自社の広告について、これまで発信した広告の成果を分析する「効果測定」は必要不可欠なものです。
しかし、WebメディアやSNSも含めると調査すべき範囲が膨大になった現代において、個人の力で隅々まで確認することは難しくなってきました。
そこで今回は、クリッピングという手段と、そのサービスをおこなっているサースをご紹介していきます。
自社に合うサービスを選ぶポイントも解説しますので、あわせてお役立てください。
クリッピングとは?
クリッピングとは本来、新聞や雑誌の記事を切り抜いて保管することを指す言葉です。
(日本語では「スクラップ」という言葉がありますが、これは和製英語であり、海外ではクリッピングと呼ばれています)
以前はテレビや新聞、雑誌の情報だけ調査出来れば良かったものが、最近ではWebや各種SNSといったメディアも増えたことで、これらの露出情報もクリッピングの対象範囲に含まれています。
クリッピングをする目的としては、
- 自社と他社の報道の量や質を比較する
- PRを担当した案件の効果測定をする
- PRのデータとして蓄積する
などが挙げられます。
目的も部署ごとに異なり、
- 広報担当:自社のメディア露出、イベント露出などの掲載確認・効果測定
- マーケティング担当:資料の収集
- 営業担当:営業活動の情報収集
- 編集担当:企画のための情報収集
など、幅広い用途でクリッピングは使えます。
しかし、自社・競合の掲載調査や、業界分析、レポート作成まで全てやろうとすると、とても工数がかかるため、そのような問題を解決できるのが「クリッピング」サービス、またはツールです。
クリッピングのメリット
そもそもクリッピングをすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
自社関連キーワードのメディア掲載を把握できる
キーワードのメディア掲載の件数やその内容を把握することで、例えばプレスリリースを出した際に、主旨に合った取り上げ方をされているかなどのチェックができます。
パブリシティの把握や効果測定にもつながるため、非常に重要なメリットです。
トレンドを把握できる
自社や競合他社を含めた業界のトレンドを時系列で確認することで、業界の動向や最新ニュースを把握することができます。
トレンドの把握は広報としての次なる一手の打ち方を考える上で非常に重要です。
媒体の特性を理解できる
さまざまな媒体をまとめて調査し、記録することで、メディアごとの想定読者や取り上げ方を把握することができます。
媒体ごとの特性などが把握できれば、メディアへ情報提供する際の参考にもなります。
PR戦略が立案しやすい
クリッピングの情報は自社に限らず、競合他社や世の中の企業・団体の取り組みについて知る上でも有効な手段です。
そういった取り組みの中でも、注目度の高いPR戦略を知ることで、自社のPR戦略もアップデートできます。
具体的には
- 広報活動を通じて出した情報やメッセージが正確に伝わっているか
- 広報活動に対する世間からのフィードバックは何か
- Webメディア上の掲載件数や反響
- 想定していたパブリシティ目標とのギャップ
などのデータ分析に役立ちます。
組織のナレッジとして蓄積できる
チームでPR業務を行っている場合や他部署と情報共有したい場合、クリッピングを通してさまざまなメディアの情報をチェックし、そこで得た知見をチームのために蓄積・共有できるため、非常に役に立ちます。
クリッピング自体をチームで協力して行ったり、定期的に共有の場を設けたりすることで、必要な情報が漏れなく行き渡るようになります。
営業活動での重要なデータとなる
クリッピングによって得られた情報は、同時に営業活動の際の参考資料としても活用できます。
メディアという第三者の目を通した商品・サービスの評価は、セールストークの強力な武器になるだけでなく、購入や契約といったユーザーの決断の後押しにもなります。
クリッピングサービスの選び方
調査対象メディア数
各社サービスによって、調査対象メディアのジャンルや数が異なります。
調査対象メディア数が多ければ、より精密な効果測定が可能です。
サービス費用
各社クリッピングサービスが提供している「定額プラン」の費用は、月5,000円~165,000円程度と幅広いため、自社の効果測定がどの程度必要かに応じて選ぶようにしましょう。
検索範囲
サービスによっては、検索できる数や範囲、機能に制限がかかる場合があります。
それらを補うプランもあるため、自社に適切なサービスを選ぶようにしましょう。
不要な記事はどれくらい省いているのか
クリッピングの初手はまず各社のシステムによる選別ですが、この段階でどれだけ不要な記事が混じっていないかも重要なポイントです。
サービスによっては高性能なシステムでほぼ不要な記事が混じらないようにしているものもあれば、人力で取り除いているものもあります。
クリッピングサービス一覧
@クリッピング
出典元:@クリッピング
@クリッピングは、新聞・雑誌・WEB・SNSを合わせると調査対象メディアは5,000以上、新聞・雑誌の読み落とし率0.01%以下、WEBのノイズ発生率0.05%以下という広範囲かつ高品質なクリッピング調査をご提供できます。
検索では拾いにくい記事、GoogleニュースやGoogleアラートでは検出できない記事をはじめ、主なキュレーションメディアの掲載結果も調査が可能です。
前日の掲載記事を毎朝7時半頃に報告(報告周期は変更可)してもらえるうえ、AND条件・除外条件などの複雑な検索条件も設定可能です。
「記事ポイント」を設定すれば露出の価値を独自に評価可能でき、必要な記事の追加・不要記事の削除も簡単です。
料体系
出典元:@クリッピング
WEBクリッピングの基本調査料は25,000円/月となっており、調査条件はAND検索またはOR検索にて、最大5キーワードで設定可能です。
なお、報告記事数に応じた追加料金はありません。
他のオプションとしては、
- 調査条件追加:1組(最大5キーワード)につき5,000円/月
- Facebook拡散数の報告:5,000円/月
- リーチ数の報告:20,000円/月
- 専門スタッフによる記事チェック:20,000円/月
- 報告記事の広告換算額を算出:20,000円/月
- 1日の報告回数をさらに+3回追加:10,000円/月
- 過去の記事調査:50,000円~/回
などがあり、必要に応じてカスタマイズが可能です。
また、@クリッピングにはWEBクリッピング以外にも以下のサービスが利用できます。
新聞・雑誌クリッピング
新聞や雑誌でクリッピングしたい記事に含まれそうな「調査条件」を『キーワード』または『テーマ』で指定すると、条件に合致した記事の切抜きを週2回(火・木)郵送で届けてくれます。
料金:14,000円/1キーワード または18,000円/1テーマ
口コミ・SNS分析
X(Twitter)・ブログ・掲示板のいずれか1つを対象とし、投稿に含まれそうな「調査条件」を指定することで、条件に合致した投稿を毎朝7時半頃に報告してくれます。
料金:28,000円~/月
特にX(Twitter)については、調査したいキーワードを検索して調査・分析して報告するサービスもあります。(内容は調査期間中の対象キーワードが含まれる投稿内容および総投稿数、総フォロワー数、総RT数、総いいね!数、エンゲージメント率等)
早朝クリッピング
自社や競合他社、業界周辺情報の新聞・雑誌記事を朝7時よりご指定の場所にお届けするサービスです。
情報をいち早く確認したい方以外にも、リモート勤務の方、多忙でクリッピングができない方、大阪や福岡などの地方都市の新聞も調査したい方などにおすすめです。
TVモニタリング
社名や商品名などキーワードをもとに「どのテレビ番組」の「どのコーナー」で放送されたのかを調査・報告するサービスです。
海外クリッピング
主要各国の提携モニター会社を通じて、海外のWEB記事をクリッピングします。
調査地域により料金やサービスが異なります。
以上の各種クリッピングについて、各社が知りたいことによってお見積りで詳しい料金が決まるため、気になる方は問い合わせてみてください。
ELNET(イーエルネット)
出典元:ELNET
ELNETの一番の強みは、著作権許諾済みの新聞が100紙以上あるという点でしょう。
加えて、雑誌・WEBニュースを朝一番に共有可能で、新聞や雑誌のクリッピングは掲載された紙面イメージのまま、WEBニュースと同一の画面で確認できます。写真や図表もそのまま見られますので、どのような大きさで掲載されていたかも一目瞭然です。
スマートフォンにも対応しており、在宅勤務や外出先でもご利用可能です。
記事情報の共有も、朝7時台に調査結果を幅広く全社員に共有する「モーニングクリッピング」のほかに、必要な新聞記事をメールやFAXで共有出来るプランもあります。
ELデータベースというサービスでは、1988年以降の新聞・雑誌記事約4500万件を検索可能です。
このように、主に新聞や雑誌について、過去の情報も含めて調査したい場合にはうってつけのサービスです。
料金体系
出典元:ELNET
モーニングクリッピングのメール型とFAX型はそれぞれ基本料金が70,000円/月で、他に従量料金としてクリッピングや記事検索には料金がかかります。
モーニングクリッピングの固定料金は20名で260,000円~なので、1人当たりは13,000円~となります。
それぞれ、どのクリッピングや記事検索が必要なのかを精査してから依頼すべきでしょう。
また、クリッピングかデータベース検索が1週間フリートライアル可能なので、気になる方は一度試してみてはいかがでしょうか?
内外切抜通信社
出典元:内外切抜通信社
内外切抜通信社は1939年に創業し、80年以上にわたりクリッピングサービスを提供している老舗です。
1972年からは毎日新聞社の関連会社となっており、Webクリッピングも2009年から開始しています。
調査対象媒体はポータルサイト、新聞社系サイト、各分野の専門サイトを始め、国内のニュースサイト及びニュース掲載のある情報サイト約4500におよび、SNSなどが対象のクチコミクリッピングは、X(Twitter)・Instagram・ブログが対象です。
さらに、これらの内容は独自開発の検索ロボットが記事リンクを自動で集めた後、全ての記事に専門の調査員が目を通し、不要記事をフィルタリング。
調査員が培った経験を元に、検索ロボットでは見つけられない記事も探し出して報告しています。
このように人間の手が入ることで、「ビールの新商品に関する記事」などのテーマ化できないあいまいなキーワードでのクリッピング、データベース化されていない記事からのクリッピングも可能なのです。
また、新聞雑誌クリッピングや早朝クリッピングも実施されています。
料金体系
出典元:内外切抜通信社
Webニュースクリッピングは
「月額基本調査料」+(「クリッピング単価」×記事点数)
※月額基本調査料は1テーマ:15,000円(税込16,500円)~、クリッピング単価は100円(税込110円)~
で算出されます。
月額基本調査料はテーマの数、内容によって変動します。
クチコミクリッピングは上記の通りSNSの種類によって変わりますが、その他納品形態、調査期間、報告タイミングなどによっても変動します。
自動化しづらいようなざっくりしたテーマで依頼したい場合は特にうってつけのサービスと言えるでしょう。
PR Analyzer
出典元:PR Analyzer
PR Analyzerは、テレビ、新聞、雑誌、Webサイト合計7,000以上の媒体に加え、X(Twitter)の言及数と口コミ内容、Web記事のSNS波及を網羅して効果測定を実施します。
上記3社とは異なりこちらはWebクリッピングツールの販売となっており、でのテレビ・新聞・雑誌・Web・X(Twitter)・SNS波及をすべて網羅しているサービスは国内で唯一です。
また、従来の掲載件数・広告換算費に加えて全媒体で記事・番組ごとのリーチ数を自動で算出します。Webサイトデータや問合せ数など多様なデータを組み合わせることで広報・PRの効果を精緻に測定できます(国内初の特許取得済)。
他にも、タグ自動付与で記事の分類・集計作業を効率化したり、複数ブランドをクリッピングして競合他社と比較することも可能です。
TV・新聞・雑誌・Webの4マスメディア露出とポスト数の相関性や、ツイートの内容・投稿者分析を実現したことで、デジタル・SNS時代におけるPR活動の成果を定量的に把握することが可能です。
これらの機能の多さから、ユーザー満足度調査では導入企業の9割以上が、その機能とデザインに「満足」と評価しています。
料金体系
出典元:PR Analyzer
料金は月額165,000円~とかなり高額ですが、その分全媒体の掲載分析や競合他社の分析、さらには生活者の反響も把握できるため、全ての情報を手に入れたい方にはおススメです。
カメリオ・ニュースエクスプローラー
トピックには複数のキーワードが設定でき、キーワード毎の検索の強さを指定可能なうえ、重複した記事は排除してくれるなど、高い精度を誇ります。
さらに、上記のアプリ連携で
- RSSとWebパーツで社内ポータルやグループウェアへの配信が簡単に
- クリップ記事も配信可能
- iPaaS製品を使ってメール配信やExcel連携も可能
など社内配布が容易になります。
料金体系
カメリオ・ニュースエクスプローラーは、以下3種類の定額プランを提供しています。
- ライトプラン(5トピック/ユーザー):月額19,800円
- スタンダードプラン(10トピック/ユーザー):月額29,800円
- プレミアムプラン(50トピック/ユーザー):月額39,800円
追加ユーザーも月2,000~4,000円で可能なため、自分が調べたいトピック数に応じてカスタマイズできます。
さらにカメリオ・ニュースエクスプローラーではお試しとして、2週間無料で利用できるトライアルライセンスを発行しています。
初めてで感覚がつかめない人はまずこちらで試してみてはいかがでしょうか?
NEWSCAST
出典元:NEWSCAST
最後に、上記でご紹介してきたサービスやツールとは少し異なりますが、クリッピング機能がサービスの一部として提供されている「NEWSCAST」についてもご紹介します。
NEWSCASTは本記事でもご紹介した「@クリッピング」のグループ事業であり、ニュースリリース・プレスリリース配信を主に行っている発信プラットフォームです。
10,000 メディア、12,000 リストにプレスリリースが配信可能で、高品質なメディアにニュースを送ることができますが、無料の会員登録だけで、簡易的なクリッピング機能が利用できます。
キーワードを登録するだけでWEBデータから該当する記事を取得できるものです。
本格導入する前に、まずはクリッピング自体がどんなものなのか試したいという場合活用してみてはいかがでしょうか?
さいごに
本記事では、クリッピングサービスをご紹介しました。
各社によって、料金や提供サービス、サポート体制はさまざまでしたが、調査対象メディアはマッチしているか、予算の範囲内に抑えられているか、求めていた効果測定ができるかなどを見極め、自社にあったサービスを利用しましょう。
関連記事