を受けるか否かを広報担当者が判断します。
取材を受ける場合は会場の準備や取材対象の社員と日程調整を行い、取材中のフォローはもちろん、後日メディアとのやりとりまで抜かりなく行います。
組織とメディアがお互いに満足できる取材となるように、裏方としてスムーズな対応を心掛けましょう。
仕事内容③ SNS・ブログの更新
SNSの拡散力を活かして一般消費者からの認知を拡大させることは、組織の信頼度アップやブランド力の向上にも貢献します。
また、Web上で費用を抑えつつ手軽に始めることができるのも、メリットのひとつと言えるでしょう。
アプリやツールを活用することで効果を分析することも可能です。
SNSや自社メディアの活用は「新時代に不可欠な広報・PR活動」と言っても過言ではないでしょう。
今後求められる「広報パーソン」の必須スキル
前述したように、広報とは組織の代表として表に立つこともあれば縁の下の力持ちとして裏方に徹することもある業務範囲の広い仕事です。
そのため広報担当者に求められるスキルは多岐に渡りますが、テクノロジーの進化が加速する今、これからの時代を生きる広報担当者に求められる知識やスキルをご紹介します。
組織の方針に合わせた広報戦略を考える能力
情報発信の手段が加速度的に増えたために現代は「情報過多」と言われています。
例えば発信した内容が有益であっても、他で発信された情報に埋もれてしまいメディアやステークホルダー・一般消費者に届けることが難しくなってきています。
こういった背景もあり、発信する内容や組織の目的に対してどの広報・PR活動、手段を選択すると最大の効果が出せるかを予測し、実施後は効果検証と次に活かすための行動を取ることが重要です。
現状の課題や競合他社・業界の動向を把握することはもちろん、ステークホルダーが課題としていることまで目を向け意見を仰ぎ、問題点を洗い出し課題解決までの筋道を立てましょう。
魅力的な文章で表現する能力
形成した広報戦略をもとに発信する際には必ず「魅力的な文章を書き表現する能力」が必要です。
例えばプレスリリースであれば、形式を整えて正しくメディアにアプローチする必要がありますが、同じ商材やサービスでも切り口を変えれば何回でも配信することができます。
切り口を変えるためには、内容を多角的に俯瞰して見ると共に受け取り手に合わせて書き方を工夫する必要があります。
SNSやブログは媒体ごとに文字数や写真の枚数に制限があり、クリエイティブの内容もSNSのユーザージャンル毎に異なります。
全てを同じ内容で書くのではなく、媒体に合わせて書き換えられるようにそれぞれの特徴を把握しておきましょう。
コミュニケーション領域を拡大する能力
今まで多くの企業はメディアや自社HPを活用して、ステークホルダーや一般消費者に対して訴え掛ける形で広報・PR活動を行ってきました。
しかし近年ではプレスリリースサイトやSNS・オウンドメディアの活用により、企業から訴え掛けるだけではなく受け取り手からリアクションをもらえる、コミュニケーションを取る形の広報・PR活動が活発になってきています。
広報・PR活動の仕組みが変化している今、情報を届けるための垣根を低くすることが可能になったため、これからの広報担当者は、いかに情報の受け取り手との関係性を良好にできるかどうかが重要になります。
リスクマネジメント能力
ステークホルダー・一般消費者からのクレーム、そして不祥事や内部告発などのリスクに備えるのも広報の重要な仕事です。
各メディアを通してリアルタイムで情報発信がされることもありますので、情報をきっかけにトラブルが発生した場合は即時対応を求められます。
いわゆる「炎上」を素早く「消火」するために正確な情報を発信し直す必要があります。
今後起こる可能性があるトラブルに対してどう対応するべきか、社員の役割を明確にするなど日頃からシミュレーションを行い対策を講じておきましょう。
さいごに
インターネットやデジタルテクノロジーの進化により、広報担当者の業務内容や求められるスキルは格段に増加しました。
結果として、自分は広報パーソンとして本当に活躍できるだろうか…といった不安もあるかと思います。
「広報」とは奥が深く常に進化していくものです。時代に合わせて柔軟に対応していくことができれば、ゆくゆくは大きな力となりますのでまずは恐れずに挑戦してみましょう。
参考記事
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