ニュースメディア「ニューズウィーク日本版」の森田氏とフリーライター岩井氏が考えるSDGs情報発信術

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7月30日にニューズウィーク日本版」様と共催し、企業とメディアの協力で実現する SDGs発信戦略」と題したセミナーを開催いたしました。

国際ニュースを発信するニューズウィーク日本版からデジタル編集長の森田様、サステナビリティやSDGsをテーマにした記事や企画に多く携わるフリーランスライターの岩井様にお話しをお伺いしました。

本記事では、昨今の注目キーワードでもある「SDGs」について企業はどう発信していけばいいのかをお話しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

※この記事は、2024年7月30日に開催された企業とメディアの協力で実現する SDGs発信戦略」のトークの一部を再構成し、加筆修正を施したものです。

セミナー概要

アジェンダ

  1. SDGs情報発信におけるトレンド・変化
  2. 企業が抱えているSDGsに関する​リアルな悩み
  3. メディア・ライター視点から見た​SDGs情報発信のポイント​
  4. 押さえておきたい取材対応のポイント​

パネリスト紹介

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ニューズウィーク日本版 デジタル編集長 森田 優介

1976年大阪生まれ。2003年入社。ニューズウィーク日本版編集部、書籍編集部を経て、2015年からデジタル編集部へ。

2017年から副編集長としてニューズウィーク日本版の本誌とウェブを兼務し、2023年4月から現職。

月刊誌、週刊誌、単行本、ムックといった紙媒体から、ウェブメディア、広告事業まで幅広い分野で編集・制作を担当してきた。

SDGs領域では、雑誌の特集やムック、ウェブで特集・記事を多数担当。2023年度から「ニューズウィーク日本版SDGsアワード」プロジェクトを主導している。 ​

 

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フリーランスライター 岩井 光子

1972年群馬県生まれ。2001年よりフリー。

一般社団法人「Think the Earth」のウェブマガジン“thinkのニュース編集のほか、一般誌やウェブ、ラジオなどでサステナビリティやSDGsをテーマにした記事や企画に多く関わる。

著書に未来をはこぶオーケストラ(汐文社)。本年度より小学6年国語の教科書(光村図書)に掲載されている。

開催の背景

企業がSDGsに取り組んだ方が良いという時代から、取り組まなければならないという時代に変わってきているという中で、広報部が情報発信の一つのきっかけとして、SDGsをどのように発信していくのかというのが大きなテーマになっている一方、

「SDGsに取り組んでいるけれど、どう世間に周知すればいいのか分からない」や、

「他の企業、同業界、海外のスタンダードと見合っているのか検証・比較するのが難しい」

といった課題を感じられている方も多くいらっしゃるかと思います。

そこで今回、SDGsに関する情報に多く触れられてきたお二人に、メディア・ライターの視点からSDGsの情報発信についてお話をお伺いできればと思い開催いたしました。

SDGsとは

SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)は、2015年に国連で採択された17の目標からなる国際的な枠組みです。

これらの目標は、2030年までに持続可能でより良い世界を実現することを目指しています。

経済、社会、環境の三つの側面から持続可能な発展を目指しており、政府、企業、団体など、すべてのステークホルダーが協力して取り組むことが求められています。

SDGs情報発信におけるトレンド・変化

SDGsの印象に残っている事例

SDGsは17の目標達成に向け、多くの企業がサステナブルな取り組みを進めています。環境問題やSDGs領域を取材してきて印象深かったものを教えてください。

森田 優介

さまざまな分野でサステナブルな取り組みがなされていますが、17の目標の中で言うと、企業の取り組みとして特に目立つのは、

  • 「5番のジェンダー・多様性」
  • 「7番のエネルギー」
  • 「12番のつくる責任・使う責任」
  • 「13番の気候変動」

といったところかなと思います。

脱炭素やエネルギー関連は、ニュースバリューも特に大きいですし、よくメディアにも取り上げられていますね。

個人的には「つくる責任・使う責任」に入りますが、フードロス削減に取り組んでいる企業も多いと感じます。

と、私は立場上、わりと大きなトレンドを見てしまう傾向があるのですが、その中で最近印象に残っている分野で言うと、1つは、DEI、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンという言葉の広がりです。

企業経営において、従業員の多様な個性を認め、公平に扱うことを推進する取り組みを指しますが、この言葉を耳にすることが本当に増えてきました。

「ジェンダーや多様性」は日本が特に遅れている分野であり、だからこそ日本企業の取り組みもこの分野は加速しているし、メディアにも取り上げられやすい傾向があると以前から考えていましたが、最近のDEIの広がりは、まさにその証拠かなと。

これは企業の規模や業種を問わず、取り組める分野でもあります。

ニューズウィークでも、まさに岩井さんに取材していただいたP&Gのような先進企業の例や、「ザ・日本のメーカー」と言ったら怒られるかもしれませんが、男性社員の多いパナソニックのDEI事例を取り上げたことがあります。

 

 

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※DEI ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン:多様性とアイデンティティを尊重し、公平な活躍機会を与えられている状態のこと

 

岩井 光子

SDGs関連で今まで一番インパクトがあったのは、回収した二酸化炭素を原料にお酒を作ることを始めたというニューヨークの会社の話ですね。

植物が光のエネルギーを使って二酸化炭素と水から有機物と酸素を作り出す、光合成というのを学校で皆さん習ったと思いますが、この作用を人為的に起こす人工光合成という研究分野があって、その分野の研究で第一人者と言われていた若者と、スミノフなどのお酒を売る会社にいた同い年の若者が意気投合して、2017年にエアカンパニーという会社を作って、ウォッカを売り始めたんです。

私は化学には疎いのですが、女性誌で海外の若いイノベーターの特集を組みたいとお題を頂きまして探したトピックでした。

女性誌ですと、やはり魅力的な写真というところも記事の大きな要素になるのですが、ニューヨークで人気のデザイン事務所と組んでいるので、リリース写真も本当におしゃれで、なおかつ製造過程でCO2を出さないどころか、逆にボトル一本あたり、1ポンドのCO2を回収できるというストーリーそのものにインパクトがあり、ネットでも結構バズりました。

 

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岩井 光子

日本の例で印象深いのは、砂丘のある鳥取に日本で唯一の乾燥地研究機関があるそうで、ガラスリサイクルの技術を持った会社が研究機関と協働して無毒の発泡ガラスを開発して特許を取ったんですね。

これを土に混ぜて農業資材にすると保水力が増すことから、水の使用量が半分で済むそうです。

雨の降る日本ではニーズが少ないかも知れませんが、水不足に悩むアフリカや中南米では、節水型の農業はすごくニーズがあって、ジェトロなどの支援を受けつつ、アフリカで現地法人を作るという動きにも発展しています。

元々はそういう意図で開発されてはいないかもしれませんが、日本の発明が海外で起きている事態にパズルのようにハマることがあり、国際展開していく企業の事例は面白いなと思いました。

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岩井 光子

また、身近な話ですと、これは私が取材した話ではなく、編集した記事でが、都内のパン屋さんが「公共窯」という取り組みを始めた話もありました。

薪窯で焼くパン屋さんは、朝が早いですよね。火を起こして安定させるまでに時間かかるので早いのだそうですが、一度400℃近くまで上がった窯は冷めるのにも時間がかかります。

そこで、パンを焼いた後の熱を有効活用するために「薪窯の一般開放」というのを始めたそうです。

このアイデアはフランスの田舎町で聞いた話をヒントにしたそうで、住民が材料を仕込んだ調理前の鍋をパン屋さんに持っていき、窯に入れている間にバルでちょっとワインを飲んだりして、良い頃合いになるとパン屋さんに鍋を引き取りに行くのだそうです。

なんかいいですよね(笑)。

エネルギーの効率利用でなおかつ、隣近所との付き合いが薄くなりがちな都心に緩やかなつながりも生まれるいい試みだなと思って、記憶に残ってます 

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SDGsに取り組む企業の変化

企業のSDGsに対する取組みについて、最近、変化を感じる部分があれば教えてください。

森田 優介

変化と言ってよいかわかりませんが、企業にとって「当たり前の視点」になり始めているのではないでしょうか。

もちろん、経営上のすべての意思決定や商品・サービスをサステナブルだと言える企業はかなり少ないとは思いますが、中小企業でも、理念の中核に据えている会社は多いですし、なにかプレスリリースを出すようなニュースがあるときに、SDGsの要素があればそれに必ず言及するだろうと思います。 

 

先日、中小企業を念頭に置いた、新しいSDGs認証制度が出来たということで取材したのですが、いわゆるグリーンウォッシュみたいな懸念はもちろんあるとしても、「SDGsの取り組みをしています」と企業がアピールし、それを世間に知ってもらうことはますます重要になってきていると実感しました。

認証を受けることの効果は、対・従業員、若者など未来の従業員へのアピールがいちばん大きいとの研究結果もあるそうです。 

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※グリーンウォッシュ:環境に配慮していると偽って宣伝する行為

 

岩井 光子

そうですね。森田さんがおっしゃるように「当たり前の視点」になってきていますし、より広がりが出ていると思います。

先ほど森田さんがご指摘されていたダイバーシティ&インクルージョンもその一つだと思いますが、変化の時代、画一的な視点の人材では困難を乗り切れない、多様な視点があることがこれからの経営には欠かせないと言われていますよね。

アンコンシャス・バイアスというんですか。その人が育った環境などで無意識に抱えている偏見に基づいた発言が同僚を傷つけることもあるので、気づいているものに関してはもちろんですが、自分でも良くわかっていない水面下の発言傾向も意識してもらうセミナーをやっているという話もよく聞くようになりました。 

また、リサイクルにしても一社で完結するより、協働した方がいいと連携して仕組みを作るといった事例が増えているような気がします。

例えば、何度か取材させていただいている中間産業廃棄物処理業者さんは、今年、九州電力と鹿児島の火力発電所跡地をサーキュラーパークという新たな資源循環の拠点とするという大きな話が動き出していました。

徹底した分別に強みのある業者さんで、リサイクルよりもリユースの方が環境負荷が少なく、そのルートを早いうちから企業に提案したりしてきた会社さんですが、やはり菅元首相のカーボンニュートラル宣言あたりから流れが大きく変わってきたと。

各企業が環境対策をコストとはとらえなくなってきていて、ブランド戦略の一環として新しいサプライチェーンの構築を各企業が急いでいますし、本気度が増しているとおっしゃっていました。  

そして、例えばこうした回収などの仕組みを協働する必要が出てきた時、中小企業の方が「うちはしがらみがないから、大企業もいろんなところに声をかけてみんな一緒にやろうといえる」と、中心になって動いている事例を何度か取材しています。

大企業と中小企業が肩を並べてやっていくというのがSDGsの面白いところだなぁとも感じますし、ニューズウイークさんがやってるSDGsアワードもそんな横のつながりを作るきっかけとしていろんな可能性を秘めているんだろうなと思います。 

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企業が抱えているSDGsに関するリアルな悩み 

森田様は「SDGsアワード」を主導されていて、SDGsに取り組まれる企業との接点も更に増えたと思いますが、よく耳にする相談内容はありますか?

森田 優介

ニューズウィークに「相談」が来るというのとは少し違いますが、企業のSDGs担当の方たちが抱える悩みみたいなものは耳にしています。

まず、サプライチェーン全体としての取り組みが期待されるなど、中小企業でも必要性が増しているけれど「どこから始めればいいかわからない」といった悩みは聞きます。

あとは「とりあえず自社のHPには載せているが、どうやって世間に周知すればいいかわからない」そして、これは特にニューズウィークということで具体的な相談を受けるケースが多いのですが、「海外に周知したい」といった悩みです。 

後ほど詳しく説明させていただきますが、昨年の夏から「SDGsアワード」のプロジェクトを始めました。

その中で、このような悩みはいろいろとお聞きしてきました。昨年のニューズウィークのSDGsパートナー企業は63社あったのですが、比較的、中堅中小企業が多くを占めました、SDGs専門部署を持つ企業はわずか18%、取り組み開始から10年たっていない企業が7割を占めており、つまり、多くの企業がいまもSDGsを模索中なところがあるのだと思います。 

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メディア・ライター視点から見た​SDGs情報発信のポイント​

情報収集の仕方

岩井はライターとして、普段どのようにアンテナを張り、情報収集をしていますか? 

岩井 光子

そうですね。国内外のいろんな信頼できるメディアの記事を読んだり、プレスリリースはやはり発信元の会社さんが書かれていて、一番現場に近い情報だと思いますので見ますし、あるいは取材の雑談から関心のあることを調べたり、深掘りしていって新しい動きやタイムリーな話にたどりつく感じでしょうか?  

情報収集は例えば、海外ニュースを多くカバーしているアイデア・フォー・グッドとかエレミニスト、ファッション業界ニュースのWWD(ウィメンズウェアデイリー)、ヴォーグ、ジェトロのビジネスニュースや専門家のメールニュースとか、アメリカのニューヨーク・タイムズは取材が深いので、記事が長いんですけど、参考になることが多いです。

もちろんニューズウィークも見ています!(笑) 

あと朝日新聞のGLOBEは世界の切り取り方が新しいので、刺激を受けることが多いです。雑誌も最近はよくSDGsやサステナブル特集を組んでいるのでCREA、anan、エル・ジャポンとか、一般誌は読者の心をつかむという点ではプロなので、どんな語り口で伝えているかは見るようにしています。

あとは最近子ども向けのSDGs冊子を作る機会が続いたので、夜に一人でEテレを見ていることもあります(笑)。最近の情報源としてはYouTubeももっとカバーできるといいと思ってるのですが、なかなか。 

SDGsは多面的な広がりがあることが大事だと思うので、世界的な動きやキーワードも入れて重層的に見せるような書き方は意識しています。

何度か取り上げられている内容でも他とは違う読後感になったり、読者にとって発見があるようにしたいなとは思って書いています。

一般誌などでは、他の流行ごとと同じレベルで消費されて、飽きられてしまうのが一番怖いなと思うので、私自身も時代の流れの中で消費されてしまわないように、その本質はどこにあるのか、流行に振り回されないように、客観的な視点を持って丁寧にきちんと書こうとは心がけています。 

SDGs情報発信のためのポイント

企業が効果的にSDGs情報発信を行うためには、どのようなポイントを意識すべきでしょうか?また、どのような情報だと目に留まりやすい(魅力的)ですか? 

森田 優介

SDGs分野に限らず、情報発信のポイントですが、まず、メディア関係者に向けたプレスリリースも、読者に向けたウェブメディアやオウンドメディアの記事も、あるいはSNSでの発信も、基本は同じだと思っています。どんな情報であれば目に留まりやすいかというと、なんといっても、まずはタイトルです。

メールボックスの中であれ、SNSのタイムラインの中であれ、極端に言えばほんの数秒という短い時間で、ターゲットとする人に刺さるかどうか。

皆さんは、ニュースをスマホで見るでしょうか。ヤフーでもスマートニュースでもいいのですが、ずらりと並んだ記事を見ていただくと、写真は人の顔のアップ、著名人の顔のアップが多いと思います。

スマホのサイズを考えると、効果的な写真ってそのぐらいなんですよね。

若者向けにTikTokで出していくとかは全く別の話になりますが、それはこのセミナーの主題ではないとして、現状では、情報発信において写真よりもタイトルがファーストインプレッションとして大事だと思っていただいてよいと思います。

それで、どのような情報だと目に留まりやすいか、短い時間でターゲットに刺さるかですが、メディア編集者として私なりの視点からいくつかお伝えします。

1つは「著名性」で、誰もが知るタレントや、あるいは出来事、もしくは発信企業が有名な企業なら企業名を使うと、人の関心を引きやすいです。

逆に言えば、発信企業が有名でないなら、タイトルには企業名が入っていないでよいと思います。

もう1つは「新規性、独自性、希少性」といったところで、「○○で初!」とか「○○で1位!」というのは、編集者として興味をひかれやすいですし、記事にもしやすいです。

あとは、SDGs情報の発信で言うと、「SDGs軸でネタを探しているメディア」にも「そうでないメディア」にも、拾われやすい発信の仕方をしたほうが取り上げられる可能性が高まると思います。

なにか新製品があって、ユニークな特徴があって面白いからそれを中心にリリースを書くのだけれど、「脱プラ」みたいなキーワードもタイトルに入れておくとかですかね。

森田 優介

岩井さん、企業からの情報発信やプレスリリースに対して、どんな情報だと目に留まりやすいかは媒体とライターではちょっと違うかもしれません。岩井さんは、どんな情報が気になりますか? 

岩井 光子

他のライターさんはどうか分からないんですけど、私は文章に専念して、タイトルはニューズウィークでも「森田さんお願いします!」という感じが多いんですが、結構早くズバッと決まりますよね?

「写真はコレ、タイトルはコレ」と。あれはやっぱり経験値ですか?

森田 優介

経験値で決まりますと言ってしまうと学びがないんですが、経験値が大きいですね(笑)

岩井 光子

どこの編集の方も、そういう目を持ってらして、いつもすごいなと下手に考えずにお任せするようにしています。

岩井 光子

ライターは編集者さんの企画に合わせて情報を探すケースが多いですが、やはりタイムリーなもの、今であれば、パリ五輪とかアメリカの大統領選ですとか、世界的な動きやイベント、世相に合致したような情報は目にとまりますね。

やはりリリースを出されるタイミングがいいと、記事につながる可能性は高いと思いますし、逆にタイミング次第で掲載を見送られてしまうということはあると思います。

だから、同じ情報にしてもどこにフォーカスするか、光の当て方で掲載される可能性が浮上することもあるのかなと。

あと、これ誰かに知らせたいな、新しい! 面白い!と高揚感を感じるかどうかとかは大事にしています。

ハッとさせるような解決策。そういう手もあったかとか(笑)。新しさを感じるものにはピンと来ます。

そういうプロジェクトや製品は、もうこの調べている段階から楽しいなと感じて、個人的にもぜひ取材してみたい気持ちが高まりますし、なんとなく書き出しが思い浮かんだりもします。

一方、冷静に見たいのは客観性があるかどうか。ストーリーに矛盾や誇張があると気になりますね。やはりいろんな見方を吟味した痕跡があるとリリースも説得力は増すと思いますので、業界全体の中での位置付けや新しさをデータや分析で示していただけているとか。

リリースの主観が強いと、こちらが少し引いた視点でストーリーを組み立て直す必要があったりで取材も大変かなと思ったりすることは正直あります。

記事掲載の多かったプレスリリースのポイント解説

事例①【コメダ×東山動植物園】 コメダが名古屋市東山動植物園へ 珈琲豆仕入れ用の「麻袋」を寄贈

目に留まりやすい情報についての話が出たところで、こちらは弊サービス@Pressで配信した中でもSDGs関連で記事掲載が多かったリリースなのですが、お二人から見てどの部分をきっかけに記事掲載に至ったと思われるかご意見いただけますか?

画像:【コメダ×東山動植物園】 コメダが名古屋市東山動植物園へ 珈琲豆仕入れ用の「麻袋」を寄贈 | @Press

森田 優介

やはり「コメダ」という有名な企業と、誰もが知る「東山動物園」のコラボということで、タイトルの一番冒頭に持ってきていて目に留まりやすいのがポイントの一つかなと。

あとは、「珈琲豆仕入れ用の『麻袋』を寄贈」というのが、なんかちょっと惹かれるんですけど、これを見ただけでは分からず「これどういうこと?」と興味をそそるタイトルの付け方は上手いなぁと思いました。

読んでみると写真も素敵なんですけど中身も興味深く面白くって、記事化数が多かったのは納得です。

強いていうと、限られた字数のなかで「コメダ」「東山動物園」が2回ずつタイトルに入れているのはもったいないかなと思います。

岩井さんいかがですか?

岩井 光子

コーヒーと動物は雑誌などでも売れる人気のテーマですね。この2つの掛け合わせというのが強力な魅力になっています。

ゴリラが麻袋でくつろいで寝転んでいる写真もキャッチーで拡散したくなる絵でいいなと思いました。

コーヒーは豆の生産地の気候変動問題、コーヒーベルトと言われる熱帯からある程度の距離までしか採れないと言われていて、それが2050年問題として話題になっています。SDGsに関連する話題も多く、私もよく注意して見ているテーマです。

麻袋に関しては、捨てられてしまうものをバッグや財布など小物にアップサイクルするKISSACOというブランドがあったり、ビーチクリーンのごみ袋を麻袋にしている団体の話もありますが、動物たちが遊びに愛用しているのは知りませんでした。楽しい話題だと思いました。 

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KISSACO 公式WEBサイト

事例②窓を開けて換気しながら施錠可能! 廃プラから造った防犯二重ロック「LEGLOCK」の一般発売開始

画像:窓を開けて換気しながら施錠可能! 廃プラから造った防犯二重ロック「LEGLOCK」の一般発売開始 | @Press

森田 優介

先ほどのコメダと比べると一見地味なんですけども、実はセミナーが始まる前にも岩井さんと「いいですよね」と話していました(笑)

SDGsと関係なく、ネタ探しをするメディアにとって、「何これ、面白い!」という商品だなと思いました。

社会的意義もしっかりリリース内で熱く訴求できていいですね。「廃プラ」は重要なSDGs視点でも重要なキーワードなので、どちらの方面にも取り上げられた結果、たくさんの記事掲載に繋がったのではないかなと分析しました。

ただ、肝心の商品写真をもっと上部に配置すれば更に良かったかなと思います。

アンケート調査の結果なども掲載し、説得力もあって面白いなと私は感じたネタです。

 

岩井 光子

アイデアが面白いですね! 

換気しながら防犯面が気になっている方は多いと思います。ニッチなようですがニーズは意外とありそうで、「へぇ」となるリリースだと思いました。

いろんな用途はあるのでしょうが、換気と防犯にフォーカスしてデータと合わせて紹介しているので、記事にしやすくなっていますよね。

プレスリリース内には、実際に泥棒が入ろうとしているような画像があったりして、社員のどなたかがやったと思うんですけど、すごくわかりやすくて好感が持てました。

クラファンで大きな支持を集めたというのも、皆さんが欲しかった商品だという裏付けになっていいですし、子どもの事故防止やお年寄りの設置のしやすさなど様々な年代への配慮とメリットに触れているところも良いと思いました。

廃プラという環境面配慮のキーワードも絡めているところで、取り上げる方は記事の書き方は広がるので、お上手だなと思います。

サイトを見ると車載用品を作られているメーカーさんなんですね。他にもカラフルな砂利などいろんな製品を作られていて面白い会社さんだなと思いました。

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事例③能登半島地震で活躍した 水再生装置ユニット型ウォーターチェンジャー(R) 「バイオランドリー」の国内レンタル展開を開始

画像:能登半島地震で活躍した 水再生装置ユニット型ウォーターチェンジャー(R) 「バイオランドリー」の国内レンタル展開を開始 | @Press

森田 優介

タイトルには「能登半島地震」「商品名」「展開を開始」の3つの情報のみでシンプルですが、必要な情報が過不足なく入っていていいなと。

あと、「能登半島地震で活躍」と冒頭に入っていますが、やはりどのカテゴリーのメディアでも興味を引かれるのが大きかったかなと思います。

リアリティのある製品写真が多く入っているのもいいですね。 

プレスリリース内に製品そのものの説明は少ないですが、リンク先のサイトに詳しい情報がありました。

BtoBの製品にもかかわらず、掲載数が多いのはプレスリリースの効果を物語っていると思います。 

岩井 光子

能登半島地震の断水に対するニュースは、「THE ニュース」という感じで記事にしやすいのは分かる気がします。

「繰り返し使える」「長期運用可」「レンタル期間」など、具体的な数字が入っていないと記事にするときにデスクから「どのくらいなの?」と言われると思いますので(笑)

できれば、具体的な数字をいれていただけると、よりいいかなと感じました。

方法として微生物濾過と書いてあって、緩速ろ過と言うんですかね。ちょっとアナログな技術なのも興味深いと思いました。

学校の机を使ったり、福祉施設と連携したり、地域連携の工夫されてるのも良いなと思いました。

取材の際に伺えば良いと思いますが、開発ストーリーや能登の人の声も拾えるといいですね。

私が記事にするとしたら、飲み水以外の生活水を意外と使っていることに気づいていない人も多いので、1日にどのくらい使っているかなども伝えたいですね。

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押さえておきたい取材対応のポイント 

さん気になったとしてもなかなか聞く機会がないと思うのですが、ライターとして実際に取材を行う際にどのような情報があって、どのような取材対応だとやりやすいでしょうか?

岩井 光子

こちらからこうしてもらうとやりやすいというのは、お忙しいところ、取材に応じてくださっているのに企業様にちょっとおこがましい気もします(笑)。

取材に際して事前に本を読んだり資料を探したりしますが、どの分野も素人なので、一番苦労するのがその業界の課題感や背景の理解かなと。

自分の仕事としては、プロの皆さんと一般の人の間を橋渡しするというか、リリースからみなさんが伝えたいことを汲み取って整えるのがライターの仕事だと思っているのですが、ごく基本と思われることでもわからないことがあります。

そんな時、噛み砕いて例を出してくださったり、参考にこんなものを読むといいとか、アドバイスをくださるととても助かります。 

あと少し困るのは、企画や取材にゴーが出てから連絡が取れないというケースがたまにあって(笑)。

「担当者が一週間いません」などと言われるとちょっと焦りますね。取材して書くまでは大体1カ月ほどで、企画を出して、取材をして記事は2週間くらいというタイムスケジュールが多いです。

なので、窓口がはっきりしている、担当の方と連絡が取れる安心感はあるとハラハラしないので、いいなと思います(笑)。意外にこの連絡がうまく取れなくて取材が流れてしまうことはあります。 

森田 優介

同じく、大前提として、取材をさせていただけるだけでありがたいという気持ちもこちらにあるので、あまり偉そうなことは言えないのですが(笑)、どちからというと、ファクトやデータは資料から拾えるので、その時の思いや気持ち、資料に出てこない具体的なエピソード、そういったものを取材で聞き出したいと、常に思っています。

企業様がリリースを出すのとは違って、メディアは読者寄りにいるので、人間的な面をより押し出した方が共感が得られやすく拡散されやすいと経験値として分かっているので、もしかしたら話すのに抵抗があるかもしれませんが、苦労した経験や失敗談なども、メディアは欲しいと頭の片隅に入れていただいて...

そういったことを、インタビューを受けられる方が話せるような準備をしておいていただけると嬉しいかなと。あまり偉そうなことは言えませんが、助かりますね。

さいごに

最後に、効果的な情報発信を行うために心がけるべきことや、メディアと良好な関係を築くために必要なことがあれば、一言アドバイスをいただけますか? 

森田 優介

現代では、膨大な量の情報が行き交う中で、なかなかメディアに取り上げられないといったお気持ち、お悩みもあるかもしれません。

でもおそらく今は昔と違って、プレスリリースがメディアを介さずに直接、一般の人に届き得る時代でもあると思います。

会社のHPを消費者や取引先、就活生が直接見に来ることもあり得ます。そんな可能性も考え、ひとつひとつの情報発信の精度を上げる、惹きつけるタイトルにする、理解しやすい文面にする、思いを込める、そういったことはこれまでと変わらず、いやこれまで以上に、重要ではないかと思います。

あ、これ、メディアとの関係とは別の話になっちゃうのですが、心がけていただくといいのかなと思います。

メディアとの関係は、どうぞ根気よく、食いつきやすいネタを提供し続けていただけるとうれしいです(笑)。

メディアとライターとで少し異なる部分もありますし、すべてを拾い上げて伝えられるわけではないですが、さまざまなSDGsの取り組みを、時代の流れの中に位置づけ、一般の人に分かりやすく説明し、広く伝えていきたいと考えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ニュースメディア「ニューズウィーク日本版」の森田様、フリーライターの岩井様から興味深くタメになるお話をお伺いできました。

SDGsに関連するプレスリリースは、発信する企業も増え、比例して掲載するメディアも増加傾向にあります。

ひとつのプレスリリースにSDGsの情報も加えることで掲載されるメディアの幅も広がりますので、ぜひプレスリリースを活用した情報発信をご検討いただき、「プレスリリースの書き方が分からない」「プレスリリースを配信してもなかなかメディアに掲載されない」など、プレスリリースについてお悩みのある方はぜひご相談ください。

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