冬場のエアコンの効率的な使い方 京都市内・築15年・マンションでの検証結果 30分の外出ならエアコン暖房は「つけっぱなし」がお得!
「こまめな入り切り」が電気のムダ使いにつながることも
ダイキン工業株式会社は、世の中の様々な課題や困り事に対して「空気で答えを出す」取り組みを進めています。その一環として、今回、「エアコン暖房をつけっぱなしにするのとこまめに入り切りするのでは、どちらの電気代が安くなるの?」をテーマに実験をしました。
毎年、冬場になると急激な温度差や低温状態が続くことで健康に影響が生じる「ヒートショック」が話題になるなど、住宅内の温度調節が課題になっており、室内で快適に過ごすために「快適で効率的なエアコン暖房の使い方を知りたい」と言った要望が多く寄せられています。また、SNS上で「夏場にエアコンをつけっぱなしにしたら電気代が安くなった」という情報が拡散したことを受け、当社が2016年の夏にマンションのほぼ同じ条件の2部屋を使ってエアコン冷房を「つけっぱなし」にした場合と「こまめに入り切り」した場合の比較実験を実施した際には多くの反響がありました。「夏場は日中30分程度の外出であればつけっぱなしの方が電気代は安くなる」という結果に対し、「冬場のエアコン暖房の場合はどうなのか」といった多くの問い合わせがありました。
そこで、2016年の夏に実施した実験の冬バージョンとして「エアコン暖房をつけっぱなしにするのとこまめに入り切りするのでは、どちらが安くなるの?」をテーマに、どのような条件であれば冬のエアコン暖房の電気代が安くなるのか検証しました。京都市内のほぼ同じ条件のマンション2部屋を使って実際にエアコン暖房を「つけっぱなし」、「こまめに入り切り」で運転し、検証した結果をまとめましたので、下記のレポートをご覧ください。
【概要】
1.検証実験の概要・結果
<テーマ>
エアコン暖房を「つけっぱなし」にするのと「こまめに入り切り」するのでは、どちらの電気代が安くなるの?
<実験(1)>
「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなる時間帯を探る!
24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、30分間隔でON/OFFを繰り返したエアコンの消費電力量を比較し、「つけっぱなし」の方が安くなる時間帯を調べました。
→全ての時間帯で、30分間隔で「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」にした方が消費電力量は小さく、電気代が安くなりました。
<実験(2)>
「つけっぱなし」にした場合と、1日の想定生活スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した場合の消費電力量を比較する!
1日の生活スケジュールを想定して、外出時/在宅時に関わらず24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、外出時に運転をOFFにしたエアコンの消費電力量を比較しました。
→2時間の外出をした夜間(18:00~23:00)は、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さく、電気代が安くなりました。
1日(24時間)で比較しても、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さくなりましたが、電気代の差は約30円程度でした。
2.ダイキンからのアドバイス
電気代は、環境によって大きく左右されるため、どんな時でも当てはまるわけではありませんが、今回の実験と条件が近い場合、30分程度の外出であれば、運転をOFFにするよりも「つけっぱなし」にした方がお得になる可能性があります。一方、1日の生活スケジュールを想定した実験では、2時間の外出をした夜間は「つけっぱなし」にするよりも、運転をOFFにした場合の方が消費電力量が小さいという結果になり、単純に「つけっぱなし」にしておけば電気代が安くなるというわけではありませんでした。1日(24時間)で比較してみても、「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さかったものの、電気代の差は約30円程度でした。「こまめに入り切り」する場合と大きく変わらない電気代で、「つけっぱなし」にして室内の温かさを維持しながら快適に過ごす方法もありそうです。実験結果を参考に、求める快適性と運転効率を考えながら、エアコン暖房の「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を上手に使い分けましょう。
【実証実験(1)の結果】
<実験(1)>
「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなる時間帯を探る!
24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、30分間隔でON/OFFを繰り返したエアコンの消費電力量を比較し、「つけっぱなし」の方が安くなる時間帯を調べました。
<結果>
全ての時間帯で、30分間隔で「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」にした方が消費電力量は小さく、電気代が安くなりました。
グラフ1 「つけっぱなし」にした場合の室温、消費電力推移
グラフ2 30分間隔で「こまめに入り切り」した場合の室温、消費電力推移
【実証実験(1)のまとめ】
30分程度なら切るより「つけっぱなし」がお得!
実証実験(1)の「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」のそれぞれの消費電力量と電気代の結果(表1)を見ると、全ての時間帯で「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」の方が消費電力量が小さくなっています。30分程度なら、エアコン暖房を切るより「つけっぱなし」がお得という結果になりました。
表1 実証実験(1)の結果
このような結果になった理由として、「こまめに入り切り」した場合、何度もエアコンの運転をONにした直後に多くの電力を消費したということが考えられます。
エアコンは設定温度を維持する時よりも、運転を開始した直後の室内温度と設定温度の差が大きい時に電力を多く消費します。エアコンを「つけっぱなし」、「こまめに入り切り」したときの消費電力量は、下のグラフ内、黄色で塗られた面積の大小で決まります。頻繁なエアコンの入り切りは、時に消費電力量を大きくしてしまうことがあるのです。
これらのことから、短い外出であっても、部屋を不在にするときにはこまめに運転をOFFにするといったエアコン暖房の使い方は、省エネ、エコという視点からみると、条件次第では逆効果になる可能性があることが分かります。
「つけっぱなし」「こまめに入り切り」のエアコン消費電力イメージ
エアコンの「つけっぱなし」にした場合と「こまめに入り切り」にした場合の消費電力イメージは下記サイトでも紹介しています。
http://www.daikin.co.jp/kuuki/results/05/index.html
【実証実験(2)の結果】
<実験(2)>
「つけっぱなし」にした場合と、1日の想定生活スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した場合の消費電力量を比較する!
1日の生活スケジュールを想定して、外出時/在宅時に関わらず24時間「つけっぱなし」にしたエアコンと、外出時に運転をOFFにしたエアコンの消費電力量を比較しました。
<結果>
2時間の外出をした夜間(18:00~23:00)は、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さく、電気代が安くなりました。
1日(24時間)で比較しても、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さくなりましたが、電気代の差は約30円程度でした。
グラフ3「つけっぱなし」にした場合の室温、消費電力推移
グラフ4 想定スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した場合の室温、消費電力推移
【実証実験(2)のまとめ】
長時間の外出や就寝時は「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」がお得!
1日(24時間)で比較しても、「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さいが、わずかな電気代の差で一日中温かい部屋で快適に過ごせることも!
実証実験(2)の「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」のそれぞれの消費電力量と電気代の結果(表2)を見ると、2時間の外出をした夜間(18:00~23:00)の消費電力量は、「つけっぱなし」が3.4kWh(約92円)、「こまめに入り切り」が2.4kWh(65円)となり、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さくなりました。これは、30分間隔で「こまめに入り切り」をした実験(1)とは反対の結果で、エアコンの運転をOFFにする時間がある程度長くなると、「こまめに入り切り」の方が安くなるということが分かります。
1日(24時間)の消費電力量を比較してみても、12.7kWh(約343円)、「こまめに入り切り」が11.6kWh(313円)となり、「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」の方が消費電力量は小さくなりましたが、電気代の差は約30円程度でした。
表2 実証実験(2)の結果
1日(24時間)「つけっぱなし」にするよりも1日の想定生活スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した方が消費電力量が小さいという結果は当たり前のように思えます。しかし、スケジュール運転は1日(24時間)の半分以上、13時間もの停止時間があるにもかかわらず、24時間「つけっぱなし」にした場合と比べて電気代換算で約30円しか安くなっていません。なぜ13時間も停止している「こまめに入り切り」と24時間「つけっぱなし」の差がこれほど小さいのでしょうか。その答えは、室温の変化を示したグラフ5を見ると分かります。
グラフ5 「つけっぱなし」と想定スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した場合の室温推移(再掲)
グラフ5はグラフ3と4から室温の推移だけを抜き出したものです。これを見ると「つけっぱなし」は当然、室温にほとんど変化がありません。また部屋の躯体(天井、床、壁)が蓄熱されているため、少ない電力でエアコンを運転できる状態になっています。一方、「こまめに入り切り」は睡眠(23:00~7:00)や日中・夜間の外出時の運転停止のたびに室温が低下し、何度も冷え切った状態から設定温度まで上げていることが分かります。そのため多くの電力を消費してしまったというわけです。
結果としては、想定スケジュールに合わせて「こまめに入り切り」した方が消費電力量は小さくなりましたが、実証実験(1)の結果からも分かる通り、「こまめに入り切り」する頻度がもう少し増えると、結果が逆転する可能性も十分考えられます。
【ダイキンからのアドバイス】
冬のエアコン暖房は電気代が高いというイメージがあります。事実、エアコンの暖房運転は冷房運転と比べると消費電力量が大きくなります。一般的な例で考えると、夏は外気温35℃、設定温度27℃でその差は8℃ですが、冬は外気温7℃、設定温度20℃でその差は13℃にもなります。エアコンは設定温度に到達するまではフル稼働するため、外気温と設定温度の差(熱負荷)が大きくなる冬は必然的にエアコンが消費する電力量が大きくなります。
夏と冬の熱負荷の違い
では冬のエアコン暖房の電気代は他の暖房器具と比較しても高いのでしょうか?主な暖房器具の定格消費電力をまとめた表3で比較してみると、エアコンの消費電力は、他の暖房器具と比べて決して高くないことが分かります。空間全体を暖めるメイン暖房として冬のエアコンを有効活用してみてはいかがでしょうか。
エアコン暖房を使用する時、無駄な電気は使いたくないという意識から「こまめに入り切り」をしている人は多いと思いますが、今回の実験条件であれば、30分程度の外出ならエアコン暖房は「こまめに入り切り」するより「つけっぱなし」にした方がお得という結果が得られました。ちょっとそこまで外出したい、買い物に行きたいと思った時など、短時間の外出時には、「つけっぱなし」にすることで、お得で快適にエアコン暖房を使える可能性があります。
表3 各種暖房器具の定格消費電力
表4 つけっぱなし時間が30分より長くなる/短くなる場合のイメージ
実験結果は、あくまで今回の測定条件、測定環境から得られたもので、室内機、室外機の設置状況や天候、日照、最高気温、最低気温、部屋の気密性、断熱性などによって大きく変わってきます。やみくもに「つけっぱなし」にするのではなく、室温、設定温度、外気温の3つの温度を意識しながら、必要に応じて「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を使い分けましょう。
【検証実験の環境】
実験場所 :京都府京都市
建物構造 :SRC造 13階建て
築年月 :平成14年8月竣工 築15年6ヶ月
部屋の広さ :14.1帖 (4階と6階の階違いの同じ間取りの部屋を使用)
使用したエアコン:「うるさら7 RXシリーズ」 S40VTRXS‐W 4.0kW(主に14畳用)
エアコン設定 :暖房24℃、風量自動
実験に使用した部屋の間取り
実証試験をおこなった部屋の写真、【参考】東京の1月、12月の気温データ
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