~帰宅困難者対策条例施行10年を迎えた現状と 今後の取組みについて~ 帰宅困難者対策条例を踏まえた社員の安全確保と 企業の事業継続の両立
危機管理業務全般を担う東京都総務局 総合防災部 取材記事公開
尾西食品株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長 古澤紳一 ※以下、尾西食品)は、防災食・備蓄のリーディングカンパニーとして、”アルファ米”をはじめとする非常食を製造・販売。専門家のアドバイス、被災者の声を通して日常の防災意識を高める活動を進め、2021年3月より、公式サイトにて防災コラムの発信をしております。
今回は、今年4月に施行10年を迎える「東京都帰宅困難者対策条例」の現状と今後の取組みについて、危機管理業務全般を担う東京都総務局 総合防災部 西平課長、小間課長代理、町田主任に伺いました。西平課長は、「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」の事務局「東京都帰宅困難者対策条例」の立案に携わった方でもあり、そのご経験も踏まえ様々な角度からお話を伺いました。
東京都 総務局総合防災部 事業調整担当課長
西平 倫治様
〜帰宅困難者対策条例の施行〜
――帰宅困難者対策条例施行経緯を教えてください
2011年3月11日の東日本大震災は東北地方に甚大な被害をもたらしました。東京で大きくクローズアップされたのは、発災後に鉄道がすべて止まり、それが帰宅時間帯まで続いたため、大量の帰宅困難者が約352万人(都内の帰宅困難者数 内閣府推定)発生したことでした。都心では、建物が倒れるなどの目に見える被害がそれほど無く、皆さんが帰れてしまったため、道路に人が溢れ、都庁でも帰宅困難者を受け入れてそこで夜を明かしたという人までいて、改めて「大規模地震が起これば、大量の帰宅困難者が発生し、一斉に帰宅することで非常に混乱する」ということは、首都圏の共通する大きな課題だと認識されました。
震災の直後から東京都、国、首都圏の他の自治体、関係事業者で対策を進めるための「首都直下地震帰宅困難者対策協議会」を立上げ、3.11の振り返りの中でも重点課題として取り組みを始め、翌年の2012年3月には条例を制定し、翌々年の2013年4月には施行という大変早いスピードで進めました。
3.11当日の新宿駅前(東京都帰宅困難者対策ハンドブックより)
――現在の条例の認知度には課題あり
条例施行後は企業向けに説明会、研修会を頻繁に行ったこともあり、企業の条例の認知度は70%程度ありましたが、ここ最近、2年程度で見ると、コロナの影響で、説明会などがなくなってしまった事もあり、認知度が低下傾向にあることは否めないと感じています。この対策として、今一度認知度の浸透に向けた取り組みを検討、実行に移しています。具体的には昨年度から始めている「事業所防災リーダー制度」というものがあります。各事業所の責任者や防災担当の方、防災に関心のある方に事業所防災リーダーになっていただき、発災時に東京都から災害に関する情報を提供する事に加えて、平時にも防災の備えにつながる知識を紹介するなどの取り組みを始めています。
こうした情報を発信して事業者の防災対策を底上げしていくことが、帰宅困難者対策条例に対する理解を深める事に繋がると考えています。企業の方も従業員の安全確保が第一で、次に事業継続を図ろうとするはずです。そう考えれば、従業員を無闇に帰宅させるという判断はしないはずです。さらに事業継続が可能になれば、その次に他者を助けるという余裕も出てくると思いますので、地域防災、共助というところにも繋がるものと考えています。
――他県への伝播
東京都内に通勤、通学の方でも、お住まいは他県という方が多くいらっしゃいますので、首都圏を巻き込んでの対策が必要となります。国、首都圏の他自治体や関係事業者も参加する「首都直下地震帰宅困難者等連絡調整会議」の枠組みの中で、先程の事業所防災リーダーの取組等も紹介し首都圏全体での対策強化に繋げて行ければと考えています。
〜帰宅困難者対策条例の浸透〜
――企業としては何を優先して取り組むべきでしょうか
条例の中では様々な取り組みが企業に求められていますが、まずは、「社員の安否確認ができる仕組みを作る」、その上で「いかに社員を帰らせずに安全を確保するか」ということに尽きると思います。これは、企業が災害時に当然最優先にする「社員の安全確保」や、「企業の事業継続」を考えた場合、無闇に社員を帰宅させる事がいかに危険かはお分かりになると思いますし、一度、帰らせた場合、従業員が出社していくことはとても困難になります。各企業が、自らの企業の事を考えた場合には、自ずと「社員を無闇に帰らせない」という判断になるものだと考えています。
3.11当日の品川駅付近の道路(東京都帰宅困難者対策ハンドブックより)
――社員を帰らせなくても良い環境づくりとして
条例の中では事業者に対して従業員の帰宅抑制とそのための必要な物資の備蓄に努めるよう記載しています。食料備蓄の目安としては1人当たり3食×3日分=9食分という考え方をお示しています。是非、平時から準備をお願いいたします。
――非常食メーカーに期待することは何でしょうか
企業などのお客さまのニーズにあった商品を作っていただきたいということでしょうか。企業は、備蓄するにしても場所やコスト、非常食が社員に受け入れてもらえるかなど、様々な課題や悩みがあると思います。メーカーが努力して、その課題を解決する商品を提供すれば、事業者の備蓄に繋がりやすくなりますし、メーカーにとっても経済的メリットを得ることが出来ると思います。これにより、各関係者がそれぞれwin-winとなる関係になって、災害に強い都市を実現することが理想なのではないでしょうか。そういう意味でも、各関係者が相互に関係しあう仕組み作りは非常に重要であると思っています。
――関東大震災100年を迎え
今年は関東大震災発生から100年の節目を迎えることになります。東京都ではこの機会を捉え、都民の防災意識がより上がるような取組み、イベントなどを行っていきたいと考えております。「TOKYO強靭化プロジェクト」の一環として、都民一人ひとりの自らを守る取組を促すとともに、自助・共助に取り組む機運を醸成していきたいと考えています。
東京都帰宅困難者対策ハンドブック
(東京都公式ホームページへのリンク)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/369/202008.pdf
本文はこちら: https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=15
■尾西食品株式会社
・事業内容:長期保存食の製造と販売
・代表取締役社長:古澤 紳一
・所 在 地:〒108-0073東京都三田3-4-2いちご聖坂ビル3階
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