【調査結果】 企業のイノベーション創出と組織活性化に関する実態調査 イノベーション能力に優れた組織の特長は何か?
一般社団法人日本能率協会(会長:中村 正己、JMA)は、イノベーションの実現と企業組織のあり方の間にどのような関係があるのかを探ることを目的として、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 山中 伸彦教授と共同で、「企業のイノベーション創出と組織活性化に関する実態調査」を実施しました。
分析の結果から、イノベーション能力に優れた組織の特長として、下記を確認することができました。
「同業他社よりイノベーション能力に優れているか」の問いに対して、「当てはまる」と答えた企業は、以下の組織風土の特長をもっていることがわかりました。
・ビジョンの浸透
→将来像(ビジョン)・戦略・方針について従業員からの理解・共感が得られている
・部門間協働
→従業員は他部署の人に積極的に会いに行き、異質な知識・経験を各人の仕事に活かしている
・アイデア創出と組織学習
→前例のない新しいアイデアでも言いやすい風土がある
→失敗やチャレンジから学ぶことが重視されている
・社会課題への高い感度と能動的行動
→自分たちが世の中にどう役立ちたいのかについて、日常的に会話がなされている
→自分たちの活動が世の中の期待に沿っているかどうか、定期的に確認している
→地域や環境・資源などの社会課題をキャッチしようとしている
→変化する顧客・市場に対して先見性をもった試みを実践している
→先見性をもって、新しい技術やノウハウを活かした取り組みをしている
→先見性をもって、地域や環境・資源などの社会課題の解決に取り組んでいる
→世の中の変化に応えるために、他社や地域コミュニティ、NPOなど外部と連携した活動をしている
なお、今回の調査で用いた組織風土を評価する設問は、JMAが提唱している「KAIKA」経営モデルにおける「組織の活性化」と「組織の社会性」に関する項目を使用しました。分析の結果から、イノベーション能力に優れた組織は、KAIKA度が高い傾向にあると捉えることができます。
■「企業のイノベーション創出と組織活性化に関する実態調査」概要
調査時期:2020年1月16日~2月14日
調査対象:JMAの会員企業およびサンプル抽出した全国主要企業の
経営企画・マーケティング・人事・総務部門の役員・部長クラスの役職者(計3,500社)
調査方法:郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数240社・回答率6.9%(回答企業の概要は後述)
■分析結果の詳細
○ 今回の調査では、設問の一つとして「同業他社よりイノベーション能力に優れているか」を尋ね、「当てはまる」から「当てはまらない」の5段階で回答を得ました。
○ 一方で、組織風土についての設問を複数設定し、それぞれについても「当てはまる」から「当てはまらない」の5段階で回答を得ました。なお、これらの設問は、JMAが提唱している「KAIKA」経営モデルを測定するための「組織の活性化」「組織の社会性」に関する項目を使用しています。※KAIKA経営(詳細は後述)
○ そのうえで、組織風土についての設問について「当てはまる」を5点、「当てはまらない」を1点として、イノベーション能力の企業群ごとに平均値を算出し、比較を行いました。結果、【図表1】のとおり、イノベーション能力に優れている企業は、「組織内で、自分たちが世の中でどう役立ちたいのかについて、日常的に会話がなされている」等について、顕著に当てはまる傾向が見られました(差異の大きかった箇所に黄色で印をつけています)。
【図表1】イノベーション能力と組織風土の傾向
【図表2】イノベーション能力と組織風土の傾向
○ 【図表1】をもとに、「同業他社よりもイノベーション能力に優れているか」の設問に対する回答群ごとの組織風土の傾向(平均値)を比較したグラフです。
【図表3】イノベーション能力と組織風土の傾向(値の差の比較)
○ 「同業他社よりもイノベーション能力に優れているか」の設問について「当てはまる」と回答した企業群と、「全体平均」ならびに「当てはまらない」企業群における組織風土の傾向値の差を示したグラフです。
○ 「イノベーション能力に優れている」について「当てはまる」と答えた企業群と「全体」の平均の差が1.00以上あった項目と、「当てはまる」企業と「当てはまらない」企業の差が1.80以上あった項目を赤枠で印をつけています。
○ この結果から、イノベーション能力に優れている組織には、ビジョンが浸透している、部門間の協働がある、アイデアが創出され組織的に学習する、社会課題への感度が高く能動的に働きかけている、といった特長があると考えることができます。
■回答企業の概要
・業種
・従業員数
・売上高
■「KAIKA」とは
○ JMAでは2012年度より、社会・経済が多様化・多元化するなかにおける新しい経営・組織づくりの考え方として、「KAIKA(開花・開化)」を提唱しています。「個人の成長」「組織の活性化」「組織の社会性」を同時実現することにより、新たな価値を生み出し続けることができるという考え方です。
○ この普及活動の一環として、(1)KAIKAの考えに共感し、その実現に向けた取り組みを行っている組織を認定する「KAIKAアクション宣言」制度、(2)優れた実践を行っている組織やプロジェクトを表彰する「KAIKA Awards」の実施、(3)組織のKAIKA度をセルフチェックするためのツール「KAIKA度診断」の提供、(4)KAIKAの考え方や実践事例を紹介する隔月誌「KAIKA」の発行などの活動を行っています。
詳細はホームページ( https://kaikaproject.net/ )をご参照ください。
■KAIKA経営モデル
個人の成長 = 目標感、自律性、成長・貢献実感
組織の活性化 = ミッションやビジョンの一貫性、信頼と協働、チャレンジと学習
組織の社会性 = 社会への感度、多様性の尊重、社会課題への働きかけ
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