欧州「GAIA-X」のコア技術「IDSコネクター」との相互接続を実現するプラットフォームを試作/CO2排出量の算出を想定した製造ラインデータの国際間流通に成功
~データ主権を保護しつつ国際間でデータを円滑に利活用できる社会を実現~
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、欧州が自国・地域のデータ主権(※1)保護を目的に構想を進めるデータ流通基盤「GAIA-X」(※2)の中核を構成する技術「IDSコネクター」(※3)と相互接続を可能とするプラットフォーム(以下 本プラットフォーム)のプロトタイプ(※4)を開発し、秘匿性が高いため通常は外部流通しない一方でCO2排出量の算定根拠となるため利活用が期待される工場の製造ラインデータを、スイスからドイツと日本へ安全に流通すること(以下 本実験)に成功しました。
本実験および今後の活動成果をもとに、今年度中に本プラットフォームの商用版を開発予定であり、国際間の円滑なデータ利活用を推進することで、脱炭素社会の実現やSDGsの早期達成など世界が抱える社会的課題の解決に貢献します。
1.背景
脱炭素社会の実現やSDGsの早期達成、産業力の維持・向上などあらゆる課題の解決を行う上で、データ利活用は欠かせないものとなっています。一方で、企業・国家機密の流出防止、データ主権の保護のため、データの越境流通や利活用を管理・規制する法制度や技術整備が世界各国・地域で進んでいます。そのひとつが「GAIA-X」です。
今後、欧州諸国の取引先と機密性の高いデータを送受信するには「GAIA-X」を介して実施することが求められる見込みです。つまり、「GAIA-X」に対応できない企業は、欧州企業とデータ流通を伴うビジネスができなくなることが予想されます。
企業が「GAIA-X」に個別に対応する場合、特殊な技術に精通した技術者を確保し、多くの時間とコストを伴うシステム改修や「GAIA-X」への接続認証取得などを行う必要があります。本実験は、企業各社の個別対応を不要とするために、本プラットフォームの商用化を目指すための取り組みです。
2.本実験の概要
脱炭素社会の実現に向け、データをもとに製造方法の見直しを検討するシーンを想定し、本実験を行いました。
開発したプロトタイプは、「GAIA-X」のコア技術である「IDSコネクター」との相互接続を実現するプラットフォームです。また秘匿性の高いデータを安全に流通させる仕組み「DATA Trust(R)」を具備しています。本実験の結果、利用者は個別対応をすることなく、開発したプロトタイプにシステムを接続するだけで、法律や契約にもとづき許可された相手にのみ必要なデータを流通することに成功しました。
<本実験で想定したケース>
製品の製造を受託するスイスの工場から製造発注元となるドイツ及び日本の企業に、製造時のCO2排出量を算定するための電力消費量データを流通する。
<本実験のイメージ>
3.エンドースメント
GAIA-X AISBL 取締役会長 Hubert Tardieu氏
日本は自動車、鉄鋼、製造などの産業分野で欧州と密接な関係にあります。今日、あらゆる産業において「GAIA-X」で実施されるデータ共有やオーケストレーションが重要視されていますが、NTTコミュニケーションズは「GAIA-X」の一部であるIDSの技術標準を使用し、日本、ドイツ、スイス間におけるデータ共有を初めて実現しました。GAIA-X AISBLは、NTTコミュニケーションズによる日本拠点の立ち上げを強くサポートし、「GAIA-X」の利用拡大を促進してまいります。
4.今後の展開
「GAIA-X」との接続を模擬したテスト環境を日本国内に構築し、国内外の複数のパートナー企業による相互接続試験を、今夏から開始予定です。その結果をもとに、国際間データ流通の課題に取り組む組織・団体(※5)と連携しながら、今年度中に本プラットフォームの商用提供を予定しています。
なお2021年4月12日~16日にオンラインで開催される世界最大の産業見本市「ハノーファー・メッセ」(※6)に出展し、本実験を紹介する予定です。
(※1):データ主権とは、データの開示範囲や利用用途などをデータ提供者の意思で決めることができる権利です。
(※2):「GAIA-X」とは、2019年10月にドイツ政府・フランス政府が発表した、セキュリティとデータ主権を保護しつつ、データ流通を支援するためのインフラ構想です。欧州の企業や行政、機関、市民の権利を守るためのデータ保護や透明性、信頼性の担保、相互運用性のあるデータ流通プラットフォームの社会実装を目指すものであり、欧州以外の市場参加者にも参加を呼びかけています。
(※3):IDSコネクターとは、International Data Spaces Association(以下 IDSA)が定めている技術コンポーネントです。
(※4):プロトタイプは、日本電信電話(ソフトウェアイノベーションセンタ)の企業間データ流通技術を活用し、日本電信電話、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(以下 RRI)、IDSA、フラウンホーファー研究機構、シーメンス、スイスイノベーションパーク・ビール/ビエンヌ、ジャパンイノベーションパークの協力により開発しました。
(※5):本プラットフォームの開発は、国際間のデータ流通の課題に取り組む組織である、データ社会推進協議会、日本OPC協議会、RRI、GAIA-X AISBL、IDSAと連携して実施します。
(※6):ハノーファー・メッセは、毎年ドイツで開催される世界最大の産業見本市です。IDSAおよびRRIが運営するブースに、本実験の成果を展示します。
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