文部科学省後援 EMIRA×PEP共催ビジコン最終審査。 「モビリティ×エネルギー」をテーマに、 全国の学生がビジネスアイデアを生み出す! 最優秀賞は東京大学『ひかり』の「トピタル(TaxiOfHospital)」に決定。 病院通院者に向けたタクシー相乗りサービスを提案
「EMIRAビジコン2024 エネルギー・インカレ」レポート
イノベーションを「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディア「EMIRA」は、2024年2月10日、早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(PEP)とともに、ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン2024 エネルギー・インカレ」を早稲田大学内にて実施しました。EMIRA最優秀賞をはじめとした各賞の受賞者が決定しました。
本コンテストは、早稲田大学を代表校に13大学が連携する5年一貫の博士人材育成プログラムである「PEP」と、「EMIRA」が共催。5回目の開催となる今回は、「モビリティ×エネルギー」というテーマで、ビジネスアイデアを全国の大学生・大学院生から募り、142チームの頂点が決定しました。
EMIRA最優秀賞を受賞したのは、病院通院者に向けたタクシー相乗りサービス「トピタル(TaxiOfHospital)」について発表した東京大学のチーム『ひかり』。受賞後のインタビューでは「今後の課題解決の架け橋になる」と熱く語りました。
<「EMIRA」 URL>https://emira-t.jp/
■出場4チームのプレゼン内容
全142チームの中から、審査によって選ばれた4チームが本コンテストに出場しました。「モビリティ×エネルギー」をテーマとして、各チームがプレゼンテーションを展開しました。EMIRA最優秀賞は、トピタル(TaxiOfHospital)を提案した『ひかり』が受賞。最優秀賞の詳しい発表内容は「EMIRA」で掲載予定です。また、KADOKAWA賞は『のらりくらり』、TEPCO賞は『椙山女学園大学現代マネジメント学部』、優秀賞は『Well-Vehicle』が受賞しました。
<EMIRA最優秀賞>ひかり(東京大学)
テーマ:トピタル(TaxiOfHospital)
発表概要:
チーム『ひかり』の発表した「トピタル(TaxiOfHospital)」は、病院通院者に向けたタクシー相乗りサービスだ。モビリティ×エネルギーというテーマについて高齢者の免許返納問題とCO2削減の視点から、通院する高齢者を病院と自宅に送り届けるサービスを考えた。このサービスの利用者へのメリットは2つ。相乗りによってコミュニティが形成できることと、1人でタクシー利用をするよりも安価で利用できる点だ。介護利用タクシーとの違いは、介護保険が適用されていなくても利用可能であること。介護利用タクシーでは要介護認定時のみにしか適用されず、要介護認定は65歳以上でわずか13%しかいない。こうした点からもトピタルはユーザーのニーズに応える。さらにトピタルはEVと相性がよく、提携した病院にEVスタンドを設置してもらうことで効率的に充電をしながら運行させることが可能。停電時には病院が非常用バッテリーとしてタクシーの蓄電池を使用できるようにすることで、病院は停電時でも患者の治療が継続できる。ゆくゆくは塾の送迎などにもサービス展開を考えている。
<KADOKAWA賞>のらりくらり(中央大学)
テーマ:メッセージアプリを利用した再配達削減のための宅配業者連携サービス
発表概要:
チーム『のらりくらり』は、再配達削減に向けた宅配業者連携サービスを提案。再配達での労働力やCO2排出量に着目して、労働力とエネルギーの無駄をなくすためにサービス考案に至った。現在、宅配便の利用は増加傾向である一方で、2024年の働き方改革による関連法案改正によって運送業界は深刻な人手不足になることが見込まれる。さらにこうした問題への既存の解決方法であるオープン型宅配便ロッカーは、まだまだ認知度が不十分で問題解決には至っていないという。こうした問題を解消するためにチーム『のらりくらり』は一般の多くの方に利用されているメッセージアプリと連携した再配達サービスを提案し、時間指定通りに荷物を受け取るとメッセージアプリが提供しているポイントが受け取れるというビジネスモデルを考案。さらに、いくつかの大手宅配業社と連携してメッセージアプリ経由で再配達依頼をスムーズに行うことができ、将来的にはオープン型宅配便ロッカーとも連携し、宅配便ロッカーの利用でのポイント付与も視野に入れている。
<TEPCO賞>椙山女学園大学現代マネジメント学部(椙山女学園大学)
テーマ:マンション区分所有者間のカーシェアリング
発表概要:
チーム『椙山女学園大学現代マネジメント学部』が提案するアプリ「カルノリ」は「大規模分譲マンションにおける効率的な管理運営のためのアプリによるコミュニティ形成」を叶える。マンションと駐車場の建設、維持、管理、そして解体には多くのエネルギーとコストが必要であることや、CO2排出の削減に着目してこのサービスを考えた。「カルノリ」は、マンションの区分所有者が所有する自家用車を、使用していない時間にカーシェアリングとして他のマンション住人に貸し出す仲介ビジネスを行う。住人がスマホアプリで気軽に利用することができ、ゆくゆくは自転車、ベビーカーなどの貸し出しも行う見通しだ。「カルノリ」を使用するメリットは、自由な時間に、住居の駐車場から利用できる点だ。さらにマンション内のコミュニティ形成も助ける。いずれは車の利用状況をビッグデータ化して販売する。
<優秀賞>Well-Vehicle(早稲田大学)
テーマ:モビリティデータドリブンな都市形成
発表概要:
チーム『Well-Vehicle』はエネルギー効率の最適化と市民の幸福度の向上を両立した、モビリティデータドリブンな都市形成の実現を目指し、複数データを用いて走行の最適ルートを提案してくれるアプリの開発を提案。リアルタイムでの交通ルートの最適化を実現する。さらにこうしたモビリティデータには、走行距離や走行ルートなどの交通データの他に、利便性やインフラ、観光施設などのモビリティ関連QOLデータが含まれる。アプリを通してCO2排出量を削減し、渋滞回避も含めた最適ルートを提案することでユーザーへのベネフィットを担保しながら、サービスを通してユーザーから蓄積したデータを民間企業や自治体に提供し、EBPMの推進や政策決定に活用してもらうことを見据えている。詳細では走行状態や位置情報、気象情報、路面情報など、走行中に得られるコネクテッドデータ及びIoTセンサーデータが収集され、これらの膨大なデータを統合したプラットフォームを基に、自治体向けモビリティインサイトのダッシュボードを構築することで、モビリティデータドリブン的な政策決定の促進にも寄与する。
<審査員>
林 泰弘(早稲田大学理工学術院 教授 / 同大スマート社会技術融合研究機構 機構会長 / 同大卓越大学院PEPプログラム プログラムコーディネーター)
河野 秀昭(東京電力ホールディングス株式会社 EV推進室 室長)
亀谷 潮太(EMIRA編集長)
<特別審査員>
草鹿 仁(早稲田大学理工学術院 創造理工学部 総合機械工学科 教授 / 同大大学院環境・エネルギー研究科 教授 / 同大次世代自動車研究機構 機構長)
大畑 慎治(O ltd. CEO / Makaira Art&Design 代表 / ザ・ソーシャルグッドアカデミア 代表)
<主催>
EMIRA編集委員会(株式会社KADOKAWA、東京電力ホールディングス株式会社、株式会社読売広告社)、早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(PEP)
<後援>
文部科学省
早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)、早稲田大学マーケティング国際研究所(MII)、早稲田大学ビジネススクール(WBS)、
早稲田大学カーボンニュートラル社会研究教育センター
<協力>
WASEDA-EDGE人材育成プログラム
最優秀賞受賞者・審査員インタビュー
コンテスト終了後、EMIRA最優秀賞を受賞した『ひかり』の西村理希さんと谷口尚紀さんにインタビューを実施。受賞の喜びや今後の展望について語りました。
<「EMIRA最優秀賞・ひかり」インタビュー>
――最優秀賞を受賞した今の率直な気持ちを聞かせてください。
西村:びっくりしていますね。決勝に行けたことさえ奇跡だと思っていました。「できれば3位くらいに入れたらいいね」と話していたのですが、優勝できて嬉しいです。同時に、普段から「こういうものがあったらいいよね」ということについて考えていたので、日々の努力が実ったとも感じています。
谷口:同じくびっくりしました。まさか選ばれると思っていなかったのですごく嬉しいです。右も左も分からない状態で参加しましたし、そもそも「ビジコンとはどういうものなんだろう」というところから始まりました。ですから2022年の過去の優勝者の動画を何十回も観て、とにかく真似て工夫を重ねてここまできました。
――過去の優勝者の方から、こんなところを取り入れたという部分を教えてください。
西村:2022年の優勝者チーム『LivLoop』さんは、構成が分かりやすかった。シンプルで無駄がなくて、話し方も素晴らしかった。口調がゆっくりでしたし、テンポも良くて、飽きないプレゼンでしたね。とても参考になりました。
谷口:文字の量も意識した部分の一つですね。1ページの中で目が移ってしまわないように、短いセンテンスだけれど伝えたいことを全て伝えきれるようなスライドを意識しました。
――今回の発表テーマである「トピタル」ですが、このテーマに着目したきっかけは何ですか?
西村:僕の実体験ですね。父は月に1回通院していて、僕が車で病院まで送迎しています。ですが月に1回でも、結構大変なんですよ。でもタクシーを使うと高い。やはりそこは、「こんなサービスがあったらいいな」というところが出発点だったと思います。
――実際にこの事業を進めていくとしたら、課題はどんなところにあると思いますか?
西村:集客だと思いますね。「相乗り」のサービスなので、利用者が複数いないと商売が成り立ちません。加えて、同じ時間に同じ病院に行く人が何人もいないと成り立たないので、どれだけ集客できるかが一番のポイントだと思っています。高齢者がターゲットですのでインターネットの広告はあまり考えておらず、老人ホームなどで広告を出そうかと考えました。
谷口:口コミの力も大きいのではないかと思っています。利用者の方は「相乗り」というところで目的が一致する方が多いので、病院の中で顔なじみの人からサービスについて聞くというように口コミで広がってほしいですね。その起点を作っていくことが重要だと思います。
――このサービスを実際にビジネスにしていく可能性はありますか?
西村:僕の就職活動次第ですかね。僕が大学院に進学したらこの事業をやると思います。今は大学3年生なのですが、就職と大学院進学で迷っていて。もし大学院に進学したら学生のうちに起業したいです。
谷口:そうですね、僕も同じく大学3年生で、もう院に進学する気持ちは固まっているので、西村くんが就職しても引っ張っていってくれるならやりたいです。
――もし実現したらどのように進めますか?
西村:現実的なところで言うと、トピタルから始めるのではなく、プレゼンの中で触れた「塾の送迎」からはじめようかと考えています。公共性を意識したら絶対に病院から始めるべきなのですが、収益性の観点から考えると通塾の方が手をつけやすいです。例えば塾は人数がある程度集まっていて、みんなが同じ時間に集まる。親御さんもお金を持っている世代ですから、利用されやすいのかなと考えています。
谷口:プレゼンの中ではモビリティの災害レジリエンスの話も挙げさせてもらったのですが、EV自動車の充電問題なども、今後の課題解決の架け橋になるのかなと思っています。
<審査員 早稲田大学理工学術院 創造理工学部 総合機械工学科 教授・草鹿 仁氏インタビュー>
――改めて4組のアイデアを聞いて、どのように感じましたか?
4組とも違う点が複数あり、各チームの特徴が出ていたなと思います。
――特に印象的だったチームがあれば教えてください。
チーム・椙山女学園大学は非常に印象に残っています。東京都では今、EVの充電設備がマンションに作れないという問題があり、これがEV普及の大きな壁になっています。それを解決できるアイデアの一つであると感じましたので、もしもチーム・椙山女学園大学のアイデアであるカーシェアリングをEVに拡張すれば、東京都のマンションにもEVが普及していくのではないかと、楽しみに聞いていました。
――現代の社会的問題と密接に結びついた部分があったということですか。
そうですね。あとはチーム・ひかりの、高齢化社会にターゲットを絞って緻密に計算されたプレゼンテーションも印象に残りました。介護問題というのは避けて通れない道ですが、そこに訴求するようなオンデマンドの乗り合いタクシーを提案しており、タクシーだけでも十分完結していました。加えて、オンデマンドの乗り合いタクシーの対象者を塾に通う子どもにすることや、EVを適応して災害時にはそのEVを蓄電池として使うようにするなど、これでもかとアイデアを次々出してきたところもよかった。この2つは特に印象に残っています。
――今回のテーマになっていたモビリティ×エネルギーについて、社会が現在抱えている課題に対する考えを聞かせてください。
EVはヨーロッパやアメリカでも増えてきています。実際に、アーリーアダプターと言われる新しい技術を真っ先に購入した層は割と裕福な層でした。アーリーアダプターの層にはおそらくすでにEVが行き渡ってきたように感じますね。その後、マジョリティにアプローチしていくのですが、私はここで「どのくらいの壁があるのか」という点に関心を持っています。日本の場合は最初にEVを出した会社が12年くらい販売を続けていますが、なかなか定着せずに多くの消費者はハイブリッドを選択しています。これからアメリカとヨーロッパがどのようにメジャー層に普及させていくのか、行政も協力してメジャー層にどのように広めていくのかは大きな課題なのではないかと思っています。
<審査員 東京電力ホールディングス株式会社・河野 秀昭氏インタビュー>
――改めて、4組のアイデアを聞いてみた感想を教えてください。
今回は、「モビリティとエネルギー」どちらも暮らしに密着した2つの分野を掛け合わせるという、非常に大きな社会テーマになりました。そうした中で、モビリティもエネルギーも、特定の地域や日常の行動範囲の中に“暮らしのパターン”というものがあると思っています。例えばモビリティは、地方と都市では人流も物流も、宅配の配送ルートなどもパターンが違いますよね。エネルギーの使われ方も、地域によって、またファミリー層、高齢者層によっても時間帯などが異なります。従って、その単位でのニーズの深掘りが必要になってきます。さらにそこに、どんな困り事や課題があるのか、それを解消するにはどうしたらいいのかをビジネスレベルにまで持ち上げられるかとの視点が重要だと思っています。そういった意味で、4組の皆さんとも、しっかりターゲティングをした上で、どうすればみんなが豊かに幸せになり、その価値提供に対するビジネスとしての正当な報酬を得られるかということが良く考えられていると感じましたね。企業にいる人間としても非常に新鮮でしたし、気付かされるところがありました。
――今回、印象的だったのは、皆さんアプリケーションの活用やデータを収集してtoB向けに販売する視点があったことかと思います。そういう視点を持つ学生が増えてきたことに対して、改めて時代の変化や社会の変化は感じられますか?
最近よくDX推進と言われており、社内でもDX人材を増やすという動きもあります。しかし、このDXという言葉の定義や目的も同床異夢になっている部分があると思うんですね。具体的に誰のどのようなデータをどのように活用して、何につなげていくのかを理詰めで考えていく必要がある。今日もいろいろなところでデータについての話題が出ました。濃淡はあったにせよ、どんなデータを何に使うのかという部分がみなさん明確で、データの扱いについても具体的な話が聞けてよかったです。
――今回はモビリティとエネルギーがテーマになっています。ご自身は、このテーマに対してどのようにお考えでしょうか?
EV推進室の室長という立場からも、エネルギー会社としても、カーボンニュートラルや防災についての意識を一つのビジョンとして持っています。そういった中で、例えば物流業界では積極的にEVの導入が進められていますが、電力のネットワークと物流のネットワークがあるときに、その2つをEVが繋げてくれる側面があると思っています。例えば、どこかの時間にどこかの場所で再生可能エネルギーによって充電したEVが移動して、別の時間、別の場所で今度は放電する。単に荷物をお客さまに届けるだけでなく、EVというデバイスを通じてエネルギーのやり取りができるようになります。災害時には動く蓄電池のような形で防災機能を持つことも含めてです。マルチな価値があるので、これをどのようにつなぎ合わせるか、平日の大半停車しているマイカーや一台あたりのバッテリー容量が大きいバスなどは、さらにそうした機会があるものと思いますので、まさにEVを推進する私どもの腕の見せ所だと思います。
――今後、日本においてEVが推進されるということで、どのようなメリットがあるとお考えでしょうか。
やはりEVの価値が一つだけではないということですね。まず一つ目は、「走る」という機能があります。走る原動力である電気については、私どもエネルギー会社として、再生可能エネルギーの主力電源化、すなわちCO2をできるだけ出さない電気を作り、お届けすることに取り組んでいます。二つ目は、「貯める」という機能です。再生可能エネルギーというのはご存知の通り太陽光や風力なので、例えば太陽光であれば雨が降ったら発電しないですし、夜は当然発電しない。必ずしも安定した電源ではありません。お客さまが電気を使う量と発電する量を合わせないと停電にも繋がりかねません。ですからお客さまの需要カーブに合わせて電気をお届けする必要があるわけですが、不安定な再生可能エネルギーだけだと難しいところがあります。そこで、一つの手段として、太陽光が発電しすぎているときにEVのバッテリーに蓄えておいて、夜間などに使用するわけです。余っている太陽光を捨てずに有効活用できれば、よりCO2を削減することができます。そして最後は前述した「防災機能」になります。EVはこうした3つの価値を持っている。EVが電力ネットワークにつながって、全体で吸って吐いて“呼吸”をするようなイメージで、カーボンニュートラルと防災に貢献するような世界。こうした社会の実現に向けて私どもも取り組んでいきたいと思います。
■EMIRA
EMIRA(エミラ)は、イノベーション(変革)を「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディアです。
<メディア公式サイト>
記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)