ミャンマー民主化後、邦人数は年50%で伸張 邦人のストレス要...

ミャンマー民主化後、邦人数は年50%で伸張  邦人のストレス要因は、インフラを基本に文化や人  さらに日本発のストレスも加わり変化

ミャンマー在留邦人のメンタルヘルス環境に関する調査

関西福祉大学 勝田吉彰研究室(所在地:兵庫県赤穂市、代表:勝田 吉彰 教授)は、企業進出ラッシュとなり、現地に住む日本人(在留邦人)数が毎年+50%の伸びを示し、官民あげて注目を集めているミャンマーをテーマに、2012年から現地調査をおこなっています。その中で2014~2015年にミャンマー在留邦人を対象に実施した「現地在住の日本人ビジネスパーソンを取り巻くメンタルヘルス環境」に関する調査の結果が日本渡航医学会誌(Vol1 (1) p28-33)に採用されました。

シュエダゴンパヤー
シュエダゴンパヤー

詳細URL: http://www.myanmarinfo.jp


■調査論文
勝田 吉彰:ミャンマー在留邦人を取り巻くメンタルヘルス環境~2015年の現状~日本渡航医学会誌 Vol9 1:28-33


■調査結果概要
今回の調査結果から、2014年と2015年の比較では、現地におけるストレス要因はインフラ関連がいずれも上位を占める一方で、「娯楽手段の不足」「ミャンマー人」が減少したということが分かり、民主化から4年を経てミャンマー生活の要領を掴みつつあることがうかがえました。一方で「日本の本社」の割合が増加し、現地事情と本社の理解との齟齬が目立ちつつあり、本社側の現地理解が必要です。
邦人のメンタル不調の噂を聞いたことがある割合が60%台と過半数に達し、実際にメンタル問題で受診や帰国を余儀なくされるケースの多発がうかがえました。
ストレス解消手段として「インターネット」「飲酒(ひとり酒)」「国外旅行」が減少し、ネットに依存し酒びたり、とにかく国外に出るのがストレス解消という状態から、ミャンマー国内に目を向ける余裕が生じてきています。脅威を感じる感染症として「狂犬病」「デング熱」が目立ちました。


■調査結果のポイント
(1) ストレス要因の上位をインフラ関連(医療・通信・生活・交通)が占めました。
これは頻繁に切断されるネット環境・激しい渋滞と公共交通の不備・医療水準の低さなどが理由となり、今後も継続すると予想されます。

(2) ストレス要因のうち「娯楽手段の不足」「ミャンマー人」が2014年に比べ15年で減少した一方で「日本の本社」が増加しました。
これまで余暇の過ごし方の情報がなく、また、ミャンマー好きの著者によって書かれた成書の「ミャンマー人は正直・勤勉・親日」との記述と、飲酒し喧嘩、家賃を吊り上げるなど、現実とのギャップに戸惑う状況であったところから、その後、現実的理解が浸透してきました。一方で、「日本の本社」を選択する数が増加し、現地を理解しないまま理不尽な指示が降りてくるという、かつて中国などで観察された事象が目立ってきています。

(3) 邦人のメンタル不調の噂を耳にしたことのある割合が60%過半数に達しました。
邦人の精神疾患罹患数の統計はなく、次善の策として“海外の日本人社会では噂が極めて速くまわる”という事象を利用し、噂を聞いたことのある割合を調査しました。結果、過半数があると回答し、メンタル不調の発生が推測されます。

(4) ストレス解消手段として「国外旅行」「インターネット」が減少した一方で飲酒関連が多数を占めました。
ミャンマー生活の要領が得られるにつれ、「とにかく国外に出ることがストレス解消」といったアフリカなどで多く見られる現象や、「インターネットに依存する状況」が、民主化後の企業進出開始から3年の月日を経て軽減しつつあるのがうかがえます。一方で、「飲酒(ひとり酒)」「飲酒(複数で)」をあわせた飲酒関連が高水準で変わらず、アルコール関連問題(依存症や身体疾患)のリスクが広く懸念されます。

(5) 気になる感染症として「狂犬病」「デング熱」が挙げられました。中でも「デング熱」は2014年に比べ2015年で増加しています。
感染症では、ヤンゴン中心部でさえ野犬の徘徊が日常的に目にされる状況で狂犬病リスクが可視化される点、また、デング熱は2015年アジア全体で記録的な発生があったことが影響しています。なお、デング熱は2016年前半も近隣国で高水準で推移しており、警戒が必要です。


■考察
2011年の民主化をスタート地点に、日本から視察を中心とするミャンマー詣での段階から先遣的性格の一人駐在の段階を経て、本格的進出のステージにあるミャンマー。ストレス要因はインフラ関連によるものが依然多いながら、現地発のストレスと日本の本社発のストレスの並列に移行しつつあります。これは日本の本社の理解不足、情報不足によるところも大きく、アルコール問題多発の懸念、感染症の問題もあわせ「今後の新たな企業進出先にも応用される問題であり」国内での啓発、積極的な報道が必要です。


■調査概要
調査方法:現地ヤンゴンにおけるアンケートおよび聞取り調査
調査対象:日本人会員・日本人医療関係者など
調査期間:2012年~2015年


■研究室概要
研究室 : 関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者 : 教授 勝田 吉彰
所在地 : 〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
TEL   : 0791-46-2525
FAX   : 0791-46-2526
Mail  : myanmar@zaz.att.ne.jp
URL   : http://www.myanmarinfo.jp/

<研究内容>
渡航医学およびメンタルヘルス。
(1) 海外赴任者のヘルスマネジメント(メンタルヘルス・感染症・公衆衛生)
(2) 国境を越える感染症

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