新たな生き方・働き方や国土ビジョンの方向性をまとめた 報告書「ポストコロナの生き方、働き方を考える」を公表 ~個々人が自由に生き方を選択・修正できる 社会の実現に向けた施策を提言~
調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木 友三郎)は4月5日、社会ビジョン委員会(委員長:増田 寛也 副会長/東京大学公共政策大学院客員教授)の報告書「ポストコロナの生き方、働き方を考える~誰もが自由に生き方を選択できる社会を目指して~」を公表しました。本報告書は、企業経営者、労働組合幹部、学識者等16名が、多様化する個人の生き方を起点に一人ひとりが希望を持てる社会のありようを見直そうと、約2年にわたり議論を重ね、取りまとめたものです。
人口急減による労働供給力不足や消費需要不足という長期的課題を抱える日本では、コロナ禍により東京一極集中やインバウンドに依存した地域経済、デジタル化の後れなどの構造的課題が浮き彫りになった一方、時間や場所に縛られない働き方や、都会か地方かの二者択一ではない暮らし方が可能であることが明らかになりました。このような課題意識の下、この報告書では、目指すべき社会を実現する方策として、(1)働き方改革を進め、暮らし方や生き方そのものの選択肢を増やす、(2)DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進め、時間や場所に縛られず働くことができる拠点を地方に整備する、(3)温暖化対策を成長の機会とするグリーン・トランスフォーメーション(GX)を進め、エネルギーの地産地消化や都市のスマート化を促進する、の三つをセットで行うべき、と述べています。
併せて、働き方、都市と地方のあり方の両面から日本の持続可能性を高める施策を挙げ、「ライフモデルが複数(Multiple)存在し、個人の意思により選択可能(Selectable)で、必要に応じて修正(Editable)できる社会『MuSE Life:誰もが生き方を選択できる社会』」の構築を提言しています。提言の概要は以下の通りです。
【提言の概要】
1. キャリア政策の主体を企業から個人へ転換
○ 企業は、個人のスキルやキャリアを磨けるようライフスタイルやステージに応じて働く場所・時間の柔軟化等でサポートするとともに、個人の職種や成果、個性を評価し、処遇すべきである。企業・労働組合・行政は、多様なキャリア開発に向けたジョブ型雇用へのシステム移行や雇用契約の明確化、職種ごとの社会横断的な賃金テーブルの構築など、環境を整備する必要がある。
○ 地域や企業を越えた副業・兼業は、働く人・企業の双方にとって有益であり、地域の人材不足を補うシェアリングエコノミーの一形態としても有効であることから、促進すべきである。
○ 技術革新に伴い経済活動の前提が大きく変わっており、成長モデルを見直し、人的資源を社会全体で活用することが必要であることから、積極的な雇用創出に向けて解雇要件に関するルールを整備し直す必要がある。
○ 女性、高齢者、障がい者、外国人、若い世代の活躍促進や起業支援など、もう一つのDX=ダイバーシティ・トランスフォーメーションを強力に進めるべきである。
○ 能力やスキルの開発など個人を支えるセーフティネットを再構築し、企業・労働組合・行政・大学などが相互に補完しながら、社会全体で支援や投資を行うことが必要である。
○ 労働組合には、多様な業種の加盟組織を地域ごとに繋ぎ直し、地域の人材育成、個人のキャリアアップ支援を担う取り組みを求める。労働条件を軸とした労使関係から、企業という枠を越えた個人のキャリア開発支援へ、日本の労使関係は進化していく必要がある。
2. 人・情報・財の対流と個性ある地域づくりで「多極共生型」国土へ
○ 2020年の出生数は85万人を割り込むといわれ、将来推計(2017年)から3年前倒しで少子化が進み、「消滅可能性都市」の推計は5年で896市区町村(2014年)から927市区町村(2019年)に増加(1,798市区町村中)するなど、人口減少は加速しており、日本が持続可能であるためには国民一人ひとりの活動の幅・量・質ともに高めることが急務である。
○ 地方のDXを進めて職・遊・住における人の移動で交流人口を増やし、地方創生を実現するべきである。居住地という場所から、共有する時間・空間に紐づける自治へと変わることから、住民票や住民税など制度の見直しも必要となる。自治体には、魅力的な生活スタイルを提案する街づくりや都市開発が求められる。
○ 移動手段や不動産などの「所有」から「利用」へ、シェアリングエコノミーを積極的に導入し、地域の生産性向上と住民の生活の質の向上を同時に実現すべきである。併せて、ランドバンクや空き家バンクの整備・普及により、未利用土地の利用促進を図る必要がある。
○ 地域とグローバル市場を繋ぐ結節拠点「グローカルハブ」を全国につくるべきである。これを機能させる人材・資金・情報を共有する基盤整備には、首長とともに地域の金融機関に、企業・行政・大学や人材を繋ぐ役割を期待したい。
○ 温暖化対策を成長の機会と捉え、再生可能エネルギーの開発・立地に強みを持つ地方の特性を活かしてグリーン・トランスフォーメーション(GX)を進め、エネルギーの地産地消化や都市のスマート化を促進すべきである。
○ 地域間格差の拡大や地域間競争の弊害を克服するためにも、公共サービスや医療・介護などの政策連携が必要である。併せて、医療・介護、交通、金融など基礎サービスに係る複数の産業・企業の資本を集約し総合的に管理する「ローカルマネジメント法人」の制度化を求める。
○ 過度な東京一極集中を早急に是正すべきである。いくつかの圏域の核・拠点となる都市に資本を集中投下し、独自の自然・歴史・文化等を活かした魅力ある地域づくりを進めるとともに、周辺地域と連携して支え合う「多極共生型」の国土を目指すべきであり、新たな「国土ビジョン」の構築が求められる。
* 報告書本文は当本部のサイト< https://www.jpc-net.jp/research/detail/005170.html >に掲載しておりますので、ご参照ください。
【別添資料】
社会ビジョン委員会 報告書
「ポストコロナの生き方、働き方を考える~誰もが自由に生き方を選択できる社会を目指して~」
プレスリリース添付資料
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