昨今、SDGsに対する企業の動きとして「何となく取り組んだ方がいい」時代から「取り組まなければならない」という、企業としての責任が問われる時代になってきました。
広報担当者としては、企業のブランディングや情報発信の一つのきっかけとして「SDGsの情報を発信」することが必要です。しかし、現状はSDGsの特集を組んでいるメディアの数はそこまで多くなく、先進的な事例・他社事例など参考にできるような記事を探すことも一苦労です。
そこで今回は「SDGsのトレンド」や「メディアの傾向」についてのトークを皮切りに、5つのテーマに分けて「SDGsの情報発信」について深堀りしていきます。
庄子:SDGsは17の目標がありますが、経済・社会・環境をめぐる広範囲な課題を不可分なものとして統合的に解決することを目的としています。ですので、企業によっては「これはSDGsです」「あれもSDGsです」と半ば無理やり紐づけることも可能だと思います。
このような背景もありSDGsの情報というのは世の中に沢山広がっていますが、この数多い情報の中でも「企業が取り組むテーマ」であったり「メディアが取り上げるSDGsのトレンド」に偏りはあるかと思います。
メディアから見たときに、SDGsは今何がトレンドで、企業のこういった取り組みは注目されるのではないか、といった傾向がありましたら、ぜひお聞きしたいです。
森田氏:17の目標のうちどれかひとつを選ぶのはなかなか難しいですけれども、記事になるのが多いのは「環境」や「ガバナンス」がテーマのものが多いと思います。
世界的に見てもやはり「環境」はメディアの読者や視聴者、消費者からの関心が高いです。脱炭素や再生可能エネルギーなど取り扱うトピックも多いですし、各企業が一番対応を迫られている部分でもあります。
「ガバナンス」は私が思うに若干日本特有のものが含まれます。日本は「女性の活躍」の部分が実際に遅れていて、各企業の取り組みが活発化している状況にありますので、その分企業から発信される数は多いです。
こういった背景もあることから、この2つのテーマは日本・世界を問わず実際に記事になっている数が多いという印象を持っています。
その反面「貧困」や「教育」などは、取り組んでいる企業はあるにも関わらず、なかなか実績(記事掲載)になっていないという印象はあります。
庄子:メディアからすると「貧困」や「教育」については記事にはしにくい、ということはありますか?
森田氏:記事にしにくい、ということはありません。例えばですが、以前私は教育問題について取材したことがあります。過疎地や離島などの生徒数が少ない学校で、英語の教員を派遣するか否か、といった話は往々にしてあるかと思いますが、そういった立地でも遠隔教育が出来るようにICT機器を導入するビジネスを行っている企業の取材を行いました。
私たち(メディア)は、面白くて意義のあることをやっている企業だと分かっているからこそ取材しに行きますが、企業側からは「あまり記事にならないんですよね」と言われることも実際の所あります。
これについては、取り上げにくいというよりかは、若干埋もれてしまってるのかなと思います。やはり関心の度合いといいますか、教育問題が日本の大きな問題だとは感じていない方が多いのかなと。
庄子:確かにそう思います。
森田氏:先ほどのガバナンスの話に戻りますが、内閣府令で上場企業はサステナビリティに関する考えや取り組みの開示が求められるようになりましたね。
アットプレスさんは利用企業が多い分、取り組みの発信方法だったり悩み相談を受ける事も多いですか?
庄子:そうですね。上場企業の場合はサステナビリティの推進室や委員会などを作っている企業が多いですが、作ってみたけれどもそれをどう発信していいのかわからない、という担当者の方からご相談を受けることがあります。
IRでは情報開示が義務付けられているので書かなければならないのが事実なんですが、そこで書いた内容をPRとして発信するところまでなかなか紐づかない、という課題をお持ちの方が多い印象です。
私たちとしては、せっかく目標設定して取り組まれているのであれば、IRとしてだけではなく「企業をより良く見せる活動」としてPRに活かすべきだと思っていますが、まだ現場(広報担当者)まで情報が落とせてないというのが課題としてあるのだろうと感じています。
森田氏:確かに「対投資家」と「対消費者」がありますので、どちらにも知ってもらうことはすごく良いことですね。必要なことだと思いますが、そこのPRがまだ弱いということですね。
庄子:そうですね。IRもPRも情報発信を行う点では同じですけれども、対象が違うというところで連携がまだまだ難しい、という所があり途中で止まってしまっているのが現状かなとも思います。
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