プレスリリースの種類は様々ありますが、その中でも特異なのものとして「調査リリース」が挙げられます。「PRネタに困ったら調査リリース」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、この「調査リリース」とはどういった特徴を持つのか・他のリリースと異なるフローやコツ/注意点などを解説します。
目次
調査リリースとは
「調査リリース」とは、企業の商品・サービスなどと関連する事柄に関してアンケート等を実施して調査し、その結果から間接的に商品・サービスなどをPRするプレスリリースです。
例えば、
- レジ袋有料化後「エコバッグの保有率」は○○%
- 「勤め先の育休取得について」経験者が実際に取得した平均日数は?
などのニュースをWEBサイトやテレビなどで目にしたことはありませんでしょうか?ここで発表されているデータは、メディア自身がすべて調査を行い報道をしているのではなく「調査リリース」を含む企業からの情報提供を受け、ニュースとして報道をしています。
特徴
- 新商品・新サービスでなくてもリリースできる
プレスリリースは「新規性」「ニュース性」があることが大前提の広報・PR手法のため、新商品や新サービスの提供開始時に配信をされる方が多い一方、そう頻繁に新しい商品・サービスが出ないのもまた実情。調査リリースは「調査を実施して発表をする」こと自体が企業としての新しい活動のため、新商品・サービスに動きがなくても情報発信をすることが可能です。 - 調査/分析の知識が必要
調査リリースは、アンケートを実施したその結果を分析し、分かった傾向などを発表するため通常のプレスリリースと異なり調査/分析に関しては専門的な知識が必須となります。そのため、調査リリースを発信するために調査を外注する、という方法を取る選択肢もあります。 - ストレートに商品・サービスをPRするものではない
調査リリースでは「企業の商品・サービスなどと関連する事柄」を調査するため、通常のプレスリリースと異なり「商品・サービス」に直結せず、間接的にPRします。そのため、すぐに大きな影響が出るような性質のPR手法ではありません。
向いていること
- ブランディング
すぐに大きな影響には直結しないものの「きちんとしたデータや知識を持っている企業」としての信頼性やメディアとの関係性の構築に役立ちます。継続することで「○○のことなら△△さん詳しいかも…問い合わせてみよう!」という関係が築けるようになるとベスト。 - 空気感づくり
自社商品・サービスを広める上で、世間に受け入れてもらえる「空気感」も重要な要素のうち一つです。今は常識になったクールビズも「夏場にすずしい恰好で仕事をしよう」という働きかけから様々な時代の流れを経て現在の定着に至っています。クールビズで例えると「環境意識が高まっている」ことや「夏は冷房が効きすぎている」などの調査結果が出た調査リリースを配信することで、世間の本音をニュースとして発信することが出来、「空気感」づくりに一躍買うことが出来ます。
調査リリース配信までの流れ
調査リリース配信を行うにあたって、通常のプレスリリース配信と決定的にフローとして異なるのは調査リリースの肝ともいえる、調査設計=「調査をするためのデザイン」をまず実施すること。
具体的には「どういった結果を目指すのか」アンケート実施前に仮説立てをする他、ターゲットはどこにするのか、どの程度の人数にアンケートを実施するのか、またアンケートで問う設問の設定などを行います。
後述しますが「プレスリリース」である以上、新鮮味のない情報はメディアに興味を持ってもらえません。そのため、この調査設計段階で「こういった観点からの情報を発信したい」という面白さを切り取るための設計図を描く必要があります。
調査設計後は「調査実施」→「集計/分析」と続き、そこから得られる情報をどう伝えるかがプレスリリース作成のポイントとなってきます。
調査リリース作成時5つのポイント
- 基本のプレスリリースルールはそのまま
「調査リリース」だからといって、基本のプレスリリースのルールは変わりません。5W5Hを意識して情報を整理することや最低限揃えておくべき情報などベースはそのままに、「調査リリース」ならでは必要なことを応用させて書き上げます。
\基本ルールについてはコチラから/
プレスリリースの書き方、基本構成やおさえるべきポイントとは - 調査概要
調査リリースならではの記載項目に「調査概要」があります。「調査概要」は以下の内容から成り立ちます。
調査対象 :アンケートに回答してくれたターゲット(例:○○に登録している20代の会員)
調査方法 :どのような方法でアンケートを実施したか(例:WEB回答、郵便回答)
調査期間 :アンケートを実施した期間がいつか(例:2020年11月1日~2020年11月15日)
有効回答数:アンケート結果集計後、無効回答を除いた回答数(例:545)
調査会社 :調査を外注していた場合、調査を依頼した企業名(例:株式会社○○調査) - 要点を冒頭に記載
調査リリースは比較的通常のプレスリリースと比較して情報量が多くなる傾向が強いため、各設問から特に伝えたい結果などをピックアップし、リード文に続いて「トピックス」「サマリー」などとして要点を記載することをおすすめします。 - 数字のチェックはしっかりと
調査結果を記載するため、通常のプレスリリースと比較して圧倒的に数字データが多いプレスリリースとなること、またデータ数値に誤りがあった場合、せっかく苦労をして調査した結果の信頼性を損なうことに繋がってしまいます。調査結果の発表をする以上、発表結果に誤りの無いよういつも以上入念にチェックをしましょう。 - 図・グラフ・表を用いて視覚的に分かりやすく
上記に記載したよう「調査リリース」は、数字やデータが多いプレスリリースとなるため視覚的に分かりやすくなるよう図・グラフ・表などを用いて伝えたい情報が分かるように工夫しましょう。図・グラフ・表は、受け手が分かりやすくなるだけでなく、実際に記事化となる際にメディアが記事内でも活用しやすいため必須です。
調査リリースのコツ/注意点
コツ
- 伝え方/切り口を意識
調査リリースは「どんなテーマ/話題か」も重要ですが「どう伝えるか」が重要。同じ分析/調査結果であったとしても、どの部分をどのように切り取って伝えるのかによっても良くも悪くも全く印象を変えることが可能です。 - 「メディア需要」を考え、社会的接点を意識
「PRネタに困ったら調査リリース」と言われたことも影響してか、近年は調査リリースが人気な傾向。以前はメディアにも重宝されていましたが、今となっては有り余っているという声も聞こえてきます。そのため通常のプレスリリース同様に「ニュース性」のある情報をメディアが欲することを改めて念頭に置き、社会との接点を考えて調査リリースを作成しましょう。 - 独自性があることを意識
多くの企業が調査リリースを出すようになったことから「すでに調査されている」トピックも増えてきています。同じテーマであっても、例えばターゲットが違ったり切り口が違うことで変化・独自性は作れることを認識し「この結果はすでに他社で出ていないか」を確認しましょう。
注意点
- 当たり前のことを示す結果になっていないか
苦労して調査をしても「それって当たり前だよね」という結果になってしまう可能性は十分にあります。ただし、メディアは新鮮味のない情報は取り上げませんので「調査をすること」が目的にならず、「その結果がどうなのか」一歩先まで考えられるように気を付けましょう。 - 統計/分析を自己流で行っていないか
調査リリースである以上「統計/分析」の知識が必要になります。少し知識があるからといって自己流で実施してしまうと信ぴょう性のないデータになり逆効果になることも。専門知識を持つ人がいなければ、専門家の意見を聞けるよう外注をするなど手配をしましょう。 - 「掲載されることが目的」が全面に出ていないか
受け手の印象として悪いのは「掲載されたい」がために送っている調査リリースです。コツとして記載をした「メディア需要の意識」と重複しますが「社会的に意義のあるデータ結果が出たから、知ってもらいたい!」と有益な情報提供になっているか、メディアの立場に立って考えるようにしましょう。
他社事例を参考に
調査リリースを作成する上で「どう伝えるか」の切り口はなるべく多くのリリースを参考に、それらからヒントを得て考えることを推奨します。
その上で参考におすすめの調査データを扱うサイトを3つピックアップしました。
① 調査のチカラ
インターネット上に公開されている調査データに関する情報を集約したサイト。「無料」で閲覧できるものを中心に、古今東西のさまざまな調査データがリスト化。分野別にリストを参照したり、検索を行うことで「簡単」に「たくさん」の調査データへアクセスが可能。
▶【X(Twitter)】調査のチカラ(@research_all)
② 生活定点
博報堂生活総合研究所による定点調査。1992年から隔年で実施している26年分の生活者観測データ約1,400項目を無償公開。同じ質問を繰り返し投げ掛け、その回答の変化を定点観測しています。
③ HoNote(ホノテ)
〔世の中の「ホント」と「ホンネ」がわかる〕ネットリサーチのMacromill運営、消費者のHonto(本当)やHonne(ホンネ)がわかるNote(ノート)。市場調査レポート、調査ノウハウ、マーケティングに役立つポイントなどを掲載。これから調査を始めたいと考えている方や、マーケティングリサーチの初心者をはじめ、マーケターや商品開発担当者など、消費者の声や行動をビジネスに役立てる方に向け情報をご紹介しています。
▶【X(Twitter)】市場調査メディア ホノテ byマクロミル(@HonoteMacromill)
\他にも〔役立つサイト・データ集〕まとめてます/
【保存版】広報・PRに役立つサイト・データ集 ※随時更新
さいごに
通常のプレスリリースとは少し異なる「調査リリース」。調査/分析をするからこそ、ひと手間掛かりますがその結果得られる情報は自社にとってもメディアにとっても貴重なデータになります。ブランディングと相性の良いPR手法として、ぜひプレスリリースネタの手札に加えてください。