HORIBAのX線分析装置が宮沢賢治の草稿真贋判断に活躍

株式会社堀場製作所のグループ会社で製品メンテナンスや受託分析などのサービス事業を担う株式会社堀場テクノサービス(本社:京都市南区、代表取締役社長:千原 啓生、以下 堀場テクノサービス)は、岩手県花巻市出身の詩人で童話作家である宮沢賢治が昭和初期に書いたとされる詩「S博士に」の草稿の真贋分析に協力しました。

本草稿は文字の赤字と黒字が反転するなど従来と異なる点がみられ、花巻市が調査を実施。堀場テクノサービスは、微小部X線分析装置を用いて草稿の元素分析を実施しました。花巻市は、本分析結果やこれまでの宮沢賢治に関する研究結果などから、本草稿は宮沢賢治の直筆草稿であると判断し、3月29日に発表しました。

今後も当社グループは、計測・分析を通じて文献や絵画、文化財などの制作年度や素材の解明、保全などに貢献してまいります。



■直筆草稿だと判明した経緯

本草稿は、2020年6月に総合花巻病院から花巻市に寄贈された、S博士とされる佐藤隆房氏(故人)のコレクション約4,000点の中から見つかったもので、赤字の上に黒字の修正が入っています。宮沢賢治記念館で所蔵しているこれまでの草稿データと比較すると、赤字と黒字が反転しており、花巻市に寄贈された草稿には「賢治」の署名がありませんでした。そのため、花巻市により、直筆草稿の可能性を探る調査が行われました。

「S博士に」は宮沢賢治が病床で書いた疾中詩群の一篇で、佐藤氏は総合花巻病院の前身である花巻共立病院の初代院長です。「S博士に」と、同じ疾中詩群に含まれる「ひるすぎの三時となれば」の2作品を、微小部X線分析装置を用いて非破壊・非接触でインクと用紙を元素分析しました。花巻市は、本分析結果や疾中詩群および宮沢賢治の執筆特徴など総合的な観点から、直筆と判断しました。


左から「ひるすぎの三時となれば」、「S博士に」の直筆草稿


■HORIBAグループの役割

堀場テクノサービスは、花巻市の依頼を受けた株式会社大塚巧藝社(本社:京都市中京区)より分析依頼をいただき、非破壊・非接触で測定ができる微小部X線分析装置を用いて元素分析を行いました。物質に含まれる元素の種類を調べることは、使用されたインクや紙などの種類を示す指標の一つとなります。


X分析装置で草稿を分析する様子


■岩手県花巻市博物館 小原学芸員 コメント

宮沢賢治記念館で所蔵していた草稿の画像データと今回寄贈された草稿に相違があったため、明らかにしなければという気持ちでした。科学的な分析は、文献だけでなく伝統工芸品などの調査研究や保全の手段としても重要な役割を果たしており、今後もこうした取り組みに期待しています。



■宮沢賢治記念館 宮澤学芸員 コメント

宮沢賢治の執筆稿の多くは宮沢賢治記念館に所蔵されています。このように草稿が寄贈されること自体が稀ですので、当館として宮沢賢治の草稿の科学分析に関わるのは今回が初めてです。分析結果をはじめとした直筆草稿についての発見に驚くとともに、詩のモデルともいわれる佐藤氏が所蔵していた貴重な詩を花巻市に託されたことを受け止め、しっかりと未来につないでいきたいと思います。



[ご参考]

微小部X線分析装置 XGT-9000

試料の元素分析を非破壊、非接触で行います。半導体や食品、薬品といった私たちの生活の身近にあるものから、隕石や絵画、遺物まで、幅広い分野の研究開発に役立てられています。

https://www.horiba.com/jp/scientific/products-jp/x-ray-fluorescence-analysis/line-up/micro-xrf-elemental-analysis/details/xgt-9000-37751/

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