2021年 都道府県別ランキング・自転車通学時の事故件数 前年に比べ、事故件数は増加 中学生 ワースト3 群馬県・香川県・徳島県 高校生 ワースト3 群馬県・静岡県・徳島県
自転車の安全利用促進委員会は、9月21日から始まる「秋の全国交通安全運動」にあわせ、2021年の全国都道府県別、中学生・高校生の通学時における自転車事故発生件数について調査・分析しました。本調査は、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)から提供を受けた2021年(1月~12月)の事故データを、当委員会メンバーの古倉宗治(公益財団法人自転車駐車場整備センター自転車総合研究所所長)監修により調査・分析を行いました。
2021年は新型コロナウイルス感染拡大2年目となり、ワクチン接種の普及、休校や分散登校の緩和など、日常的な自転車利用が戻りつつあることによって、1万人当たりの通学時自転車事故件数は中学生14.7%、高校生16.7%と、ともに前年より増加しました。増加した都道府県は、中学生約6割、高校生約8割あることがわかりました。自転車通学指導は欠かすことのできない喫緊の課題であります。
自転車の安全利用促進委員会は、自転車利用および安全に関する専門家によって、安全・安心な自転車利用のためのルールやマナー、自転車の安全な選び方について啓発するほか、全国の教育関係者・学校と連携した通学指導セミナーの実施、意識・実態調査などを発信しています。
■調査トピックス
1. 2021年都道府県別 通学時自転車事故件数ランキング
●全国の通学時の事故件数は増加
●中学生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「香川県」、3位「徳島県」
●高校生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「静岡県」、3位「徳島県」
2. 2021年通学時自転車事故の加害者(一当)率ランキング
●中高生ともに、約2割の学生が通学時自転車事故の加害者である
●高校生の加害者割合(一当)率ワースト1位「東京都」、2位「栃木県」、3位「愛媛県」
3. 通学時自転車事故の状況
●通学時自転車事故の相手方の8割は中高生ともに自動車
●通学自転車の事故時にヘルメット着用をしていない高校生は9割超
<監修> 自転車の安全利用促進委員会 古倉宗治(こくら むねはる)
公益財団法人自転車駐車場整備センター自転車総合研究所 所長
東京大学法学部卒業。建設省、東京工業大学助教授、一般財団法人民間都市開発推進機構都市研究センター、一般財団法人土地総合研究所、株式会社三井住友トラスト基礎研究所等を経て2018年から現職。自転車施策の第一人者として講演会の他、NPO法人自転車政策・計画推進機構を主宰。国や公共団体の委員としても活躍中。博士(工学)。
(1) 2021年都道府県別 通学時自転車事故件数ランキング
●全国の通学時の事故件数は増加
●中学生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「香川県」、3位「徳島県」
●高校生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「静岡県」、3位「徳島県」
2021年は通学時の自転車利用が徐々に戻ったことにより、昨年は減少した事故件数が増加しました。中高生の通学時の自転車事故件数の推移は年々減少傾向にありますが、2021年は前年比で、中学生213件、高校生844件と、ともに増加しました。活動的な日々に戻ることができた一方で、自転車事故も増えてしまう結果となりました。各都道府県では、自転車損害賠償責任保険等への加入義務化やヘルメット着用の努力義務化の条例改正が進み、引き続き自転車の安全啓発は重要性を増しています。
都道府県別では、前年に比べ1万人当たりの自転車事故件数が、中学生約6割、高校生約8割増加しています。中学生の1万人当たりの通学時自転車事故件数ワースト3は、1位「群馬県」、2位「香川県」、3位「徳島県」でした。群馬県では前年より約55%増加しています。高校生では調査開始から8年連続ワースト1位の「群馬県」に続き、2位「静岡県」、3位「徳島県」でした。
※中学生生徒数…文部科学省「学校基本調査」中学校、義務教育学校、中等教育学校(前期)、特別支援学校(中学部) をもとに算出
※高校生生徒数…文部科学省「学校基本調査」高等学校本科、中等教育学校(後期)、特別支援学校(高等部) をもとに算出
(2) 2021年通学時自転車事故の加害者(一当)率ランキング
●中高生ともに、約2割の学生が通学時自転車事故の加害者である
●高校生の加害者割合(一当)率ワースト1位「東京都」、2位「栃木県」、3位「愛媛県」
通学時の自転車事故では、通学自転車が加害者となり死傷者を発生させるなど、悲惨な事故が過去に発生しています。通学時の中高生が加害者になった場合※の自転車事故について調査したところ、通学時において全体の約2割(中学生19.6%、高校生19.1%)が自転車側(=学生)の加害事故であることがわかりました。通学時は事故に遭う危険性だけでなく、事故を起こし死傷者を発生させてしまう危険性にも注意する必要があります。事故の加害者になった場合、多額の損害賠償が必要となるケースがあるほか、将来の職業に影響が及ぶ場合もあります。都道府県別では、高校生の通学時においては、東京都は約半数の46.5%が加害者であることや、栃木県は中学生、高校生ともに加害者割合が高いことが明らかになりました。
※自転車が第一当事者(一当)の事故=自転車側が加害者の事故と定義した場合。第一当事者とは、事故当事者の中で一番過失が重い人を指す。
(3) 通学時自転車事故の要因
●通学時自転車事故の相手方の8割は中高生ともに自動車
●通学自転車の事故時にヘルメット着用をしていない高校生は9割超
通学時の自転車事故の相手方は、ほとんどが自動車であるため、出会い頭の自動車との衝突、接触には特に注意が必要です。また、通学自転車の事故時における自転車運転者のヘルメット着用状況は、中学生の3割、高校生は9割超がヘルメットを着用していませんでした。自転車乗用中の交通事故で亡くなられた方は、約6割が頭部に致命傷を負っており、ヘルメットを着用していなかった方の致死率(死傷者のうち死者の割合)は、着用者に比べ約2倍も高くなっていることがわかっています(警察庁)。頭部損傷、死亡事故を防ぐためにヘルメット着用の促進が急務となっています。
■2021年の通学時自転車事故調査・分析総評
<監修> 自転車の安全利用促進委員会 古倉宗治
公益財団法人自転車駐車場整備センター自転車総合研究所 所長
2021年はコロナ禍2年目となり、通学時の自転車利用も徐々に戻る傾向にあったのではないかと思います。それにともない通学時の自転車事故件数も増加しました。また、加害者割合が高い都道府県もあり注意が必要です。自転車事故の多くは特定要因だけではなく、複数の要因が影響して発生します。特に通学自転車側に法令違反がある割合や、人的要因(ミス、発見の遅れ、判断等誤り、操作上の誤り)のある割合は、中高生ともに約7割もあります。このため、ルールやマナーの遵守、ミスの発見・判断能力を磨くことが大切です。さらに歩車道の整備、条例の改正等、地域や社会全体で協力し合っていくことが重要になります。
8年連続ワースト1の群馬県では、国勢調査によると通勤通学時の自転車の利用率が7.6%と全国25位で自転車利用がとても多い状況ではありません。しかし、群馬県では通勤通学時の自家用車の利用が75.3%で、全国6位と非常に多い特徴があります。群馬県の高校生通学時自転車事故の相手方は、84.3%が自動車との事故であるため、自動車との接触が多くなっているものと推測されます。また、通学時の自転車事故において自転車側に人的要因のある割合が高い傾向にあります(中学生89.0%、高校生81.7%)。高校生においては「判断の誤り」が人的要因の約半数を占めています。自転車の運転と侮らず、誤りなく的確に運転できるような判断能力を鍛えることも重要になります。
全国においても、通学自転車の加害者割合、法令違反割合および人的要因(ミス)の割合が高くなっています。これらに対して、より一層の注意と対策を行っていきましょう。歩道上の歩行者との事故では、そのほとんどは自転車が加害者となります。中学生、高校生は、自動車運転免許取得前につき、交通ルールや標識等の知識が乏しく、無関心であることがほとんどです。自転車も「車両」であり、事故においては死傷者につながるリスクがあることを理解することが重要です。
●都道府県の条例改正にともなう自転車損害賠償責任保険等への加入、ヘルメット着用の努力義務化
通学時において全体の約2割(中学生19.6%、高校生19.1%)が自転車側(=学生)の加害事故です。事故の加害者になった場合、多額の損害賠償が必要となるケースもあるほか、その後の人生に精神面を含めて大きく影響します。昨今では自転車保険の義務化の自治体も多くなってきています。加害者になってしまったときのリスクも考えて自分が自転車保険に入っているか、保障内容は十分か、今一度確認するようにしましょう。ヘルメットは学生だけでなく、大人の着用も拡大していかないと、社会全体での促進につながりません。着用しやすいファッショナブルなものや、軽量化されたもの、通気性が改善されたものなど、バリエーションも豊富になってきています。命を守る重要なアイテムとして取り入れていきましょう。
●3年間の通学利用で、日本縦断程度の走行距離になる自転車。事故を防ぐための車両点検と安全性確認を必ず行いましょう。
自転車事故を防ぐための車両点検と安全性確認は、見落とされがちなポイントですが大変重要です。大きな事故の約1/3は製品自体にも原因があった(出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構「自転車による製品事故の防止について(注意喚起)」)とされるデータもあり、「自転車そのものの安全性」は事故を防ぐだけでなく、安全な自転車利用の基盤です。3年間ほぼ毎日走る通学自転車は、日本縦断できるほどの走行距離になるとも言われています。購入時には、耐久性や強度などの安全基準をクリアした「BAAマーク」を目印にしましょう。また、コロナ禍で久しぶりに自転車を利用し始めた場合など、ブレーキの効きが悪くなるほか、走行中にチェーンが外れやすくなるなど大変危険です。半年に1回は自転車店での点検を受けましょう。
≪BAAマーク≫
BAAマークは、一般社団法人自転車協会が定める自転車安全基準に適合した自転車に貼られています。自転車安全基準には全部で約90項目の検査項目があり、ブレーキ制動性能、フレーム・駆動部の強度、ライトの光度、リフレクターの反射性能などの検査に合格する必要があります。
●47都道府県別 中学生、高校生1万人当たりの自転車事故件数ランキング(2021年)
●47都道府県別 中学生、高校生の自転車事故 加害者(一当)割合ランキング(2021年)
≪自転車の安全利用促進委員会≫
自転車の安全利用促進委員会とは、一般社団法人自転車協会の協力を受け、安全安心な自転車利用のための啓発活動を行う団体です。自転車の利用者の方々に快適な自転車生活を送って頂くため、購入時に知っておくべき自転車の選び方から購入後のメンテナンス、正しいルール・マナーなどの情報発信を行っています。また、活動の一環として教職員や学生を対象とした、自転車通学指導セミナーも全国で開催しています。
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