Gotoschoolと早稲田大学スポーツ科学学術院・広瀬統一教授が共同研究。運動介入による神経発達症児童の原始反射と社会性発達の変化を発表
ADHD(注意欠陥多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症)の就学児童における原始反射の残存度と、3ヶ月の運動介入による変化を明らかにする研究を実施
株式会社Gotoschool(本社:東京都渋谷区、代表:松本 哲)は、早稲田大学スポーツ科学学術院・広瀬統一教授との共同研究テーマ「神経発達症児童の原始反射と社会性発達の変化」について、『第74回日本体育・スポーツ・健康学会(2024年8月30日、全面オンライン開催)』にて研究発表を行いました(発表者 広瀬統一教授)。
Gotoschoolは「あきらめを、チャレンジに」をミッションに、「人々の眠れる可能性の顕在化」をビジョンに掲げ、児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービスである「子ども運動教室LUMO(ルーモ)」において、医師監修による独自の原始反射統合プログラムを通じて発育発達をサポートするサービスを提供しています。
本研究の背景には、神経発達症(発達障がい)の児童の増加があります。文部科学省の調査によれば、この10年で通常の学級に在籍する特別な教育的支援が必要な児童や生徒は6.5%から8.8%にまで増えていることが明らかになっています。
神経発達症児童の行動上の特徴には、原始反射の残存が関係している可能性が報告されていますが、特に就学期以降の情報は限られています。また、原始反射の統合方法である運動介入についての研究も、進んでいません。
広瀬統一教授とGotoschoolは、医師からADHD(注意欠陥多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症)と診断された就学期児童の原始反射の残存度と、3か月の運動実施による原始反射の変化と対人応答の変化を明らかにすることを目的に、共同研究を行いました。
この結果、先行研究同様ADHD・ASDの就学児童には、生後24ヶ月程度で統合されると言われる原始反射がいくつかの項目で高い割合で残存していることが示されました。
3ヶ月の運動介入の結果では、ATNR(非対称性緊張性頚反射)の残存度が、ASD児童において有意に低下することがわかりました。運動のみの介入であってもATNR統合の効果が期待できる可能性が示されたことになります。
ATNRは手と足、目と手など、異なる動きをする身体の各部位を連動させる協調性に関わります。残存度が高いと、神経系全体のコントロールが難しくなることが指摘されており、手と目の協調とバランスが低下するといった先行研究もあります。
同じく改善のみられた指対立(掌握反射)とは、手の母指と他4指とが向き合う動作です。指対立が困難だとつまんだり握ったりする行為が阻害され、不器用さにつながります。
また、社会性発達対人応答尺度は3か月間で低下傾向を示し、ADHD児童において有意に低下しました。
本研究の結果は、3ヶ月という期間であっても、運動介入が発達神経症児童、特にASD児童の原始反射の統合や、ADHD児童にみられる社会性発達対人応答などの特性の軽減に影響を与えることを示しています。後は1年以上の長期的変化の観察や、対象群の設定・原始反射の段階的評価基準の検討をすることによって、その詳細をいっそう明らかにしていきたいと考えています。
Gotoschoolは「あきらめを、チャレンジに」をミッションに、「人々の眠れる可能性の顕在化」をビジョンに掲げ、児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービスである「子ども運動教室LUMO(ルーモ)」において、医師監修による独自の原始反射統合プログラムを通じて発育発達をサポートするサービスを提供しています。
本研究の背景には、神経発達症(発達障がい)の児童の増加があります。文部科学省の調査によれば、この10年で通常の学級に在籍する特別な教育的支援が必要な児童や生徒は6.5%から8.8%にまで増えていることが明らかになっています。
神経発達症児童の行動上の特徴には、原始反射の残存が関係している可能性が報告されていますが、特に就学期以降の情報は限られています。また、原始反射の統合方法である運動介入についての研究も、進んでいません。
広瀬統一教授とGotoschoolは、医師からADHD(注意欠陥多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症)と診断された就学期児童の原始反射の残存度と、3か月の運動実施による原始反射の変化と対人応答の変化を明らかにすることを目的に、共同研究を行いました。
この結果、先行研究同様ADHD・ASDの就学児童には、生後24ヶ月程度で統合されると言われる原始反射がいくつかの項目で高い割合で残存していることが示されました。
3ヶ月の運動介入の結果では、ATNR(非対称性緊張性頚反射)の残存度が、ASD児童において有意に低下することがわかりました。運動のみの介入であってもATNR統合の効果が期待できる可能性が示されたことになります。
ATNRは手と足、目と手など、異なる動きをする身体の各部位を連動させる協調性に関わります。残存度が高いと、神経系全体のコントロールが難しくなることが指摘されており、手と目の協調とバランスが低下するといった先行研究もあります。
同じく改善のみられた指対立(掌握反射)とは、手の母指と他4指とが向き合う動作です。指対立が困難だとつまんだり握ったりする行為が阻害され、不器用さにつながります。
また、社会性発達対人応答尺度は3か月間で低下傾向を示し、ADHD児童において有意に低下しました。
本研究の結果は、3ヶ月という期間であっても、運動介入が発達神経症児童、特にASD児童の原始反射の統合や、ADHD児童にみられる社会性発達対人応答などの特性の軽減に影響を与えることを示しています。後は1年以上の長期的変化の観察や、対象群の設定・原始反射の段階的評価基準の検討をすることによって、その詳細をいっそう明らかにしていきたいと考えています。
研究概要
■方法:医師による診断があるASD(15名)・ADHD(13名)8~12歳の男女児童が対象。
1~2回/週(平均1.4回)、1時間/回の運動プログラムを12週間実施。
原始反射残存度のテスト・SNSs(微細神経学的徴候テスト)・社会性発達対人応答尺度(対人行動、コミュニケーション、反復/情動行動などの症状を測定する検査。保護者が担当)を実施。
■結果:社会性発達対人応答尺度に関して、ASDの児童群の総得点は70点と中等度の重度を示し、12週後に改善は見られたが統計学的有意差はなかった。ADHDの児童群の総得点は120点後半と極めて高い重度を示し、12週後に統計学的有意に改善が見られた。特に精神病理一般に大きな改善が見られた。研究開始時、原始反射では、ATNR、ランドゥ、ガラント、指対立(掌握反射)の残存度が高かった。12週後、ATNR四つ這いとATNR立位、指対立が有意に改善していた。原始反射残存では、SNSsもASD群の方がADHD群よりも多く陽性が見られた。
■考察:
課題① 今回の研究でも先行研究と同様に24ヶ月程度で統合される原始反射が、就学期においても残存していることが示された。
課題② 運動介入によって原始反射残存度が改善した先行研究のHemispheric-based training(運動・生活習慣・栄養へ介入した包括的なプログラム)とAM同じような項目について、同程度の改善が示された。本研究は包括的なプログラムではないにもかかわらず改善した事は、運動の影響があるものと考える。ADHD群の対人応答尺度がより大きく変化したことは、初期値がかなり高かったことがあると考えられる。
最後に協調運動の陽性率と変化に関して、片足立ち・踵歩行のアクセサリームーブメント(AM)・前腕回内外とAMの陽性率が高く、ATNRや指対立と似たような改善が見られた。先行研究においてもATNRの残存度が高いと手の協調とバランスが低下する、AMが神経筋系全体の抑制機能を反映するという報告がある。ATNRの統合が前頭葉、前頭前野の発達・協調運動・抑制機能の関係を今後検討する必要がある。今後は1年以上の長期的変化・対象群の設定・原始反射の段階的評価基準の検討をしていく必要がある。
1~2回/週(平均1.4回)、1時間/回の運動プログラムを12週間実施。
原始反射残存度のテスト・SNSs(微細神経学的徴候テスト)・社会性発達対人応答尺度(対人行動、コミュニケーション、反復/情動行動などの症状を測定する検査。保護者が担当)を実施。
■結果:社会性発達対人応答尺度に関して、ASDの児童群の総得点は70点と中等度の重度を示し、12週後に改善は見られたが統計学的有意差はなかった。ADHDの児童群の総得点は120点後半と極めて高い重度を示し、12週後に統計学的有意に改善が見られた。特に精神病理一般に大きな改善が見られた。研究開始時、原始反射では、ATNR、ランドゥ、ガラント、指対立(掌握反射)の残存度が高かった。12週後、ATNR四つ這いとATNR立位、指対立が有意に改善していた。原始反射残存では、SNSsもASD群の方がADHD群よりも多く陽性が見られた。
■考察:
課題① 今回の研究でも先行研究と同様に24ヶ月程度で統合される原始反射が、就学期においても残存していることが示された。
課題② 運動介入によって原始反射残存度が改善した先行研究のHemispheric-based training(運動・生活習慣・栄養へ介入した包括的なプログラム)とAM同じような項目について、同程度の改善が示された。本研究は包括的なプログラムではないにもかかわらず改善した事は、運動の影響があるものと考える。ADHD群の対人応答尺度がより大きく変化したことは、初期値がかなり高かったことがあると考えられる。
最後に協調運動の陽性率と変化に関して、片足立ち・踵歩行のアクセサリームーブメント(AM)・前腕回内外とAMの陽性率が高く、ATNRや指対立と似たような改善が見られた。先行研究においてもATNRの残存度が高いと手の協調とバランスが低下する、AMが神経筋系全体の抑制機能を反映するという報告がある。ATNRの統合が前頭葉、前頭前野の発達・協調運動・抑制機能の関係を今後検討する必要がある。今後は1年以上の長期的変化・対象群の設定・原始反射の段階的評価基準の検討をしていく必要がある。
早稲田大学スポーツ科学学術院・広瀬統一教授のコメント
スポーツ科学の領域から子どもたちの教育やスポーツに関わる立場から、神経発達症のお子さんを取り巻く環境に大きく3つの課題があると感じています。
・神経発達症がどういうもので、どんな特性を持っているのかについての社会的な理解が不足している
・神経発達症の行動特性自体が運動あるいは遊びやスポーツによって和らいでいく可能性があることが認知されていない
・専門的に支援するための総合的なプラットフォームが確立されていない
今回の研究結果では、ADHDのお子さんの社会性対人応答尺度、いわゆる行動指標と言われるものが、3ヶ月後には低下していました。様々な運動を継続的に行うことで症状が和らぐ可能性が示されたと考えています。これまで言われてきた運動の効果を反映した結果として、ポジティブに捉えています。ここからさらに長いスパンでみたときには以下2つの課題があると考えています。
・長期的に運動を継続すれば同じように改善し続けるものなのか
・一定の閾値があって、それ以降は改善しにくくなるものなのか
私は、改善しないとは思っていません。より個別化された運動プログラム、場合によっては生活習慣も含めた包括的な対応が必要になるかもしれませんが、その先の広がりも期待できるという意味で、様々な症状の改善への可能性を感じています。
児童発達支援や放課後等デイサービスといった支援を提供する事業所には、5つの領域(①健康・生活、②運動・感覚、③認知・行動、④言語・コミュニケーション、⑤人間関係・社会性)を包括的に支援することが求められています。
これらの支援に対して遊びや運動の貢献度は高いと考えていますが、さらにその周辺の要素もしっかりと把握してく必要があります。例えば栄養、睡眠などの生活習慣、そして、親・兄弟、周囲の子どもや大人たちとのつながりも大事です。これらを包括的に支援できる環境を整えていくことが大事だと思います。
神経発達症といってもさまざまなケースがあります。子どもたちに限らず大人に対する事業所すべてにも、遊びや運動の導入、そして生活習慣やひととのつながりを含めた包括的な支援を期待したいと思います。
・神経発達症がどういうもので、どんな特性を持っているのかについての社会的な理解が不足している
・神経発達症の行動特性自体が運動あるいは遊びやスポーツによって和らいでいく可能性があることが認知されていない
・専門的に支援するための総合的なプラットフォームが確立されていない
今回の研究結果では、ADHDのお子さんの社会性対人応答尺度、いわゆる行動指標と言われるものが、3ヶ月後には低下していました。様々な運動を継続的に行うことで症状が和らぐ可能性が示されたと考えています。これまで言われてきた運動の効果を反映した結果として、ポジティブに捉えています。ここからさらに長いスパンでみたときには以下2つの課題があると考えています。
・長期的に運動を継続すれば同じように改善し続けるものなのか
・一定の閾値があって、それ以降は改善しにくくなるものなのか
私は、改善しないとは思っていません。より個別化された運動プログラム、場合によっては生活習慣も含めた包括的な対応が必要になるかもしれませんが、その先の広がりも期待できるという意味で、様々な症状の改善への可能性を感じています。
児童発達支援や放課後等デイサービスといった支援を提供する事業所には、5つの領域(①健康・生活、②運動・感覚、③認知・行動、④言語・コミュニケーション、⑤人間関係・社会性)を包括的に支援することが求められています。
これらの支援に対して遊びや運動の貢献度は高いと考えていますが、さらにその周辺の要素もしっかりと把握してく必要があります。例えば栄養、睡眠などの生活習慣、そして、親・兄弟、周囲の子どもや大人たちとのつながりも大事です。これらを包括的に支援できる環境を整えていくことが大事だと思います。
神経発達症といってもさまざまなケースがあります。子どもたちに限らず大人に対する事業所すべてにも、遊びや運動の導入、そして生活習慣やひととのつながりを含めた包括的な支援を期待したいと思います。
広瀬 統一
早稲田大学スポーツ科学学術院 スポーツ科学部教授
1997年早稲田大学人間科学部スポーツ科学卒業後、東京大学大学院総合文化研究科に入学し、さらなる研究を重ねた。2006年からは早大に戻り、現在は教授として教鞭をとる。
ジュニアからユース世代のサッカー選手のフィジカルコーチとして、ヴェルディ川崎(現 東京ヴェルディ)、名古屋グランパス、京都サンガで活動。06年より日本サッカー協会フィジカルフィットネスプロジェクトメンバーに就任し、08年からはサッカー女子日本代表フィジカルコーチとして女子サッカー選手のサポートを行ってきた。また、スポーツ外傷・障害予防とコンディショニングをテーマに、若年層から成人まで幅広い年齢層を対象に研究を行っている。
早稲田大学スポーツ科学学術院 スポーツ科学部教授
1997年早稲田大学人間科学部スポーツ科学卒業後、東京大学大学院総合文化研究科に入学し、さらなる研究を重ねた。2006年からは早大に戻り、現在は教授として教鞭をとる。
ジュニアからユース世代のサッカー選手のフィジカルコーチとして、ヴェルディ川崎(現 東京ヴェルディ)、名古屋グランパス、京都サンガで活動。06年より日本サッカー協会フィジカルフィットネスプロジェクトメンバーに就任し、08年からはサッカー女子日本代表フィジカルコーチとして女子サッカー選手のサポートを行ってきた。また、スポーツ外傷・障害予防とコンディショニングをテーマに、若年層から成人まで幅広い年齢層を対象に研究を行っている。
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