アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2019年10月~12月
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2019年第4四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1) 自社調べ (アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/204023/att_204023_1.pdf
【サマリー】
・2019年第4四半期は、ベトナムでIT系やスマートフォンアプリ開発関連、インドネシアでインフラ、消費財、IoTなど新業態のサービス産業での求人意欲の高まりにより、両国で昨年同期比で大幅に求人が増加
・アジアの他国では未だ残る米中貿易摩擦の影響や、景気減速などの要因により第4四半期の求人数の回復が見えないものの、成長分野や将来の成長戦略に対しては人的資源への投資を継続。2020年は求人増が見込まれる。
■■マレーシア■■
日系企業の求人数は昨年同期比で減少した一方、
地場や外資では多言語人材やIT人材の求人は引き続き堅調
【求人数】
対前年四半期比 97%
対前四半期比 76%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
11月にVistage-MIER (マレーシア経済研究所) が発表したCEO Confidence Index (経済動向信頼感指数:DI指数に100を加えた指数、CEO回答数は664) によると、第4四半期は85.3ポイントとなり、第3四半期の90.2より下降しました。2018年第1四半期以降のピークだった2018年第3四半期の107.1ポイント以降、5四半期連続で下降しています。景況感についても62ポイントと、前年同期の80ポイントと比べ悪化が顕著です。売上げ増加を見込むCEOの比率も49%となり、過去3年の最低水準。そのような中、雇用に関わる指数は126と過去6四半期平均の129並みであり、人材の引き止めや確保については引き続き楽観視していることが伺えます。中国経済が減速する中、東南アジアに活路を見いだすべく中国系家電大手や不動産開発の販路拡大や進出の動きがあり、日系企業への影響を注視していく必要があります。
【企業の採用動向】
非日系企業(外資、ローカル企業共)での求人が前年同期比で8%増加した一方、日系企業では12%の減少となりました。特に外資系の求人が増加した背景として、引き続きBPOとSSC(シェアードサービスセンター)でのニーズの高まりによるものです。2020年に入り、当社の主要顧客3社合計での新規プロジェクト受注やSSCにおける更なるマレーシアへのシフトがあり、数十人規模で多言語人材(日本語・韓国語・マンダリンスピーカー等)の求人依頼を受けています。
日系企業では、製造業、特に電気・電子製品(E&E)や家電業界での求人が減少している一方で、製薬・医療機器、化学、IT関連業界での求人は引き続き旺盛で、一部半導体で採用凍結を解除するなど回復の動きが見られます。
【求職者の動向】
BPOとSSC(シェアードサービスセンター)での求人が引き続き旺盛なことから、候補者へ提示する給与水準も市場水準の30%~60%程度増の高水準で推移しています。但し言語能力については、読み書き話すそれぞれでネイティブ・スピーカー並みの能力を要求される求人が多く、供給が追いつかない状況にあります。
全体的な候補者の動向としては、景気不透明感から、転職については慎重に検討している模様だが、今月24日から始まる旧正月休暇明けの2月からは、求職活動が活発化することが予想されます。
■■シンガポール■■
2019年第4四半期は製造業が回復の兆し
年始の転職に向けての求職者登録も増加傾向
【求人数】
対前年四半期比 79%
対前四半期比 97%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 イルマス 純
シンガポール貿易産業省が年始に発表した10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、前年比0.8%増となりました。製造業は回復の兆しが出てきており、シンガポール資材購買管理協会(SIPMM)が発表した2019年12月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は8ヵ月ぶりに景気判断の境目である50に回復。米中貿易摩擦の影響を受けた製造業に回復の傾向が見られました。
2020年はシンガポールの総選挙が前倒して行われる可能性が高い年でもあるため、国民に向けての生産性向上や雇用対策等の政策の動向が注目されています。
【企業の採用動向】
求人数は対前四半期比では若干減少したものの、依然IT候補者ニーズの勢いは衰えることはなく、プロジェクトマネージャー、開発エンジニア、営業、SEなど幅広く求人の依頼を受けています。背景として、全業界でデジタルトランスフォーメーション化が進んでおり、SAPやERPの保守終了に伴い、導入プロジェクトに必要となる人材ニーズの高まりなどが理由です。また管理職の依頼も増えてきており、各社ともに中核となる人材の確保に動いている模様です。経理、人事、総務といった管理部門へのニーズも高い状態です。また、新規進出企業も何社かあり、複数採用で決まっているケースも見られています。
【求職者の動向】
第4四半期の求職者の登録数は、若干減少となりました。景気の状況を見据えて、積極的に転職活動をしていない層が一定数いるものの、時期的にボーナス待ちや年末年始、旧正月(今年は1月25日、26日と去年より早め)のための有休を取得後に動くことを検討している転職希望者の登録もありました。登録者層としては、企業の採用動向と比例してIT業界経験者やマネジメント層の登録も増加しています。
■■タイ■■
米中貿易摩擦の影響が残るタイ
季節性として採用が活発になる見込みだが、先行きは不透明
【求人数】
対前年四半期比 81%
対前四半期比 75%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
タイは農産物から自動車まで内需以上に輸出に依存しているため世界経済の影響を受けやすく、昨年に引き続き2020年も景気が好転する兆しは見えない状況です。多くの経営者も、昨年以上に悲観的な観測を持っています。景気は2019年に底を打ったのか、まだ下降するのかの判断が難しく、予断を許さない2020年のスタートと言えます。政治面では昨年選挙で民主的に選ばれた親軍政政党の支持率は低迷しており、こちらの不安要素が多くみられます。米中貿易摩擦などの影響により、今後の新規進出企業群は日系よりも中華系が大幅に増えることも考えられ、タイにおける日系優勢の企業勢力図が徐々に塗り替えられることが予想されます。
【企業の採用動向】
景気悪化の影響を受け、第4四半期の求人数は前期比、前年同期比共に減少という結果になりました。特に自動車業界の採用を手控える傾向は7月から続いており、第4四半期になってもその状況が変わる事はありませんでした。2020年初頭は大手企業の多くが年間計画を立てる時期で、止まっていた採用が再スタートするケースも多々あります。季節性としては2020年第1四半期に転職市場が活性化することが考えらえますが、政治経済の動向によってはその動向は不透明です。産業別では生産台数が増えない自動車業界全体が採用を控えているため、退職者の代替要員採用目的以外の求人は少ない状況です。一方で、空調関連や
ITなど好調な業界や新規性のある業界は欠員補充目的ではなく、事業拡大のための採用が多く、転職市場は活性化しています。
【求職者の動向】
第4四半期はローカルの転職者が様子見になるのは毎年の傾向で、これはボーナス待ちが主な原因です。2020年に入りボーナス待ちをしていたタイ人求職者が一斉に活動を開始する時期となり、これから3月までのピーク期間が企業・求職者双方共に採用と転職に注力する時期であり、ここを過ぎると落ち着いたマーケットに変化していくことが考えられます。毎年大卒者が増え、1次産業から世代を超えて2次・3次産業へ移るビジネスパーソンの数(世帯数)も増加の一途であるため、将来、企業数が適度に減る事で売り手市場が解消されていく可能性もあります。
■■インドネシア■■
大統領選挙後、企業の採用意欲が高まる
インフラ、消費財など新事業での採用意欲により求人増
【求人数】
対前年四半期比 123%
対前四半期比 97%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
2019年第4四半期は、9月末からスタートした政権のKPK(汚職撲滅委員会)の弱体化などを含めた法改正に対し、反対派がジャカルタでの大規模デモの発生からスタートしました。10月20日には、第2期ジョコウィ政権が始動。2045年の先進国入りを宣言し、閣僚にはインドネシアを代表するスタートアップ企業であるゴジェックの創始者など、テクノクラート(科学者・技術者出身の、政治家・高級官僚)も多く、投資家にはポジティブに受け入れられたスタートとなりました。米中貿易摩擦などの影響も軽度で、消費力に支えられるインドネシア経済は比較的影響は少なかったと言えます。
【企業の採用動向】
引き続き発電などのインフラ、消費財、IoTなど新業態のサービス産業を中心に日系企業の採用活動は順調で、求人数は前年同期比で23%増となりました。年末年始は、欧米企業や日系企業の求人意欲は毎年落ち着きますが、大統領選挙後は各社のインドネシアへの投資意欲が高く、次年度戦略向けの求人依頼を多く受けました。昨年自動車業界では販売数が12%程度減少し、停滞状態が続いています。全ての業界では、ビジネスの拡大に向けた営業職の求人が増えています。また、昨今インドネシア人のビジネスレベルが確実に向上している傾向から、日系企業では日本人駐在員の後任にインドネシア人を採用する企業が増えています。
【求職者の動向】
引き続き企業による現地採用日本人の採用依頼が多く、企業の人材ニーズを満たすことができない状態が続いています。特に建設やエンジニアリング業界からは次世代を担う若手技術者が不足している状況で、現在もシニア層が活躍しており、世代交代が進まずに危機感を感じている企業が多い状況です。
日系企業の求人は自動車業界の低迷が起因し、メーカーからの求人数は低下しています、インドネシアの強い消費市場に向けたサービスの展開が活発で、飲食店などサービス業界で日本人を採用する動きが目立ちます。インドネシアの人材マーケットでは特に新しい動きはありませんが、IT業界ではAWS(アマゾン ウェブ サービス)の知識のある人材の求人が増えています。
■■ベトナム■■
【求人数】
対前年四半期比 165%
対前四半期比 208%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen (レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局(GSO)によると、国内総生産(GDP)成長率は7.02%となり、GDP実質成長率が7%台を上回ったのは2011年以来2度目です。成長率を分野別に見ると「農林水産業」が2.01%、「工業・建築 業」が8.9%、「サービス業」が7.3%と堅調な成長を維持しています。小売業が急成長しており、独資・合弁・買収など、あらゆる手段でビジネスの展開を進めている一方、オフィス賃料が急激に上昇することによって企業の入れ替わりが激しい状況です。外食産業も内需市場を狙い海外から進出してくる企業が増えており、レストラン式での展開が理想はあるものの、リスクヘッジとしてフードコートでの展開を選択する傾向が多くみられます。
【企業の採用動向】
第4四半期は、IT系やスマートフォンアプリ開発系企業での採用が増加し、求人は対前年、前期比共に大幅増となり、特に同職種関連プロジェクトのスペシャリスト採用案件の増加が目立ちました。他に、ゲーム開発関連の求人も増えています。製造業では引続き縫製関連の人材ニーズが多く、米中貿易摩擦の影響や中国での給与水準の上昇により、中国からベトナムに工場を移転する企業も増えています。しかし、ベトナムの人件費も上昇しているため、採用計画が予定通りに進まない企業も少なくない状況です。内需志向の強まりから、各業界はマーケットを開拓できる営業の管理職人材が求められています。
【求職者の動向】
営業職の人材は活発に転職活動を行っていますが、全体的には転職希望者の動きは停滞しています。理由としては、旧正月のボーナス支給時期であること、また、製造業では契約更新の状況確認の時期であることが理由です。現在活動をしているのは、旧正月明けに転職を希望する方々が大半です。転職希望者が求めるものにも変化が出ており、以前は給与増が重要な理由でしたが、経済成長に伴い給与面だけではなく別の待遇面へのこだわりが強くなっており、安定を求め福利厚生や人間関係なども考慮する候補者が増えています。不安定なスタートアップ企業よりも、大手企業や安定的な企業の人気が高まっています。
■■中国 (上海・広州)■■
米中貿易摩擦や香港でのデモの影響が未だ残り、企業の採用動向は停滞気味
【求人数】
対前年四半期比 93%
対前四半期比 76%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香
JAC Recruitment 広州法人総経理 小川 慎史郎
中国とアメリカの貿易協議の「第一段階」がようやく合意の方向で進んでいますが、米中関係の今後の先行きは不透明です。加えて香港でのデモや豚肉の価格高騰に伴う消費意欲減退の懸念もあり、中国経済は全体的に低迷しています。アジア開発銀行が2019年12月に発表した2019年と2020年の中国経済成長率見通しは、2019年の6.2%から6.1%に、2020年6.0%から5.8%と2019年9月に続き再下方修正しました。
【企業の採用動向】
中国の景気低迷や年末という時期的な要因もあり、前年同期・前四半期と比較して求人数は減少となりました。主な採用動向は以下の通りです。
・日系消費材、食品業界では求人が増加傾向。中国全体の所得水準の高まりによって、中国を消費マーケットと捉える消費材・食品関連企業の中国への新規進出・工場の増設などの動きが出ている。
・ファーウェイ社の影響もあり、スマートフォン部品や半導体製造装置メーカーなどの採用が再開。5G(第5世代移動通信システム)関連の技術者採用のニーズが増加傾向。
・製薬会社・医療機器業界の新規参入・投資拡大の動きが出始めている。中国での健康・医療に対する意識の向上により、日系企業の新たなマーケットになりつつある。
・自動車関連業界のTier2以下の企業は中華系企業との競争激化により業績が低迷。中国事業の撤廃・縮小などにより採用には慎重な姿勢を見せている。
【求職者の動向】
・例年と同じく旧正月前の転職には消極的。
・ここ数年の動きとは異なり、現職の業績悪化・事業撤退などが原因で転職を余儀なくされる人材が増加傾向。
・日系企業の安定感・安心感を求めて、元々日系企業に勤めていてその後日系企業以外に転職した人材が、再度日系企業を希望する傾向に。
■■香港 (中国香港特別行政区)■■
米中貿易摩擦および抗議活動の影響が継続
【求人数】
対前年四半期比 91%
対前四半期比 75%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
香港政府統計処は10月31日、2019年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率推定値が前年同期比でマイナス2.9%だったと発表しました。四半期ベースでマイナス成長となったのは、2009年第3四半期以来10年ぶりです。香港行政府はそうした状況をうけ、2019年4度目となる経済対策を発表し、米中貿易摩擦や長期化した抗議活動の影響を受けて業績が悪化する中小企業支援の姿勢を打ち出しています。
【企業の採用動向】
年末に近づくにつれ賞与支給を控えた転職希望者の動きが鈍化する事もあり、例年の傾向として、各企業は12月に入り採用活動を一度ストップし、求職者の動きが活発化する旧正月明けに再開する企業が増えました。今期はそうした動きに加えて景気の不透明感もあり、緊急性のない採用については前倒して一度ストップする企業が増加。その影響により、第4四半期の求人数自体は前年同期比で9%減少しました。また、継続して採用している場合であっても、特に外資系企業を中心に、本国の本社の意向を確認するケースで選考がより慎重になり、時間がかかる事例が増加しました。
【求職者の動向】
第4四半期は例年以上に求職者の流動性が低下しました。季節要因以外に景気の不透明感から様子を見たり、国外転居も視野に入れ始める人も散見され、香港での転職希望者は減少しました。一方、香港での就職・転職を希望する在外日本人の転職希望者については、一般的な「海外勤務希望」を動機とする方々は減少しても、「香港希望」の方々は一定数存在しており、昨今の情勢下にあっても、金融業界を中心に新たに就労ビザを取得して働き始めるケースが継続しています。
■■韓国■■
中国の景気減速が韓国経済に与える影響は甚大
年齢が若い転職希望者はワークライフバランスを重視
【求人数】
対前年四半期比 63%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
韓国は輸出依存度が40%を超え、世界主要国の中でも外需依存度が極めて高い国です。米中貿易摩擦により、中国の景気減速は中国への輸出額を2018年対比で2桁以上減少させる要因となったことで韓国経済に打撃を与え、昨年末に韓国銀行やIMFは経済成長率見通しを下方修正しました。2020年の最も大きな政治日程は、4月の国会議員選挙です。選挙を控えた昨年末、「公職選挙法改正案」、「検察改革法」が韓国国会で可決されましたが、いずれも今後の政治に与える影響は大きいと見られています。
【企業の採用動向】
第4四半期の企業の求人状況は対前期比で横ばいとなりましたが、対前年四半期比では37%減と大幅な減少となりました。米中貿易摩擦により、輸出品目が1位である半導体に急ブレーキがかかり、部品や装置メーカーの求人数に一定の影響を与えています。しかし、在庫調整等の進展により底入れ感もあり、数は多くないものの半導体向けサプライヤー各社からの採用の依頼を受けています。また、現地社員の中核人材を営業系や管理系で採用を検討する企業もあります。但し、一般消費者向けビジネスを展開する企業は、求人数が直近で減少しており今後の動向に注視する必要があります。
【求職者の動向】
年末年始は転職マーケットは毎年比較的緩やかですが、旧正月(ソルラル)休暇後に求職者が動き始めることが考えられます。最近は景気の悪化により中小企業で倒産が増加していることに伴い、大学卒業を控えた新卒社員は安定性を求め、公務員を希望する人が増えています。また、弊社の転職希望者に行った調査結果では、会社選択時に「ワークライフバランス」を重視する人の割合が顕著に増えており、その希望を満たせない企業は敬遠される傾向にあります。今後の採用に影響を与えるため、各企業は対策を講じる必要があります。
■■インド■■
2020年以降の景気持ち直しに備え、各企業はマネージャーなどコア人材の採用に注力
【求人数】
対前年四半期比 85%
対前四半期比 81%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
2019年にかけて実質GDP成長率は前年同期比5%増と6期連続で減速し、2013年以来の低成長を記録しました。インド経済は2018年まで概ね7%程度の高成長が続いていましたが、排ガス規制による新車の買い控え、ノンバンクの経営不振による貸し渋り、自賠責保険の加入期間の延長と保険料の値上げによる自動車販売の不振などにより、特に自動車関連企業の収益悪化に歯止めがつかない状況でした。
今度の景気の見通しとしては2020年4月に新たな排ガス基準の導入による新車の駆け込み需要が見込まれることや、政府が実施した金融緩和や法人税減税などの景気対策の効果が少しづつ顕在化し、景気が徐々に上向いていくことが予想されています。
【企業の採用動向】
インド経済の鈍化により売上拡大の兆しが見えないことから、積極的な増員採用を控えていた企業が多くありました。特に2019年の7月以降、経済が停滞し始めた頃から増員採用を控え、退職者に伴う主要ポジションのみ代替要員の採用を実施されていた企業が目立ちました。しかし、2020年以降には徐々に景気が上向いてくることが予想されていることから、これまで足りない人数で業務を対応してきた部門の採用活動を開始された企業も散見されます。
また、景気が上向く時期に備え、組織全体の強化を図りたいと考える企業もあり、特にマネージャークラスの求人が増加傾向にあります。その理由の一つとして経営と現場とのギャップがまだ大きく、このギャップを改善したいという課題があることが考えられます。全体的な転職市場の傾向としては、営業組織の強化を図るための営業マネージャー、また引き続き自動車業界を中心とした部品メーカーの人事、経理、品質管理、日本語スピーカーなどといった求人が目立ちました。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者の動向としては他国と併願してインドでの就業を検討される方が多いですが、最近ではインドのみを希望する候補者も少しづつですが増加傾向にあります。その理由としては英語力を生かせる仕事に就きたい、経済発展が著しい環境下に自ら身を置くことで日本では得られない成長のスピードを体験したい、将来を見据えた人脈を構築をしたいと考える日本人が増加していることが挙げられます。
インド人の状況としては、10月にインドの新年を祝う重要な祝日のディワリがあり、この時期に支給されるボーナスを待つため、採用マーケットは一時的に落ち着きを見せましたが、ディワリ後は再びマーケットが活発化しました。特に給与アップ、ポジションアップなどの条件および待遇面の改善をを転職によって実現しようと考えることから、現職の条件と転職先の条件や待遇を比較検討しながら転職活動を行う傾向が見られるため、中には内定を受けても転職する決断をしない方も存在します。
■■日本(日本企業の海外事業関連求人)■■
米中貿易摩擦の影響により、日系企業の海外関連求人が大幅減
【求人数】
対前年四半期比 51%
対前四半期比 71%
(日本企業の海外事業関連求人)
JAC Recruitment(日本)
海外進出支援室 室長
佐原 賢治
米中貿易摩擦を端緒とする輸出や海外売上の減少などの影響により企業の業績見通しは更に悪化し、日銀が12月に発表した短観では大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、9月調査から更に5ポイント低下しました。中国国内における消費者需要の減退や、東南アジアにおける自動車生産の減少、タイ・バーツ高など日本企業の海外ビジネスにとっては悲観的な環境が続きました。
また、2019年は企業による希望退職の募集が1-11月合計で2018年(1-12月)の約3倍、6年ぶりに1万人を超える高水準でした。
【企業の採用動向】
上記の外部環境の影響を受け、当社に寄せられる日本企業の海外事業関連求人の件数は、過去最高を記録した前年同時期と比べ49%減と大きく落ち込みました。しかし、7-9月のアジア、北米向け直接投資が前年同時期比で減少したのに対し、欧州、大洋州向けで増加。対外直接投資総額では前年を上回っており、企業の投資意欲は決して衰えているわけではありません。
そのような状況で、製造業各社の求人には幾つかの傾向が見られます。まず顕著なのが、IoTなどを用いた国内工場の効率化を進めるための要員募集です。これは国内の生産性向上や人手不足対応のほか、国内をマザー工場とした海外工場への生産移管を企図したものです。また、米中貿易戦争対策の長期化に伴い、ベトナム等ASEANへの生産移管が行われる一方、中国国内の販売を強化するための要員募集が増加している点は注目すべきことです。
さらに、機械・自動車部品メーカーでは欧州事業の再編と強化のための求人依頼を受けています。特に自動車部品業界には、欧州の排ガス規制に伴う部品性能の向上に商機を見出しており、欧州大手メーカーに対する営業要員として即戦力となる欧州ビジネス経験者を募集しています。しかし欧州は比較的経営現地化が進んでおり、また昨今の日本企業の海外事業がアジア中心であったことなどから、市場に欧州ビジネス経験者は意外と少なく、採用に苦戦している企業が目立ちます。またメキシコ駐在要員の募集が増えていることも見逃せません。その多くは、北米向け輸出を堅調に伸ばす自動車部品メーカーによる、生産技術職や営業職の募集ですが、スペイン語ができる人材が不足しており、各社はその確保に苦戦しています。
M&A(企業の買収・合併)は、業種を越えて人材の獲得競争を引き起こしています。買収先の選定・評価や買収後の経営統合を適切に行うためには、高い専門性や実務経験が必要となり、社内での育成が困難で
す。米中貿易摩擦に加え、欧州の政治不安からも当面は円高が予想されており、日本企業による海外企業の買収は今後も堅調に増加することが予想されるため、経験者の採用はさらに難しくなると見て間違いありません。各社は景気低迷の中においても成長分野や将来の成長戦略に対しては人的資源への投資を継続しており、その対象となる高度なスキル、経験を持つ人材に関しては尚一層獲得競争が熾烈です。
【求職者の動向】
10-12月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前年同時期比では144%と大幅に増加したものの、前四半期比では96%と減少しました。当社の主要な登録者層である35歳以上の人材の流動化は進んでいるものの、各社の動向に不透明さが見られる中、求職者の動きは慎重で、特にAI、IoTなど最先端分野や海外勤務などの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから獲得の難易度も高いままです。全般的に、現在の勤務先に留まることを選択肢としたまま慎重に転職活動をする転職希望者が増えていることから、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。
■ジェイ エイ シー リクルートメント ウェブサイト
日本 : http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
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