庄子:ディスカッションの冒頭でお話がありましたが、日本で記事掲載されやすいのは「環境」や「ガバナンス」がテーマのものが多い、ということでしたね。そういった取り組みの中でも特に記事にしやすいのは上場企業や大企業なのかな、というざっくりとしたイメージがあるのですが、メディア側の意見としては、記事掲載にあたり企業規模など考えたりするのでしょうか?
森田氏:そうですね、おそらくSDGsに限らず、大手の取り組みが記事になりやすいという印象を持たれるのは、皆さんあるかもしれませんね。
個々(単独)の記事であればもちろん中小企業(の記事)も沢山あるのですが、特にSDGsで言うと「多様性」などの人的資本系は、大企業が変わることで社会に与えるインパクトが大きいので、そういった内容がテレビのニュースになったり、新聞の紙面になったり、取り上げられる機会が多いかもしれません。編集者的に言えば、読まれやすい傾向も、実際にありますので。
庄子:確かに、大企業の取り組みは社会的に影響力が大きいので、読者や視聴者からしたら他のニュースに比べて目に留まりやすく印象にも残りやすいですよね。
森田氏:それと露出に関してメディアの事情としては、個々(単独)の記事ではなく雑誌などで特集を組む場合、ちょっといやらしいかもしれませんがバランスを取ろうとするんですね。例えば、A分野・B分野・C分野、といった分野で分けてそれぞれ1本ずつ記事を入れよう、というイメージです。
庄子:分野というのは、業種などのジャンルで分けるということですか?
森田氏:業種で分けるのも一つですし、有名な企業だけではなく皆が知らない企業を入れようだとか、そういった特集の趣旨に合わせたメディア側の事情でバランスを整えることがあります。
それこそ分野で分けた後にプレスリリースを見たり、自分で検索して企業のことを色々調べてネタを探すこともあります。
庄子:なるほど、メディアが組む特集やシリーズの真ん中を突いているネタであれば、企業規模に関わらず記事を書いたり取材に行くんですね。
森田氏:そうです。特にSDGs関連の取材をしていて感じるのは、規模の小さい企業やスタートアップ等が取り組んでいることの方が、面白い内容だったり、世の中を変える可能性を秘めてるなということです。
以前SDGsのムックを作った時も、今では有名ですが、プラスチック使用量の削減に貢献できるような石灰石を主原料にした新素材を作ってる会社など、見過ごされがちな企業の色々な取り組みを取材して記事にしていました。
そういった企業が真剣に取り組んでいることは、企業規模に関わらずもっと注目されてもいいと考えています。そして私たちメディア自身、もっと取り上げていきたいという気持ちがあります。
庄子:こういった企業のSDGs達成への貢献度や取り組みの革新性が認められて、他の企業や個人にも良い影響を与えられると嬉しいですね。
森田氏:はい、大企業や大規模プロジェクトの社会的インパクトは、確かに大きいのでメディアからしても重要な情報ですけれども、SDGsについてはもう、もはや皆がやらなければいけないことだと思っています。
だからこそ、現在中小企業が取り組んでいるような、社会的に意義のある活動が特に重要だと考えています。中小企業の露出が増えることによって、社会に与える影響やポテンシャルは大きいのではないかと思います。
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