世界14カ国、科学に対する意識調査 「科学は全世界で過小評価」 半数が科学に懐疑的または無関心と回答、 一方で科学の未来に対する楽観視と期待感は 全般的に高いことが明らかに
2018年3月6日(ミネソタ州セントポール)―Science needs a champion(科学には、チャンピオン<推し進めてくれる人々>が必要である)―素材・日用品メーカーの3Mがこのほど、世界14カ国を対象に初めて行った科学に対する意識調査「ステート・オブ・サイエンス・インデックス」で明らかになった結論です。
同調査によると、世界各国の人々の科学に対する見方は、非常に肯定的です。回答者の半数は、自分が生きている間に空飛ぶ車が発明されるだろうと想像し、87%が科学を退屈なものではなく、魅力的なものと捉えていました。
一方で、科学が毎日の生活に与えている影響を多くの人は感じていません。約40%の人々が、「科学がなくても日常生活は変わらない」(38%)と考えています。科学に対して懐疑的な見方も広がっています。世界中の約3人に1人(32%)が科学に対して懐疑的な見解を持っており、20%が科学に対して不信感を抱いていることが明らかになりました。
サイエンスとイノベーションを推進するグローバルカンパニーである3Mはこのほど、世界中の人々の科学に対するイメージを探ることを目的に、世界的なマーケットリサーチ会社のイプソス(Ipsos)に依頼し、世界14カ国を対象にした意識調査を実施。調査では、科学に対する知識、理解と評価について訊ねたほか、科学に対するイメージや科学の未来についての質問もしています。
3Mの最高技術責任者(CTO)ジョン・バノヴェッツは次のように述べています。
「科学は価値があると見られているのか、信頼されているのか、もしかしたら、科学は正しく評価されていないのではないか等、一般の人々が科学について、そして科学が世界に与える影響について、どのように考え、感じているかを調べました。この調査で得られた洞察は、科学にスポットライトを当てるとともに、発展途上国と先進国、性別、世代間での科学に対する考え方や捉え方の違いを明らかにしています。世界は日々、技術的な発展を遂げおり、科学こそがその技術的なブレークスルーをもたらします。この調査データを公開することで、科学に対する意識や科学の評価をさらに高め、科学を推進する世界中の『サイエンスチャンピオン』の皆さんにお役に立てればと思います」
ステート・オブ・サイエンス・インデックス調査で明らかになったポイントは以下の通りです。
● 多くの人々が、科学は「天才」だけのものであると考えている
調査では、3分の1以上が「科学は近づきがたいもの」と捉え、36%は「科学で生計を立てられるのは天才だけだ」と考えている。
● 科学に対する男女の考え方の差を解消する取り組みが必要である
女性は男性と比較すると、科学との関係性は薄く、また科学への興味も低い。女性は男性より、科学について知らないと答え(女性21% vs 男性15%)、エンジニアを職とすることに満足を感じるとする人数は大幅に少ない(女性9% vs男性25%)。しかし、医学と生命科学の分野については、女性の関心は男性を上回った。(医学にいて:女性20% vs男性14%、生命科学について:女性15% vs男性10%)
● 社会的には評価が高い科学も、日常生活の中では評価が若干下がる
科学が日常生活にとって重要(46%)と考える人よりも、社会一般にとって重要(63%)と考える人の方が多い。
● 人々は、科学に多大な期待を寄せている
およそ4分の3の人々は、難解でグローバルの課題でもある、国連が示した「持続可能な開発目標」について、科学によって解決できると信じています。世界中の人々が、購入しやすい再生可能エネルギー(75%)やエネルギー供給(74%)に関する課題を科学が解決できると楽観視しています。また、疾病の治療(75%)や清潔な水と公衆衛生(73%)、インターネットへのアクセス(73%)にまつわる課題は科学によって解決できると期待しています。一方で、気候変動(46%)、飢餓(45%)、高齢化(41%)、失業(33%)対策には、科学への期待は低い結果でした。
● 日々の暮らしでは、ほとんどの人が科学やその影響について意識していない
大多数の人(66%)が、日常生活に対する科学の貢献を「わずか」もしくは「全くない」と考えている。
● 半数近くの人が、理系の職業を目指せばよかったと考えている
半数強の人々(54%)が、文系の職業を目指したことに後悔はないと答え、半数近く(46%)が、理系の職業を選択すればよかったと考えている。
● 科学懐疑論者と科学支持者の双方が、次世代については同じ意見を持っている
次世代に関しては、科学懐疑論者と非懐疑論者は驚くほど同意見で、82%が子供たちに理系の職業を目指すように勧め、92%が子供に科学を学んで欲しいと考えている。同時に、33%が、科学が世界をいかに進歩させているかを学生・生徒により深く理解させて、理系の職業を目指したいと思わせる必要があると考えている。
14カ国それぞれの国の内訳と全調査データは以下のサイトをご参照ください。
http://3M.com/scienceindex
【補足資料(1) 日本の結果について】
●日本人、科学にポジティブなイメージがある一方で、世界一厳しく懐疑的な見方も
日本では「科学」という言葉に対して非常に前向きに捉える回答が多くを占めました。
科学は、「希望に満ちあふれ」(95%)、我々の心を捉えて魅了する(92%)。また「イノベーションを促進」(85%)し、「科学があるからこそ世の中はより良い場所となっている」(86%)との結果が出ています。
一方で日本人は、世界で最も科学に対する懐疑的な見方を持っている国との結果も出ています。科学に対する信頼度を示すスコアは49.1ポイントと14カ国中、最も低い数値となりました。また、23%が「科学に対して懐疑的」な見方をしています。「科学への信頼」は、世界平均が29%であるのに対し日本は11%、「科学者への信頼」は世界平均が23%であるのに対し、日本はわずか7%でした。
科学に対する知識の自信も各国より低いのが特徴で、世界では18%の人が「科学について無知」と回答しているのに対し、日本人は約半数の47%が科学について無知だとしています。また、科学の知識の取得については、各国平均では84%が科学の知識がもっとあればと感じているのに対し、日本人は最も低い77%でした。また、科学が社会にとって重要だと考えるのは44%(各国平均63%)、日々の生活にとって重要だと考えるのは15%(各国平均46%)と、科学が生活に与える影響については各国よりかなり、低い結果となりました。
●日本人、科学の未来に大きな可能性を信じる
日本の結果を見ると、74%が科学の未来は明るい(74%)と回答しており、この数値は各国平均の62%を上回る結果となりました。さらに、職場でのロボットの活用は日本が73%と各国平均の64%を上回り、また家庭におけるロボットの存在についても、日本は59%と各国平均の55%を上回りました。自国が科学の進歩をリードしていると考える日本人は全体の33%と、各国平均の23%を超えるポジティブな結果となっています。
【補足資料(2) グローバルの結果について】
●科学の未来に関する楽観論
科学に関する懐疑な見方や誤解があるにもかかわらず、将来の科学の発展への期待感は高いと言える結果も出ています。これから自分が生きている間に何が実現するかという質問に対して、最も回答が多かったのは、すべての職場でのロボットの活用(64%)、各家庭でのロボットの活用(55%)、そして空飛ぶ車(51%)でした。加えて、海底での生活(41%)、火星居住(35%)などが生涯のうちに実現すると期待されています。
この調査全体を通して見ると、先進国よりも新興国の方が、将来の科学の発展について楽観視していることが明らかになりました。新興国は、空飛ぶ車(新興国58% vs 先進国43%)や天候のコントロール(43% vs 22%)は、自分たちが生きているうちに実現すると考えています。
社会問題については、特にエネルギーや疾病予防のソリューションにおいて科学へ期待が寄せられています。世界中の人々が、購入しやすい再生可能エネルギー(75%)やエネルギー供給(74%)に関する課題を科学が解決できると楽観視しています。また、疾病の治療(75%)や清潔な水と公衆衛生(73%)についての課題を科学が解決すると期待しています。
バノヴェッツは以下のように述べています。
「偉大な科学の発展は、何年も費やして得られたさまざまな発見の積み重ねから生まれます。もし学生が、科学者になれるのは天才だけだと考えたり、人々が科学に無関心でい続ければ、私たちの社会はどのようにして繁栄し、イノベーションを起こし続けられるでしょうか。より良い未来を確実なものとするには、科学がもたらす信じられないようなチャンスとイノベーションのすべて、そして科学が成果を上げるための労力、厳格さ、投資の必要性を人々が理解するように努めなければなりません」
【3Mの科学へのコミットメント】
科学を推進する必要性をふまえ、3Mでは初代「チーフ・サイエンス・アドヴォケート」として、当社の科学者の一人であるジェイシュリー・セスを任命しました。セスは、科学に対するイメージと、世界中の暮らしをより良くするために科学が果たす役割の重要性を伝えるアンバサダーとなります。セスは、ケミカルエンジニアリングの博士号を持ち、60の特許を取得しています。3Mの技術分野における最高位である「コーポレートサイエンティスト」でもあります。セスは、科学的なイノベーションの実績に加え、若手エンジニアをはじめとする3M社員の指導にも情熱を注いでいます。セスは次のように語っています。
「私も学生の頃、自分は他の学生と比べて能力がないと考え、科学と奮闘した経験があります。だからこそ、この任務を引き受けるのは光栄なことです。私が幸運だったのは、背中を押してくれる先生と、科学の必要性を心から信じていた家族の励ましがあったことです。チーフ・サイエンス・アドヴォケートとして、科学への評価と期待を高めるために取り組むべき課題に光を当てることから始めたいと考えています。そして、科学者になるには必ずしも天才である必要はないことを多くの人々に知って欲しいと思います。また、科学が私たちの暮らしをより良いものにしていること、日々の暮らしのあらゆる瞬間で私たちが恩恵を受けるイノベーションを科学がおこしていることを多くの人に理解してほしいと思います。最終的には、新世代の『サイエンスアドヴォケート(科学の推進者たち)』を育てる支えになりたいと考えます。世界の人口が70億人から2050年には90億人へと増加し、経済活動は現代の4倍にもふくれあがる※と言われる中、これはとても重要です。エネルギー消費量の増加、水資源の不足、輸送量の増加に伴う大気汚染の悪化などの問題を解決するために、そして新たな機会を創出するために、私たちには科学が必要です」
※出典: https://www.oecd.org/env/indicators-modelling-outlooks/49846090.pdf
3Mは、セスを初代「チーフ・サイエンス・アドヴォケート」に任命することで、次世代の科学者を育成し、私たちの生活をより良いものにするという当社の40年に及ぶ取り組みをさらに前進させます。米国そして世界中で3Mは、STEM(科学・技術・工学・数学)教育の推進を支える多くの活動を行っています。
米国では、中学校の生徒を対象とした大規模な科学大会のひとつであるDiscovery Education 3M Young Scientist Challengeを10年にわたり実施し、この中で科学者志望の生徒たちが3Mの科学者の指導を受けています。米国外では、3Mの慈善活動を行う組織「3Mgives」が、カナダのLet’s Talk Scienceとの共同プログラムを10年以上実施し、インドではMobile Science Labのプロジェクトを推進しています。また、ブラジルでは教員の研修や学生のコンペティションなどのScience Challengeを5年間実施、さらにFirst Robotics Competitionへ参加する世界中のチームや技能五輪国際大会の支援などのプログラムを通じて世界中の多くの地域で支援活動を実施しています。
3Mgivesは2018年、STEM教育の国際的な推進へ多額の投資を予定しています。一例として、3Mはサウジアラビアの新しいSTEManiaプログラムに参加して、性差別の解消の推進と、小学校や中学校で女子生徒が理系のキャリアを目指すことを奨励するための支援を行います。日本では、一人でも多くの子どもたちに科学の楽しさや不思議さを知ってもらえるよう1996年に「3Mウィザード(魔法使い)プログラム」をスタート、日本におけるSTEM教育の推進を目指した活動の代表例です。全国の主要拠点において毎年、小学校高学年の児童を対象とした科学実験教室を開催しており、これまでのべ6,500人を超える子どもたちが参加しました。
【「ステート・オブ・サイエンス・インデックス」調査の方法について】
この調査は、イプソス社が2017年6月14日~8月26日までの期間、14カ国14,036人を対象にオンラインインタビューまたは直接の面談のいずれかで、各国18歳以上のおよそ1,000人を対象に行いました。調査を実施した国々は、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、メキシコ、ポーランド、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、英国、米国です。
【3Mについて】
3M(本社:米国ミネソタ州)は、Science(サイエンス)をベースに生み出されるイノベーションを通して、人々の生活を豊かにすることを目指します。売上高は320億ドルで、9万人以上の社員が200カ国のお客様に製品を提供しています。グローバルな課題に対する3Mならではのソリューションに関する詳しい情報は、 https://www.3M.com/ @3MNewsroom (Twitter)をご覧ください。また、3Mジャパングループに関する詳しい情報は http://www.mmm.co.jp をご覧ください。
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