世界最大の観光映像祭が「Seeing differently」を 2020年ベストツーリズム映像に決定 ~コロナ禍の観光地と来訪者の分断の原因を映像から探る~
大阪府立大学大学院経済学研究科准教授(一般社団法人ブリコラージュファウンデーション代表理事)の花村 周寛が監督した観光映像「Seeing differently」が、世界最大の観光映像祭ネットワーク(CIFFT)が主催する第33回世界ベストツーリズム映像賞(12月10日にオーストリア・ウィーンで開催)で2位を受賞しました。本映像は、地域への来訪者と地域住民の間に生じる“モノの見方”のギャップをテーマにしたもので、およそ160の国・地域から3,500本を超える出展映像のなかから選ばれました。
2019年末までオーバーツーリズムが世界中の観光課題となっていました。その問題の中心は外国人旅行者など外からの来訪者の振る舞いであるとされ、地域住民との「分断」が高まっていました。しかし2020年のコロナ禍で外国人旅行者の入国が制限された以降も「東京差別」や「県外ナンバー狩り」など国内における来訪者と住民との分断が起こっています。その原因は一体どこにあるのでしょうか。
本映像は、「まなざしのデザイン」という概念で人々のモノの見方を変える実践的研究を行ってきた研究者が、訪日外国人旅行者と地域住民とのモノの見方の違いを浮き彫りにする目的で制作したものです。同じ出来事に向けたそれぞれのまなざしの違いを描くことによって、どちらか一方に原因を単純化せず、双方にとって自らの視点に気づくきっかけを目指しています。分断が進みストレスに満ちたコロナ禍の中で、自らの見方の偏りに気づき寛容な視点を持つメッセージが海外でも大きく評価されました。
本映像は訪日外国人客のマナーを巡るトラブル軽減につなげたいと一般財団法人関西観光本部の事業を受託して制作しました。
国際観光映像祭ネットワーク(CIFFT)に加盟する世界14か国の観光映像祭の出展映像を各国で評価し、ポイント化。年末に各テーマ(国、地域、都市、観光商品、観光サービス、旅行記)ランキングリストのトップ3の映像がその年の「ベストツーリズムフィルム」として1位、2位、3位となります。
<国際観光映像祭ネットワーク(CIFFT)>
CIFFT(The International Committee of Tourism Film Festivals)は、1989年にオーストリアで設立され、欧米を中心とする14の国際観光映像祭の連合体。世界観光機関(UNWTO)、欧州旅行委員会(ETC)、中央アメリカ観光機関(CATA)、カリブ海観光機関(CTO)の認定を受けた世界最大の観光映像ネットワーク。観光に関わる商品・サービスへ大きな影響を与える映像コンテンツを評価、表彰する「世界ベストツーリズム映像祭」を主催している。
<受賞映像「Seeing differently」の概要>
公開 :2019年12月
公開媒体:YouTube
言語 :英語、簡体字、繁体字、韓国語。各言語に日本語を同時表記。
種類 :路地編・寺院編・商店街編の3シリーズ
受賞歴 :CIFFTに加盟するラトビア、スペイン、ギリシャの各映画祭で3冠を達成
・ラトビア「Tourfilm Riga」(2020年)観光地・国部門1位
・スペイン「Terres Travel Festival」(2020年)観光商品部門1位
・ギリシャ「Amorgos Tourism Film Festival」(2020年)
シティプロモーション部門2位
●路地編(2分13秒) https://youtu.be/HWXDLowJ1cs
路上喫煙や食べ歩きをしている訪日外国人旅行客が街で出会った舞妓に写真撮影を迫るシーンが舞台。登場人物の心の中を想定し、それぞれに、また、相互に認識や理解の不足が存在していることを示す。
●寺院編(2分10秒) https://youtu.be/XqN8ugo1zj4
静かにお祈りをするシーンが舞台。飲食禁止の堂内で飲食、友人との大声の会話、スマホの操作、帽子をかぶったままの男性。さらに撮影禁止のエリアで撮影、飲みほした飲料カップの放置といった典型的な行動について、その理由を心の中を想定して示す。
●商店街編(1分50秒) https://youtu.be/opJW7vM3tVo
商店街での串料理を巡るシーンが舞台。一見、串料理を喜ぶ観光客、それを提供する店主、よくその店を利用していた日本人、それぞれの心の中を想定して示すことにより、観光客向けの商品がそれまでの慣習に影響を及ぼすことや作られた商品についての様々な感じ方を示す。
<監督>
ハナムラチカヒロ(花村 周寛)
1976年生まれ。博士(緑地環境科学)。大阪府立大学経済学研究科観光地域創造専攻・准教授。大阪府立大学生命環境科学研究科修了後、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任助教を経て、現職。一般社団法人ブリコラージュファウンデーション代表理事。専門であるランドスケープデザインとコミュニケーションデザインをベースにした風景異化論を元に、空間アートの制作や、映像や舞台などでのパフォーマンスも行う。「霧はれて光きたる春」で第1回日本空間デザイン大賞・日本経済新聞社賞受賞。著書には、『まなざしのデザイン:〈世界の見方〉を変える方法』(2017年、NTT出版、平成30年度日本造園学会賞受賞)、宗教学者 鎌田 東二氏との共著『ヒューマンスケールを超えて わたし・聖地・地球』(2020年、ぷねうま舎)がある。
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