アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2021年1月~3月
[2021年4月26日 東京]
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2021年第1四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください
https://www.atpress.ne.jp/releases/256928/att_256928_1.pdf
【サマリー】
・新型コロナウイルスの収束を見込み、ベトナムを除く全てのアジア各国の求人数が対前四半期比で増加。マレーシア、シンガポール、タイ、韓国、インド、日本では対前年比でもコロナ禍前の水準まで求人数が回復
・渡航規制により他国の人材採用が困難な状態が続き、国内在住の人材を対象に採用を行う企業が顕著に
・シンガポールと中国では、就労ビザ取得要件の厳格化により在住外国人の転職に影響
■■マレーシア■■
外資・ローカル企業の業務拡張・新規進出による積極的な採用意欲により求人数が増加
【求人数】
対前年四半期比 104%
対前四半期比 150%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
3月にVistage-MIER(マレーシア経済研究所)が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数:DI指数に100を加えた指数、CEO回答数は791)によると、第1四半期は昨年第4四半期比11.7ポイント増加し77.0ポイントとなり、昨年第2四半期の26.9を底に3四半期連続で上昇しました。コロナ禍前の昨年第1四半期の88.4まで回復し、売上げ増加を見込む指数も前四半期の107から122へ上昇しています。先月30日にJACTIM(商工会議所)とJETROが発表した日系企業アンケートでも、製造業の7割がコロナ前と同等、もしくはそれ以上と回答していることから、同一の傾向が伺えます。コロナの新規感染者数は逓減傾向にあり、今後ワクチン接種の進展(4月6日時点で1.6%)やMCO(移動制限令)の段階的解除に伴い、景況感は良化していく見込みです。
【企業の採用動向】
求人数は前四半期比50%増、前年同四半期比でも4%増加しました。コロナ禍前の2019年の同四半期比でも9%増加したことから、企業の採用意欲は従来以上に上昇しています。外資系やローカル企業では前四半期比75%増、昨年同四半期比31%増と大幅に増加した一方、日系企業では前四半期比19%増、前年四半期比19%減と採用意欲に大きな差が見られます。前者ではコロナ禍後のビジネスを見据えた新規採用(営業・市場開発、エンジニア、R&D等)を積極的に行っているのが特徴です。第1四半期に業務拡張・新規進出を背景に当社が取引を開始(交渉中含む)した企業44社の9割以上が外資とローカル企業です。
特に求人が増加した業界は、引き続きBPO、SSC(シェアードサービスセンター)/GBS(グローバルビジネスサービス)です。従来よりBPO/SSCでは給与計算や経理業務での多言語人材需要が中心でしたが、コロナ禍で現地の営業活動が伸び悩み、グローバル・インサイドセールスの部門をマレーシアに移転・導入するケースも増えています。従来のインサイドセールス以外にも購買、サプライチェーンなどの部門拡張もコロナ禍後の特徴です。
この結果、日・韓・タイ・ベトナム語に加え、アラビア・ポルトガル・仏・アフリカ諸国言語スキル保持者の採用が増えているのが昨年までと大きく異なる点です。日系企業においては、今年から従来の地場・日系企業マーケットからASEAN・グローバルマーケットへシフトするための新規営業開発人材等の求人が特に増えています。その他IT、eコマース、エンジニアリング、医薬・医療機器、半導体・電子電気など、引き続き採用が活発です。職種では人事・経理・コンプライアンス・規制管理などは絶えず求人依頼を受けています。
一方で外国籍(日本人・韓国人・タイ人など)向けの求人については、採用が内定しても渡航できないことから、実際の就労開始時期が未定となるケースが発生しています。
【求職者の動向】
例年、旧正月(毎年2月頃)明けに求人・求職ともに活発化するものの、今年は年末年始でも求職者の新規登録が続いています。コロナ禍における給与カット、レイオフと同時に、この機により安定成長が見込める企業への転職を画策する求職者が増えたことが要因です。日本人求職者に関しては、2020年上半期に停滞していた就労パスの承認プロセスが徐々に緩和されています。
■■シンガポール■■
製造業を中心に業績が回復し、全四半期比で求人数が増加
一方、外国人の就労許可の厳格化による採用難の影響も
【求人数】
対前年四半期比 92%
対前四半期比 131%
JAC Recruitment International Group マネージングダイレクター
Adil Driouech(アディル ドリウェシ)
3月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は50.8となり、2019年3月の50.8以来2年ぶりの高水準を記録し、製造業を中心に景気の回復が見られました。また、新型コロナウイルスの感染対策として敷かれていた出勤制限が4月5日から緩和され、従業員の75%が職場勤務が可能となり、街には人出も増えて活気が戻っています。ワクチンの接種も順調に進み、現在は45歳以上の国民への接種が始まり、6月には45歳未満の国民にも接種が開始する見通しであることから、今後国外への渡航再開への期待も高まっています。
【企業の採用動向】
年始より製造業を中心とする企業から求人依頼が増加し、求人数は対前期比で31%増となりました。時節柄、年末のボーナス支給後の旧正月前後(1月~2月)にかけて転職活動が活発になり退職者も増えることから、欠員補充目的の求人も増加しました。
シンガポール政府から外国人向けの就労規制に関する追加政策が打ち出され、5月1日以降、配偶者ビザ(Dependent Pass)への就労許可証の発行は一部例外を除き原則廃止となることが発表されて以降、配偶者ビザで就業する社員が多い日系企業からシンガポール人の採用に関する問い合わせが急増しました。今後はシンガポール人、シンガポール永住権保持者の採用ニーズが高まっていくことが予想されます。
【求職者の動向】
景気の回復に伴い年始から意欲的に転職活動を行う求職者が増え、登録者数は前四半期対比で20%増となりました。時節柄旧正月前後は、シンガポール人が活発に転職活動する時期でもあるため、その動向も登録数増加の一因となっています。現地在住の日本人においては、ビザ更新時にその基準を満たすことができず、更新ができないことから転職を考え始めた方々の登録者数が増加しています。
また、上述の配偶者ビザ(Dependent Pass)の就労許可証の新規発行期限が4月末となったことから、それまでに就業を目指す方々の登録数が急増しました。
■■タイ■■
コロナ禍の反動により、採用市場が急速に回復
【求人数】
対前年四半期比 97%
対前四半期比 143%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
2020年末に発生した新型コロナウイルスの第2波は小康状態で、各地で小規模のクラスター感染が発生しており収束とは呼べない状況であるものの、状況が深刻な国々と比較するとタイは抑え込みに成功していると言えます。ワクチンの世界的な普及により、タイ入国時の隔離期間の短縮が議論され始め、これまで低迷していた観光業にも回復の兆しが見え始めています。今後は基幹産業である自動車を始めとした製造業の輸出先国の景気や感染状況により2021年のタイ経済が左右されることが考えられます。
【企業の採用動向】
1月には多くの工場や企業のオフィスが部外者の訪問を禁止したため採用の選考プロセスが滞っていましたが、2月から解消され始め、感染者が減少するにつれ選考が通常通りに戻りつつあります。それに伴い、昨年新型コロナウイルスの影響により採用を一時停止していた案件が今年になり再開され、求人数は前期比で43%増となりました。これは一時的な反動ではあるものの、採用市場は新型コロナウイルス発生前の状況戻りつつあると言えます。
しかし、タイではコロナ発生前より選考に時間をかけ慎重に採用を決定する傾向があったことから、募集ポジション数が増えたものの、採用に慎重な姿勢に変化はありません。企業が日本在住の日本人人材を直接採用する場合に関しては、入国時の隔離施設などに支払うコストを許容する企業が増え始め、これまで滞っていた国をまたぐ人材の流動も進み始めています。
【求職者の動向】
求人数の増加に伴い、転職に慎重だったタイ人が徐々に活動を始めています。しかし、コロナ禍を経て経済状況が一転したことにより、かつての年収アップ目的の転職から慎重に転職をする習慣ができたと言っても過言ではありません。上記企業の慎重な選考姿勢と相まって、より先進国のお互いのマッチングを突き詰める転職文化に醸成されていく過渡期に入ったと言えます。
■■インドネシア■■
IT・エンジニア関連の採用が活発化し、求人は前四半期比で86%増と大幅に回復
【求人数】
対前年四半期比 49%
対前四半期比 186%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
インドネシアでは医療従事者および60歳以上の国民を対象に中国製のワクチン接種が順調に進んでいるものの、新型コロナウイルスの感染者数は減少には至っていない状況です。一部の業界を除き一般業種は半数の社員の出社のみ認められている状況が続いているものの、街には人の往来が増えて来ています。
雇用創出、経済成長を目的とした投資環境改善を盛り込んだオムニバス法により、大臣令や細則が発表され始めているものの、国民が同法の全体を理解・把握するには時間を要する見込みです。日系企業の市場である主要産業の自動車業界は、政府による自動車を対象とする奢侈税の減免措置で3月は前月比77%増、前年同月比29%増と回復しました。今後、消費ニーズが上昇する5月のレバラン(断食明け祭り)期にさらなる経済の回復が期待されています。
【企業の採用動向】
前年同期比の求人数は51%減とコロナ禍前の状況まで回復には至っていないものの、前期比では86%増と足元では急速に回復しています。新年度に向け、各業界で新規投資、新規事業関連の求人が増加しているだけでなく、インドネシア人のITエンジニアのスキルや英語力が向上していることから他国からの採用意欲が高まっています。一方、日系企業の採用動向に関しては3月末にビザの新規申請が可能になったものの、第1四半期中はほぼ申請を受け付けない状況だったため、新任の駐在員や出張者の渡航ができず動きは鈍化しました。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスにより、安定を求め転職を考える候補者は増えたものの、インドネシアの新規ビザの申請受付が停止されたことにともない、ビザの発行が可能なアジア他国での就職・転職を希望する傾向が見られました。インドネシア人の就職・転職希望者は引き続き積極的に活動を行っており、キャリアアップ、収入アップの機会を常に探しています。
■■ベトナム■■
新型コロナウイルスの影響は残るものの、ベトナムの経済活動は回復基調に
【求人数】
対前年四半期比 74%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment ベトナム法人ダイレクター
Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
統計局によると2021年第1四半期のベトナムの国内総生産(GDP)は、2020年の第1四半期の3.68%の成長率から4.48%増となると予測されました。ベトナム経済は、国内需要・合弁事業・国際市場に注力し、段階的に回復に向かっています。人々の移動や旅行のニーズが増加し、国内市場の旅行、運輸、サービス関連のビジネスは回復が期待されていますが、海外市場にサービスを提供している企業は、出入国の制限が解除されるまで回復の見込みが立たない状況です。近年のベトナム経済は上昇基調が継続しており、好景気が続けば、建設業や加工業など今後成長を見込む分野が飛躍することが期待されています。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルスの影響により昨年から飲食店やホテルなどの業界の求人は停滞状態が続いているものの、製造業や建設業では採用意欲が高く求人は堅調に推移しています。昨年から、ベトナムでは中国系企業、韓国系企業の製造業が積極的に市場開拓を行っており、外資系企業とローカル・日系企業による競争が激しくなっていますが、ローカル企業や日系企業が外資系企業との競争を意識して戦略を立てる企業は少ない状況です。外資系企業への対抗措置を図ることにより、業績の向上や採用競争力などを強化することなどメリットがあるものの、実際に施策を実施できるローカル・日系企業は少ないことが現状です。
【求職者の動向】
登録者の動向については、ベトナム人の極端な売り手市場が続いているものの、日本在住の日本人の転職希望者がハイスキル人材向けの求人を目指しベトナムに入国される方が一定数存在します。ハイスキル人材の採用においては、スキルや経験だけでなくコミュニケーション力の高さ、提案力、誠実さなど、人間力の高さを考慮する企業が増加傾向にあります。
■■中国■■
求人数が増加し転職市場が回復
一方、就業ビザ取得要件の厳格化により採用難となる影響も
【求人数】
対前年四半期比 172%
対前四半期比 101%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香
第13期全国人民代表大会にて、国民経済・社会発展計画案報告では、引き続き雇用優先政策、所得増進政策、社会保険制度整備政策が推進されると報告されました。同報告はGDP成長率を6%以上、消費者物価指数上昇率(CPI)を3%前後とし、また、フレキシブルワーカー等の多様な雇用形態を奨励し、個人が所得増を図ることができる体制整備を支援する内容です。また、1級都市では平均給与の上昇が顕著で、1Qの国内全体の平均月給は同2.78%増の8,491元。上海市は10,181元、2~4位の広州、深セン、北京はいずれも9,000元越えと高騰傾向で、日系企業の人材採用市場にも影響をおよぼしています。
【企業の採用動向】
企業の採用意欲は、昨年後半以降から依然活発な状態が継続しています。業績回復・拡大による増員のための募集、新規参入のための新設ポジションなどの求人が増加しており、昨年の同一時期と比較すると求人数・求人内容に大きな変化が表れています。成長領域である半導体・医療・医薬業界他、食品・日用品業界・電子・化学など、多岐にわたる業界で増員の動きがあり、優秀な人材の獲得競争も激化しています。日本人向けの求人については、依然新規ビザ取得の難易度が高い状況が続いており、中国国内で就業ビザ保持者を対象とした求人が多数を占めています。また、新型コロナウイルスによる渡航規制により、駐在員・出張者の新規派遣が困難な状況から、現地採用に切り替えて採用を検討する企業も増加しています。
【求職者の動向】
例年通り、春節以降の求人増加に伴い求職者数が増加しています。昨年の新型コロナウイルスの状況下の市場の見通しを鑑みつつ慎重に転職活動を進める状況から一転し、採用市場の回復と共に、新たに転職活動を開始した求職者も少なくありません。求人が増え、複数企業からの内定を保持している求職者による登録も散見されます。外国人求職者は、新規ビザ取得には依然招聘状の取得、もしくは中国製ワクチンの接種が求められるため、面接のための短期渡航も困難な状況が続いています。それに伴い、日本籍・中国籍を問わず、本社とのWeb面談を行い採用を決定する案件が増加しています。
■■香港(中国香港特別行政区)■■
直近の求人数が増加し、転職マーケットが回復の兆し
【求人数】
対前年四半期比 58%
対前四半期比 123%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾
新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きを見せ始め飲食店の開業規制も緩和され始めましたが、依然として出入境管理については厳格な対応が続いています。ワクチンの接種が開始されたことから、今後の更なる社会規制の緩和が期待されます。一方、経済面では2021年に入って以後も企業拠点の縮小、閉鎖なども散発的に続いており、失業率の上昇が問題視されています。
【企業の採用動向】
第1四半期の求人総数は昨年同期比で大幅に減少したものの、実質的な求人ニーズや問合せは増加しており、その伸びという観点から昨年よりも勢いを感じられる状況です。採用の背景の多くは欠員補充ではあるものの、企業によっては2020年に生じた欠員に対して行っていた採用凍結措置を、2021年に入ってから解除し、若手・経験者の職位を問わず採用を再開するケースもあり、今年の半ばから後半に向け更に採用が活発になることが見込まれます。
【求職者の動向】
昨年後半同様、大手航空会社による雇用調整の実施や失業率の高まりなどの影響が続き、離職者が目立つ状況が継続しています。加えて離職期間が長期化する候補者も増えており、希望する給与額を下げてでも就職先を確保することを優先する方も増加傾向です。一方、現職者における転職活動については、今年の第1四半期には例年大幅に増える時期である旧正月以降の伸びが見られず、昨年から続いている様子見の姿勢が依然継続しています。失業率等の総数による動向では、一見買い手市場の状況と理解されがちですが、前述の企業側の採用意欲と現職者の転職意欲とのバランスを鑑みると、企業が求める人材像や職種によっては、以前に増して売り手市場という側面もあります。
■■韓国■■
韓国財閥大手のサプライヤーは、堅調な採用を継続
【求人数】
対前年四半期比 96%
対前四半期比 102%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
経済協力開発機構(OECD)が今年度の経済成長率見通しを3.3%、国際通貨基金(IMF)が3.6%と昨年末の予測値から上方修正を行っています。世界経済が新型コロナウイルスのワクチンの普及による活性化が渇望される中、輸出依存度の高い韓国経済の回復が期待されています。しかし内需は低迷が続き雇用が減少していることから、景気回復の実感は少ないことが現状です。4月7日、ソウル、釜山の市長選挙で野党候補が大差で当選したことは、来年3月に控えた大統領選挙や今後の政策に一定の影響を与える可能性があります。足元では新型コロナウイルスの第4波の兆しもあり、予断を許さない状況です。
【企業の採用動向】
第1四半期の求人数は対前期比で2%増、対前年四半期比で4%減とほぼ横ばいとなりました。財閥大手のサムスン電子が第1四半期の連結決算(暫定値)で営業利益が44%増となり、韓国製造業を牽引しています。半導体などのサプライヤーの求人は営業職を中心に堅調です。また昨年、受注量が世界1位となった造船業は付加価値が高い製品を提供していることから業績が好調で、今年の業績も明るい見通しです。その他ではエネルギー関連の技術者や化学品の法規制への対応人材などの募集が増加傾向です。一方で、国内消費の低迷が続き、消費財関連の会社は求人数が減少傾向です。
【求職者の動向】
2月の旧正月後から、求職者の転職活動が活発化しています。特に新卒を含む若手の求職者は積極的に求職・転職活動を行っています。また、海外に在住していた方が新型コロナウイルスの影響を受け、母国の韓国に帰国し、就職活動を行う方も増加傾向にあります。業界ではITやゲーム業界で優秀人材が売り手市場となっており、大手が基本給の一律アップやボーナスの引き上げていることにより、人材の流動が活発化しています。
■■インド■■
企業の経済活動が戻り、採用活動が活発化
【求人数】
対前年四半期比 87%
対前四半期比 110%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
2020年3月のインド全土のロックダウン以降、インド経済は新型コロナウイルスの影響で過去最悪のマイナス成長となりました。今後の経済の立て直しの施策として、特に国民の健康維持への対応やインフラの整備に注力することで早急に経済の立て直しを目指しています。「メイク・イン・インディア」の政策の推進もあり、2020年後半から特に製造業の回復が顕著で、経済回復の牽引役となりました。また、一時的に新型コロナウイルスの新規感染者数が減少したことから、個人消費が回復に向かっています。一方で第2波の感染拡大の懸念もあり、経済は感染状況とワクチンの普及に左右されるとみられています。
【企業の採用動向】
2020年の後半より経済活動が回復基調にあることから、昨年の第4四半期以降は徐々に採用活動を再開する企業が増えています。2021年1月以降は新型コロナウイルスが発生する前に近い状況まで採用活動を再開し、対前四半期比の求人数は10%増となりました。
特に製造業では生産が回復傾向となる一方、輸送コストが急騰したことから業務フローの見直し、人材不足による部門強化目的で積極的に採用する動きが見られました。中でも製造プロセスの改善、購買、人事、経理などの管理部門関連の求人が増え、多くの企業が今後の経済回復を見据え積極的に組織の強化を図る目的の採用を行っています。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスの影響で2020年はインドでの就職や転職を控える候補者が多く見られましたが、2021年1月以降は求人件数の増加に伴い、積極的にインドでの就職や転職を検討する候補者が増加傾向にあります。傾向として、英語を使える環境や経済成長の著しい環境で活躍したいと考える候補者による登録が、継続して増加しています。また、他国と比べると比較的就労ビザを取得しやすいこともあり、海外就職を目指す候補者にとって希少価値を高められる国としてインドが注目されつつあります。
■■日本■■
日系企業の海外事業要員求人が新型コロナウイルス発生前の状態まで回復
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 97%
対前四半期比 118%
JAC Recruitment(日本) チーフアナリスト 佐原 賢治
2020年末から21年始めにかけて急増した国内の新型コロナウイルス新規感染者数は、一旦減少したものの、3月に入り再び増加に転じました。景気の影響を受けやすい自動車産業では、中国で販売台数が堅調に伸びている反面、半導体不足に伴う減産の影響もあり、国内では微増(1-2月累計で前年比3.3%増)、またタイや北米でも前年を下回るペースで推移しています。
また工作機械受注は、国内では先行きの不透明感から受注が伸びていませんが、EVなど環境対応車や建機、スマートフォンなどの部品を中心に設備投資が増え、特に中国、北米を中心に受注が堅調です。
またコロナ禍の長期化によって、既に大きな影響を受けている旅行やレジャー、飲食業界が更に深刻なダメージを受けることが危惧されます。
内閣府が行った1-3月期の法人企業景気予測調査では、前期、前々期と「上昇」が「下降」を上回っていた大企業の景況が再び「下降」超に転じています。中堅・中小企業でも「下降」超の状態が続いており、足元の新規感染者増加傾向が長期化すれば、さらに景気の回復が遅れる可能性があります。
【企業の採用動向】
2021年21月の有効求人倍率は1.09倍(全国)とやや上昇しましたが、昨年同時期からは0.36ポイント下降しました。製造業では人手不足が解消されたわけではありませんが、業績の先行きの不安から人材採用を手控える企業が多く見られます。3月は年度末のため新規求人が急増しましたが、足元の感染再拡大によって再び採用意欲が低下する可能性もあります。
当社に寄せられる新規求人数(日系企業の海外事業要員)は、10-12月期比で18%増加、前年同期比でも3%減と、ほぼ新型コロナウイルス発生前の状態まで回復しています。しかし、採用の姿勢は引き続き慎重で、優秀な人材を厳選するあまり、ほとんどの企業が採用数目標を達成していません。また、候補者の質を高め、なおかつ募集コストを合理化するために各社が力を入れているのは「リファーラル採用」と呼ばれる既存従業員の人脈を用いた人材募集です。これにより、各社の中核人材採用が水面下で行われることが増えることが予測され、分野によっては優秀な人材が市場に現れ難くなる可能性があります。
【求職者の動向】
1-3月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比で16%減となりました。冬のボーナスを前に転職活動を行う人が増える季節要因の反動減との見方もできますが、先行きの不透明感から方向性を見定められないことが求職者の動きが鈍くなっています。
活動中の求職者の動きも慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また先述の通り、企業の選考のハードルが上がっていることから優秀な人材の獲得競争は一層し烈な状況で、先端ITやヘルスケアなどの高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材を募集する場合には、より競合を意識した条件設定やその他の魅力付けを行う必要があります。
各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
■株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社、コンサルティング・金融業界に特化した人材紹介事業を展開するバンテージポイントを傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。
http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
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