アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2020年1月~3月
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2020年第1四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1) 自社調べ (アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/210747/att_210747_1.pdf
【サマリー】
・2020年第1四半期は、ジェイエイシーリクルートメントが拠点を構えるアジアの全ての国々の採用市場で新型コロナウイルスの影響を受け始める。最も大きな影響を受けたのは中国で、求人数が対前年四半期比でおよそ6割減に。
・近年順調に成長を続けていたベトナムでも、新型コロナウイルスの影響を受け求人数が対前四半期比で23%減に。
・他の国々では採用活動の延期や一時停止をする動きがある一方、好機と捉え優秀な人材獲得に動く企業も。
■■マレーシア■■
移動制限令発行後、採用を凍結する企業がある中、
ITやSSC(シェアードサービスセンター)などは採用を積極化
【求人数】
対前年四半期比 106%
対前四半期比 139%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
新型コロナウイルスの蔓延により、マレーシアでは首相府から3月16日に移動制限令(MCO-Movement Control Order)が出され、18日から実施。当初31日までの予定でしたが、その後4月14日まで延長が決定。4月10日時点でさらに4月28日まで2週間の延長が発表されました。国民の生活に不可欠な施設・サービス(インフラ・郵便・石油ガス・金融・公安・食料供給など)を除き、ほとんどの事業所が閉鎖されています。民間企業も医療・医薬、生活用品・医療機器などの一部製造業やサプライチェーン、小売りを除き閉鎖しており、自動車メーカーも全て閉鎖しています。MITI (貿易産業省)に操業が認められた企業でも、操業率を50%までにする指示がでるなど制限が課されています。同国の感染者は3月15日の428人から4月10日時点で4,228人(保健省発表)、死者67人 まで大幅に増加しており、再度の延長される可能性もあり予断を許さない状況です。
【企業の採用動向】
求人数は前四半期比で大幅に増加した(日系・多国籍とも増加)した一方で、前年同期比では+6%と増加幅は減少しました。多国籍企業では66%増加した一方で、日系企業で19%減と採用方針に違いが出ています。
MCO発令後1週間経過した3月25日時点での当社集計では、求人依頼を受けた企業は256社です(うち日系53%、多国籍企業・地場47%)。操業状況についてヒアリングのところ、(1) 事業所閉鎖+在宅勤務が最も多く62%、(2) フル操業中は7%、(3) 一部操業+在宅勤務は7%、(4) 事業所閉鎖かつ在宅勤務もない企業は9%。(1)(2)を合わせた操業度合いについては日系が15%に対して多国籍企業は28%と高い状態です。また(4)のケースでは、日系が7%あったものの、多国籍企業ではゼロであり、対応に違いが出ています。
求人数は463件で、このうち75%の求人については企業側も継続して採用をする意向を示していますが、新型コロナウイルスの影響により実際の入社時期は5月以降にずれ込むケースが増えてきています。また10%の求人については当面、もしくは年内凍結となっており、影響が見られます。この状況下でも採用に活発なのはIT、eコマース、SSC、BPO、エンジニアリング、医療機器・医薬、一部半導体・電子電気などで、職種では人事・経理系などのバックオフィス系は引き合いが強い状況にあります。一方で、海外在住の外国籍人材(日本人・韓国人・タイ人など)が対象の求人については、採用が内定しても渡航できないことから実際の就労開始時期が未定となるケースが増えています。
【求職者の動向】
現在就労中の企業、もしくは転職希望先企業の先行きが見通せないことで慎重になっている求職者が多い中、求人のオファーがあればチャレンジする求職者も一定数存在するため、企業の中には優秀な人材を確保する良い機会と判断するケースもあります。日本やその他の外国から母国へ戻って就業を希望する求職者は、帰国後の隔離措置があることから活動がしにくい状況が続いています。
■■シンガポール■■
新型コロナウイルスの影響を受けながらも、採用活動を継続する企業も
【求人数】
対前年四半期比 85%
対前四半期比 105%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 イルマス 純
シンガポール貿易産業省(MTI)が発表した2020年第1四半期の実質GDP(国内総生産)速報値は、前年同期比で2.2%減となり、年初に期待された製造業の回復の兆しからの景気上昇への期待値から大きく下方修正が入りました。それほどまでに新型コロナウイルスの影響は大きく、現在も政府はウイルスの更なる拡大を防止するためにサーキットブレーカー(ある条件のもとで、証券取引所が取引を一時的にとめる措置)を発動。生活必需産業以外のオフィス閉鎖勧告も出て、経済活動が大きく影響を受けています。それと同時に政府は税金政策、雇用保護政策も出され、企業が雇用を継続できる環境を整え、事態の収束後の経済復旧に備えられるよう支援を行っています。
【企業の採用動向】
慢性的に不足しているIT関連人材の求人(特にエンジニア、プロジェクトマネージャー、営業)を筆頭に新規の求人依頼を受けており、第1四半期の求人数に関しては新型コロナウイルスの影響を受けることなく著しい減少は見られず、対前四半期に対しては5%増、対前年四半期比では15%減となりました。
2月初旬から新型コロナウイルスの影響が採用市場にも影響が少しずつ出始めていますが、この時期を好機と捉え優秀な人材の確保やニッチな領域で活躍できる人材確保に努めている企業もあったことが要因です。
【求職者の動向】
毎年第1四半期は旧正月前後に活動する転職希望者の登録が増える時期ですが、今年もその時期の動きは変わらず登録は増加しました。新型コロナウイルスの影響に関しては、特に現地シンガポール人の登録が3月から、様子見をする方が多く見受けられます。また日本人求職者の登録はシンガポール国外より、すでにシンガポール国内で就労している方の登録が増えており、職種的にはサービス業の方をはじめ、マネジメント、管理系(バックオフィス)の方の登録が増えています。5月からの就労ビザ取得金額の改定を踏まえ転職活動を開始する方や、当社に登録して情報収集をする方なども増えています。
■■タイ■■
新型コロナウイルスが、転職市場にも影響を与え始め、採用活動中の6割の案件が延期に
【求人数】
対前年四半期比 87%
対前四半期比 131%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
新型コロナウイルスがタイでも蔓延をはじめ早期に感染者が見られたものの、その後オーバーシュートと呼ばれるほどの感染拡大までは至っておらず、死者数も100万人中1人以下を保っています。しかし、経済に与える影響は非常に大きく、バンコクでは既に食品スーパー、薬局、病院など生活に必要な施設・事業を除き、レストランや百貨店、娯楽施設などは軒並み閉鎖命令が出され、日本の非常事態宣言を大きく上回る厳戒態勢を引いています。また、夜間の外出禁止令も出されており、これも要請ではなく強制力があります。この先数ヵ月間は、経済の停滞が続くことが見込まれます。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルスが採用市場にも影響を与え始めましたが、求人数は昨年同期比で13%減にとどまりました。しかし、タイの非製造業の半数以上が在宅勤務となり、大手自動車メーカーに追随して多くの工場も閉鎖する中、既に選考が進行中だった採用案件の約6割が延期されるなど、既存の求人案件には大きな影響が出始めています。引き続き採用活動が続いている4割の求人は欠員補充など、組織を維持するために必要な案件が主となっており、企業の採用活動全体は大きく減退しています。今後各社の事業および業績回復見通しが立たない限り、この状況は続くことが考えられます。
【求職者の動向】
転職希望者の動向はコロナウィルスの影響で転職の意欲が多少下がっているものの、それ以上に求人の少なさから、転職活動をするには良いタイミングではないという認識が広がっています。それに加え、入国禁止措置と合わせ新規の労働ビザの発給や労働許可証の発給が止まっているため、タイでの就職・転職を希望する日本在住の日本人の方々は保留状態となっています(4月14日現在)。他国も同様であることが考えられるため、海外転職を目指す方々には、非常に厳しい状況となっています。
■■インドネシア■■
求人は前年同期比、前期比共におよそ増加したものの、新型コロナウイルスの影響により3月末から求人が減少傾向に
【求人数】
対前年四半期比 128%
対前四半期比 126%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
2019年10月20日に2045年の先進国入り宣言と共に、第2期ジョコウィ政権がスタートしました。米中貿易摩擦の影響や、年初に発生したジャカルタでの洪水などの影響を受けながらも、2020年はインドネシアは雇用創出オムニバス法案という法令の整備による、投資環境の整備などが期待されていました。しかし、インドネシアでも新型コロナウイルスが3月初頭から蔓延が始まり、3月半ばに政府から企業への在宅勤務の要請が入るなど、他国同様、ビジネスや経済の停滞が見え始めています。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルスの影響による採用活動の影響は3月末から出始めたことにより、第1四半期全体の求人数の減少となることはなく、前年同期比・前期比共に増加となりました。
日系企業・多国籍企業を問わず、引き続き発電などのインフラ、消費財、デジタル産業、サービス産業、小売り、メーカーなどの多業種で求人数は増加しました。全体的に、ビジネス拡大目的の営業の求人依頼が顕著です。これは、2019年の大統領選挙結果が企業から概ね良い評価を受けたことにより、企業のインドネシアの経済成長に対する期待感によるものであることが考えらます。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための企業活動の制限を受け、3月の後半より求人数は減少傾向にあり、4月以降も減少が続くことが予想されます。
【求職者の動向】
ミレニアル世代の転職希望者が増加している中、若年層を中心に仕事・雇用の安定を重視する傾向が見られます。当社のコンサルタントによると、若年層の転職希望は給与だけでなくワークライフバランスや企業の福利厚生がどの程度手厚いか、また、全体的に大手で安定した企業を希望する傾向にあると述べています。新型コロナウイルスの影響が企業活動に影響が出始めたことにより、転職の不安を感じ現在の会社に残る判断をする候補者が増えています。
■■ベトナム■■
順調に成長を続けていたベトナムの転職マーケットは、新型コロナウイルスの影響を受け厳しい局面に
【求人数】
対前年四半期比 129%
対前四半期比 77%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen (レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局の発表によると、第1四半期の国内総生産の成長率は3.82%となり、2011年以降最低となりました。農林水産業の成長率が1.17%減となり、アフリカの豚コレラ、メコンデルタにおける干ばつと塩害に加え、新型コロナウイルスの発生で生産と輸出入に影響を及ぼしています。政府は3月31日から4月15日まで生活必需品やサービスを取扱う店を除き、管轄地域の商業サービス店の営業を禁止し、国民に対し外出禁止を発令しました。3月末から全国の外食産業が打撃を受け、テナント賃貸業も業績を落としています。リストラを始める会社も増えており、失業者の増加による犯罪の発生も懸念されています。2019年では好調だった「工業・建築業」が、旧正月明け後は新型コロナウイルスの影響による資金ショートにより、建設の中断、物件を売却する動きが目立っています。
【企業の採用動向】
多くの企業では新型コロナウイルスの影響にともなう業績悪化を受け、リストラや内定取消しの動きが相次ぎ、対前四半期比の求人数は23%減となりました。また、海外からの入国制限だけでなく外国人労働者の就労ビザ発行にも影響が出始め新規でのビザ取得が不可となる省も出ており、採用を検討している企業は国外の人材を採用できず、ベトナム在住者の採用を検討せざるを得ない状況です。さらに、EU/アメリカのマーケットを中心に事業を展開しているFinTech・IT業界も打撃を受けており、スタートアップ企業が破綻するケースも増えており、近年順調に成長を続けていたベトナムの転職マーケットは厳しい局面を迎えています。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を実施する企業が増えており、それに伴い現職に留まることに不安を感じる転職希望者がオンラインで積極的に転職活動を行う傾向が見られます。ベトナム政府による閉鎖措置の実施後は、特に商業サービス業従事者の失業、内定取消し数が増え、同業種経験者の登録が増加しています。また、塾や学校の休校により無給状態で休職を余儀なくされた、英語教師として来越したベトナム在住外国人の登録も増えています。
■■中国 (上海・広州)■■
新型コロナウイルスが与えるビジネスへの影響は継続
【求人数】
対前年四半期比 39%
対前四半期比 47%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香
JAC Recruitment 広州法人総経理 小川 慎史郎
中国では武漢封鎖の解除など、徐々に正常を取り戻しており、日系企業の多くは時差出勤、交代勤務を併用しながら社員全員を出勤させている企業も多いです。また、ビル入館時には国、市、通信会社、IT 企業等の健康コードの提示など、厳格な管理体制が続いています。4月上旬時点で60~100%事業を再開している日系企業が多いですが、国内需要・来客等の減少に加え、ビザ規制により中国への入国が困難な状況に伴い、駐在員の赴任が遅れる・出張が出来ないなど、ビジネスへの影響は続いています。
【企業の採用動向】
求人数は昨年同期比でおよそ6割減となり、新型コロナウイルスは採用市場に大きな影響を与えました。
製造業においては操業再開まで時間を要し、3月下旬にフル稼働に近づく状態となり、同時期から採用を再開、新規募集を開始する企業が出てきたものの、先行きが見えないため採用にはまだ慎重な企業も多い状態です。これを機に製造業は生産体制の見直しを行い、中国以外への移転や生産体制の分散を考える企業も多く、今後も採用市場への影響は続くことが考えられます。IT・サービス業界は、いち早くリモートワークやテレビ電話での面接を導入し、Wechat・Skypeなどのオンライン面接に切り替え採用活動を継続している企業が比較的多いです。また、入国・ビザ規制による新赴任駐在予定者の現地就業の遅れや、面接官が出張できない事による、採用プロセスの長期化が発生しています。
【求職者の動向】
通常、春節以降に最大化する転職人材マーケットは、新型コロナウイルスによる景気減退・企業のリストラなどの動きを受け活発さを失っている状況です。経済の不安定・先行きの不透明さを理由に転職時期を遅らせる意向の求職者が散見されるほか、労働市場の人材不足による報酬水準の高騰などの理由により、企業側の採用課題が増加したことが要因と考えられます。なお、ビザ・入国規制の影響により、日本国籍の在中国での就業を希望する転職希望者で、既に内定が確定している方は「在宅勤務入社」という新たな形態での入社が続いています。
■■香港 (中国香港特別行政区)■■
抗議活動は沈静化するも、新型コロナウイルスの影響が深刻化
【求人数】
対前年四半期比 75%
対前四半期比 99%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、香港政府は旧正月明けより公務員の自宅勤務をアナウンスし、2月末まで同措置を延長しました。3月2日に一旦解除されましたが、輸入感染症を中心とした感染数急増のため、3月23日より改めて公務員が自宅勤務を命じられています。多大な影響をうける各種業界・個人への社会保障・損失補填の政策が発表されていますが、3月末時点でも、感染拡大を防止する引き締め政策が継続して出されており、多くの企業で業績の見通しは不透明な状態です。
【企業の採用動向】
例年旧正月前後から活発化する採用活動も、新型コロナウィルス蔓延の影響により全体的には停滞し、求人数は昨年同期比で25%減となりました。外資系企業など、本国における事業・勤務状況の影響から、採用活動は継続するものの本国から採用の承認が取れず通常以上に時間が大きくかかるケースが増加しています。事業状況の不透明化や、香港外に出ている駐在員が戻れないという理由などから、採用の停止や延期を決める企業が増える一方で、継続して採用を続ける企業も一定数存在していました。事業に大きな影響を受けることなく、先を見据えて敢えてこの時期に採用する企業が見受けられ、求人内容も欠員補充のみでなく、増員募集のケースもあるなど、企業によっては優秀な人材を採用する好機ととらえるケースも出ています。
【求職者の動向】
企業の採用動向同様に、例年第1四半期は旧正月前後から求職者が増える時期ですが、特に2月においては、転職の意向はあるものの先行きの不透明感から現職に留まって様子を見る求職者が多く、例年ほどの活発な動きは見られませんでした。新型コロナウイルスの影響が深まるにつれ、3月以降は人員削減を計画、実行する企業も出てきているため、必然的に転職希望者が増加しています。やむを得ず転職活動をスタートしているケースも多いため、好況時とは異なったタイプの人材がマーケットに出てきやすい状況にあると言えます。
■■韓国■■
新型コロナウイルスの影響により採用市場が停滞
回復は収束後となる見込み
【求人数】
対前年四半期比 78%
対前四半期比 85%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
ソルラル(旧正月)休暇後から、新型コロナウイルスの影響が徐々に広まり、2月20日に大邱(テグ)で爆発的な感染が確認されて以降、2月末から3月上旬にかけ、9割を超える企業が出張規制だけでなく、在宅勤務や時差出勤を開始しました。4月10日時点で感染確定患者が1万人を超え、死者が200人を超えており、その脅威は収まっていません。経済への影響も大きく、今年度の経済成長率をマイナス成長と予想する調査機関も出始めました。一方で、大規模な検査数や透明性の高い情報公開など、政府の積極的な防疫政策により、感染確定患者の減少傾向が見られます。また、今年最も大きな政治日程である「国会議員選挙」が4月15日に控えており、当選挙が文在寅政権前半への評価となる一方、政権後半や2年後の大統領選挙に大きな影響を及ぼす選挙となるため、注視する必要があります。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルスの影響もあり、第1四半期の求人数は対前期比で15%減、対前年四半期比で22%減となりました。特に3月は大きな影響を受け、対前年同月比で新規求人数が半減となりました。進行中の採用案件も中止や一時停止となることが出始めています。面接官が在宅勤務であったり、日本に居るため来韓が難しい理由で採用活動を延期したり、製造業においては中国からの部品供給に問題が起こり、採用活動自体を一旦中止にしたことなどが理由です。新たな採用手法として、感染リスクを最小限にするためのオンライン面接を行う企業が増加傾向にあります。
【求職者の動向】
新規の転職希望者は低迷する求人件数に比較すると、堅調に推移しています。現職企業が新型コロナウイルスの影響を受け、サービス業従事者を中心に将来に不安を感じ転職活動を希望する方が増加傾向です。しかし、全体的に求人件数が落ち込んでいるため、求職者の就職活動期間が長くなる傾向にあります。
■■インド■■
新型コロナウイルスの影響で経済、採用活動は一時的に停滞しているものの限定的と考える企業も
【求人数】
対前年四半期比 87%
対前四半期比 126%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
2019年にかけて実質GDP成長率は前年同期比5%増と6期連続で減速し、2013年以来の低成長を記録しましたが、インド経済は2020年に入り低迷から脱却し、緩やかに景気が回復し始めました。景気を表す1つの指標である自動車販売は、4月の排ガス基準(バーラト・ステージ6)の導入を控え、販売価格が10%程度値上がりするため、駆け込み需要により3月は販売数が伸びると予想されていましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、大幅に減少しました。さらにモディ政権が3月25日から5月3日まで全土封鎖を発表したことで、工場や事業所、商業施設が閉鎖となり、経済が減速することは避けては通れない見通しです。
【企業の採用動向】
2019年の7月以降、経済が停滞し始めた頃から企業は増員目的の採用を控え、退職に伴う主要ポジションの欠員補充目的の採用を行った企業が目立ちました。しかし、2020年に入り徐々に景気が上向くことが予想されていたことから、これまで人員が不足していた状態で業務を行っていた部門の採用活動を開始した企業も散見されました。また、開発拠点を日本からインドへ段階的に移管する企業もあり、開発や設計のポジションが増加傾向にありました。しかし、新型コロナウイルスの蔓延にともない政府が外出禁止命令を発令したことで、当社の顧客企業の半数以上が選考プロセスを保留にしましたが、この状況がいつまでも続くとは考えない企業も多く、採用選考に時間をかけながら、これまで通りオンライン面接を進める企業も散見されます。しかし、ビザの申請を行ったとしても発給時期の見通しが立たないことから、入社時期や日本で研修を実施してから渡印するなど、採用する企業も採用される人材も柔軟な対応を必要になることが予想されます。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者の動向としては、これまでと変わらず他国と併願してインドでの就業を検討される方が多い状況です。新型コロナウイルスの影響もあり、インドでの就業の継続に不安を抱く方による、他国での就業を希望するケースが昨年と比較して増加傾向にあります。インドで働くことを希望される方の特徴としては英語力を生かせる仕事に就きたい、経済発展が著しい環境下に自ら身を置くことで日本では得られない成長のスピードを得たい、将来を見据えた人脈を構築などを考える日本人求職者が増加していることが挙げられます。
インド人については年に1度の査定時期であることから、現職での昇給後の条件と転職先からのオファー条件を較しながら転職活動を実施する求職者が散見されます。特にこの時期は年収条件、待遇を比較検討しながら転職活動を行う傾向が見られるため、内定を得ても必ず転職するまでに至らないこともあります。
■■日本(日本企業の海外事業関連求人)■■
コロナショックによる影響は、今後本格化することが予想される
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 71%
対前四半期比 138%
JAC Recruitment(日本)
海外進出支援室 室長
佐原 賢治
昨年12月に中国・武漢で発生した新型コロナウイルスにより、1月に国内初の感染者が発覚。その後、横浜沖に停泊する観光クルーズ船における集団感染の発生以降、瞬く間に国内に感染が拡がりました。多数の人が集まるスポーツイベントなどが次々と中止になる中、当初は開催を前提としていた東京五輪2020の延期も決定。当初は目立たなかった企業活動に対する影響も、アジアのサプライチェーンの破綻や海外からのインバウンド旅行者の激減などにより次々と顕在化し、3月後半には製造業の国内工場でも減産やライン停止が相次ぎました。
また当初は影響が限定的と見られていた金融市場も、米国株式相場の大幅下落を受けて悪化しており、3月末の金融機関各行の決算内容次第では、中小企業を中心とする各社は更なる困難に見舞われる恐れもあります。
【企業の採用動向】
当初は目立った影響が見られなかった新型コロナウイルスによる求人市場への影響も、国内での感染者数拡大や各国政府が渡航禁止やロックダウンなどに踏み切る中で、徐々に顕在化し始めています。
年度の最終四半期にあたる1-3月期は年度末に向けた採用選考のラストスパートの時期であることから、ほとんどの企業で選考が中止されることはありませんでしたが、新年度における新たな中途採用募集を凍結する企業が出始め、今後影響が拡大することが予想されます。
1-3月において顕著であったのは、大手・中堅製造業各社における新規分野の研究開発強化や生産の効率化・自動化を背景とする求人募集です。また半導体業界においては5G(第5世代移動通信システム)関連の新規受注に伴う増員を一様に行う関連各社による人材獲得競争が行われました。一方、海外での完成車生産の縮小が予測される中でも、部品メーカー各社の人材不足は続いており、1-3月の採用は継続されました。
また、自動車(CASE:コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化など次世代自動車技術やサービス)のほか、金融、医薬品、広告など幅広い分野でAI関連の人材が求められました。先述の研究開発関連の求人にも共通しますが、これら最先端分野の人材が期待通りの成果を出すためには、海外の文献(専門情報)や専門家、ビジネスパートナーとのコミュニケーションが不可欠であり、必然的に高い英語力を併せ持つことが求められます。これらの人材は、その希少性はもとより重要性(今確保しておかなければ将来のビジネスプランが実現できない)において一層強化されることが予測され、コロナショックの影響は皆無です。
【求職者の動向】
10-12月の新規転職希望者(海外事業経験者の登録者)数は、前年同時期比では144%と大幅に増加したものの、前四半期比では96%と減少しました。当社の主要な登録者層である35歳以上の人材の流動化は進んでいるものの、各社の動向に不透明さが見られる中、求職者の動きは慎重で、特にAI、IoTなど最先端分野や海外勤務などの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから、採用の難易度も高いままです。全般的に、現在の勤務先に留まることを選択肢としたまま慎重に転職活動をする転職希望者が増えていることから、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。
■ジェイ エイ シー リクルートメント ウェブサイト
日本 : http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
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