IEEEが提言を発表  AGI(汎用人工知能)とは

IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。


人工知能について耳にしたことがない人はいないでしょう。現在は一般的にAIと呼ばれています。しかし、汎用人工知能についてはどうでしょうか。AGIと呼ばれることもある汎用人工知能は、人間のような推論能力を備えたAIというアイデアを表し、何十年にもわたってサイエンスフィクションや哲学の主要な題材として扱われています。

チャットボットや生成AIが初めて大衆に利用されるようになったとき、そのような画期的なAIがもう少しで実現するように思われました。しかし、やがてそのようなツールの輝きが失われると、ほとんどの専門家は人間と同じような推論能力がないことに気付きました。

IEEEメンバーのカーシックK(Karthik K.)氏は次のように述べています。「数々の飛躍的な進歩を遂げましたが、生成AIは人間のような推論能力を備えていません。パターンやデータに基づいて動作するだけで、それらの意味を把握しないからです。わずかな情報しかない状況から出発して、その情報をより広い文脈に適用し、一般化を行うことができません。学習した概念を新たなシチュエーションにまで広げることができないのです」

それでは、AIとAGIの違いは何なのでしょうか。どうなれば、AIは人間の意思決定のレベルに達したことになるのでしょうか。これらの問いに答えるのは困難です。その理由の一つとして、AGIはもちろん、AIにも、一般に受け入れられている定義がないことがあげられます。

しかし、これらの問いは現代テクノロジーの可能性と限界を明らかにするものであるため、その答えを求めることは重要です。



■AIには明確な定義がない

AIの定義は曖昧であり、複数の学問分野に関わります。「IEEE Transactions on Artificial Intelligence」に掲載された論説によると、コンピューターサイエンス、心理学、生物学、数学、物理学といったさまざまな分野の学者がAIの定義を試みてきました。

その論説では、「どの定義に対しても反対意見があり、一般的なコンセンサスはおろか、各分野内でのコンセンサスさえも得られなかった」と述べられています。



■AGIであるかどうかを見極めるためのテスト

AGIの明確な定義がない状況において、多くの理論研究者が人工一般知能であるかどうかを見極めるためのさまざまなテストを提案しました。AGIを定義することはできないかもしれませんが、実際に目にすればそれがAGIだとわかるだろうと考えたのです。

最も有名なのは、1950年に提案されたチューリングテストです。このテストでは、専門家が集まって「オラクル」に質問をして、人間による回答か機械による回答かを判別できなくなったら、AGIが実現したとみなします。

他にも、ウォズニアック・コーヒー・テストという奇抜なテストがあります。IEEEフェローでありAppleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏は、ロボットは決して任意の家に入ってコーヒーをいれることはできないと述べたとされており、このテストはその主張に基づいています。コーヒーをいれるのは簡単であるように思われますが、家の間取り、カップボードの配置、コーヒーの淹れ方などはさまざまであるため、実際にはかなり困難であることから、そのような考えが生まれました。



■チャットボットからAGIまでは目と鼻の先なのか

IEEE Computer Societyが発行している「Computer」誌に掲載された詳細な論考によると、人間のように動作する機械は人工知能の延長線上にあります。初期の人工知能は、ゲーム(チェスや碁)などの単一の領域の専門知識を習得しました。現在の高度なAIは、言語を理解し、言語を画像に変換し、画像を分析して癌の兆候などを見つけることができます。

このような成果は素晴らしいものですが、現在のAIは人間と同じように思考し、推論することはできません。

それでは、チャットボットからどれくらい進歩すれば、AGIが実現するのでしょうか。

一見すると、ChatGPTなどのチャットボットは、チューリングテストに合格してAGIに分類されるまであと一歩のところまで迫っているかのように思われます。チャットボットは、さまざまな分野の小論文を、自信ありげでもっともらしく聞こえるように書くことができます。

法律などの分野の専門資格試験に合格する可能性さえあります。しかし、基礎的な間違いをおかします。たとえば、数学の問題を間違えることがよくあります。また、引用の出典を誤って示したり、因果関係を理解できず、推論問題で間違った答えを出したりすることがあります。

IEEEメンバーのスカニャ・マンデル(Sukanya Mandal)氏は次のように述べています。「AGIを実現するための次のステップは、幅広い領域でより高度な推論能力、問題解決能力、学習能力を示すことができるAIシステムを開発することです。これには、ある文脈から別の文脈に知識を転用する能力、限られたデータや例から学習する能力、これまでにないシチュエーションで創造性や適応力を発揮する能力が含まれます」



■IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。

IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。


詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

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