国宝「鷹見泉石像」など、東京国立博物館所蔵作品 約120件が日本各地の博物館へ里帰り 2020年度東京国立博物館収蔵品貸与促進事業
国立文化財機構 文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、今秋から来年春にかけて「2020年度東京国立博物館収蔵品貸与促進事業」として全国5会場で開催される展覧会に、里帰りを果たす国宝・重要文化財を含む116件の文化財を貸し出し、順次公開いたします。
「貸与促進事業」とは、国内各地の博物館・美術館に対し、〈ぶんかつ〉が作品輸送費用等を負担し、東京国立博物館の収蔵品の貸し出しを行うものです。各地域ゆかりの文化財を展示に活用していただき、日本とアジアの歴史・伝統文化の発信ならびに地方創生・観光振興に寄与する目的で、2017年度に開始いたしました。(※1)
4年目となる今年度事業のスタートを切るのは東北歴史博物館(9/26~11/23)。
その後、九州歴史資料館(10/6~11/29)、千葉県立中央博物館(10/10~12/13)、古河歴史博物館(2021年 1/9~2/7)、土浦市立博物館(2021年 3/20~5/5)と続きます。注目すべきは、江戸時代に描かれた古河藩家老の肖像画で約80年ぶりの里帰りとなる「鷹見泉石像」(国宝、古河歴史博物館で展示予定)や、博多・承天寺の住持を務めた円爾ゆかりの「聖一国師あて尺牘(通称:板渡しの墨跡)」(国宝、九州歴史資料館で展示予定)。
さらに、日本の多層建築の初期例として地元の古建築事例とともに紹介される「法隆寺五重塔模型」(3mを超える巨大模型、東北歴史博物館で展示予定)、全国の約1/3、約700か所もの縄文貝塚が所在する貝塚密集地帯・千葉県出土の考古資料(千葉県立中央博物館で展示予定)、平安時代末頃に作られた東城寺経塚からの出土品(土浦市立博物館で展示予定)など、貴重な文化財がそれぞれの地域に里帰りし、公開される予定です。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言などの影響により、全国の美術館・博物館の臨時休館が相次ぎました。海外から巡回する大型展覧会やコレクション展の実施は困難を極め、開催中止や延期、会期の変更などを余儀なくされた館も少なくありません。本事業においても、作品の輸送や職員の移動が困難な状況下で、貸与が実現しなかった例も出ています。しかしながら、上記5会場では可能性を探り安全対策をとりながら、事業実施に向けて準備を進めています。
コロナ禍の今だからこそ、改めて自国の文化を見つめなおすよい機会。
国内各地域に凱旋する地元ゆかりの名品を通して、一人でも多くの方に日本文化や地域文化の魅力に触れていただき、文化財を次世代へと受け継いでいくことを目指し、活動を続けていきたいと考えます。
■「国立博物館収蔵品貸与促進事業」とは
文化財活用センターと東京国立博物館は、2017年度より(※1)国内各地の美術館・博物館に対して国立博物館の収蔵品を貸し出すとともに、作品輸送費等を負担する「東京国立博物館収蔵品貸与促進事業」に取り組んできました。2017年以降、3年間で13の施設に158件の文化財を貸し出し、148,526人もの方々にご来場いただきました。
2017年度は2館に計26件、2018年度は6館に計61件、2019年度は5館に計71件、そして2020年度は千葉県立中央博物館、九州歴史資料館、東北歴史博物館、古河歴史博物館、土浦市立博物館の5館に計116件の文化財が貸与される予定です。(4年間で18館に274件)
2021年度実施分からは、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館の収蔵品が貸与品の対象となり、実施館についても地方公共団体の美術館・博物館から、私立の美術館・博物館へと対象を広げました。(※2)
本事業を通して各地域の歴史と文化に関わる展覧会が開催されるとともに、次世代への文化財の継承ならびに地方創生、観光振興につながることを目指します。
※1 「貸与促進事業」は、2017年度は東京国立博物館の単独事業。
※2 応募資格は文化庁長官の承認を受けた公開承認施設及び博物館法で定められた登録博物館、博物館相当施設となります。
◎2020年度「東京国立博物館収蔵品貸与促進事業」展覧会開催情報(※開幕日順)
■圧巻!3メートル超の「法隆寺五重塔模型」(1/10縮尺)を展示
1)東北歴史博物館「伝わるかたち/伝えるわざ―伝達と変容の日本建築」
会期 : 2020年9月26日(土)~2020年11月23日(月)
会場 : 東北歴史博物館(〒985-0862 宮城県多賀城市高崎1-22-1)
貸与件数 : 16件
URL : https://www.thm.pref.miyagi.jp/exhibition/3951/
公式Twitter: https://twitter.com/tohoku_h_museum
みどころ:建築模型や建築図面、座敷飾りが描かれた絵巻物などを通し、歴史の教科書でも取り上げられる著名な古建築とともに、大崎八幡宮はじめ宮城県内の古建築に関わる事例や資料を紹介し、日本の建築史を辿る展覧会です。東京国立博物館からは、昭和7年(1932)に完成した高さ3メートルを超える「法隆寺五重塔模型」(1/10 縮尺)や、江戸時代に作られた「飛雲閣紙製模型」はじめ、16件の文化財を貸し出します。なかでも、「法隆寺五重塔模型」の公開は15年ぶりとなります。技術の伝搬や造形の歴史のみならず、建築にまつわる人々の思いにも迫る展覧会です。
■アジアとの交流で育まれた福岡ゆかりの国宝、重要文化財が里帰り
2)九州歴史資料館移転開館10周年記念特別展「福岡の至宝に見る信仰と美」
会期 : 2020年10月6日(火)~2020年11月29日(日)
会場 : 九州歴史資料館(〒838-0106 福岡県小郡市三沢5208-3)
貸与予定件数: 27件
URL : http://www.fsg.pref.fukuoka.jp/kyureki/index.html
公式Twitter : https://twitter.com/kyureki_kyuoni/
みどころ:開館10周年を記念し、「信仰と美」をテーマに、福岡県ゆかりの文化財が一堂に会する展覧会です。今年度、東京国立博物館からは27件の文化財を貸し出します。博多・承天寺の住持を務めた円爾ゆかりの国宝「聖一国師あて尺牘」(板渡しの墨跡)をはじめ、福岡藩主黒田家伝来の重要文化財「唐絵手鑑」や、福岡県春日市日拝塚古墳出土の「単鳳環頭柄頭」など、アジアとの交流で生まれた福岡ならではの名宝が里帰りを果たします。
■千葉出土の“縄文の名宝”が一堂に集結!
3)千葉県立中央博物館「ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし」
会期 : 2020年10月10日(土)~2020年12月13日(日)
会場 : 千葉県立中央博物館(〒260-8682 千葉県千葉市中央区青葉町955-2)
貸与予定件数: 44件
URL : http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1585717226011/index.html
公式Twitter : https://twitter.com/chiba_chuohaku
みどころ:貝塚数日本一を誇る千葉県には縄文貝塚が密集しており、近代考古学の黎明期より研究者の注目を集めてきました。今年度事業のうち貸与件数が最多となる本展には、主理台(長谷部)貝塚、岩井貝塚、加曽利貝塚、余山貝塚など、千葉県内から発掘された考古資料44件を東京国立博物館から貸し出します。最新の発掘・調査情報も踏まえながら、貝塚を通して縄文人の暮らしを紹介する展覧会です。
■国宝「鷹見泉石像」が約80年ぶりに凱旋
4)古河歴史博物館 開館30周年・古河市合併15周年「国宝参上。―鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財―」
会期 : 2021年1月9日(土)~2021年2月7日(日)
会場 : 古河歴史博物館(〒306-0033 茨城県古河市中央町3丁目10番56号)
貸与予定件数: 15件
URL : https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/lifetop/kogameguri/art/3/3874.html
公式Twitter : https://twitter.com/koga_city_m
みどころ:同館の開館30周年、古河市合併から15周年を記念して開催される本展覧会には、地元ゆかりの古河藩家老を描いた国宝「鷹見泉石像」(渡辺崋山筆)が、およそ80年ぶりに里帰りをいたします。「鷹見泉石像」をはじめ、茨城県古河出身の河鍋暁斎や奥原晴湖が手掛けた絵画、古河出土の「埴輪 大刀をもつ男子」、古河藩主土井家ゆかりの「若松桜蒔絵化粧道具」など、東京国立博物館収蔵品を中心に地域ゆかりの文化財が紹介される予定です。
■東城寺経塚群発見から130周年を迎える記念碑的展覧会
5)土浦市立博物館「東城寺と『山ノ荘』―古代からのタイムカプセル、未来へ」
会期 : 2021年3月20日(土)~2021年5月5日(水)
会場 : 土浦市立博物館(〒300-0043 茨城県土浦市中央一丁目15-18)
貸与予定件数: 14件
URL : http://www.city.tsuchiura.lg.jp/section.php?code=43
公式Twitter : https://twitter.com/tsuchiura_city
みどころ:茨城県の指定文化財(史跡)である東城寺経塚群が発見されてから、2021年で130年目の節目を迎えます。この記念の年に、東京国立博物館収蔵品より東城寺経塚出土の経筒や鏡、さらには平安時代・長徳4年(998)に藤原道長が記した重要文化財「紺紙金字法華経巻第一残欠」を貸し出します。経塚に託された人々の願いにも迫る展覧会です。
※新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、貸与および事業実施が中止となる場合がございます。展覧会の詳細につきましては、各開催館にお問い合わせください。
■貸与促進事業 これまでの取り組み(2017年~2019年)
<2017年度>
秋田県立近代美術館
「Ippin!逸品 明治工芸の至宝展」貸与件数:8件
福島県立博物館
「山水憧憬 ―雪舟・蕪村・応挙 水墨の山野に遊ぶ―」貸与件数:18件
<2018年度>
大分県立美術館
「国宝、日本の美をめぐる 東京国立博物館名品展」貸与件数:44件
大阪歴史博物館
「没後130年 なにわ人物誌 堀田龍之助 ―幕末・近代の大阪に生きた博物学者―」貸与件数:3件
斎宮歴史博物館
「斎宮のまわりにも魅力がいっぱい! ―斎宮で自由研究2―」貸与件数:1件
彦根城博物館
「長曽祢虎徹―新刀随一の匠―」貸与件数:5件
堺市博物館
「堺・経典をめぐる文化史」貸与件数:2件
板橋区立郷土資料館
「再発見!いたばしの遺跡~いたばしの旧石器時代・縄文時代~」貸与件数:6件
<2019年度>
高岡市美術館
「明治金工の威風―高岡の名品、同時代の名工」貸与件数:32件
三重県立美術館
「没後 200 年記念 増山雪斎展」貸与件数:12件
三内丸山遺跡センター
「あおもり土偶展」貸与件数:5件
大分県立先哲史料館
「大分のキリスト教史」貸与件数:17件
千葉県立美術館
「令和元年度アート・コレクション+近代洋画の先駆者 浅井忠11―トーハクの名画がやってきた!―」貸与件数:7件
■貸与促進事業 今後の予定(2021年~)
2021年度国立博物館収蔵品貸与促進事業の募集では、全国各地の博物館・美術館から22件の応募がありました。8月に開催された選定委員会での審査の結果、福島、三重、奈良、佐賀、沖縄の施設を事業実施対象館として採択しました。2021年春以降、5つの地域で開催される展覧会において、国立博物館所蔵の地元ゆかりの文化財が公開される予定です。
2022年度実施事業の応募受付開始は来年(2021年)4月を予定しています。
貸与促進事業の応募、実績に関する詳細は、ぶんかつ公式サイトでもご確認いただけます。
URL: https://cpcp.nich.go.jp/modules/r_free_page/index.php?id=15
■文化財活用センター
文化財活用センターは国内外のさまざまな人が、日本の文化財に親しむ機会を拡大するため、2018年7月、国立文化財機構のもとに設置された組織です。愛称は〈ぶんかつ〉。貸与促進事業のほか、文化財を通じて豊かな体験と学びを得ることができるよう、文化財を活用した新たなコンテンツやプログラムの開発、文化財のデジタル情報の公開、また文化財の保存環境に関する相談窓口を開設しています。
ぶんかつ公式サイト : https://cpcp.nich.go.jp/
Instagram(@cpcp_nich): https://www.instagram.com/cpcp_nich/
Twitter(@cpcp_nich) : https://twitter.com/cpcp_nich
ぶんかつチャンネル : https://www.youtube.com/channel/UCG686bUlLvvC5VbjLz8yibA/feat
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