電気化学反応に基づいて駆動し流体を検知する 2 in 1トランスデューサを開発
芝浦工業大学(東京都港区/学長 山田 純)工学部機械機能工学科・前田 真吾教授、博士課程・桑島 悠氏らの研究チームは、電気化学反応を動力源とする電気化学デュアルトランスデューサ(ECDT)を設計し、複雑な部品を使用せずにソフトロボットの流体の駆動と検知に成功しました。
ソフトロボットにセンサを搭載することで多機能化が期待されますが、配線の複雑化と大型化が課題でした。ECDTの開発により、セルフセンシングによる作動が可能となり、静音・小型・軽量化を実現しました。また、ECDTの製作には、特別な装置や複雑な加工を必要としません。
※この研究成果は、「ACS Applied Materials & Interfaces」誌オンライン版に掲載されています。
<ポイント>
・シンプルかつ軽量、静音、そしてセンシングが可能なポンプ、電気化学デュアルトランスデューサ(ECDT)を開発した
・センシング性能を評価し、さらに数理モデリングによってセンシングメカニズムを明らかにした
・ECDTを利用して、ソフトロボットのセルフセンシングアクチュエーション作動を可能にした
■研究の背景
近年、人間の日常生活への適応性や安全性の高さから、エラストマーと呼ばれるやわらかい素材でできたソフトロボットが注目されています。しかし、ソフトロボットに使用される流体システムには、大型で重く、騒音の出るポンプが駆動源として使用されていました。
ソフトロボットの小型設計と静音駆動を目指す研究チームは、これまで多くの研究成果を出してきました。電気化学反応により誘電体液中に流れを発生させる「電気流体力学」(EHD)ポンプを発表。近年では、柔軟な電極を持つ伸縮自在のEHDポンプを開発し、駆動源を含むロボットシステムの軟体化を実現しました。また、フレキシブルなEHDポンプの簡単なデジタル作製法も確立しました。
次なる課題は、機能性と小型化を両立したソフトロボットの開発です。今回の研究では、電気化学反応に基づいたシンプルかつ軽量、静音、そしてセンシングが可能なポンプ、電気化学デュアルトランスデューサ(ECDT)を提案し、ECDTを利用したソフトロボットの作動を可能にしました。
■研究概要
研究チームは、電気化学デュアルトランスデューサ(ECDT)を用いて流体の流れを感知し、それによって電気化学反応を活性化させて電流を増加する「セルフセンシング」ソフトロボットの駆動に成功しました。ソフトロボットにセンサを搭載することで、ロボットの多機能化が進みますが、配線が複雑になり、肥大化することも少なくありません。ECDTによるセルフセンシングアクチュエーション技術は、この問題を解決し、ソフトロボットの小型化を可能にします。
ECDTの設計にあたっては、これまでのEHDポンプをもとに設計を行いました。ECDTは、平面電極の対称的な配置で構成されており、電圧を変えるだけで流れの方向を簡単に制御できます。さらに、左右の電界の強さが同じであるため、双方向に同じ量の水を流すことができます。研究チームは、検出可能な流量範囲、速度、感度、応答性、緩和時間などのセンシング性能を評価し、さらに数理モデリングによってセンシングメカニズムを解明しました。さらに、吸盤を駆動して物体を検知し、掴んで離すという動作に使用し、その性能を検証しました。
■研究助成
本研究はJSPS科研費(18H05473)、特別研究員奨励費(21J23563)の助成を受けたものです。
■論文情報
著者 :芝浦工業大学大学院博士(後期)課程 桑島 悠
芝浦工業大学大学院修士課程 関 夢太
芝浦工業大学SIT総合研究所 助教 山田 雄平
芝浦工業大学大学院修士課程 粟木 理志
芝浦工業大学大学院修士課程 上谷内 翔太
芝浦工業大学大学院博士(後期)課程 Ardi Wiranata
芝浦工業大学大学院修士課程 奥野 友都
芝浦工業大学工学部電気工学科 准教授 重宗 宏毅
芝浦工業大学工学部機械機能工学科 教授 前田 真吾
論文名:Electrochemical Dual Transducer for Fluidic Self-Sensing Actuation
掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces
DOI :10.1021/acsami.1c21076
■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。
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