ガイドラインを超える、やりすぎなブラック部活動とは

生徒の「キツい」を「そういうものだ」と思っていませんか?

(執筆:SOCIO編集部 林幸奈)
今年は甲子園をはじめ、残念ながら中止となった大会のニュースを目にします。部活動は中高生の学校生活において、大きな存在です。自身の中高生の思い出や、進路決定の理由が部活動、という人も多いことでしょう。中には「厳しい練習や指導も、いい思い出だ」という人もいるかもしれません。


しかし近年、「ブラック部活動」と呼ばれるやりすぎな部活動が問題となっています。具体的には、休みが少ない・平日でも何時間も拘束する「練習のやりすぎ」、大会やコンクールが毎週末ある「大会のやりすぎ」、指導の中で生徒への暴言・体罰が加わる「指導のやりすぎ」などが挙げられます。「部活動には必ず参加する」と決まっている学校もあり、平成29年の調査では「生徒全員が部活動を行う部に所属し、活動も原則参加させている」と答えた公立中学校は、全体の約3割でした。


自ら「練習したい」という思いで活動できていればいいのですが、「疲れて勉強ができない」「用事が休めない」という生徒もいます。平成30年12月、千葉県柏市の高校で、厳しすぎる吹奏楽部の活動が原因で生徒が自殺しました。ほかにも部活が原因で死に追いやられた中高生が出ているほど、大きな問題となっています。


部活動とは、本来は自主的に参加できる、課外活動であるはずです。「自分もこうだった」「部活動とはこういうものだ」と考えている人も、学校生活や人生にも影響を及ぼす「ブラック部活動」の危険性を考えていきましょう。

ガイドラインは「1日2時間の活動」。でも実態は…

スポーツ庁のガイドラインによると、運動部の活動(学期中)は週当たり2日以上の休養日を設け、活動時間は長くとも平日では2時間、授業のない日では3時間程度とされています。「自分はもっと長く活動した」と感じる人は多いでしょう。


ほかにも以下のことが指示されています。

・学校の運動部活動は、スポーツに興味・関心のある生徒が参加するもの
・生徒が安全にスポーツ活動を行い、教師の負担が過度とならないよう、指導・是正を行う
・生徒の心身の健康管理(スポーツ障害・外傷の予防やバランスのとれた学校生活への配慮等を含む)、事故防止(活動場所における施設・設備の点検や活動における安全対策等)および体罰、ハラ・スメントの根絶を徹底する

<参考:スポーツ庁/運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン>
しかしリーダーの生徒による「もっと練習がしたい」の声、本番前の緊張した空気から、練習量は制限しにくくなっていると感じます。大会の多い部活は、運動部・文化部を問わず練習が長引きやすく、時間をオーバーしても自主練という、部活動とは違う練習時間として扱うケースもあるそうです。「1日休むと取り戻すのに3日かかる」という言葉もあり、休めない雰囲気もありますね。「部活動とはそういうものだ」と大人から言われては、生徒もなにも言えなくなってしまいます。

生徒に意欲があったとしても、疲労によるケガ・学習への意欲低下が出ている現状を考えると、部活動の練習時間は見直しが必要です。たとえば学校の授業のように、時間やカリキュラムが決められていて、「もっと練習したい」と思った場合は個人で進められれば、理想的だと感じます。

活動によっては1人でできないものもありますが、大会なども希望者のみ参加とし、自由な課外活動とした方が、生徒はプレッシャーなく活動ができるのではないでしょうか。しかし、そこにはブラック部活動を「このくらい厳しいのは当然」と片づけてしまうような、部活動へのイメージが壁をつくっていると感じます。

「部活動はこういうもの」というイメージの強さ

今年は中止となってしまった甲子園ですが、炎天下のなかプレイする球児たちは、夏の風物詩でもあります。近年は屋外での部活動で、熱中症にかかる生徒のニュースも耳にするため、心配しながら見ている人もいるでしょう。

また吹奏楽部の応援も名物ですが、ある高校では自分たちのコンテスト出場をあきらめて、野球部の応援を優先した吹奏楽部がありました。メディアで取り上げられ話題となりましたが、違和感があったという意見も多いです。

学校によっては、部活動における大会などの実績が、周囲から大きく期待されるものです。また「部活動が内申点に関わる」と言われるように、部活動の実績は、学習成績と同様に評価される場面もあります。その反面で部活動が優先されるあまり、思い通りの学校生活が送れなかった生徒もいるのでは、と考えられるケースもあります。

部活動においてひとつのことを成し遂げる、完成させるのは、素晴らしいことです。しかし「学校生活において、部活動は重要である」「部活動とは大変なものだ」というイメージが、生徒に強く押しつけられ、プレッシャーや苦しさに繋がっていないでしょうか。たとえば「運動部なら、炎天下でも外で運動するべき。自分もそうしていた」という人がいます。

しかし35度を超える気温の日も続く現在では、休息を取りながらでないと熱中症になってしまいます。また「全員が長い練習時間に満足していないかもしれない」など、1つの意見やイメージにとらわれず、寛容に意見を出せる環境が必要です。

部活動を楽しみ、かけがえのない時間だと感じている生徒もいるはずです。しかし過酷すぎる練習やイメージでプレッシャーを感じないよう、環境を見直す必要があると感じます。まずはこうした現状を大人が理解し、生徒たちが意見を言いやすい環境ができることをのぞみます。

この記事のまとめ

■ 過酷でやりすぎな「ブラック部活動」が問題となっている

■ スポーツ庁のガイドラインより長く活動している部活動は多い印象

■ 授業のように明確な時間割が必要

■ 「こういうものだ」というイメージにとらわれず、意見を言いやすい環境がのぞましい

 

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