全国抗菌薬販売量2021年調査データ 2022年2月25日公開  2021年の抗菌薬販売量が2013年(14.91DID)比で約31.6%減少

AMR臨床リファレンスセンターは、「全国抗菌薬販売量2021年調査データ」を2022年2月25日に公開します。

薬剤耐性菌の増加が世界的に問題となっており、わが国でも2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定されました。2020年までの成果指標として、抗菌薬の使用量(全体)を2013年の水準の3分の2に減少させること、広域抗菌薬である内服セファロスポリン系薬、内服フルオロキノロン系薬、内服マクロライド系薬をそれぞれ50%減少させることが目標でした。2021年末に2020年までの抗菌薬使用量データを公開しましたが、今回はあらたに2021年までの全国抗菌薬販売量データを公開いたします。


全国抗菌薬販売量サーベイランス:

https://amrcrc.ncgm.go.jp/surveillance/020/20190902163931.html



◆今回発表のデータについて

2021年の販売量に基づく人口1000人・1日あたり抗菌薬使用量(DID)は10.20DIDであり、2013年(14.91DID)比で約31.6%減少しました。2020年と比べても、全体で約3.9%減と僅かですが減少しています。抗菌薬の種類別にみると、2013年と比べて広域抗菌薬である内服セファロスポリン系薬は46.2%、内服フルオロキノロン系薬は47.5%、内服マクロライド系薬は43.7%減少しています。一方で、狭域抗菌薬であるペニシリンの割合が増加傾向を維持し、適正使用が進められているとも考えられます。同様に適正使用の指標の一つであるAWaRe分類別にみると2013年から2021年でAccess比が約13.0%から25.9%へ増加、Watch比が約85.6%から72.8%へ減少と大きく改善傾向がみられます。


全国抗菌薬販売量推移2013-2021


全国抗菌薬使用量推移2013-2021


注1)本データは、抗菌薬販売量に基づいており、実際の医療現場での抗菌薬の使用実績をそのまま示すものではありません。また、データソースが異なるため、匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)に基づいた抗菌薬使用量サーベイランス( http://amrcrc.ncgm.go.jp/surveillance/010/20181128172333.html )とは数値が異なります。


注2)数値は人口や抗菌薬ごとの使用量の差を補正するため、抗菌薬販売量を1,000住人・1日あたりのDefined Daily Dose (WHOによって定められたその抗菌薬が通常1日に使用される量の目安=DDD)で表したもの(DDDs per 1,000 inhabitants per day=DID)です。


注3)DDDは2022年1月に更新されましたが、過去との比較のため2017年1月時点のものを使用して計算しています。


注4)人口は、総務省統計局の各年10月1日確定人口推計値を利用しています。2021年のみ、8月1日確定人口推計値を利用しており、今後更新予定です。


注5)WHOのATC分類でJ01に分類されている薬剤のみを抗菌薬と定義して集計しています。


注6)AWaRe分類は、WHOが抗菌薬適正使用の指標として推奨している抗菌薬の分類です。

・Access:一般的な感染症の第一選択薬、または第二選択薬として用いられる抗菌薬です。耐性化の懸念が少なく、すべての国が高品質かつ手頃な価格で、広く利用できるようにすべき抗菌薬です。

・Watch:耐性化が懸念されるため、限られた疾患や適応にのみ使用すべき抗菌薬です。

・Reserve:他の手段が使用できなくなった時に最後の手段として使用すべき抗菌薬です。

・Not Recommended:WHOで臨床上の使用を非推奨としている抗菌薬です。

WHOは全抗菌薬に占める“Access”の割合を60%以上にすることを目標としています。



◆結果の総括

AMR対策アクションプラン2016-2020では、成果指標として、人口1,000人あたりの一日抗菌薬使用量(DID)を2013年の水準の3分の2に減少させること、経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬は50%削減することが挙げられていました。アクションプラン策定後より抗菌薬使用量は徐々に減少していましたが、2020年から大きく減少し、今回算出したデータでは、2021年もその傾向が続き、アクションプランの成果指標にかなり近づくものとなりました。これは、COVID-19への感染対策が行われた結果、急性気道感染症の罹患が減り、診療所を受診する患者が減少したことが影響していると考えられます。もちろん、抗菌薬適正使用が進んでいることも一因と考えられますが、感染症への予防対策が抗菌薬の使用量を減らすことに貢献し、 AMR対策につながることを示したものと考えられます。

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