≪建設業2024年問題≫時間外労働の上限規制に関する調査を実施 上限規制開始後2カ月経過、6割は完全適用とならず
現場TECHでは、建設業界において2024年4月より施行された時間外労働の上限規制に関して、建設業従事者202名に対してアンケートを行い、認知や対応、適用状況などに関する独自調査を実施しました。
詳細ページ: https://gemba-tech.jp/news/survey-jougenkisei_202506/
1. 施行の認知と内容の理解に関して
設問1では、上限規制の制度が施行されたことを知っているかという質問を行いました。
全体回答者の85.1%が、「はい」を選択。
続く設問2では、制度の内容への理解度を質問。
「全く理解していない」が9.4%、「聞いたことはあるが理解していない」は19.3%。「しっかり理解している」「おおよそ理解している」を選択した回答者の合計は全体の71.3%に留まりました。
また、従業員数別の理解度を集計したところ、従業員数~10名規模の小規模事業者では、「全く理解していない」「聞いたことはあるが理解していない」を選択した回答者の合計が60.2%と、上限規制への理解度が低いことが分かる結果となりました。
2. 適用状況に関して
次の設問では、施行から2カ月が経過した2024年6月時点での規制の適用状況について質問を行いました。
「完全に適用されている」を選択したのは36.3%、「部分的に適用されている」が50.8%、「適用されていない」は13.0%という結果になりました。
また、従業員数別と売上高別での集計を行ったところ、従業員数101人以上で「完全に適用されている」が54.55%、売上高30億円以上で「完全に適用されている」が50.00%という結果が得られました。
一方、従業員数1~10名では「完全に適用されている」が14.81%、売上高1億円未満で「完全に適用されている」が21.28%とそれぞれ最も低い数字となりました。総じて、企業規模や経済力によって規制の適用状況に違いがあることを示唆する結果となりました。
特に、小規模事業者においては規制の完全適用が難しい状況が見受けられ、今後の支援や対策が求められるでしょう。
3. 施行後の平均時間外労働時間に関して
次に、上限規制が施行された2024年4月から、アンケート収集時点における平均時間外労働時間(月平均)がどの程度であったかを質問しました。
原則として法定時間外労働は「月45時間・年間360時間」まで。ただし、臨時的な特別な事情がある場合には、特別条項に基づき、年6回まで時間外労働が認められます。
ただし、その場合でも、時間外労働は年720時間以内、月100時間未満、2~6か月平均で80時間以内、月45時間を超える残業は年6回未満に抑える必要があります。
4. 規制に対する取り組みについて
次に制度の施行にあたり、どのような取り組みが行われたかを質問しました。
最も多くの回答があったのは「労働時間・残業時間の厳格な管理」で77名の回答者が選択。企業が規制遵守のために労働時間の管理を強化していることが示唆される結果となりました。
次に多かったのは「週休2日制の導入」であり、労働時間の短縮を図るために週休の拡充が進められていることがわかります。また、「年次有給休暇取得促進」も多くの回答を得ており、従業員の休暇取得を奨励する取り組みも行われているようです。
「ノー残業デーの導入」や「テレワークの活用」など、柔軟な働き方を推進する取り組みも見られますが、「デジタルツール・システムの導入」や「適切な工期の設定」などの回答は相対的に少なく、これらの分野では改善の余地があると言えます。さらに、「人材増強・育成」や「休日出勤の禁止・抑制」といった回答もあり、企業が長期的な視点で労働環境を改善しようとしていることが示されています。
総じて、企業は多様なアプローチで上限規制への対応を図っていますが、特に労働時間の管理や休暇の取得促進といった基本的な取り組みに重点を置いていることが明らかです。
しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタルツールの活用といった新しい取り組みも重要な課題となっており、今後の対応においてはこれらの分野の強化も求められるでしょう。
5. 課題
従業員目線でどのような課題、デメリットを感じているかを質問しました。
最も多くの回答を得たのは「人手不足の深刻化」であり96名の回答者が選択。これは規制により労働時間が制限されることで、既存の人員では業務をカバーしきれないと感じていることを示しています。
また、「納期を遵守できない・仕事が回らなくなる」も83名が選択しており、規制により業務のスケジュール管理が難しくなっていることがわかります。他にも、「残業手当が減る」や「仕事へのモチベーションの低下」といった経済的および精神的な影響も大きな懸念材料となっています。
「安全性への配慮が不十分になる」や「人員削減のリスク・労働条件が厳しくなる」も少なからず挙げられており、職場環境や労働条件の悪化を懸念する声も見受けられました。
この結果から、上限規制の影響で業務の進行や労働環境に対して多くの不安や課題を抱えていることがわかりました。
■終わりに
2024年4月施行の時間外労働上限規制に対する対応状況の違いとその課題が、アンケート結果を通じて明らかになりました。
企業規模や経済力に応じた違いが見られ、特に小規事業者においては規制の完全適用が難しい現状を示唆する結果が得られました。今後の労働環境改善に向けて、さらなる支援や対策が求められます。
特に、DXやデジタルツールの活用は重要な課題として浮上しており、これらの分野の強化が期待されます。
■本アンケートについて
調査概要 :【2024年問題・建設業時間外労働上限規制】規制開始後の実態調査
調査目的 :2024年4月施行の建設業時間外労働上限規制に対する適用状況の把握
集計期間 :2024年6月1日~2024年6月10日
調査方法 :WEBアンケート
有効回答者数:202名
■本件に関するお問い合わせ先
現場TECH編集部: info@gemba-tech.jp
記事・グラフ・データの引用の際は、必ず右記のリンクを出典元としてご記載お願いします: https://gemba-tech.jp/news/survey-jougenkisei_202506/
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